ぼっちちゃんを雌にするつもりが雌にされた元男(♀)の話 作:樽薫る
なんだか書いてたらおセンシティブになってしまいましたので、読み飛ばしてもらっても大丈夫
一応健全の範囲は出てないはずですが、うん
……次回からはいつも通りの感じに
夜、二人で泊まる温泉旅館の部屋で、用意された晩御飯を食べた。
ちなみにねこみちゃんはいない。
そう、なぜならここは温泉旅館。
―――ろ、露天風呂……た、大衆浴場……。
とても辛い。耐えられない……長女でも耐えられない。
ねこみちゃんが“露天風呂に行く”前、先の会話を思い出す。
『え~行こうよひとりぃ~、シーズンオフでお客さん少ないっぽいし』
『むむむむむ!』
『すごい首振るじゃん、取れるよ?』
『わわわ、私のような人間の身体をひひひ、人様に見せることになるなんてっ!?』
『たまには裸の付き合いでも~と思ったんだけどなぁ、小学生以来一緒にお風呂なんてなかったし』
『ねねね、ねこみちゃんと、ははっ、裸のつきっ……ぶふぉっ!?』
『ああっ!? ひとりが
ここから先の記憶はない。気づいたらねこみちゃんは“露天風呂行ってくる”という“
ちなみにロインには虹夏ちゃんや喜多ちゃん、リョウさんやお母さん、お姉さんとかからもメッセージが入ってて、どれもこれも『頑張れ!』や『今日でキメるのよ!』とかで……あ、お姉さんだけタイプ違う感じしたけど……。
ともあれ、ロインの返信をしつつ、私は部屋のお風呂を使って今に至るわけで……。
「ねこみちゃんが、露天風呂……」
―――こここ、混浴とかあったらどうしよう!?
「はぅあ゛っ、ね、ねこみちゃんってあれで無防備なタイプだからっ……」
それに、ねこみちゃんは同性も魅了するタイプだしっ……そうでなくっても危ないっ!?
これでねこみちゃんに、“もしものこと”があったら、いろんな人にどう顔向けすればいいか!
なによりも私が凄く嫌だっ……!
「むむむ、迎えに行く……!?」
でもっ、そのためには露天風呂に入らなきゃいけなくって……!
「なに布団の上でゴロゴロしてんの?」
「じゃぎぃ!?」
「なんて声出してんの、フロギィもあんの?」
―――ねねね、ねこみちゃん!?
「ぶぶぶっ、無事だったんだ……」
「露天風呂をデスゲームの会場とでも思ってたん?」
そう言うと、“浴衣姿”のねこみちゃんは微笑。
買ってきたのか、ペットボトルのお茶を両手で飲むと、それを近くのテーブルの上に置く。
いつもと違って、ピンク色のシュシュで結った“ルーズサイドテール”姿のねこみちゃんに、なんだかドキドキする。
ねこみちゃんがそっと、私の寝転がる布団の、隣の布団に座った。
「ていうか、なんで並んでるの……」
「わ、わかんない……」
全然気にしてなかった……。
―――それよりねこみちゃん、色っぽいなぁ……って!
「あぁぁ~! 私はなんてことぉぉぉ~!」
「ひっ! い、いきなり叫ぶなっ!」
驚かせちゃったみたいで反省。
冷静さを少し取り戻してねこみちゃんを見れば、やっぱり色っぽい。
落ち着きながら、私は布団から上体を起こす。
「いきなり冷静になるなぁ……あ、そうだった」
「ん?」
私がなにか言う前に、ねこみちゃんがなにかを思い出したかのように手を叩く。
「ねぇひとり、ちょっと、横になってくれる……?」
「えっ」
「んっ、おねがい……ね?」
ねこみちゃんがほんのりと顔を赤らめつつ、妖艶に笑って、私に言う。
羽織をそっとずらして、四つん這いになって私に近づいてくるねこみちゃんは、今まで見たこともない雰囲気で……。
―――たたたっ、谷間がッ!!?
「気持ちいいこと、しよっか……?」
―――エッッッ!?
◇ ◇ ◇
フッフッフッフッ……!
心の中で笑いが止まらない
―――ひとりの奴、顔を真っ赤にして動揺してた……勝った。勝ち確!
うつ伏せに寝転がるひとりに乗り、私はその背中に指圧をかけていく……そう、シンプルマッサージである。
私が“
いやまぁふんわりとしか見てないんでよくわからんが、とりあえず主導権は我にあり!
