こちら魔法界ホームセンター 作:そこら辺に転がってる石
杖選び、いいですね。ワクワクするよねあのシーン
杖欲しいわ。遠いのよUSJ
杖といえばオリバンダー。少なくともイギリスの魔法界では当たり前となるほどにはオリバンダーという家名を背負った人々は強力で美しい杖を作り続けているらしい。
魔法使いにとって命の次に大事とも言える魔法の杖を与えられるタイミングは家によって違い、少なくとも俺達はジョークグッズの他に持ったことはなかった。
ただ、貴族であるドラコはすでに購入済みだったようで、ここは手分けをすることになった。ドラコとナルシッサは家で使用する物の買い出しを先に、俺とトムは杖の適性を見るためにオリバンダーの店へと向かった。
「...少し懐かしいな。昔を思い出す。そういえば、僕の昔の杖はどこに行ったのだろう」
「シユウが何かしてた気がするが俺は知らないな。下手すりゃ魔法省にでも保管されてるんじゃないか?」
「それは、少し残念だよ」
本当に残念そうにトムは呟く。ヴォルデモートだった頃とは違うとよく口にしているが、それでも当時使っていた杖を相当気に入っていたようだ。
本人には言わないが、少なくともヴォルデモートであった時は魔法使いであることに誇りを持っていたのだろう。もしくはそれしか誇れなかったとも言える。杖を大事に扱い、魔法を駆使して戦い、時には伝統を重んじる。脅しもあっただろうが、少なくとも純血貴族達がついていくに相応しい振る舞いをしていたのは事実だろうな。
「シュウはどうなんだ?シユウの杖に心残りはないのか?」
「ない、と言い切ると違うかもしれないが...ふむ、トムに聞くのは少し違うだろうが、アイツが杖を振ってるの見たことがあるか?」
「それはある...あるが、随分と回数が少なくないか?」
「そういうことだ。まぁ、いわゆる人並みだな。どうしてもアレが良い、というこだわりはだいぶ薄い」
「それは何か、寂しくないか?」
「そうかもな。まぁでもアレは量産できるシユウの作った杖だし、むしろこれから始めて杖を手に入れるからワクワクしてるよ」
「作った?」
トムの足が止まり、つられるように俺も止まる。
目の前にあるオリバンダーの店には一瞥もくれず、トムは呆れたような驚いたような、感情を混ぜた顔をこちらに向けてくる。
「杖をか?」
「慣れたと思ってたが、まだ驚けて良かったな。そもそもシユウは俺を含め大勢いるんだぞ。いちいち杖を買うわけにはいかないだろ」
「いや、それは魔法の一種で増やしているのかと」
「あー、まぁそれもあってる。持ってるのは実際魔法で増えてるそれだが、まぁどちらにしろ大元は作ったよ。なんせ当時のオリバンダーが匙を投げたから仕方ないだろ」
「オリバンダーが匙を...?彼女は一体」
「その店に入りたいんだが、お前さんらちぃと退いちゃくれんか?」
いきなり暗くなった、と思ったら声をかけられた。トムと共に目線を上に上げると、そこには毛むくじゃらの、巨人ほどではないが大柄な男が立っていた。
流石に記憶のある人物だ。数十年前からホグワーツの森番として雇われている人物、ハグリッド。
よくみると、傍に同じぐらいの年頃の少年が見える。同じホグワーツの新入生なのだろうか。どうやら彼の杖を買いに来たらしい。まぁ、そりゃ入り口で話し込んでいる俺たちは邪魔だな。
「すまん、ちょっと話が長引いた。俺たちも中に用が...トム?」
「...何でもない。入るぞ」
少しムッとした表情で店の中に入るトム...あー、前の知り合いだなこれは。年代的にも確か、森番になる前がそのぐらいだろう。俺はあまり過去の生徒を思い出せないが、同級生か後輩かにいたんだろうな。多分。
「...俺たちも中に用があったんだが少し話し込んじゃってな。邪魔して悪かった」
「もしかして新入生か?んなら、ほれハリー!一緒に行ってこい!」
「えっ⁉︎ハグリットは?」
「俺はちぃと用事を済ませてくる」
いうや否や脱兎の如く去っていくハグリット...え、教員としていいのか?アレは。教員というと少し齟齬があるかもしれないが。
後に残されたハリーと呼ばれた少年は呆気に取られながら、こちらを向いておずおずと進言してきた。
