こちら魔法界ホームセンター 作:そこら辺に転がってる石
普段の二倍はあるぞこれ。
教室は色んな意味で賑わっていた。まぁそりゃそうだろうな。
アルバス君がダンブルドア校長となり、私が育てた生徒達が魔法省に勤務するようになる程度には時間が経った。それはつまり、私の目標の一つが達成可能な状態になったということ。
教育者というコネを最大限に使い、アルバス君や魔法省勤めの元生徒達...それと、先日のがきっかけで接触する機会のあった理事会の一員、マルフォイ家の後押しなどなどがあり、ついにマグル学が義務教育の一つとなった。
教育を受けるための言い訳としては、いくら魔法の使えないマグルとはいえ個体数が多いのはそれだけで脅威ということを知らせて、自衛のための知識を築くため。あとは就職先の一つとしてマグルの世界へといくことも視野に入れられるように、と言った感じだろうか。
全員が全員、魔法界で幸せに暮らせるというわけでもないのだから、と少なくとも教育者達はこの理由で納得していた。カリキュラムの組み直しとかもあったけど、まぁそれはそれ。
ちなみに義務とは言ってもホグワーツだけの話である。試験的にやって問題なければ広まっていく可能性は十分ある。一応算数とかそういうのもやる予定だしね。
というわけで、めでたく義務教育となったマグル学、その1番最初の授業が今日である。
何の因果か、1番理解が得られなさそうなスリザリンと、1番話を聞かなそうなグリフィンドールの合同授業だ。レイブンクローとハッフルパフは平和で知的だというのにこの二つときたら。嫌いじゃないけど。
「元気そうで何より。やぁ!新入生諸君」
声を上げると、じわじわと喋り声が消えていき、ついには静かとなった。
その間観察をしていたのだが、何人かはこちらを見るや否や驚き、何人かは私の存在に首を傾げている。前までは少数の生徒達からよく向けられた視線だ。今は数が多いな。
前者は魔法使いとして、色々やらかした私を知っている人達だろう。後者は...おそらくマグル生まれの子達かな?同い年とまではいかなくても見た目は学生のそれに近いし、なぜ教員の真似事を?みたいな反応なのかもしれない。
「君らが静かになるまでに人間観察が終了しました。特に授業中のおしゃべりを咎めるつもりはないけど、授業に関係のないことを喋るのはやめておくことをおすすめしよう」
「えぇと、先生、ですか」
「そーよ。初対面の君たちに自己紹介をしようか。私シユウ。ホグワーツ魔法学校マグル学教師であり、各地に数点店を構える雑貨よろづやの店主でもある。何人かは...私の顔を見たことがありそうね」
そういや店番してるから私の顔は知ってる人の方が多いか。んじゃあただの店主って認識されてたかな?店員がなぜここに?って反応だったか。
まぁ普通、教員って忙しいから副業してる人なんてほとんどいない。元闇祓い、みたいなのはいるかもしれないけれども。
「特に自慢できる賞とかは持っていないけれど、双子呪文などのちょっとした呪文の改変、オーパーツと呼ばれる遺品の回収等で有名になったりもしてる。まぁそんなのはこの学業にゃ本のちょびっとしか関係ないし、問題ないね。あ、そうそう。見た目こんなだし性格こんなだけど、一応ダンブルドア校長と同期の年寄り魔術師なので、そこんとこ間違えないように」
その発言に純粋に驚いたものもいれば、何かを狙うように見るものもいる。んまぁ、見た目若々しいからね。子供とはいえ永遠の若さに憧れるのは何と無くわかる。
その場合私を1番参考にしてはいけないのだけれど、まぁそれはそれとして。それはマグル学でやる話じゃないしね。
「さて、私の紹介も済んだところで、この学部で何を行うかを説明しよう。君たちは今義務としてマグル学を受講しているが、過去の卒業生達を見ると、むしろマグル学を学んでいた人々は少ない。義務化したのは最近の出来事だ」
そういえば兄がなかったって、両親もなかったって言ってた、どうして僕らだけ...そんな声が口々に聞こえてくる。
いや、不満は分からんでもないがね。もうちょっと隠しておくれ。
「義務になって何を学ぶのか。勿論、マグル学というのだから基本的にはマグルの文化を学ぶのだけれど、最初の数年はそんなに深くまでやるつもりはない。むしろ生活に役立つような計算や、マナーなどの道徳...つまり、マグルと魔法使いで共通する内容を伝えることになるだろう。とりあえずそれは了承しておいて」
実際、足し引などの計算や一般常識とされるマナーは共通していることが多い。お茶の淹れ方とかも、まぁ授業でやるかは別として同じだ。過程で魔法を使っていたとしても、結果が同じでかつ魔法なしでもできることはマグルもできる。
まぁ色々言ったが基礎学力を鍛えるってことだね。
「とはいえ座って文字を書き続けるとか、そんな授業私の方が嫌なんで比較的実技を多めにしてる。まぁみんな知っての通り義務化して日が浅くまだまだ発展途上なので、思ったことや不満は遠慮なく言うように。...と、早いな挙手が。んじゃスリザリンの君から。できれば名前を言ってくれると覚えられていいんだけど」
「セブルス・スネイプです」
遠慮なく、と言ったあたりから結構な数の生徒の手が上がった。ちょっと悲しい。
