こちら魔法界ホームセンター   作:そこら辺に転がってる石

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彼はとても優秀だ。
これまでも、これからも。


幕間 新しいタイムカード

 それを選んだのは、打算も込みだった。

 自分が特別であると言う事実を疑ったことはない。昔からなんでもできたのだ。育ったのはマグルどもの中でだが、早くから魔法に目覚め、それを操ることもできた。ホグワーツでは優秀な生徒として何度も表彰されたし、今も指導者として完璧にこなしている。ダンブルドアなど敵ではないほどに、優秀だ。あのような魔法を多少使えるだけの老人なんて自分の敵ですらない。少々厄介ではあるが、それだけだ。

 

 下僕どももいる。仲間などと言うくだらない存在では決してない。俺様を崇拝し、恐れ慄き、付き従う優秀な僕どもだ。俺様を最強と称え、それについていく意思を持った多少頭の回るものども。こいつらではダンブルドアには太刀打ちできないだろうが、他の奴らを倒す程度の仕事はできるだろう。ネズミのような木偶の坊や本当に俺様についてきているか怪しいものもいるが、俺様を裏切れるほどの愚か者ではない。

 

 唯一の敵である老いや死も克服した。マグル学の教員という最も不要な学業の教員ではあったが、ダンブルドアなどというただ老いるだけの老人とは違い今もなお魔法を探求する者にもらった知識のおかげとも言えよう。俺様の心内を知ってなお否定しないのはアレぐらいだったか。

 

 そうだ。俺様は克服したのだ。老いを無くし死を超えて、僕に囲まれ最強となった。そのはずなのに。

 予言。あの予言のせいで全てが狂って行く。あと少しで魔法界を我が物にできるというのに、この俺様がちっぽけで生まれたてのクソガキに負けるだと?

 

 いいだろう。予言がどれほどの効力を生むか、俺様直々に確かめてやる。

 

 僕の一人が俺様に伝えてきた予言は『闇の帝王を打ち破る力を持った者が近づいている。七つ目の月が死ぬとき、帝王に三度抗った者たちに生まれる』というもの。

 闇の帝王というのは、確実に俺様のことだろう。自分もだが、他者にもそう認識されているはずだ。ならば、この俺様を倒す者が七月の末に生まれているということだ。

 

 予言などという魔法界ですら眉唾物なものを馬鹿正直に信じてはいない。だが、可能性があるのならば潰しておくに越したことはない。この場合は特に簡単な話だ。すでに生まれた赤子どもを、抵抗の余地なく今のうちに殺して仕舞えばいい。

 

 僕どもによれば、その時期に生まれた条件に当てはまる赤子は四人いるのだという。そのうちの二人はダンブルドアの集めた不死鳥の騎士団などという集団に所属している親がいるようだ。忠誠の儀で守っているようだが、どうやら奴らは良い仲間とやらに恵まれていなかったようだ。すでに居場所は特定している。

 

 問題はもうニ人の赤子だった。忠誠の儀がかけられわからないわけではない。不死鳥の騎士団どものように組織に所属しているわけでも、ダンブルドアのような強大な魔法使いに守られているわけでもない。

 だが、その親の名を聞いた時、俺様の敵はここにいると確信した。俺様の敵になるのであれば、俺様が直接手を下そう、とも。

 

 他の場所には死喰い人をそれぞれ数人ずつ、特に信用たり得る奴らを送り込み、俺様は一人でその場所へと向かった。無論打算もある。本当に奴が親であるのなら、それごと取り込んで仕舞えば脅威ではなくなるだろう。無論子供は殺す必要があるが。

 

 俺様は優秀だ。これまでもこれからも。こんな場所でこんなガキに躓くような俺様ではない。

 そうだと思っていた。

 

「随分と膨れ上がった感情だ。それは本当に本心なのか、俺には想像がつかないが」

 

 声が聞こえる。いや待て、そもそも俺様は一体何を。

 先ほどまで考えていたこと。あれはまるで、走馬灯のような。

 

「どうやらお前だけで終わらないらしいことはわかった。...厄介だが、それでも『ヴォルデモート』の本体がお前だけだと知って安心したよ。他の魂はまだ『トム・リドル』なんだろうな」

 

 体は倒れていた。肉体はすでに死んでいた。

 なら、ならばこの俺様は一体何だ。いや、そもそも。

 この赤子は一体なんだ。

 

「しょーがねーから残業してやる。もう少し付き合ってやるよ、ゔぉる君」

 

 体が何かに包まれる。だが、肉体はそこにあるままだ。

 そう、そうだ。死の呪文を放ったのだ。そこに奴はいなかった。しかし、しかしこの赤子はそれを。

 動揺している。起こった事実を確認したいがその思考もだんだんと溶けて行く。

 死だ。死が迫ってくる。

 俺様は、俺は、僕は。

 

「副産物すぎて俺もびっくりしてるが...まぁ今更増えたところで問題ないだろ」

 

 ポトリと落とされたその中に、ヴォルデモートとしての意識が溶けて行く。

 それを認知することも徐々にできなくなっていき、最後に僕は、水の中へと溶けていく。

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