ぼっちちゃんを雌にするつもりが雌にされた元男(♀)の話 作:樽薫る
♯ばっど こみゅにけーしょん
突然の自分語りをしよう。
なんやかんやあって、ここ……“ぼっち・ざ・ろっく”の世界に生まれ直した。
元の世界と変わらない文明レベルなものの、なぜそれがわかったかなんて簡単なことだ。
近所に“後藤ひとり”が存在したのである。
しかもピンク髪の幸薄そうな少女、いやまだ原作ほどでもなかったけど。
ともあれ、私は『ぼざろに生えた』系の転生者、しかも幼馴染のパターンの奴。
となれば、その承認欲求モンスター、共感性羞恥心の権化、つまりは“
かわいいし、おっぱい大きいし、かわいいし、かわいいし、あとおっぱい大きいし。
見てろよォ、テメェらァ、フッフッフッフ!
大張ねこみ15歳、ひとりを乙女にしてやんよォ!
───などと申していたのも束の間……そう、賢明な私は気づくのである。
今生……
しかしまぁ、私が女であるのはわかったが、ひとりを恋する乙女にしてしまってもいいのだろう……?
ひとりは元々“総受け体質(当社比)”だ。
つまり、ひとりは“受け”で、そして私は元男、ということは“攻め”に決まっている。
相性グンバツじゃないっすかぁ!
私が女なのは良いが……別に、ひとりを雌顔にしてしまってもよいのだろう?
ということで、私は後藤ひとりと出会った齢5歳の時より、イケメン力を鍛えつつ、ひとりに懐かれるように努力に努力を重ねた……重ねたのだ。
そして15の春、無事にひとりと同じ高校に通うことに成功し……まぁ余裕だったけど。
ほら、ひとりはその、お勉強が、ね……?
私が付きっきりで教えてあげたけどさ……フッフッフ、ひとりは私がいないとダメだなぁ~。
……コホン、脱線したが……ともかく、私はひとりと10年間ずっと一緒なのである。
家も近所だし、高校も一緒だし、このままひとりを私に依存させて……とってもかわいい恋する乙女(♀)にしてやろうってんだよ!
「あ、ねこみ、ちゃん……」
「なぁにひとり♪」
聞きなれたボソボソっとした声に、私はそちらに笑顔を向ける。
そこには原作通り、何も変わらないぼっちがいた。
眩しいってならないもんか? なるでしょ普通、こちとら白銀の髪をもつ美少女よ?
喜多ちゃんとだってタメ張れるレベルの美少女ですよ!?
距離感か! 距離感が悪いのか!? 昔から抱き着いたり手を繋ぐのを習慣化させているからおかしいのか!?
こほん、錯乱してしまいました。
……茜色の夕日が差す道、“手を繋ぐ”二人分の影を伸ばし、私たちは歩いている(良い声で)。
なにこれロマンティック……夕日に照らされる私とひとり、イソスタ映え間違いねぇんじゃない?
ちゃんと道路側を歩いてるあたり、私ってスパダリ力高いんじゃねぇか?
「す、少し、い、言いたいことがあって……」
「!」
ひとりから報告だ~! なんだ!? 結束バンドがとうとう結成されるのか!? ギターがいなくて困ってるとか!? なんでも相談乗るぞ!
なぜなら私はスパダリ、超幼馴染を超えた超幼馴染2ゥ!
まったく、ひとりちゃんは私がいないとダメだなぁ、依存しちゃってるなぁ~♪
「ば、バンドを組んで、もうすぐ初ライブ、なんだけど……」
「え」
───なんで、そこまで進んでからの報告なんです……?
「あ、ど、どうしたのねこみちゃんっ、か、カバン落としてっ……ね、ねこみちゃっ」
え……な、なんでなんで!? ハゥアッ!?
最近、クラスメイトとの付き合いが多くて一緒に帰れてなかったし、ひとりを蔑ろにしてると思われた!? この私がッ!? そんなことするわけないのにっ!?
やだ、凄い辛い。メンタルが、メンタルがやられるぅ……。
心という器はひとたび、ひとたび、ひびが入れば二度とは、二度とは……。
「ね、ねこみちゃっ……そ、その……」
「そっか。おめでとうひとり、それはそれとしてライブ行きます。チケット買います!」
「あ、うん……!」
◇ ◇ ◇
私、後藤ひとりには幼馴染がいる。
家が近所で、同じ幼稚園に通っていたというところから、ずっと私の傍にいてくれる人。私と違って友達もいるし、付き合いもあるのに、なぜか私に構ってくれる。
一緒に歩いている時の、一本結いの長い銀髪が風に揺れるのを見るのが好きで、それを思ってなんとなく歌でも歌ってしまいそうで……。
ちょっと変なとこもあるけど……あれはクリスマス。
『突然呼んでおいてなんだが、クリスマスにはシャケを食え!』
とかなんとか言いながら、クリスマスにシャケ炒飯を作ってくれたのは良い思い出、かな……?