「えぇっと...いいかな。入っても」
「別に店だから俺に聞く必要もないとは思うが...入ったほうがいいんじゃないか?そもそも目的があってきたんだろう?」
戸惑う少年にそう告げて、俺も店の中に入る。
トムはすでに先に入ってたみたいで、店員...おそらくオリバンダーであろう老人に何かを告げていた。
「...ダメか」
「うぅむ、合わぬか。ならば...おぉ、すまないが少々待ってくれ。一人づつ、杖に選んでもらおう」
オリバンダーはこちらをチラリと見るなりそう告げて、すぐに奥に引っ込んだ。
キョロキョロと周りを見渡す少年をよそに、とりあえずトムに近寄る。
「用事済ませるからしばらくは来ないと」
「...そうか。いや、僕が嫌うのはお門違いなのはわかるんだが、少し...いや、隠さずにいえば、僕はあいつが嫌いだ」
「随分と正直なことで。まぁそれは後でいいんだが、今何やってるんだ?」
「杖に選ばれてる所だ。いくつか試しているんだが、どうも合わなかったらしい」
「そういえば、世代が変わって杖に選ばれるようになったんだものな」
「昔は違ったのか?」
「先代は希望通りの作ってくれる、いわゆるオーダーメイド形式だったぞ。それでも作れなかったんだが」
間違ってなければ、ここ数十年...いやもう100年経つのか?そのぐらい昔の話ではある。ただ実際オーダーメイドではなく杖に人を選ばせるよう変えた結果、馴染むのが早く魔法の技術が向上したという噂も聞いたので、画期的な方法ではあるのだろう。耳にはしていたがこんな感じなのか。思ったよりも杖職人のセンスが問われそうだ。
システムの良さと発想に感心していると、奥から素早くオリバンダーが現れる。なんというか、年齢に合わない機敏さだ。
「...これを」
特に深い説明はせずに差し出されたその杖を、トムはゆっくりと受け取る。
変化はすぐに現れた。柔らかくも力強い風がトム包む様に巻き上がり、杖そのものが存在をアピールするかの様に輝き出す。
俺とトムはそれを冷静に眺め、後ろにいた少年は「うわぁ...」と感動の声をあげている。
「不思議じゃ。まっこと不思議じゃ...杉の木に不死鳥の羽の芯、14インチ。使われたその羽は、例のあの人と同じ、兄弟杖じゃ」
「...へぇ、アレの」
「ある日突然、天命を受けたかの様に作り出した杖じゃ。本来の素材も、長さも、それとは全く異なるはずだった杖。作った理由も何もかも不思議な杖じゃった。だが確かに、杖は持ち主を選んだ」
杉か。確かスラグホーンが使っていた杖がそうだった気がする。あまり杖には詳しくないので適当言ってる可能性もあるが、杉の木は物を見極める人に向いており、持ち主への忠誠心が高い素材だったはず。
しかし兄弟杖とは言い得て妙だ。魔法界だとこういう縁は重要なファクターになる場合が多い。...何かあるのだろうか、今のトムとヴォルデモートに関する何かが。
「気に入った。持ち手装飾の取り扱いは?」
「そこにカタログがある。決まったら呼んでおくれ」
まぁ偶然にしろ何にしろ、本人はいたく杖を気に入っているようだし、何もわからない今憶測だけで考えるのも意味のないことだ。そんな無駄なこと考えるならこれからの学校生活について考えていた方がマシ。
前回、シユウの記憶では学校では俺は一人だったし、ろくに覚えておく必要があることもなかった。強いていうなら一年だけだが先輩と交流し、卒業間際にアルバスと仲良くなったものぐらい。
ただ今回はトムがいて、友人もそこそこに作る予定だ。さっき新しい先輩方に目をつけられたことだし、出だしとしては中々いいんじゃないだろうか。
「さて、次は君の番じゃな」
「あぁ、よろしく頼む。」
まぁ、とりあえずそれはいい。今は杖だ。
杖の決まったトムの次は俺の番になる。オリバンダーはカタログを受け取り気分よく眺めるトムから俺に目線を変えて、じっと見てくる。
「あー、なんかついてるか...?」
「いいや、何もついていないとも。だが、しかし...ふむ、これまた難しい」
ボソリとつぶやいて、即座にそばにあったハシゴに乗り、高い位置にあった箱を渡してくる。
