機動戦士ガンダムSEED INFINITY   作:吉良/飛鳥

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50話か……50と言えば?Byイチカ      経験値半分?Byキラ      五重の塔かしら?Byカタナ    それは『ごじゅう』違いじゃないか?Byアスラン


PHASE50『平和な世界で~In einer friedlichen Welt~』

ヤキンドゥーエの攻防が一区切りついたところでエターナルのラクスがザフトと連合の両軍に対して停戦を申し入れ、ザフトと連合も『此れ以上の戦闘は無意味』と考えていた事で其れを受け入れて停戦交渉を行った末に『ユニウス条約』が締結され、戦争は一先ず幕を下ろしたのだった。

 

そうして世界には平和な時が訪れたのだが――

 

 

「此処は……ガチで知らない天井だ。」

 

 

ヤキンドゥーエ攻防戦にてキラと共にクルーゼのプロヴィデンスを撃破し、しかし戦場から姿を消したイチカは見知らぬ場所で目を覚ました。

其処は少し高級そうな装いの部屋で、イチカが寝ていたベッドも上質のモノであり、部屋にある調度品や絵画も一流のモノだった――イチカが目を覚ました部屋で此れならば、此の部屋が存在している家はより高級なモノだろう。

 

 

「やぁ、目を覚ましたかな?」

 

 

其処にやって来たのは黒い長髪が特徴的な男性だった。

切れ長の目には理知的な光が宿り、全体的に整った容姿と長身もあって、其のまま男性モデルとしても通用しそうであるが、その目の奥にはとても強い意思を秘めている、そんな感じの男性だった。

 

 

「……アンタは?」

 

「ふむ、先ずは自己紹介と行こうか。

 私はギルバート・デュランダル。プラント議会の議員だ。」

 

「プラントの……俺を此処に運んで来たのもアンタなのか?」

 

「あぁ、その通りだ。

 ミラージュコロイドステルスを搭載した小型艇であの地に赴き、君を連れ出した……中々に命懸けの事ではあったけれどね。」

 

「……どうして俺をあの場所から連れ出したんだ?」

 

「……タバネ博士との約束だからね。」

 

「アンタ、タバネさんの知り合いなのか!?」

 

「知り合いどころか、彼女は私の恩人だよ。

 君もコーディネーターなのだから知っているだろうが、コーディネーターは遺伝子調整を施されている事で、遺伝子的な相性が良くないと子供を残す事が出来ない。

 私と妻のタリアも遺伝子的な問題があって子を成す事が出来ず、其れを理由に破局仕掛けたのだが、其れを阻止してくれたのがタバネ博士だったのだ。

 彼女はコーディネーターの遺伝子的な相性の問題をあっと言う間に解決して、私とタリアの間に子をなす事を可能にしてくれた……だからこそ、私は彼女に並々ならぬ恩義があるのでね……彼女から君を連れ出してくれと頼まれたら断ると言う選択肢は存在しないのだよ。」

 

「コーディネーターの根本的な問題を解決するとか、タバネさんマジでハンパねぇな。」

 

 

男性の名は『ギルバート・デュランダル』と言い、デュランダルはタバネに恩があり、その恩に報いるべくタバネの頼みを聞いてイチカをあの場所から連れ出したのだった。

まさかの展開にイチカは驚いたが、逆にプラントに来たのはイチカにとっては良い事だった――あの場所に留まっていたら回収された後にオーブに戻り、其のままオーブ軍の軍人として働いていただろう。

だが、ウズミの自爆を受けて己の戦う根本的な理由を見失っていたイチカはオーブの軍人として其の勤めを全うするのは少しばかり難しかっただろう――だからこそ、プラントで自分を見つめ直す時間が出来たと言うのは大きいと言えるだろう。

 

 

「不自由はさせないから必要な事があれば何時でも言ってくれたまえ……私が居ない時にはタリアに言えばいいさ――今は、ゆっくりと身体を休める時だと思うからね。」

 

「……かもな。」

 

 

こうしてイチカは暫しプラントで暮らす事になった。

そして其の間にデュランダルは新たなプラント最高評議会の議長に就任し、先の大戦でザフトを離脱したカタナ、カンザシ、イザーク、ディアッカのザフト復隊の手続きを行い、更にはプラント間の物資の流通の円滑化も図り、プラントの経済力も強化して行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動戦士ガンダムSEED INFINITY PHASE50

『平和な世界で~In einer friedlichen Welt~』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デュランダルの家で過ごしていたイチカは、世話になる代償として家事の手伝いをしていたのだが、イチカの家事スキルの高さにはデュランダルの妻であるタリアも驚かされた。

掃除をすれば塵一つ残さないパーフェクト、子守をすれば赤ん坊が良く懐き、料理をすればタリアのプライドがバッキバキにされるレベルの料理を作って見せたのだから、デュランダルが驚くのも当然と言えるだろう。

 

