機動戦士ガンダムSEED INFINITY   作:吉良/飛鳥

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ケバブには激辛ソースこそが最強!Byイチカ      僕は甘口ソースが良いなぁByキラ


PHASE19『宿敵の牙~アンドリュー・バルトフェルド~』

 

レジスタンス組織『明けの砂漠』のメンバーによるザフトへの攻撃は要らぬ犠牲を出しただけで終わり、バクゥを退けたイチカとキラは無益な戦いに虚しさしか覚えなかった。

イチカとキラの厳しい物言いに『明けの砂漠』のメンバーが何を感じたか、其れは分からないが少なくとも彼らはまだアークエンジェルと共に戦う心算であるというのは間違いなさそうだ。

 

 

「さて、予定地のアラスカ基地から大分離れた場所に降り立った事でアークエンジェル内部の物資は大分ギリギリの状態になってるから、本日は物資の補給の為に買出しに出ようと思います!と言うか、買い出しに出るから。異論は認めぬ決定事項!」

 

「決定事項ならそもそも異論唱えようがないと思うのは僕だけかなイチカ?」

 

「キラ、其れは突っ込んじゃいけないところだ――ってのは兎も角として、今回の物資補給は簡単な事じゃない。タッシルの街が廃墟と化しちまった事で其処での物資補給が出来なくなっちまったからな。

 タッシルがダメとなると、後はこの辺で物資補給が出来る場所はバナディーヤの市場なんだが……唯一の補給場所にはザフトの基地がありましたとさ。タバネさんが言うんだから間違いない。」

 

「ザフトの基地がある市場って、補給命がけじゃないかよ……でもやらないとなんだよな。」

 

「このままじゃアラスカまでは持たないからな。

 けどまぁ、フラガの旦那は兎も角、少なくとも俺はザフトに身元が割れてないだろうから市場に潜入するのは難しくないと思う……キラは、アスラン経由で素性が割れてるかもだからアークエンジェルに残った方が良いかもだけどな。」

 

「そうかも知れないけど、だからと言って僕が君だけを市場に行かせると思う?」

 

「いや、思わないけどな。」

 

 

其のアークエンジェルの本日の任務は物資の補給だ。

アルテミスとユニウスセブン、第八艦隊との合流で物資の補給が出来たとはいえ、其れはあくまでも本来の目的地であるアラスカに向かう場合には充分な量であり、予定外にアフリカに降り立った事で食料をはじめとした物資が足りなくなって来たのである。

補給だけならば街に買い出しに行けば良いだけの話なのだが、先のザフトの報復攻撃によってタッシルの街が廃墟と化してしまった事で、物資の補給が出来る場所はザフトの基地があるバナディーヤの市場だけになってしまったのだ――情報源がタバネであるのは最早言うまでもないだろう。

 

物資の補給であれば人手は多い方が良いのだが、今回に限っては敵地の市場に赴くだけに少数精鋭で向かうのが定石であると同時に、非戦闘員は連れて行くべきではないのでイチカとキラでバナディーヤの市場に向かう事になった。

本来はアークエンジェルの一員ではない彼等はザフトに身元が割れている可能性は低く、市場に潜入するにはうってつけと言えるだろう――キラに関してはアスラン経由で身元が割れているかもしれないが、其れでもザフト全体でその情報が共有されているとは考え辛いだろう。

こうしてイチカとキラはバナディーヤの市場に向かう事にしたのだが、『明けの砂漠』のカガリが『土地勘がある奴が一緒の方が良いだろう?』と同行を申し出て来た――昨日の事があったので、少しばかり気まずい雰囲気が流れたモノの、土地勘がある者が一緒の方が良いのは事実なので、イチカとキラはカガリの申し出を受ける事にし、三人でバナディーヤの市場に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動戦士ガンダムSEED INFINITY PHASE19

『宿敵の牙~アンドリュー・バルトフェルド~』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バナディーヤの市場は砂漠にあるとは思えないほどに賑わっており、食料をはじめとした物資が豊富に取り揃えられて賑わっていた――市場だけでなく、市場近くに展開された料理の屋台も賑わいの一端を担っていると言えるだろう。

 

 

「ワニ肉とかなんともアフリカって感じだけど、グラム単位でみると鶏肉よりも遥かに安いか……おっさん、ワニ肉を1kgと卵を十個、其れから乾燥野菜を各五つずつくれるか?」

 

「はいよ~~……値段は……細かいのは面倒だから全部まとめて○○で良いぜ。」

 

「おぉ、気風が良いねぇ?」

 

 

そんな市場でイチカは早速食料を補給していた。

生の食材は多くはないので生は割高なのだが、其処は他の食材も一緒に大量に買い込む事で、市場特有の『端数切捨て』の値段を実現させ、結果的に僅かではあるが出費を抑える事に成功してた……買い物スキルもイチカは高いようだ。

 

