こちら魔法界ホームセンター 作:そこら辺に転がってる石
お気に入り登録をしていた小説がちょっとづつ消えていく悲しみを感じる。頑張って完結するね。
思うのだ。忘れるだけでは勿体無いと。
忘却呪文は便利だ。思い出したくない事実をすっぱり忘れられるし、マグルに秘匿すべき魔法を目撃された際にも安全に対処できる。少々倫理観が警鐘を鳴らしている気がしなくもないが、それでも魔法省にそれ専用の部門がある程度にはなくてはならない魔法の一つだ。
だが欠点もある。制度は違えど誰でも使えてしまう簡易さや、忘却された記憶は特殊な方法を使わない限り戻らないという事実。暴力沙汰になった際に使われて、治療院である聖マンゴ魔法疾患障害病院で治療されている人を見たことがあるが、社会復帰させるのがせいぜいで失った記憶は取り戻せない、という話を聞いている。
「それじゃ不便だと思うのよ、私。だからさ、一時的な忘却術を作ったのよ。スパイ活動にはもってこいなね」
「そりゃ便利だな。実験体が自分でなければ、だが」
ここはヌルメンガード城。彼は友人となったゲラート。
ここのところ忙しくてできなかった趣味の魔法開発を協力してくれる素敵な人物だ。気付かない問題点も指摘してくれる最高のバディだと思うね。私たちズッ友だよ!
冗談はさておき、魔法の開発にこれ以上最適な場所はないだろう。牢獄の中ではあるが、別に魔法が完全に禁じられた場所ではないのだ。姿現しというテレポートのようなものは使えないが、そのほかの魔法は簡単に使えるし、それらを監視したり感知するものは存在しない。目撃者もいないので利用しない手はないだろう。
今回の呪文は普通の呪文に近いけど、たまに倫理的にヤバそうな呪文を思いついたりするのでマジでここ便利。助かる。
「ど忘れ...特定の状況下で一部の記憶を失う呪文か。随分と恐ろしい呪文を考えたものだ」
「意外と思いつくと思うんだけど、なんで他の人つくらないんだろ」
「お前と一緒にするな。普通の人間であれば、生涯にひとつ発明していればいい方だ。暴力的手段で傷を付ける闇の呪文であればまだしも、通常の呪文はそうそう作れるものではない。それこそ、マーリンでもなければ不可能な所業だ」
「そうかねぇ。私としては大したことしてない気がするんだけど。結局は想像力を具現化するための魔力と動作、言動をつけるだけの簡単なお仕事って感じなのだけれど。基盤の魔法が存在しているわけだし」
「全盛期にお前を説得できなかったのは十分汚点と言える」
「褒めてんのかそれ」
「純粋な技量は褒めている」
それ以外は貶してるってことか。まぁ別に気にはしないけど。
会話が通じるだけ上々。ここまで色々と付き合ってきてるなら万歳。口では色々言ってるが割とこの関係も満更でもないんだろう。
「だからこそ疑問に思う。なぜ回りくどい動きをする?お前であれば敵の位置を把握し即座に壊滅もできるだろう。俺のいる場にこうして現れたように。そもそも物量という点でお前に敵うものはいないはずだ」
「あー、いやそれなんか先輩にも言われたな」
皆、何でそこまで私に期待するんだろう。ただの教員兼店長なのに。そもそも戦闘面の強さは先輩が目立ってるし、魔法もいくつか作りはしたけどアルバス君の方が功績的にはでかいことしているし。
比較対象が大きいとはいえ、なぜかそこに並べられるほどの何かを私はやったことないっていうのに。
「私は確かに増えるけど、私なんかが増えたところで焼け石に水よ。先輩がこの増える魔法を使えれば話は別だったかもしれないけど、色々めんどい工程挟むせいで現状私しかできないし、そんな私には力はないし。ここに現れたっていうけど、ちゃんと入れた理由もあるからね?超人的な魔法技術とかではないのよ」
魔法に限って言えば、私はそこまでいい成績を持ってない。そりゃあ、ホグワーツという幼く小さな空間では頂点に立てたかもしれないが、上には上がいるのだ。
応用を効かせて私を増やしたり、ド忘れする呪文を作ったりはできるだろう。でもそれは直接的な戦闘能力にはつながらないと私は考える。
「試したことないからわかんないけど、死の呪文が分身に当たった時にどうなるかわかんないでしょ?その分身が死ぬのか、そもそも効かないのか。最悪本体にまで魔法が届くかもしれない。その可能性を捨てきれない限り、分身増やして特攻ってのはただの自殺行為なのよ」
「ほう?面白い。検証するのなら他の魔法で試してみればいい。同一ではないが他の禁じられた呪文でやればいいだろう」
「えーやだよ。その結果私の自由が効かなくなったり苦しんだりするかもしれないんでしょ?痛いのは嫌じゃん」
いつかはしなきゃいけないだろうけど、まぁ今でなくともいいだろう。そこまで急いでいないし、焦ってもいない。
何度も言うけど基本受け身だし無関心なのだ。ゔぉる君の名前をいまだに覚えられない程度には。攻めてきたけど結局ルシウス君が色々教えてくれたし、怪我も何もしてないので報復も特に思いつかない。あの場にいた死喰い人ほぼ倒されてたしね。
「まぁどちらにしろ情報待ちだね。彼がどう言う情報を得てくるかはわからないけどそう言う約束をしたし、私が得られる情報源は彼から得られるし」
「アルバスも同じく動いているのだろう。なぜ協力しない?」
ゲラートのその問いに、きょとんとした顔を向ける。
何を言うかと思えば。なんだかんだ言って彼を認めて気に入ってたのか、君は。不思議な関係性だね。
兎にも角にも、聞かれたのならば答えねばなるまい。
「だって私、今のあいつの考え嫌いだもの」
ど忘れ魔法とは
...あのあれ、何だっけ。忘れたわ
...と言う状況を意図的に起こす魔法だ!ルシウスにかけたので彼は私と会うまで私と話したことをすっぽりと忘れているぞ!忘却術の応用のため開心術をかけられてもわからないんだ!だって本人忘れてるからね!
ゲラートはこれを試作段階の時にかけられたせいでお気に入りのワインの銘柄が思い出せなくなってしまったんだ!かわいそー!なおもう一度飲んで上書きした形で思い出したみたいだぞ!