そんな感じでデュランダル邸で過ごしていたイチカは、デュランダルに頼んでプラントのシャトルを使わせて貰ってオーブへとやって来ていた。

元々中立国であるオーブはプラント、連合分け隔てなく入国を許可しており、大戦の最中もプラントからのシャトルを何度か受け入れていた事もあったが、戦争が終わった現在では、戦争中よりも入国は容易となっており、イチカが乗ったシャトルも無事にオーブの空港に入港していた。

 

 

「連合との戦いで壊滅状態になったのはオノゴロ島だけで本土は無事だったのか……国を守る為に自爆したのがオノゴロ島だけだったってのは最低限の犠牲で済んだと、良しとすべきなのか、それとも国を焼いたと批判すべきか……分からねぇなマジで。」

 

 

オーブにやって来たイチカが真っ先に向かったのはオーブ軍だ。

イチカはMIA判定を受けていたので、オーブ軍もイチカが現れた事には驚いたが、イチカが身分証を提示し、更にはイチカ本人でなければ知りえないアークエンジェルと共に歩んだ日々を話した事でイチカ本人だと認定され、イチカはオーブ軍の内部に大戦後初めて入ったのだった。

更にイチカはロビーで『トダカ三佐とハルフォーフ一尉と面会させてほしい』と、トダカとクラリッサへの面会を申し入れており、スタッフが二人の本日の予定を確認したところ、トダカもクラリッサも非番で時間が取れたのでトダカとクラリッサはイチカが居るオーブ軍の応接室へと其の姿を現していた。

 

 

「お久しぶりです、トダカ三佐、ハルフォーフ一尉。」

 

「久しぶりだが……生きていたのかオリムラ三尉……MIA判定をされた事を知って、正直生存は絶望的だと思っていたのだが……生きていてくれたか。」

 

「お前がそう簡単に死ぬとは思っていなかったがな……だがしかしだ、生きていたのならば連絡の一つ位寄越さんか馬鹿者ぉ!!」

 

「すんません、通信端末壊れちゃってプラントで修理中なんすよ……連絡出来たらすぐにしてますって――特にハルフォーフ一尉はゲーム仲間ですからね。」

 

 

トダカとクラリッサはイチカがMIA判定を受けた事を知って、イチカの生存を望んでいただけにイチカがこうして生きて自分達の前に現れた事は嬉しい事であった――イチカのクラリッサに対する物言いには若干の突っ込みどころがある気がするが。

 

 

「お前の生死が不明な中でも私はゲーム内でレベルアップをしていたからオンラインの共同プレイでも相当に強い部類に入るぞ私は……だが、其れは其れとして、お前は自分の無事を伝える為だけにオーブにやって来たと言う訳でもないのだろう?」

 

「……流石は鋭いですねハルフォーフ一尉。

 単刀直入に言います、俺をオーブ軍から除隊させて下さい。」

 

「「!!?」」

 

 

そんな中で突如投下されたイチカからの爆弾――よもや己をオーブ軍から除隊させてくれと言って来るとは、其れこそ神様や仏様であっても予想していなかった事であるだろう。

 

 

「オーブ軍を去ると言うのかオリムラ三尉……何故だ?」

 

「……オーブ解放戦で、ウズミ代表は連合の侵略を喰い止める為にオノゴロ島を自爆させた――其れはオーブが有するマスドライバーを破壊する事と、マスドライバーを破壊する事でオーブが連合の干渉を受けないようにするってのは理解出来る。

 だけど頭で理解するって言う事と感情で納得するってのは全く別の話なんすよトダカ三佐……ウズミ代表はオーブの未来の為にベストじゃなくともベターな選択をしたってのは頭では理解出来ても、オーブを守る為に戦って来た軍人としては感情が納得しない。

 だから俺は一度オーブを離れてみようと思ったんです……オーブを離れた事で見えるモノもあると思いますから。」

 

「其れは……確かにな。」

 

 

だが、トダカとクラリッサはイチカの理由を聞いて納得していた――イチカの言った事は自分達も思った事ではあったからだ。

イチカはオーブ軍にとって替えの利かない有能な軍人であったのでトダカもクラリッサも本音では引き留めたかったのだが、イチカの目を見て引き留める事は諦めた――イチカの目には強い決意の光が宿っており、その意思をひっくり返す事は出来ないと確信したからだ。

 

其れから必要な手続きを行いイチカはオーブ軍から除隊され、其れをデュランダルにメールで伝えていた――イチカはオーブ軍からの除隊が済んだ後はザフトに入隊する事を考えていたのだ。

オーブで護るべきモノを失ってしまったイチカは、プラントで護るべきモノを見付けようとしたのかも知れないが。

 

 

「久しぶりに来たんだから、少しオーブの街を探索してみるか。」

 

 

オーブ軍の除隊処理が済んだイチカはオーブの街中に繰り出して、久しぶりの日常を楽しむ事にした。

レトロなゲームが多数存在しているゲームセンターで格ゲー百連勝を達成し、カラオケ店ではオンラインの曲別ランキングと総合ランキングを更新し、街中のストリートバスケットボールでは『ボール拾ってください』と頼まれた事に便乗して『俺からボールを奪ってみな!』と言うとストリートバスケキッズをドリブルでゴボウ抜きしてからのダンクシュートを決めて見せた。

 

 

