こちら魔法界ホームセンター 作:そこら辺に転がってる石
初授業です。書きたいことがいっぱいだったんだ
レイブンクロー、ハッフルパフ、グリフィンドール、スリザリン。かつてホグワーツ魔法学校を創設した四人の魔法使いであり、現在も寮の名前として皆に親しまれている存在である。
各寮はそんな創設者たちの性格に近しい物が集められているとされている。基準は組み分け帽子だが、そもそもあの帽子自体創設者の誰かに作られたのものらしいのでだいぶ的確だろう。たまに組分け時即答される生徒がいるが、もしかしたら創設者にとても似ていたのかもしれない。
それぞれの寮は防犯などの理由により、場所はなんとなく全体に認知されているものの、中に入るときには特殊な条件が必要となっている。
一応、別寮の生徒が一切入ってはならない、と言うわけではないらしい。ただまぁ共同生活している先輩後輩同級生がいるのだから常識的に考えてプライベート空間に人を入れないよね、みたいな暗黙の了承がある程度だ。
なのでそれぞれの寮の条件も合言葉や一定の動作を行う、クイズに答えるなど簡単なものになっている。やろうと思えば開心術でもなんでも使って個体識別式とかにできそうだな、と私は思ってたりする。作ったらルシウス君あたりに売れるのだろうか。
「今期は十人か、まだ少ない方かな。とりあえず後10分程度待ってみようか」
さて、長々と寮の話をしたけど別に寮がどうこうというわけではない。強いて言うならみんなスタート地点が違うから大変だよね、程度の雑な思考だ。
授業開始初日一発目。ここ何年かでは久々なことに基礎マグル学が入っていたようで、新入生が席に着いていた。ネクタイの色的にグリフィンドールらしい。
マグル学の教室はそこまで難しい場所には無いのだが、グリフィンドールの寮生からすれば階段を通るのでそこそこ厄介だろう。変な魔法がたくさんのホグワーツ城は慣れないとそう簡単に目的地に着くことができないのだ。
先ほどの十人も、まぁ少ない方である。グリフィンドールでは尚のこと。他の寮生は上級生とかが教えてくれるのが多いが、グリフィンドールはそう言うの聞かないと教えないし教えても冗談で嘘を言うこと多いからな...。うーんいたずらっ子の魔窟よ。
余談だが、トムはすでに教室にいた。一体どこで仲良くなったのか赤毛の少年とメガネの少年と共に一番乗りできたのだ。そら君は慣れてるだろうさ。
「うーん、まぁマグル学に初回授業ってやること少ないからホグワーツ案内にするか。とりあえず待ってる間は質問に答えようか。この教室内うろついても良いから気になったことあったら手をあげて呼んでね。触りたい時も呼ぶように。魔法は禁止。使って爆発して死にたく無いなら杖は置いてきなさいな」
実際爆発はしないが念のため。脅しに怯えた生徒たちが杖を置いて恐る恐るいろんな物に近づいていく。
いやー、ここのところIT革命が凄まじくて教室の中がどんどん機械まみれになっていくこと。こっちも精密的なものをいじる魔法がどんどん生まれること。私一人しか使っていないので公開されてないけどすごいことになってんだから。
...今生徒がこっそりと中に入ってきた。わざとだろうか、入り口近くにいたトムがこそっと注意事項と今やっていることを説明してる。私が注意しないのわかってやってるな!好感度上げも兼ねているだろそれなんて狡猾な!あいつまじスリザリンなのになんでグリフィンドールなんだ。
「先生!これって」
「ん、はいはい、っと。これについて何が知りたい?」
「これ、これは大砲です。こんなの、こんなとこにあるのは危険です!こっちには銃も!」
話しかけてきた少女を見る。栗色のふわふわとした髪が特徴的な女の子だ。すぐに気がついたあたりマグル出身な子だろうか。
とりあえず心配はもっともなのでちゃんと説明する。
「見ての通りガラスケースに入ってるしセーフティーもかかってる。弾は無論抜いてあるしそもそも持ってくるときに魔法を使ったから内部が壊れてんのよ、これ。対応については100年以上前からあるやつだからどっちかといえば歴史的価値のある物としておいてあるよ。弾は抜いといた」
「100年前?」
「私がホグワーツにいたころは玉が込めてある大砲を魔法の杖だと飾ってあったよ。怖いね」
ドン引きしてた。わかる。私もドン引きした。
「銃は危険だけど、マグルだって一般家庭に置いてある国もある。要は管理方法と正しく扱える知識があれば大丈夫って話よ。一応一年の後半で武器関係はやるからそれまでは...まぁ教科書見るぐらいしかできないか。他に質問は?」
「あの、マグル学ってどこまでやるんですか?」
ふむ、どこまでか。難しい質問だ。
一般的にマグルが学校で習う内容全てをやる事はできない。時間的に不可能だし、魔法界で生きるのであればそこまで知る必要は微塵もないからだ。特に途中から選択科目になるのだから教える内容はもっと絞る必要がある。
