危険極まりないダンジョンでソロを強いられるのは間違っているにちがいない 作:深夜そん
予想外です。
日刊ランキング1位まことにありがとうございます。
評価、感想励みになります。
誤字報告もありがとうございます。お手数おかけします。
前書きをお礼タイムに使ったので、
謝罪タイムは後書きに回します。
◇
雨が降っていたのかもしれない。
ひどく生温かい雨だ。
それなのに、すっかり熱が奪われていく心地がしていた。
「まだ息があるなら聞いておけ」
痛まないところなどありはしない。
その中でも顔と腹、背中もか。
「思い上がったガキが粋がるからこうなるのだ。
お前はクズだ。お前はカスだ」
あとは、そうさな。
「お前は、何の価値もないゴミなのだ」
胸が一番、痛かったのかもしれないな。
◇
息苦しさで目が覚めた。
うつ伏せで枕に顔を押し付けるかのようにして眠っていたらそうもなるだろう。
横向きに寝返りを打つ。
起き上がる気にはならなかった。
身体中がだるい。
女神さまは先に起きたのだろう。
しわくちゃの寝巻きがベッドの横に転がっていた。
俺の服装はというと、眠る......いやあれはもう気絶だな、気絶する前と同じものだった。
よほど寝苦しかったのか汗でしっとりとしていて不快だ。
もう仕方あるまい。
不本意ながらベッドから起き上がった俺は自らの着替えと女神さまの寝巻きを手に部屋を出た。
浴室へと向かう道すがら、ダイニングでモソモソとパンを齧る女神さまに会い挨拶をする。
「おはようございます。昨日はお手数をおかけ致しました」
「おふぁょー。ふっふぉいおもふぁっふぁ」
飲み込んでから喋りなさい。
すっごい重かったんですね。
いや俺を運んだのはあなたじゃなくてあの少年でしょうよ。
駆け出しであろうからステイタスも未熟であろうに。
俺の身体はさぞかし重たかったことだろう。
「助けてくれたあの少年にはちゃんとお礼を言いましたか?」
「んく。子ども扱いしないでくれる?
ちゃんとお礼くらい言えるわよ」
それはなによりである。
「では名前は聞いてくれましたか?
俺も直接彼に礼をしたいのですが」
「あっ」
そんなことだろうとは思っていましたよ。
まあいい。
ギルドで張ってりゃそのうち会えるだろう。
善は急げと云う。
今日の予定は決まったようなものだな。
どのみち、まだ本調子とは言い難いことであるし。
「ロン。このパン美味しくないわ。硬い」
言い忘れてたけどそれスープに浸けてふやかして食べるやつです。
風呂から上がったらお作りしますね。
なんというか、女神さまはもういつも通りであった。
◇
「おい聞いたか。
あの"武鬼"さんに命狙われてるやつがいるらしいぞ」
「おう。何やらかしたんだか知らねえが、まったく命知らずな野郎だ。
見ろよ"武鬼"さんのあのお顔。
ひどく冷めた眼をしていやがる。
実家でよ、鶏を絞め殺すときの爺さんがあんな目をしていたのを思い出すぜ」
お前ら俺のこと何だと思ってるの?
ちょっと人探してるんですけどって窓口で訊いただけなんですけど?
冷めた目も何もまだ眠いだけなんですけど?
今日も今日とてギルドは盛況である。
朝も早くからダンジョンに挑もうという冒険者たちでごった返していた。
俺はというと、今日は珍しくも私服である。
鎧姿でもなければ武器を携えてもいない。
つまりダンジョンに挑む気がないということだ。
俺がここに来た目的は単なる人探し。
昨日、気絶した俺をホームまで担いでくれた心優しい少年を探すためにやってきたのである。
ここにいる皆が、俺が私服なもんだから最初は誰だかわからなかったようである。
さもあらん、俺がここに来る時はいつも必ず完全武装であったからな。
顔は知ってても印象が違いすぎると人物の同定ができないなんてのはさほど珍しいことでもあるまいよ。
しかし、それがまた皆の興味を引くようであり、ヒソヒソ声も今日はいつもの数割増しだ。
針の筵かここは。
あの少年の真っ白な髪に真っ赤な眼。
特徴としては非常にわかりやすい部類だ。
見つけるのはそう難しいことではないだろうと安易な考えで来てはみたものの。
俺が人探しをしてるって、ただそれだけのことでこうも目立つものかよ。
なるべく目立たないようにと少し引いたところで窓口からの返答を待っていると、耳の長いメガネの受付嬢が顔面蒼白でこちらに走り寄ってくるのが見えた。
もうすでにイヤな予感がしている。
「ああああアライネス氏!