「そう言えば、デュランダルさんはキラは今はマルキオ導師の所に居るって言ってたっけ。」

 

 

久しぶりのオーブを楽しんでいたイチカは、デュランダルから聞いていたキラが現在居る場所――オーブのマルキオ導師の家に向かっていた。

 

そうして到着したマルキオ導師の家は、大戦後に孤児院となり、戦争で親を失った子供達がナチュラルもコーディネーターも関係なく暮らしており、キラはフレイとラクスと共に其処で暮らしていたのだ。

ただしイチカは孤児院の中には入らずに、遠巻きに孤児院の様子を眺めていたのだが。

 

 

「儚く散った光が、僕等を今呼び覚ます~~」

 

「フレイお姉ちゃんお歌上手~~!」

 

「昔々、あるところに剛腕アメリカンと言う一人のアメリカンが居ました。

 時計の針が六時六分六秒を刺した時、六人の子供が生まれました。

 長男:鉄腕アメリカン、次男:毒腕アメリカン、三男:錯乱アメリカン、四男:複眼アメリカン……と、此処まで考えましたがネタが尽きてしまいました――如何したモノでしょうかキラ、フレイ?」

 

「いや、知らないよ。」

 

「其れは……ゴメン、アタシも分からない。」

 

 

其処ではフレイが子供達に歌を歌って聞かせたり、ラクスが謎の昔話(?)をしていた……ラクスの昔話は即興の自作だったようで途中でネタが尽きてしまっていたが。

イチカはそんなキラ達の様子を見ると声を掛ける事もなく其の場から去った。

オーブ軍を去ったとは言え、今度はザフト軍の兵士として戦後も戦う道を選んだ自分が、戦う事を止めて平和に暮らしているキラ達の前に現れるべきではないと思ったのかも知れない――自分の生存を伝えようかとも思っただろうが、既に己の生存はオーブ軍には伝わっているので、其処から伝わる可能性があり、場合によってはタバネが伝えるだろうと思い自分で伝えるのは止めたのだ。

 

 

「(そう言えば、姫さんオーブに居て良いのか?姫さんはプラントの平和の歌姫って事だからプラントに居ないと拙いと思うんだが……まぁ、プラントに戻ったらギルバートさんにその辺の事も聞いてみるか。

  ……キラ、お前は戦争中に随分と辛い思いをしたんだ、だから此の平和な世界で平穏に暮らせ……もうお前は戦わなくてもいいんだ。)」

 

 

イチカは其の場を去るとプラント行きのシャトルが出るオーブ空港へと向かい、そしてシャトルでプラントへと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

イチカがオーブを訪れていた頃、デュランダルはプラントの議会で熱弁を揮っていた。

新たに最高評議会の議長に就任したデュランダルは、此の日の議会で議題に上がっていた『先の大戦でザフトから離反した兵士の処遇』に於いて、多くの議員が『ザフトに反旗を翻したのだから軍規に従って処刑するのが妥当だ』との意見を上げたのに対し、デュランダルは『未来ある若者を其れだけの理由で処刑すると言うのは如何なモノか』と異を唱え、更に『確かに彼等はザフトを離反したが、だがプラントに対して攻撃を行った訳ではなく、寧ろプラントの防衛に尽力してくれた上に戦争終結に一役買ってくれた――ザフトの正規兵であれば受勲モノだっただろう。』と言って、三隻同盟に参加したサラシキ姉妹、イザーク、ディアッカの処刑を議長権限も持ってして回避させていた。

 

とは言えなんの処分もなしと言う事も出来ないので、カタナとディアッカは赤服を剥奪して一般兵となり、カンザシは三カ月の再研修、イザークは赤服を剥奪された上でカンザシと共に三カ月の研修となったのだが、母親のエザリアが現議会のナンバー2の国防委員長である事を考慮して一般兵への降格とはならずに、研修終了後は艦長クラスの『白服』として一部隊を任される事になった――議会のナンバー2の息子が赤服から一般兵に降格になったと言うのはイメージ的にも良くないので、この処置はある意味で仕方ないモノであったと言えるだろう。

 

因みにアスランは終戦後にオーブに亡命し、カガリ専属の護衛となり『アレックス・ディノ』を名乗っているので此度の議題からは除外されていた。

 

 

 

そして――

 

 

「今日から此処が俺の暮らす場所になるのか……頑張ってザフトの一員になるんだ、絶対に!」

 

 

此の日、ザフトのアカデミアに一人の少年が入学した。

黒い髪と赤い目が特徴的な其の少年は、オーブ解放戦の際にイチカによって妹を救われたシン・アスカだった――オーブ軍を去ってザフトへの入隊を決めたイチカと、ザフトのアカデミアに入学したシン。

共にオーブの出身ながらザフトに入る道を選んだイチカとシン、此の二人の道が交わるのはそう遠くはないだろう。

 

ともあれ、現状世界は平穏無事であった。

 

 

「暫しの平和を謳歌したまえ人類よ……其の平和は二年しかないんだからね。」

 

 

だが、宇宙にある何処かの場所で、タバネは一人そう零していたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued 

 

 

 

 

 

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