まぁ、ざっくりで良いか。
「基礎学習が多いかな。読み書きに計算が基本として、マグルの利用する数式や読解術の解説、魔法界において警戒すべきマグルの基本など。ざっくりいえばこんな感じかな」
「読み書きをやるんですか?」
「一般家庭で教わってる子には必要ないかもしれないが、世の中には家庭での基礎学習ができなかった子もいるからね。無論暇にならないよう努力するつもりよ」
イギリス魔法界の基礎教育は基本的に家庭ごとに寄ってしまう。親が教えてくれたり兄弟が教えてくれたり、金持ちであれば家庭教師がつくこともあるだろう。だがそうもいかない生徒もそこそこにいる。
初日によくマグルの知識についての宿題を出しているが、これは大体の全体学力と認知度を図るための調査目的で書いてもらってる。
さて、思ったより手が上がらなかったので栗色の髪の子のみ質問に答えていたが、十分とたたず全員揃ったようだ。なかなかに優秀な方だろう。もしかしたらトムがここへの行き方は伝えていたのかもしれない。あの子はそう言うことしそうではある。
「さて、そろそろ一旦席に着こうか。各々興味が持てそうなものを見つけたのなら上々。興味が持てるものないと楽しく無いもんね」
ゾロゾロと席につき、静かになったのを確認する。
いつものことだが、新入生に声がけする一発目はいつもより少し緊張するな。
「改めて、マグル学教師のシユウよ。苗字はないのでそのままシユウ先生とでも呼んでくださいな。こんな見た目だが我らが校長アルバス・ダンブルドアとは同級生なので結構な歳いってるので勘違いしないように」
教室がざわつく。私が毎年新入生に生徒だと間違えられないのは教員の席に座ってるからだろうな。白髪が目立つので特に印象に残るのだろう。
よく見ると何人かはざわついていないので知っていた可能性はある。トムは例外、栗色の子は当然だと言わんばかりにこちらを見ている。何かで知っていたようだ。
質問しなかった理由はもしや先生だと半信半疑だったのだろうか?もしくは新米で頼りなさそうとでも思っていたのかもしれない。
「最初に言っておくと、初回授業では宿題が出る。紙半分ぐらいの量でいいので自分たちが知っているマグルという存在について書いて、次の授業までに提出するように。誰かがまとめて私に届けても良いよ。それが事実であろうと御伽話であろうと大歓迎なのでなんでも書きな。絵でも良いよ。その場合は数枚出して欲しいけど」
内容に絶望して、最後に安堵していたのが数名いた。多分字が書けない子だろう。こればかりはしょうがない。先ほども言ったがそう言った存在がいる事はわかっていたのだ。
「では授業を始めようか。まず基礎知識としてこの授業では君達に魔法を使ってもらうことはない。理由はいくつかあるが、一番は部屋の中にあるマグルの機械類は魔法にとても弱く、君らのような新米魔法使いでも少し魔法を使うだけで簡単に壊れてしまうような精密機器が多いからだ。魔法界で手に入れるのは大変なので壊れたらガリオン単位の弁償額が出る可能性もあるので気をつけるように」
最近はそこまで高く無いのだが、わかりやすさって大事だろう。
「とはいえ一年二年は基礎学力向上用に総合的分野の勉強がほとんどだ。読み書きや計算などの簡単なことが多い。もしかしたら退屈になるかもしれないけど、まぁそこはすまんな。一応私がそう言うの嫌いだからできるだけ楽しくやろうとは思う。マグル学についてはこんな感じだけど何か質問があれば遠慮なく手をあげて」
手が上がった。トムだ。
うーむなぜだ。いや何故ってことはないんだけども。彼の頃は義務教育ではなかったし。
まぁ授業中に子供扱いするほどバカでは無いつもりなので普通に当てる。
「ほいそこの白い子。できれば名前を言ってから質問どうぞ。わかりやすいんでね」
「トムです。素人質問で恐縮なのですが、過去のマグル学は選択科目の一種であり、一年から行う義務教育ではなかったと聞いています。なぜ変動があったのですか?」
「怖い質問の仕方するね君」
素人質問云々めっちゃ怖いんだけど。普段言う側だけどさ。
うーむ、しかしこれはトムの純粋な質問っぽいな。実際のところ暇潰しと商売繁盛が主な理由だったんだけども流石にそれ言うのはちょっと...。ここは建前でどうにか切り抜けておこう。
「マグルは過去、魔法族とほぼ同じかそれ以下の文明を辿っていることが多かった。魔法という特殊技能を持ったこちらとしては取るに足らない存在だと軽視する傾向があったので、マグル学と言うのも同様に重視されることなく、間違ったことが多く教えられてたことある」
さっきの大砲が杖然り、こちらに入ってきていた情報が相当古かったりもした。マグル生まれが指摘することもなかったのが不思議ではあるが、よく考えれば子供が指摘できるわけもないか。そんなわけないと否定されて終わってたのでは?
