こちら魔法界ホームセンター 作:そこら辺に転がってる石
彼らがその後どういう対応をしたのか、私はほとんど知らない。
というか、私の担当するマグル学は義務化はしたけどあくまで最初の数年だけ、それ以降は前と同じく選択科目だったので、義務学科が終わった今、ほとんど関わりがなくなった。なぜか校内でもほとんど合わなかったし。
スリザリンを担当する教員なのでスネイプくんは見ていたが、まぁ目立った話も噂も怪我も何一つなかったのであんまり関与できなかったのだ。いち生徒に肩入れするとえこひいきと見られて向こうの関係性とかが悪化する可能性があるしね。
一応、マグル学を選択したとあるグリフィンドールの女生徒から、昔ただのクソガキだった男子がやんちゃ坊主程度に落ち着いたという話は聞いたものの、それが彼らなのかは謎である。
さて、そんな感じでいじめなどを確認することなく平々凡々な日常を送っていたわけだが、それはそれとしてそろそろなんとかしなきゃいけない問題が浮上してきた。
数年前から巷で噂の、闇の魔術師なんたら君である。
相変わらず私にとっては名前も出てこない存在ではあるが、そろそろ看過できない状況になりつつある。周辺にいる愉快な仲間達の分も含めると死傷者がそろそろヤバい数になってきているし、なんと言っても所謂人外達を味方につけ始めているのだ。
どういった生き物が人外の判定となるかは難しい話ではあるが、一般的に言われているのは巨人や人狼などだろうか。まぁ正直人狼って病気みたいなもんだし、人外達と言うとめんどい人たちがうんぬん。個人的には関わりがない以上なんだって元素の塊だと思うのだけど。
まぁ兎に角、勢力が拡大して過去最高にピリピリとした雰囲気を出しているのが今の魔法界である。具体的にはあんま気軽に外出できなくなったり、やべー先輩が何日かに一度禁じられた魔法を撃つぐらいひりついている。正直あの人が捕まらないかどうかが1番心配だよ。
「いーやーでーすー」
「じゃがのう、シユウよ。もう我儘を言っていられる場合じゃないのじゃ」
「我儘?これが?本気でそう見えるんか?」
そして今、それに対処すべく我らがダンブルドア校長と会議をしている真っ最中である。
というか、前にもこの話した気がするんだ。あの時解決したと思っていたんだけど。
「そもそもすでに決着はついたはずだ。お前は自由に動いていい代わりに私も自由に動く。お前が学校を心配しているから私が学校を守る。それ以上に望む必要があるのか?」
「魔法界の未来がかかっておる。このまま奴を放置しておくわけにはいかん」
「そんなのは私の知ったこっちゃないし、ホグワーツ魔法学校校長アルバス・ダンブルドアがする事でもない。私の仕事はよろづやの経営と教員、お前の仕事も教員のはずだ」
「確かにわしは教師じゃ。しかし英雄と慕われてもおるのは事実。英雄なれば、それなりの動きをせにゃならんと思わんか」
「だからお前は好きに動けばいいじゃん別に。お前がどっかに行こうと私は気にしないけど、それに私を巻き込むなって話をしてんのよ」
今日は時間があるせいか、いつも以上に口論となっている。
ゔぉるなんたら君をもう放置しておけず、さりとて魔法省のお役所は当てにならないと独自の自警団を作りたがるダンブルドア。それの入団を拒否する私。
切羽詰まってるからかもしれないけど、いつも以上に互いに譲ることがない。
「私にはやりたいことがあって、それにお前の考えるような自警団は含まれてないの。絶対入らん」
「やりたいことをするにもまず共通の敵を倒す必要があるじゃろう」
「私に取っちゃ敵ですらないんだよ。不利益は生まれていないし実害もない。強いていうなら売り上げが少し下がったかもしれない程度だ。その程度で喧嘩を買うほど私の器は狭くないんよ」
「敵になってからは遅いじゃろう。被害を最小限に抑えるために必要なんじゃ」
「そらそうだろうけど、だからと言ってその作戦に乗るかと聞かれれば嫌よ」
アルバスの言い分はわかる。だがそれとこれとは話が別。
私は別に、アルバス君のためなら無償でなんでもできる聖人君子ではないのよ。自警団と言ってはいるけどその実ただの闇の魔術師討伐ボランティア。やることで得られる報酬は達成感と闇の魔法使いが消えたという事実だけ。命かけるにゃわりに合わないだろうよ。