そ、その子を見つけてどうなさる、なにをなさるおつもりなのでございましょうか?
何か粗相をしましたか!?そんな子じゃないはずなんですが!
いや知りませんけど!
まったくこれっぽっちも知らない子なんですけれども!」
全員がこっちを見た。
目立たないのは無理みたいですね。
嗚呼エイナさん。
あなたもか......。
ていうかこれもう知ってますって言ってるようなモンでしょ。
「落ち着いてくれ。
どうもこうもない。
ただちょっと世話になってな。
お礼をしたいだけだよ。
知ってるんなら会わせてくれないか?」
ざわっ
どよめきが起きる。
「あの"武鬼"さんが"お礼"参り......ッ!?」
「マジで何やらかしやがったんだそいつは!?」
「よく見ろお前ら。
"武鬼"さん今日は何も持っちゃいねえぞ!」
「素手、か。楽には死ねねえってことだな......」
お前らほんといい加減にしてくんない?
これじゃあ埒が明かんな。出直すか?
いつのまにか俺の周りからひといなくなってるしな。
そそくさとギルドから逃げ出すやつもいるしな。
血の雨が降る、じゃねェよダンジョンの中でだけだよ降らせるとしたら。
営業妨害ってやつになるのかなこれ。
眼前のエイナさんはといえば「たとえ刺し違えてでも......!」みたいな目をしつつあるのは気のせいですかね。
なにこれ俺が悪いの?
相変わらずといえば相変わらずなんだが、うんざりしつつある時であった。
「あれ?エイナさんと......
ああっ昨日の!もう身体は大丈夫なんですか!?」
ギルドの入り口から、白髪の少年がてくてくと歩み寄ってきたのは。
おお少年、いいところに来てくれた。
本当に本当に、いいところにやってきてくれた。
君のおかげですっかりとはいかないが身体は快調だよ。
それはそれとしてこのひとたちの誤解を解いてくれないか。
特にエイナさんがそろそろ覚悟キメそうなんだ。
早まったことをする前に......
「べ、ベルくんお願いだから逃げてーーー!」
この世に生まれ落ちて19年。
母と女神さまとあとついでに魔物以外の女性から初めて頂戴したハグはとてもいい匂いがしました。
とてもいい匂いがしましたが俺の気分はすこぶる優れません。
◇
「昨日はありがとうな、少年。
俺はクベーラファミリア所属、ロン・アライネスだ。
堅苦しいのは苦手でな、ロンと呼んでほしい。
君の名を聞いてもいいか?」
「あ、えっと。
ヘスティアファミリアのベル・クラネルです。
よろしくお願いします」
ベルと名乗った少年は、なんだか小動物みたいに縮こまりながら言った。
おそるおそるといった様子で俺が差し出した手を握り返してくれた。
普段からビビられ慣れている俺にはわかる。
この子は俺の名にビビってるのではなく、俺の醸し出す高位冒険者としての雰囲気にビビっているようだと。
俺のことを知らないほどに冒険者に成り立ての新米なのだろう。
それがちょっと嬉しいってどうなの俺。
変な勘違いがないだけでこんなに救われるもんなの。
いやでも結局ビビらせちまってるよほんとごめん。
ここはギルドの談話室。
俺の対面にちょこんとベル少年、そして半泣きのエイナさんが座っていた。
あれ以上に騒ぎを大きくしたくなかった俺は伝家の宝刀を抜いた。
俺はそれを力ずくと呼んでいるのだが、とりあえず俺にへばり付いていたエイナさんを軽く引き剥がして小脇に抱え、ベル少年に談話室についてくるよう促したのである。
エイナさんは「ヒェッ」とか言いながら気絶したが知ったことではない。あんたが悪い。悪いったら悪い。
なおそれはそれで大騒ぎになったがコラテラルダメージだ。
ベル少年は俺の奇行にビビり散らかしながらもついてきてくれた。
俺がやると俺の顔を見た途端にでも再び生死の境を彷徨うはめになるからと彼を促しエイナさんを叩き起こさせ、無理矢理着座させてようやく今に至るのである。
我ながら強引な手を取ったものであるが、ニゲテー!ワタシノコトハイイカラー!などと奇声を上げるエイナさんにベル少年ですらも若干ヒいていた。
ある意味では彼女の名誉も俺の汚名によって守られた形と言えるのではないだろうか。
なんだか頭が痛くなってきたが、ともあれ。
これでようやく誤解を解くことが出来そうだ。
「さっきはいきなり悪かったなエイナさん。
だが話をちゃんと聞いてほしい。マジで。
まずハッキリさせておきたいのは、俺はベル少年に危害を加える気はないってことだ。
勝手にひとりで盛り上がって死線を潜り抜けるかのような顔をして俺に抱きついてきたあんたの暴走を止めるにはもうああするしかなかった。
あの様子から察するにこの子はあんたの受け持ちか?