素直に受け取って開けてみる。中身は少しぐねっている杖の様だ。手に取り、振ろうと思ったがそれよりも早く杖をとりあげられる。
「これではない。そうじゃろうな。むぅ...」
「...俺には基準がよくわからないんだが、どう難しいんだ?」
「そう、そうじゃな。口にするのはとても難しい。杖を手に入れるというのは、簡単に言えば相性や忠誠を得る行為、つまりは杖が一目惚れするかどうか。儂はその手助けをしているに過ぎん」
オリバンダーは話しながらも杖の入った箱を引き出し、俺に渡す。
とりあえず振ってみるが...ゴン、という鈍い音が天井から聞こえてきた。上を見上げても特に何もない。穴を開けるほどの威力ではないが、何かが真上に飛んでいったらしい。
「これもダメじゃな。儂は杖を知り尽くしておる。故に、その杖がどのような人物に一目惚れするか大まかな予想をつけることができる。これはどうじゃ?」
「製作者の特権みたいだな...すまん」
次に渡されたのは受け取った瞬間に小さく爆発した。とんでもない勢いで拒否するなお前。
若干毛先が焦げてしまったオリバンダーだが、特に気にすることなく杖をしまい、また新しい箱を持ってくる。
「儂はどの杖を誰に渡したか覚えておる。君たちの生まれを予想して渡すこともできるが...君たちは彼女の息子じゃな?」
「彼女を知っているのか?」
「無論じゃ。むしろ今のイギリス魔法界で知らぬ人はいないのではないかの」
「彼女...?」
聞き耳を立てていたらしいトムが驚いて訪ね、それに対して待機していた少年が小さな声で疑問を浮かべる。
俺はまぁ、知っているというのを知っていた。自分が有名であるというのは『私』から俺になって結構わかる様になってきたが、そもそもよろづやがダイアゴン横丁にあるのだ。間近ではなくとも同じ商店街の店は把握しているだろう。
実際、過去に小洒落た持ち手を求めて来たことがあるしな。
「彼女の杖は不思議じゃった。それこそ、儂には作ることはできない。素材も芯も予想がつかぬ...誰が作り上げたのかもわからないと言っておった」
「あぁ、アレはな。本人は合う奴がなかったから仕方なく作ったものだったが」
「そもそもアレを杖と呼んで良いものか、甚だ疑問じゃった。ふむ、しかし合わんな。これは困った」
話しながら渡される杖は悉く合わないらしく、今の一瞬で既に三本も渡され、即取り上げられた。
どうしたものか。俺はシユウと同じではあるからないと言われても納得はするが、今この場でそれを判断するのも少し難しくはありそうだ。
「...そうじゃな。アレじゃ」
「アレ?」
少し何かを決めた様な顔をして、オリバンダーは奥へと進む。今までで1番長い待機時間を得て、持ってきたのは他の杖とは違い金属に入った杖。
「梨の木、17インチ。先々代の残した杖の一つじゃ。残念ながら、芯の情報は読み取れなくなってしまったものじゃが...」
「...これは」
杖をとる。爆発も暴発も起きない。トムの様に、明らかに適合した様な風が巻き起こることもない。
ただ淡々と、俺の手に落ち着いている。何もしない杖ではあるが、それでも何となく、これが俺の杖なのだという認識があった。
「やはり特別なのやもしれぬ。儂はその杖の持ち主にアドバイスを送ることはできぬじゃろう。だが、その杖の持ち主が今代現れたことには意味があると思っておる」
「そうかもな」
まぁ、特に深い意味はないと思うが。とりあえず、時間はかかったが杖を手に入れられたことを喜んでおくか。
Q.そばにいた少年誰よ
A.一般生徒H・P君
本来生き残った男の子君に与えられる杖は存在しておりません。代わりというか、同じ芯の素材で作られたのがトム君の杖です
バタフライエフェクトだと思うよ。うん。何でシュウじゃなくてトムに渡ったかは...なんでじゃ。不思議だなぁ。
そして一般ゲストH・P君。両親どうなったか明記してないけどここではハグリッドと来た模様。トム君的にはハグリッド苦手なのでそんな彼に連れられた少年はほぼ視界から外してる。シュウも興味ないので自分から話しかけにはいかないし、彼もコミュ障かなんかで深く関われないようだ。悲しいね