 

「アルファ米(10kg)を五袋と、肉や野菜の缶詰に各種調味料、其れから……」

 

「……移動にレジスタンスのジープを使ったのは正解だったな。」

 

 

キラの方も順調に物資の補給を行い、結果として大荷物になったので市場の外で待機していたレジスタンスのジープに積み込んで一度アークエンジェルまで運んでもらい、運んだらまた戻って来てのピストン作業で物資の補給を行っていた。

そして三度目のピストンを終えたところで昼食に良い時間になったので、イチカとキラはカガリの案内でケバブの屋台で昼食を摂る事に――アークエンジェルクルーの昼食に関しては、イチカが炊飯器をタイマーセットして、大鍋に『キーマカレー』を作ってきたので問題なしだ。

 

 

「此処のケバブは絶品なんだ。特にこのチリソースがお勧めだぞ。」

 

 

カガリはバナディーヤの市場に来るのは初めてではなく、ケバブも何度か食べているらしく、イチカとキラにお勧めの食べ方を教えていた――こんがりと焼けたケバブにチリソースの組み合わせは確かに美味しいだろう。

 

 

「ケバブにチリソースだと?戯けた事を。ケバブには此のヨーグルトソースこそが一番だろう?」

 

 

だがそこに割って入ってきた男が一人。

ダンディーなモミアゲにサングラス、そして派手なアロハシャツと中々に怪しさが爆発しているのだが、不思議とイチカもキラも警戒心が湧かなかった――其れだけ男がフレンドリーだと言う事が出来るのかもしれないが。

 

 

「チリソースとヨーグルトソース……確かにどっちもケバブには良く合うだろうけど……だが俺は此処で敢えてさっき購入した『ハイパーDEATHスカーレッドソース・ヘル&ヘル』を試すぜ!!」

 

「待ってイチカ!『地獄と地獄』って其れは聞くからにやばい!」

 

「早まるな少年!其れはコーディネーターとかナチュラルとか関係なく、人が食べてはいけないモノだ!だったらなんで売ってるんだって話になるけどな!」

 

「お前、死ぬ気か!?」

 

「この程度の辛さで死ぬ訳ねぇだろって。んじゃ、たっぷりかけていっただきま~す!!」

 

 

だがイチカはカガリのお勧めも男のお勧めもガン無視して危険な香りしかしない『真っ赤なソース』をケバブにたっぷりかけてかぶり付き、そして其のまま極普通に食べて行く。

見るからに辛そうなソースをかけたケバブを普通に食べるイチカにキラ達も少し固まってしまったモノの気を取り直して食事を始めた――カガリはチリソースを、男はヨーグルトソースを掛け、キラは半分にチリソース、もう半分にヨーグルトソースを掛ける折衷案にしていた。

 

 

「時に少年達、最近この近くで連合とザフトの戦闘があったってのは知ってるか?

 いやぁ、俺も聞いた話だから正確なところは分からないんだが、なんでもあの『砂漠の虎』が終始押されっぱなしだったって事らしいな……なんでも連合のモビルスーツの一機が換装型ってトンデモない機体らしい。」

 

 

此処で男はフレンドリーな調子は崩さずに、最近の砂漠での連合とザフトの戦闘に関しての話題を振ってきた。

此れにはイチカとキラ、カガリも少しばかり虚を突かれた――知っているどころか、この三人は其の戦闘の当事者なのだから。

 

 

「換装型のモビルスーツって、そんなにトンデモないモノか?」

 

「武装を換装する事で単騎であらゆる戦局に対応する事が出来るモビルスーツってのは、其れだけで簡単にパイロットの特性に合わせたモビルスーツになるって事だ。

 本体は統一規格で量産可能ながら、武装に関してはパイロットに合わせて個別に選ぶ事が出来る訳だからねぇ……数で勝る連合にそんなモノが持ち込まれたら此の戦争は一気に連合有利になるだろうな。」

 

「そんな、たった一機のモビルスーツでそんな事……」

 

「いや、それほどのモノなんだ、換装型と言うのはな。

 とまぁ、こんな事を君達に話したところであまり関係がなかったか……楽しい食事の時間にする話でもなかったな。……で、危険物を食した少年よ、何故平然としてられるのか!?」

 

「其れはアレだよ、俺が激辛大好き人間だから。」

 

「果たしてそれで済ませていいのか悩むぞ俺は……」

 

 

換装型のモビルスーツ――ストライクが連合の手に渡れば確かにそれはザフトにとっては嬉しくない事ではあるだろう。

此度の連合の試作型モビルスーツの強奪によって、プラントはモビルスーツの開発では連合に先んじていたが、モビルスーツ用のビーム兵器及び特殊装甲に関しては後塵を拝す事になったのが明らかになったのだ。