入れ込むのは構わないんだが、この子がいい子だってわかってんならもっと信用してやってくれ。
俺の悪名が高いのは知っているし誤解されるのも慣れているが、そんなやつにちょっかいかけるほどこの子は愚かだと思うのか?思わんのだろ?
いいか、もう一度言うぞ。
俺は本当に世話になった礼をするつもりでこの子を探していただけなんだお礼参りとかそういう意味で呼び出したわけじゃねェんだよわかるかわかってくれ頼むから」
「は、はいぃごめんなさぁい!」
「な、なんかごめんなさい......」
何故かベル少年も謝った。
ちょっと語りに熱が入りすぎたかな。
熱意の甲斐もあって伝わりはしたようでなによりだ。
本当に、こんなにひとと話すのはいつ以来か。
先日のロキファミリアの面々との会話でさえ俺史上では稀有なものであったというのに、今日はそれ以上だ。
何の記録更新しようとしてんだよ俺は。
ともあれ。
次は俺の番だな。
パンッと膝を叩き立ち上がった。
「ベル少年は謝らんでいい。なんで君が謝ってんだ。
そしてエイナさんの謝罪はしかと受け取った。
そも、騒ぎが大きくなったのは俺の普段の行いのせいでもある。
同業者のみならずギルド職員ですらもドン引きするような行いのせいでな。
俺はもう気にしていない」
「......アライネス氏」
「そのうえで俺からもあなたに謝罪する。
強引なことをして本当にすまなかった、エイナさん。
女性に、ましてやエルフであるあなたに気安く触れたことを心から申し訳なく思ってる。この通りだ」
そして、メチャクチャなことをしてしまったエイナさんに深々と頭を下げた。
エルフじゃなきゃ別にいいってモンでもなし、いくらなんでもありゃねェわな。
冷静さを欠いた俺の落ち度だ。
エルフという種族は高潔な種族である。
気安く肌を触れさせることを禁忌とするほどに。
俺はヒューマンだから関係ねェじゃん、とはいかない。
他者の誇りを傷つけるような行いに対しては相応の誠意を持った謝罪が必要だ。
どのような誹りも受けるつもりではあるが、できればお手柔らかに頼みたいな。
特にファミリアに累が及ばない形で決着をつけさせてほしいものであるが、ムシのいい話か。
「頭を、上げてください。アライネス氏」
困惑した様子の声が頭上からかかった。
ケジメがつくまで上げる気はない。
「ええっと......想像していたよりも、よく喋るんですね?じゃなくて。
私も多大な勘違いでご迷惑をおかけしたことですので、お互い悪かったということで今回は手打ちにしませんか?
というか初めに、だ、抱きついたのは私のほうですし。
そもそも私ハーフエルフですし」
「気持ちはありがたいけれどそれでは俺の気が済まん。
ベル少年への謝礼に来たというだけでこんな騒動を起こしたていたらく。
なんらかのケジメはつけさせてほしい」
「ま、まいっちゃったなぁ......」
自分でもちょっと頑固だとは思うんだけれど、これでは話は平行線となるだろう。
エイナさんは真面目だし優しい。
だが、その優しさに甘えていては俺の価値も、彼女の価値も貶めることとなるだろう。
もはやわかりやすく誠意を示すためにも出すもん出すしかなかろうか。
世の中の大抵の事象は金で解決できるからな。
俺はつい昨日このバベルでそれを学んだところだ。
神ですら金には逆らえない。
いや最低かよ俺。
それは最終手段にしよう。
「あ、そうだ」
ぽつり。
ここで、おろおろするばかりであったベル少年は思いついたとばかりにエイナさんに呼びかけた。
「前に言ってたあれ、ロンさんに頼むのってどうですか?
エイナさんからロンさんへの、その、罰みたいな形で」
なんだ?
何の話をしている?
「べ、ベルくん本気で言ってるの?