「それは危険なのよ。先ほどの銃だって、おそらく高齢の人に聞けばプロテゴ...えー、バリア的な守る呪文で防げると思ってる人が多いんだけど、実際はほぼ不可能よ。着弾までに的確に丈夫な呪文を唱えられるのは多分、アルバス君でも不可能じゃ無いかな。この辺の知識の差は未来に起こるもしもを防ぐことができると思わないかね?」
まぁ何時ぞやかルシウスを脅した時に気づいたが、やっぱ魔法族銃を防げないよ。あからさま銃口を向けてきた人物を警戒する時間が持てている状況ならできるかもしれないが、早撃ちや狙撃への対応はまぁ難しいだろう。いやこれ知ってても無理なパターンか?
まぁ、うん。知ってるに越した事はないよね!
「別にマグルと喧嘩しているわけじゃ無いが、身を守る手段というのはいくつ覚えていても損はない。君らの授業の中に『闇の魔術に対する防衛術』と言うのがある通り、戦わない可能性の方が高いが万が一何かあった時に身を守れるような知識はあるに越したことはない。マグル学っていうのは、魔法族よりも数百数千倍も数の多いマグルという存在に対する知識を得ることで、自らの身の安全を確保するための対策を練られるようにする学科である」
数の暴力って怖いよね。多く見えてそんなにいない魔法族がいくら魔法を使おうと、人間の個体数が多いマグルには最終的負けるだろう。魔法なんてのはそんな状況では良い勝負に持っていけるだけなのだ。
「あとはあれよ。魔法使いとして生きる選択肢を捨てる子ってのもまぁ、存在はしているのだ。今後マグルとして生きる場合に何も知らないのは大変だからね。その辺にも配慮した上での義務よ。なんとなくわかった?」
「えぇ、ありがとうございました」
納得したのか、それともそもそも回答には興味なかったんだろうか。まぁどちらでも良いか。
ずいぶん長く語った気がする。義務云々に聞かれたのはだいぶ久々だ。実際そうした当の本人ってこともあって語りたい理由はそこそこある。たとえ暇つぶしと商売繁盛のためがメインだったとしても。
「さて、他に聞きたいことがあるのは...はいそこの子」
「ハーマイオニー・グレンジャーです。ダイアゴン横丁でよろづやにいたのはご兄弟ですか?」
「残念あれも私だ。私にのみ許された自作分身魔法があるから私ってそこらじゅうにいるのよ。今は学校内に一人とダイアゴン横丁に一人、ホグズミードにもよろづや本店があるからそこに一人、後あっちとこっちと。基本的に記憶も全て同じ私だから街で聞きたいことできたら聞いても良いよ」
びっくりしていた。うーんいつものだな。
ホグワーツの道案内だれがしてるんだろう。原作にはゴーストに聞いたと書いてあったけどゴーストだって最初から最後まで教えたりしてるわけじゃ無いだろうし、じゃあ上級生か?
グリフィンドールの上級生ってそんな教えるか?嘘とか平気で吐きそうだよな
と言う思考に基づいてできる初日大量遅刻する新入生とそれを援護するトム君。シユウはああ言ってたけど好奇心稼ぎとかではなく純粋に可哀想なので道とかを教えてあげてただけです
おかげでメガネ君に赤毛君は遅刻を一切せずに済んだのだとか