そんな色々してくれるねこみちゃんだから、私は自分がしっかりしてるってとこ見せた……見せた……。
「あぁ! またぼっちちゃんの眼が死んでる!!」
「いつもじゃ?」
「さっきお酒臭いお姉さんと、ぼっちちゃんのファン二人が来てくれた時は頑張ろうって顔してたのにぃ!」
結束バンドのメンバー、虹夏ちゃんやリョウさんの声が聞こえる。
嬉しい、お姉さんも、路上ライブを見てくれた二人も来てくれた。
それは確かに嬉しい。嬉しいんだけど……。
うぅ、てるてる坊主、肝心な時に効果を発揮してくれない……。
「やっぱり私の友達は全員来れないみたいですね」
「そっか……」
喜多ちゃんが残念そうな顔をする。
わ、私のライブデビューが……ゆ、勇気出してねこみちゃん、誘ったのに……。
「お~、またびしょ濡れの人、入ってきた」
「そりゃそうでしょ。ありがたいありがたい」
「あれ、大張さん……?」
―――えっ!?
「うわ後藤さん俊敏!」
「ね、ねこみちゃん……!」
「ひとりぃ!」
ねこみちゃん、びしょ濡れだ。
「よかったぁ、これたよぉ」
満面の笑みを浮かべるねこみちゃんが、駆け寄ってきて“いつも通り”私に抱き着こうとするけど、止まる。
やっぱりびしょ濡れだからかもしれない。
踏み込んでくるタイプだけど、こういうところは昔からちゃんと線を引いてくれる。
「……楽しみにしてるからね。ライブさ」
「あ、うん……!」
……なら、マンゴー仮面も、ゴミ箱もいらない。
ねこみちゃんに見せるんだ。私を……。
◇ ◇ ◇
クソッ! わかってはいたけどガッデム台風!
てか私も天気予報見ときゃ、結束バンドが結成されたかぐらいわかるでしょうがぁ!
うへぇ、下着までビショビショ、気持ち悪りぃ……。
まぁでも生結束バンドのメンバー見れただけヨシ!
ていうかひとりが自腹で私にチケットくれたのに、行かない選択肢はないでしょぉよ!
……はて、なにか忘れてねぇかい?
「君ぃ、ぼっちちゃんの友達ぃ?」
「えっ、はい……」
廣井きくりさんですね。そうですね、酒くさっ! いましたねそういえば、酒くさっ!
あ、後ろに店長さんとPAさんもおるやん……音戯アルトさんやん!
「へぇ、君かぁ……えへへへっ」
「え、なんですか……」
なになに、なんで私のこと知ってんですか怖い! ひとりったらなんか言った!?
「……おっぱい大きいね」
「おいこら」
きくりさんの頭を、店長さんが後ろから拳二つを万力のようにして締め上げる。当然、叫ぶきくりさん
いや大きいけども、さすが酒パワー。初対面の人にそれ言うってすごいっすよ。逮捕されるもん。
「ご、ごめんな。コイツ酔ってるから」
「あ、はい見ればなんとなく……」
とりあえずお互いにつつがなく自己紹介をする。
別に特筆すべきことは無いでしょう。
お互いに結束バンドのメンバーの関係者であることを話し、彼女がこのライブハウスこと、聖地『STARRY』の店長だということを言われたぐらい。
「にしても、なるほど……」
伊地知星歌さんこと店長が私の足元から頭の天辺までを見て、頷く。
なになに、私の美少女っぷりにやられちゃったってわけですか!?
「ん~」
首を傾げられた。なぜ、ホワイ!
「あ、始まるよ~」
あ、ひとりがステージに……うっ涙腺が!
くぅ、あのひとりがなぁ、かわいいなぁ……!
ライブが終わったら
終わりのないオフェンスでもいいよ~!
◇ ◇ ◇
私達、結束バンドは“静まり返ったライブハウス”で演奏を始めた。
明らかに練習通りの音じゃない。
虹夏ちゃんはドラムがもたついちゃってるし、喜多さんもリハでできてたはずの場所ができてない。
リョウさんは虹夏ちゃんと息が合ってないし……。
いつもと全然違う。みんな、勢いが完全に……。
さっきお客さんが言ってた『知らない、興味ない』って言葉のことを……。
「っ……」
曲が終わるけれど、やはり沈黙。
次の曲に、いかなきゃいけないのに、もう三人共、いや私も……戦意が。
「ひとりっ……!」
聞きなれた声が、聞こえた気がした。
ふと、あの日の路上ライブを思い出す。
『今日の前にいる人は、君の闘う相手じゃないからね』
『敵を見誤るなよ?』
客席を見る。
最前列で私を見上げるあの日、ファンになってくれた二人。
一番後ろには、店長とPAさん。
そして、それで……その箱の真ん中にいる。銀色、私の……。
ねこみちゃんの瞳が、不安そうに……揺れる。
「ッッッ!!!」
あの娘がいないと、私は無力だ。でも、だからあの娘に見せたい。
それでなにかが変わる。変わる気がする。それだけで良いから……。
その
「!!?」
うるさい、心臓。でも……!