このひとは......いやでも、思っていたより悪いひとではないようだし」
どんだけ悪いひとだと思ってたんですかね。
というか本当に何の話?
「口を挟んで悪いんだけど話が見えない。
とはいえそれが罰になるなら甘んじて受ける。
言ってくれ」
ともあれせっかくベル少年が出してくれた膠着を打開する案なのだ。
俺としてはもはやそれに乗るしか手はない。
エイナさんは言うか言わまいかしばし逡巡した様子を見せたのち、ベル少年のなにやら決意に満ちた顔を見てか、切り出した。
「えっと、では。冒険者ロン・アライネス氏。
私はあなたにお願い......罰って言わなきゃあなた納得しないわよね。頑固みたいだし。
あなたへの罰として、こちらにいる冒険者ベル・クラネルへの教導を命じます」
「......あ?」
一瞬、何を言われたかよくわからなかった。
教導だと?
俺が?ベル少年を?
阿呆のようなツラをしているであろう俺を見てエイナさんは少し笑った。
ようやく少しは柔らかい表情をしてくれたと思えば俺の阿呆面もそう捨てたもんじゃないかと思った。
「事情を説明するとね。
ベルくんは、まだ冒険者になってから一週間そこそこの超がつく新米冒険者なんです。
この子が所属しているヘスティアファミリアって、聞いたことないでしょう?実はこのファミリアも最近興ったばかりのもので、所属する冒険者もベルくんひとりしかいません。
普通のファミリアなら先輩冒険者についてダンジョンでの立ち回りとかを実践的に学ぶ機会もあるけれど、この子にはそれをしてくれる先輩がいないんですよ。困ったな、って話を以前してたんです。
ギルドから働きかけてみて、教導してくれる冒険者を探してみたんですがこれもなかなか見つからなくって」
なるほど、なるほど。
そういう事情か。
まあわざわざよそのファミリアの眷属を鍛え上げてやろうなんて物好きはそうそういねェわな。
せいぜいがサポーターとして雇うくらいか。
大抵ゴミみてェな扱いされるらしいけどな。
いやしかしな。
教導ったってこの俺がな......。
「だけどねベルくん。
なんとなく察してると思うんだけど、この人ちょっとワケアリよ?」
いや思ってても本人の前でそれを言うかよ。
まあいい。
これはベル少年も関わる話だ。
知っておいたほうがいいことだろう。
「ベル少年。
先程はあえて。そう、あえて名乗らなかったんだが。
新米といえどももし知ってたらヒかれると思ったから名乗りたくなかったんだが。
俺の二つ名は"武鬼"。レベル6だ」
「えええ!?」
ほおら後ずさった。
もう苦笑いしか出てこない。
そうです私があの"武鬼"なんです。
"武鬼"を悪口みたいに言うのやめよ。
「レベル6!?
そんなすごいひとがなんで街中で倒れてたんですか!?」
いや驚くところそこかよ。
面白い子だな。
エイナさんも「え!?」みたいな顔しないでくれ。
あれは俺も忘れたい痴態なんだ。
「事情があってな、それはいいだろもう。
で、だな。
その反応からするに俺の悪名を知らないと見える。
俺はな、端的に言えば誰ともつるまない冒険者として有名だ。
もうこの際だからぶっちゃけるがソロで毎日毎日毎日毎日ダンジョンアタックを繰り返す狂人呼ばわりされてるような冒険者だ。
まあそれにも事情はあるんだけれどそれもいい。
知っておいてほしいのはな。
俺がマトモなやつとは思われてないってことだよ」
自分で言うのは初めてかもしれないな。
俺の精神衛生上、自らそれを口にするのは避けてきたからな。
自分で自分のことマトモじゃねェやつだとか言いたくないからね普通。
俺の何のトキメキも生まないクソみたいな告白を聞いたベル少年はキョトンとしている。
ひょっとしてまだ俺の異様さに気づいてないのかな。
あとどれだけ自分を蔑めば気づいてもらえるのかな。
あれ、気づいてもらうのが目的だったっけこれ。
ベル少年は頭を捻っている。
なんて言ったものかな、と考えているらしい。
そして、考えた素ぶりを見せたわりにはあっけらかんと言った。
「その、ロンさんの悪名?はよくわからないんですけど。
でも僕は、ロンさんは悪いひとじゃないと思います」
その赤い眼にとても優しい色を宿して。
「だって、さっきエイナさんに謝っていた時のロンさんはとても真摯だったから。
ちゃんと誰かを気遣えるひとなんだって思ったから。
自分を顧みられるひとなんだって思ったから。
だからきっと、悪いひとなんかじゃないと思います。