強奪した機体を解析し、同様の装備はこれから開発されて行くだろうが、タダでさえ数では圧倒的に上回っている連合が『量産型のストライク』を開発したら戦局は一気に連合に傾くだろう――バックパックの換装だけでパイロットの特性に合わせた機体に出来る換装型は、モビルスーツの開発コストの面でも優秀であるのだ。

ザフトも換装型である『グラディエーター』を強奪したとは言え、バックパックの開発はゼロからのスタートとなるので、既に各種バックパックが揃っているストライクのデータを使える連合には後れを取るだろう。

それはさておき、男は半ば強引に話題を転換して来たのだが……

 

 

「見つけたぞ砂漠の虎!」

 

「貴様は此処で死ね!」

 

 

突如としてイチカ達のテーブルに突撃して来る集団が現れた。

彼等は反コーディネーター主義の過激派『ブルーコスモス』のゲリラ達であり、『コーディネータの支配からこの地域を開放する』と言う名目の下に襲撃して来たのだ――そして、彼等は男の事を『砂漠の虎』と呼んだ……そう、男の正体は『砂漠の虎』こと、アンドリュー・バルトフェルドだったのだ。

 

突然の事に驚いたイチカ達だったが、イチカとキラは咄嗟に椅子を投げつけてゲリラを怯ませ、怯んだ隙にイチカは例のソースを口に含み、其れを毒霧状態で食らわせて目潰しを行う。

更にキラがテーブルを投げつけ、カガリがスモークボムを投げつけたところで一行はその場から離脱したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

ブルーコスモスの襲撃から離脱したイチカ達は、『助けてもらった礼』としてバルトフェルドの屋敷に案内されていた――そこでカガリはバルトフェルドの恋人であるアイシャにドレスに着替えさせられ、イチカとキラはバルトフェルドからコーヒーを振る舞われていた。

 

 

「最近の自信作のオリジナルブレンドなんだが如何かな少年?」

 

「香りとコクは申し分ないけど苦みがやや強い……ブラックよりはミルクを入れた方が良いかもな――キラはどう思う。」

 

「……苦い。砂糖とミルクが欲しい。」

 

「此れはまたなんとも辛口な評価だね。」

 

「割と舌は肥えてる方なんでね……そんで、わざわざ俺達を屋敷に招待して何の用だい、砂漠の虎さんよ?」

 

「ふ、気付いていたか……まぁ、さっき派手にその名前呼ばれちゃったからねぇ……だが、あの中で其れを聞き逃さないとは大したモノだな少年?伊達に連合のモビルスーツパイロットはやっていないか。」

 

 

そんな中、イチカが大胆に切り込むと、バルトフェルドもまた飄々と切り返した上で突如として銃を向けて来た。

イチカとキラ、そしてドレスに着替えさせられたカガリは丸腰なので銃を向けられたら動く事も出来ない。

 

 

「君達も兵士だろう?

 だからこそ問いたい事がある……この戦いをどうやって終わらせれば良いと思う?敵を滅ぼせば、其れで終わるのか?」

 

 

そして突然の問い。

『この戦いをどうやって終わらせれば良いか?』……其れは誰にも答えは出せないだろう――仮に誰もが賛同出来る『此れだ』と言う明確な答えが存在するのであればそもそも戦争など起きないのだから。

 

 

「この戦いを終わらせる方法は分からないけど、この世から戦争を根絶する方法ならある――一人残らず人間を滅ぼせば良い。

 人間が存在するからこそ戦争は起きる訳で、逆に言えば人間さえ居なければ戦争は起きえない……序に言うなら人間が滅びれば環境の破壊も無くなって世界は真の意味で平和になるかもだぜ。」

 

「ふっ……確かに一理あるな少年。」

 

 

その問いにキラは答える事が出来なかったが、イチカは持論を展開し、バルトフェルドは其れを聞いて少し満足そうな笑みを浮かべると銃を下した――そしてバルトフェルドはカガリに『其のドレスはプレゼントする』と言うと、イチカ達を屋敷から解放した。

連合のモビルスーツのパイロットであるイチカとキラは此のまま屋敷に繋ぎ止めておいた方が有利であるにも関わらずだ。

 

 

「俺達を開放するって、どう言う心算だアンタ?」

 

「なに、俺は元々お前さん達を拘束する気はサラサラ無かったからねぇ?……お前さん達と話せて楽しかったよ――次は戦場で会おう。」

 

「ったく、アンタみたいのが連合にいてくれたら良かったのにな。」

 

 

バルトフェルドの目的はあくまでもイチカとキラと接触する事であり、二人をどうこうする心算はもとよりなく、目的が達成された事でイチカとキラ、序にカガリも解放したのだった。

次に会うのは戦場になるが、その時は間違いなく互いに一切の容赦のない命の遣り取りとなるのはなるのは間違いないだろう。

 

アークエンジェルに帰還したイチカとキラは、次なる戦闘に向けて己のモビルスーツをメンテナンスするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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