こちら魔法界ホームセンター   作:そこら辺に転がってる石

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レガ主メンタル強いからああなりたい。切実に


まだサビのない綺麗なカッター

「マグルの世界にも、魔法に近いものってあるんですか」

 

 そう問いをかけてきたのは、私の生徒ではなかった。

 

 というと変な風に聞こえるが、よーするに目の前で質問してきた彼は私の請け負っているマグル学を選択していない生徒ということだ。

 思ったよりも悪戦苦闘な授業内容は、前と比べたらマシという程度に生徒たちから認識されつつある。都合のいいサボり科目として選んでいるのもそこそこいるが、少しずつ受講生が増えてきているのが現状。増えてくれるのは助かるけどなんだかなぁ...。

 

 とはいえ、前と比べマグルに対しての認知度が上がったのも確か。一教師としてだけでなく、マグルに詳しい教師として生徒からの質問が来ることも珍しく無くなってきた。 

 

「ふむ...魔法に近い、ていうのの定義にもよるかな。進んでいる方向が全く違うっていうのもあって...突き詰めれば近いことならいくらでもありそうだけど」 

「では、こちらと同じものを追求していたりするのでしょうか。例えば...そう。不老不死とか」

 

 特殊な質問をするなぁ。少し興味が出てきたので、少年の特徴を見る。

 ふむ...まぁイケメン?人気が出そうな顔つきだ。流石に学年まではわからないけれど、入学したてってことはなさそうだ。緑色のローブを着ているところを見るにスリザリンの生徒だろうか...狡猾な寮生が不老不死について質問した?おやおや?

 

 まぁ邪推か。そもそも追求するのは悪いことじゃないしな。今のところ、魔法界にも完全なる不老不死のナニカは存在していないわけだし。

 

「不老不死ねぇ、うーん...直球に聞くけどなりたい?」

「それは、無論なりたいですよ。魔法使いなら一度は願うのでは?」

「まぁ思う人は多いだろうね。その気持ちは否定しないけどねぇ...マグル世界での不老不死となると少し難しいな。一応、そう信じられていたものがあるよ。なんなら現物があるからちょっと待ってね」 

「えっ」 

 

 驚愕するスリザリン生徒を尻目に、棚を漁る。

 確かこの辺に...あったあった。わざわざ準備室まで来て質問してくれたおかげで現物を見せられる。

 

 よくよく考えてみれば、こういった双方にとってのファンタジーから切り出した方が子供は喜ぶのだろうか。危険性も伝えられるし一石二鳥なのでは?

 これ幸いと聞いてきた生徒もいることだし試してみるか。

 

「はい不老不死の薬」

「これが...この銀色の液体がそうなんですか?」

 

 棚から取り出したのは、少しチャプチャプと波打っている銀色の液体。ユニコーンの血にも似ているけれど、あれはそもそも魔法界では取引が禁止されているし、使い方を誤ると呪われてしまうのでここにはない。

 というかそもそもここはマグル教科の準備室なのであるわけがないよな。

 

「一応そうよ。過去にある国の帝がこれを飲んでたね。他にも何人か革命家やらが飲んでいたという噂があるかな」 

「これは一体、どうやって作るんですか?先生」

「辰砂っていう宝石を加熱するのよ。ちなみに辰砂ってのはこれ。別名賢者の石ね」

「賢者の石ですって⁉︎」

 

 ガタリ、と立ち上がりそうな勢いで彼が驚く。まぁそれも仕方がない。

 

 魔法界における賢者の石とは、それこそ不老不死の代名詞ともなる実在する石だ。黄金を生み出す力を持ち、命の水と呼ばれる不老不死の元となる水を生成する力を持っている錬金術の集大成。現状、魔法界に存在する中で一番不老不死に近いものを作れる物体と言っても過言じゃないだろう。

 ニコラス・フラメルという人物がかつて作り、存在しているのも彼が所持しているものだけだと言われている。私は実物を見たことはないけれどアルバスの友人らしいことは小耳に挟んだ。

 

「まぁ落ち着きな。あくまでマグルにおける賢者の石よ。割と昔は魔法界とマグル世界の区別が今ほど明確になかったから、魔法界の知識が一部言い伝えられてることが多いのよ」