あ、ごめんなさい!生意気なこと言っちゃって!」
慌てて、頭を下げてくる。
またもや阿呆みたいなツラを晒しているであろう俺をよそに、エイナさんはベル少年を慈しむような目で見つめていた。
次いで彼女の目はこちらにも向けられる。
それはこう語っていた。
ね?こういう子なんです。
なるほど、なるほど。
あんたが入れ込む理由は理解した。
女神さまは俺のことをお人好しだと評したが、なに。
本当のお人好しってのはこういうやつのことを言うのだろう。
しばし呆けていた俺であるが、頬を張って喝を入れた。
思いの外デカい音が鳴ったので二人してビクリとしていた。
「だからなんで君が謝ってんだって。2回目だぜ」
こうまで言われてこちらがウダウダ言うわけにもいくまい。
そもそもケジメをつけたがっていたのは俺自身であるからして、ベル少年に否やがないことがわかった以上は俺の言うべきことはもう決まっている。
「わかったよ。ベル少年、エイナさん。
このロン・アライネス、その罰を甘んじて受けよう。
全身全霊を尽くすことを約束する」
なんというかな。
これはベル少年への謝礼であり。
エイナさんに対しての贖罪でもある。
なのに、こうも喜ばしい気持ちでいるのは悪いことな気がしてならない。
本当に、それでいいのだろうか。
「やったぁ!
第一級冒険者のひとに教えてもらえるなんて、僕、すごく嬉しいです!」
「うんうん。
よかったわね、ベルくん」
はしゃぐ少年。
微笑む女性。
それがとても眩しく見えた。
ーー戦いの中以外でなら、あんたが楽しめる何かがあればいいなって。
ああ、なるほど。
これは友情と呼べるものではないかもしれないが。
「我が主神クベーラの名にかけて約束は違えない。
どうかよろしく頼むよ」
いいんですね。女神さま。
「なんてお呼びしたらいいですか?
先生ですか?師匠ですか?
あ、マスターとか!?」
「初めに言ったろう。
大それたもんじゃない。
ただの、ロンでいい」
差し出した手は、今度はしかと握られた。
◇
その夜、俺は夢を見た。
今日はいいことがあったから、いささか浮かれていたのかもしれない。
「自分が価値を見出して買ったものを捨てるだなんて、人間というのはよくわからないわね」
目はろくに見えない。耳も遠い。
しかし、その声音とその出所から、おそらくは女性であろう誰かが、ボロ切れのようになった俺を見下ろしているのがわかった。
見ねばならぬと思った。
拝まねばならぬと思った。
必死に、見上げる。
霞んでいてもわかる。
そこには女神のように美しい女性が立っていた。
「あなたは才気に溢れているわ。
ただその使い方を少し誤っただけ。
ほんの些細なボタンの掛け違えがあっただけ」
その女性は小瓶の蓋を捻るとその中身を俺に振りかけた。
「磨けば光る宝石みたいな子なのにね。
彫刻師の腕が悪いのがいけないわ」
温かい。
痛みが引いていく。
しかし、一番肝心なところはまだじくじくと痛んでいた。
「わたしはね。
あなたを磨くために下界にやってきたのよ」
突然のことに放心している俺を見て、彼女は妖しく笑った。
「ねえ、あなた。
わたしのコレクションに加わってみない?
価値ある宝物に、なってみる気はないかしら?」
痛みなんてもう、どうでもよくなっていた。
前書きに記しましたように謝罪タイムです。
感想が私のキャパを超えています。
あまりにも予想外です。
某森で似たようなことしてた頃と同じノリで投稿を始めたので完全にナメておりました。
もちろん全て目を通しております。
感想欄見た私が逆に笑っております。
一件一件に返信したいところなのですが、かないそうもありません。
答えたり釈明したりしたほうがよさそうなことに関しては後書きで答えていこうかと思います。
・ステイタスの表記がわかりづらいぞ
A. まことに申し訳ございません。
普通はどれくらい伸びるものなのかわからなかったのでどうとでも取れるよう上がった後の結果のみを記載する形を取りました。
なお今後ともこのどうとでも取れるような表現はたぶん多発します。
開き直るなとおっしゃられるかもしれませんが、私のことですからたぶんやります。
・原作の暗黒期のこと調べるといいよ!
A. 助言ありがとうございます。
一応設定してはいるんですが描写できるかは謎です。
その他感想いただきました皆様、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願い致します。