「君らが無駄にこだわってる寮分けで言うなら、私スリザリンだからね出身。自分にとってのメリットとデメリットっていうのを明確にしていて、少なくとも君の話にはメリットを感じない。闇の魔法使いがいなくなるからと言って、現状被害のない私にはほとんど関係がない」
「奴はマグルを目の敵にしておる。それでもかの?」
「そらそうよ。私は文化が好きなだけだし、そもそもマグルも一切抵抗できないというわけじゃない。それに、それを止めるのは魔法省の仕事であって教員の仕事ではないのよ」
「...シユウも知っておるじゃろう。彼は」
「はいはいトム・リドル君ね。そんなに気にするんなら最初からもっと導けばよかったんだよ」
冷たい目を送る。アルバス君の目が細まる。
「個人的にはあの子面白くて好きだったよ。まだ義務化も何もしてない時代だったけど、好奇心が強く勉強にも熱心だった。形はどうであれ友人もいて、後輩にも慕われるような存在、いわゆる優等生だった。んで?君何したよ、彼に」
「...それは」
「何もしていない。それどころか警戒の目を向けてた。何故?教育者なんだろお前。曲がりそうな棒をまっすぐにする仕事だってのに、横からずっと殴ってんだからそら捻くれてああもなるさ」
「しかしじゃ。彼は」
「よくは知らんが最初に声をかけて学校に連れてきたのもお前だろうに。最初から荒れてる人間なんぞそうそう居ないのよ。環境が人を作るんだから、アレはお前が生み出したのよ」
私も特に強くはいえないがね。私がやったことはせいぜい、アドバイスだけだろうし。それでも少なくとも平等にはみたよ。
...なんでも、卒業後は闇の魔術に対する防衛術を教えようとホグワーツに面接に来たのにアルバス君が落としたと聞いている。噂で眉唾物な話題かもしれないが、火のないとこに煙は立たないわけで。少なくとも他者からそう見えてしまうだろう態度をこいつはとっていたことになる。
それらを指摘すると、アルバス君の顔が歪んだ。ただ、まだ真っ直ぐ前を見ているように見える。
「だからこそ今、救いたいのじゃ。彼も、魔法界も」
なぜそこまでして救おうとするんだろうか、こいつは。前はもう少し意見を受け入れてくれたと思うのだけど。
アルバス君が卒業後に何を経験したのかは詳しく知らないが、どうも彼の中では魔法使いたちは自分が守るべき存在になっているらしい。
そんなに弱くないと思うよ、魔法使いもマグルも。むしろ一人の老人に守られなきゃやってけない社会なんぞさっさと滅ぶべきなんじゃないかな。
「...どうしても協力してはくれぬか」
「嫌。拒否する。昔の君の願いならいざ知らず、今の願いは誰のために動いているのかさっぱりわからん。あと勝ち目のない戦いに乗るほど暇じゃないのよ」
「それはやってみねばわからぬ」
「いや、わかるよ。少なくとも今は無理」
断言すると、流石にアルバス君も目を見開いて驚いた。何かを察したらしい。
今まで言ってなかったもんね、こういうことは。
「...それは予言かの」
「さぁ?予測かもしれんね。戦力差というよりはバックがデカすぎるってのもあるけど。少なくとも私や、あと先輩とかを巻き込んだとしても無理だね。というかそもそも私に期待しないでくれよ。こちとらただ増えるだけのマグル学教員だってのに」
「...」
勝ったな。帰るか。
そもそも仕事の書類提出で校長室に来て絡まれたんだ。そろそろ自室でゆっくりしたいよ私は。面倒な話すると面倒なんだぞ。
ささっと持って帰る分の書類を集めて校長室を出ようとする。
「できれば諦めたくないんじゃが...」
「寿命で死ぬのとどっちが先だろうね」
めんどいなぁーほんとに。嫌って言ってるから嫌なんだよマジで。
とはいえなんとかしなきゃいけないのも事実だし...うーん...向こうも気になるし、魔法省にバレないように分身でも作ろうかなぁ。
どっかのおせっかい焼きは黄色い人を生まれながらの悪と言ったけど、なんかの実験で状況さえ整えば誰でも悪になれるっていうのがあった気がするし、生まれながらは流石にないと思うんよなぁ。
トム君の場合は両親の関係と育った場所、謎に警戒心が高く接してくるダンブルドアの影響ではないかと感じている。そのうちこの辺の心理描写かけるといいな