 

 先ほどの賢者の石然り...そもそも魔法という存在然り。

 煙のないところに火は立たない、なんていう噂話についての諺がどこかの国にはあるらしいが、それと似たようなものでマグルの世界でファンタジーとされている魔法は、もともとこっち側の住人のしでかしや交流で知れ渡ったんじゃないかと思っている。あくまで想像だし、本当はどうかわからないけれど。

 

 でも実際、マグル世界にはこちらの世界の用語がいくつか知れ渡っていることが多い気がする。なおのことなんでこっちがマグルについてここまで知らないのかちょっと疑問。

 

「と言うわけで、実際の名前を言えばこの液体は水銀っていうの。昔マグルのとある帝国ではこれを不老長寿の薬として飲んでいたって言うのがあるけど、個人的に研究したら毒の方が強いかな。もちろん、飲んだところで不老不死になれるわけでもない」

「なら、先ほどの賢者の石も」

「水銀が不死の薬ならそれを作ることのできる石は賢者の石に違いない、っていう思い込みの名前よ。別名って言った通り、今はあまりそう呼ばれないかも知れん」

 

 すっごい残念そうな顔するね君。半分期待してたかな?

 

「まぁご覧の通り。マグル世界にも不老不死を願い研究していたものがいたものの、実際のところは全然。御伽話とかのフィクションはあるけど...むしろ魔法界の方がユニコーンや長寿の魔法生物がいるだけ不死に近いんじゃないかな。魔法もあるし」

「不老不死になれる魔法があるんですか?」

「んー、不死の定義にもよるけど...さっき行った魔法界の賢者の石は延命措置という意味ではとても優秀じゃないかな。昔行った東の国には一回だけ不死の妙薬が月からできたとかなんとか聞いたけどあれはもう山の上で燃やされてないし...分霊箱は違うしなぁ」

「分霊箱...?それは一体」

「聞かれても正直よく知らないんだ。別の...アルバス君はこう言う話題嫌いだったし...あぁ、そう。スラグホーン先生だったかな。割とそう言う情報に詳しいと思うよ」

 

 なんか魂を物に入れて命のストックを増やすって言う魔法だった気がする。なにぶん分野が違うし、そもそもその行為自体認められる物ではないからほとんど知らない。そもそも禁止されている魔法な気がするし。

 魔法薬学担当だけど、スラグホーン先生って結構いろいろと詳しいし、ついでに生徒にも優しい先生で有名…有名?らしいので教えてくれるでしょう。スリザリンの寮監だしね。

 

「スラグホーン先生なら親しくしているので、後で尋ねてみます。...ちなみにどのような魔法なのか、ほんの少しでも知らないんですか?」

「うーん、まぁあんまりいい方法じゃないってことだけは覚えてるよ。文字通り身を裂く行いだとか。そこまでしてなりたいかと聞かれると...君はどう?」

「...どうでしょう。目的があればやるかも知れません」 

「随分素直だねぇ。割と気に入ったから助言をしてあげよう」

 

 んんっ、と咳払いをして喉の調子を整える。ちゃんと真面目に指導しないと教師失格だからね。

 

「教師として助言をしよう。不老不死に憧れるのはいいが、賢者の石のように破壊されたら終わる半永久的な不老になるのなら兎も角、永久の時を得るようにならないほうがいいぞ。なった一時は優越感に浸れるだろうが、1000年もすれば意識は石と同等。精神は常に発狂することになるだろうからね。永久の時間ってものはそんな程度で、無価値なものよ」

「…はい。覚えておきます、先生」

「よろしい。それでこれは私としての意見だから適当に聞き流していいけど、たかが数十年生きた程度で不老不死を望もうなぞ烏滸がましいにも程がある。矮小な屑にも劣る人間如きが得るには出過ぎた真似故に、愚かしさに反吐が出る」

「...え?」

「さ、そろそろ次の授業が始まりそうなんじゃないかな。さぁ行った行った。私も次の授業の準備があるし、君も遅れるのは困るでしょ?」

 

 混乱した生徒を諭すと、時間に気がついて少し慌てながら教室を出ていく。

 なんか余計な事喋った気がするがまぁいいや。




Q.誰やこいつ
A.オッサンの子孫
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