んまぁそれはそれとして...君か、マルフォイ君が言ってたのは。すっごい細いな。先生ちょっと心配。
「なぜマグル学が必要なんですか。我々は魔法使いです。魔法を学べばいいのでは?」
「いい質問だ。不満を持っている人もいるだろうし答えよう」
この質問毎回されるな。そんなに嫌かね、マグル。私は好きだけど。
「質問に質問で返すようで悪いけれど、君は自分の所属する寮の名前を知っているね?」
「...?はい、勿論。スリザリンです」
「ではスリザリンという寮はどの学校にある?」
「ホグワーツです。...先生、バカにしてるんですか」
「ごめん、そういうつもりじゃないんだけども...そう。君は知っている。ホグワーツという学校に、スリザリンという寮があり、そこに自分が所属していることを知っているんだ。...これをみんな、当たり前と思うよな?んじゃあ少し変えてみよう。あぁ、話ちょっと長くなるから座っていいよ」
「...はい」
「君たちの中には、ご両親がマグルでこちらの世界を最近知った人たちがいるだろう。その人達に聞きたい...ほんのちょっと、怖くなかったかい?」
大半がきょとんとした顔で見てくるが、数人が少し驚いた仕草を見せる。ふむ、今のがマグル生まれの子達かな?まぁそんなに把握したりとかすることはないけれど。
「なぜ怖かったか。まぁ色々あるだろうけど、1番は魔法という未知の存在に触れたからだ。なぜか棒を振ると浮き上がる物や、安全性のない箒に平気で跨る魔法使い。動く写真にしゃべるお菓子、小鬼などのマグルの世界には存在しない種族...君たちはそれを知らない。知らないから恐れ慄き、手を伸ばせると知ったから渇望する。悪いことじゃなくて、人間という種族の本能に刻まれているような感情だよ」
未知は怖い、故に憧れる。恐ろしいから恐ろしい原因を取り除くために研究し、開発し、安全性を確保する。
魔法薬とかを研究している人たちからそんな話を聞いたことがあるし、例のやべー先輩も魔法生物を撫でながら言っていた。科学者も同じだと思うんだよね。
「さて、魔法使い諸君。君たちは魔法界を知ることが許されていないマグルと違い、マグルの世界を知っている。だがここにいる全員、ほとんどその実態を知らないだろう?君らが魔法で代用している部分をマグル達がどう行っているのかを知らない。彼らが日用的に使用している道具を知らない、彼らが利用する武器を知らない...その状態で怖くはないかい?ただのマグルと舐めてかかったら、後ろから未知の道具で殺されるかもしれない...その未知の道具を知ることによって、死が回避できるとは思わないかい?」
「...マグルに、そんなものがあるとは思えません」
「さて、それはどうだろうか。君たちが知らないだけで存在している可能性を考慮したことはあるかい?少なくとも私は、魔法界に打撃を与えられる道具を知っているよ。君たちが気づく間もなく死んでしまうようなものもある...これを嘘だと証明できるかい?」
勇敢さが取り柄なグリフィンドールは言わずもがな、スリザリン生徒も話をしっかりと聞き始める。
未知ってこえーよなー。私もそう思う。気がついたら後ろから刺されててもおかしくないし。たまにマグル世界旅行中に戦争に巻き込まれたりとかもあったしね。銃は流石に怖い。
化学兵器なんてものもある。無論魔法界には素晴らしい治療薬があるので、骨が抜けたり知っている毒なら取り除けるだろう...そう、知っていたならば。
「まぁこれはマグル学だけの話ではないけれど、君たちが学生として学校に来て学ぶのはこういうのが理由だよ。知識はなんぼあっても困らんから、良き隣人であるマグルのことも、知っておいた方が役に立つし、利用できる...と、今例題として兵器を出したけれど別に他のものだっていいんだよ。君らが好きな、そうだな。ボードゲームとか。遊びの幅は広い方がいいだろうよ」
数人、特にグリフィンドール側がざわつく。うんうん、遊び道具は大事だよね。
「てなわけで、少し難しく話はしたが学ぶ理由は理解できただろうか。ちなみに今日の宿題は来週までに自分の知っているマグルについての知識をありったけ書くように。偏見でも悪口でも賛否でも何でもいいよ。その内容で特に責めたり尋ねることはないと誓おう」
宿題、という言葉に条件反射でブーイングを売れる生徒達に笑いかける。宿題は出るとも、当たり前だろう。まぁ今回は意識調査みたいなものだけど。
マグル学が義務化した今、前よりもより面白い授業にする必要がある。最近は産業革命やらで技術の発展が目まぐるしいし、出張している私もできるだけ情報を仕入れなきゃいけないな。なかなかに忙しい年月になりそうだ。
...さっき質問してきたスネイプ君のことも少し気になるしね。
実際爆弾を魔法界に落とされた場合、どれほど抵抗できる人物がいるだろうか。
目視がほぼ不可能な銃弾をプロテゴと呪文を唱えて守れるのか
流石に反射神経の話になると不可能そう。毒ガスとかはベアゾール石とかで解毒できるかもしれないけれど、リアルに存在するやつと合わせると解毒するものにも種類がありそうだなって。化学兵器とか自然界で生まれたものではないし難しいんじゃないかな。わかんないけど。