「っ!」
虹夏ちゃんが、リョウさんが、喜多さんが、音をかき鳴らす。
◇ ◇ ◇
おかしい……おかしい、おかしい! おかしいおかしいおかしい!!
ひとりがここで覚醒するのは知ってた。知ってたけど、変だ。
「っぁ……!」
私と目があった瞬間、ひとりがギターをかき鳴らし、そこから結束バンドが曲を披露する。
しっかりと“見たことがある”はずなのに、心臓がおかしい。
脳もおかしい。
「ぁっ、ぁ……!」
『あのバンド』を終えて、『ギターと孤独と蒼い惑星』、ひとりの瞳が、時たま私を捉える。
身体を揺らしてギターを掻き鳴らすひとりと目が合う度に、心臓がバクバク音を鳴らして、脳がチカチカとわからない反応をする。
ひとりの長い前髪から、揺れるたびにチラリと覗くいつもと違う、ギラついた鋭い瞳が、
別に、ひとりのギターを聞くのは初めてじゃないはず。
なのに、なんか変だ……。
視線を下げてひとりがかきならすギターに視線をやると、その細い腕に、ギターを掻き鳴らす手に視線を奪われる。
「っ~♥」
視界がチカチカと点滅し、下腹部、ヘソの下あたり、体の内側が疼く。妙な感覚。
曲も終盤、喜多ちゃんの声が耳に響き、でも変わらず
「 聞いて! 聴けよ!! 」
聞いているし聴いてる。
だが、そちらに気を取られることをそれを許さないとばかりに、ひとりの音が
脚が震える。心が震える。瞳も脳も震える……。
―――ダメ、壊される。
「 ぶちまけちゃおうか 星に! 」
◇ ◇ ◇
ライブも終わって、他のバンドの方々も帰って……このあと打ち上げ、らしいです。
ちょっと楽しみ、疲れたけど……。
そういえば、ねこみちゃん、途中からおかしかった気がする。
凄い聴いてくれてるのはわかったけど、なんだか様子が……。
終わった後は飛び跳ねて拍手してくれたけど。
「あ、ね、ねこみちゃん」
「あっひとり~♪」
よかった、いつも通りのねこみちゃんだ。
店長さんたちとなにか話してたみたいだけど、さすがだなぁもう仲良くなっちゃうんだ……。
小走りで駆けてくるねこみちゃんが両手を開けば、私も、恥ずかしいけど……“いつも通り”両手を頑張って、少しだけ開く。
ねこみちゃんとふたりぐらいにしかできないけど、受け止める構えだ。
駆け寄ってくるねこみちゃんだけれど、突然勢いが落ちる。
「凄いよかったよ! さっすが! 私のひ、と、り……ぃ……」
突然、固まってしまった。
「先輩、あの子めっちゃ真っ赤だよ」
「うっさいなお前、黙ってろ」
お姉さんたちがなにか話してるのが聞こえるけれど……ねこみちゃん、どうしたんだろ。
あ、また濡れるのを気にしてるのかな……ライブ終わったから、ちょっとぐらい濡れたっていいのに……。
むしろ、ねこみちゃんもだいぶ乾いてそうだけど……。
「あ、えと、ね、ねこみ、ちゃん……?」
「い、いやそのっ、わ、私濡れてるからっ」
よし、たまにはっ……!
「ねこみちゃん……」
「へ、ひ、ひとりっ……ひゃっ!!?」
いつもねこみちゃんが私にやるように、私はねこみちゃんを抱きしめる。
ひ、ひんやり……というか、柔らかい……良い匂いする……。
「ひ、ひと、ひとっ……」
私より身長の高いねこみちゃんだけど、構わずギュッと、勇気を出す。
「ね、ねこみちゃん……あ、ありがとう……」
「っ~~~♥」
◇ ◇ ◇
あ゛ぁ゛~♥ 耳元で囁くなよぉ゛♥
ひとりの拘束から解放されるなり、私は半歩離れた。
くっ、自然な流れでめっちゃ内股になっちまってる!
「……ねこみちゃん」
「へ、なんですかきくりさん」
突如、酔っ払いが近くにやってきた。
「君って……受けっぽいね♪」
ギザギザの歯をむき出しにして清々しく笑う廣井きくりに、
そんなバカな、認められない。認めない
「ぼっちちゃん、かわいいけどカッコいいからねぇ~」
「え、なに、そういう関係? うそ……」
「店長、なにショック受けてるんですか……」
認めない認めない認めないぞぉっ!
後藤ひとりは総受け! そして
だから……っ!
「あ、えっと……ねこみちゃん?」
「あ、ううんっ、なんでも……っ♥」
あとがき
「ぼっち・ざ・ろっく」初投降です
変なとこあったらお願いします
ということ、原作から変わってないようでガッツリ変わってたぼっちちゃんでした
ちなみに気づいてない主人公ちゃん
ちょっと主人公ちゃんはぼっちちゃんを舐めすぎてましたね
逆にいつか舐められる()
完全に落ちてますがバリタチを公言してますので主人公ちゃんはバリタチなんだと思います
一応、あと一話は投降する方針です
それ以降はわかりませぬ