とうとうひとりの奴に自分が“
―――そうこれは、ひとりを完全に堕とすための秘策ッッッ!!!
「んっ、どう……ひとり?」
「あ゛~」
ふふふっ、返事も曖昧になるぐらい気持ちいいらしい。
「ひとり?」
「も、もうちょっと上、上……あ~そこっ」
―――普通にマッサージだこれ!?
おかしい、私の予測だともっと艶っぽい声とか出て“そういう雰囲気”になるはず……なぜ?
私の転生特典的なのはどこ……こういうときに逆転劇はないの……?
普通にマッサージさせられてるし……いや勝手に始めたのこっちなんだけども……。
「う゛ぁ~……ねこみちゃん、じょうずぅ~……」
「あ、うん、ありがとう……」
てか疲れる……汗が、谷間に汗が……。
「ふっ……んぅ~」
てか非力なもんで力込めてやってもひとりが普通に気持ちよさそうにしやがる……せめて痛がらせたいけど無理だな。うん。
てか……。
「あ、ねこみちゃん、疲れた……?」
「まぁ、うん……」
―――フフフッ、いいタイミングだ。さすがだひとりぃ。
「あ、ありがとう、それじゃあ……」
あ~やめやめ。けっ、なんにもならない時間だったぜ……。
まぁ、これでひとりの疲れがとれるようだったら良しとするかぁ、最近バイトも頑張ってるし……。
ひとりも成長してるってことだなぁ~……肝心なとこ変わってないけど。
「次、私がねこみちゃんに、やってあげるねっ……!」
―――そうきたかぁ、まぁ良いけど……痛かったら速攻でやめさせてやるかんな!
「……ぁッ♡ ん゛ッ♡」
シーツを握りしめて、枕に顔を押し当てる。
「い、痛い?」
「だっ、だいじょ、お゛っ♡」
―――今っ、押すなぁっ……!
私はうつ伏せのまま、ひとりからマッサージを受けていた。
普通の、私がやったものとほとんど代わらない指圧マッサージのはずなのに、おかしい……。
ひとりの指が私の背を押すたびに、全身に電気が奔るような感覚。
―――なんでぇっ……。
「ん゛ん゛~っ♡」
「わっ、ね、ねこみちゃん……?」
ひとりが指圧をゆっくりと強くしていく度に、背が跳ねる。
―――私がやってたときっ、ひとりこんなんじゃなかったじゃぁん……。
「だ、大丈夫……? な、なんだか……」
顔を横に向けて、横目で背中に乗っているひとりを見れば、私を心配そうに見ていた。別にそんな顔をする必要はないのに……。
力を弱めたひとりの指が浴衣を挟んだ背中を這う。
「ひぅっ♡」
「わっ、あ、そ、その……ご、ごめんね……?」
「は……ハァ?」
ひとりめっ、わ、
「別にっ、なにも感じてないしっ……普通に背中押されて、い、息が出てるだけだからっ」
「え、いやその、それは、さすがに……」
「つ、続けろって、私が今更ひとりに遠慮なんてするか……い、痛かったら言うからっ!」
「……そう、かな?」
「そう!」
そう返事をすれば、ひとりが頷く。
―――ひとりが私に手加減しようなんざ百年早い!
「それじゃぁ……」
あ、え、ちょっと息整える時間───。
「くら、い゛ぁ゛っ♡」
◇ ◇ ◇
布団でうつ伏せで寝るねこみちゃんのお尻あたりに乗って、私はねこみちゃんの背を押す。
―――ねこみちゃん、お尻大きい……とか言ったら怒るよね。うん。
雑念を振り払って、私が指を使ってねこみちゃんをグッと押すたびに、ねこみちゃんは反応した。
そんなねこみちゃんを見るのが初めてで、少しドキドキする……。
―――ねこみちゃんにしてもらった時、気持ち良かったけど、そんなにかなぁ……。
「ねこみちゃん……どこが好き?」
「わ゛かん゛なっ……ひぃ゛っ♡」
でも、なんとなくねこみちゃんが好きなとこ、わかってきたかも。
私は力を少しずつ込めて、抉るようにねこみちゃんに指を沈めていく。指が僅かに沈んでいくごとに、ねこみちゃんが身をよじる。
ねこみちゃんの身体が、ビクビクって跳ねた。
―――かわいい……なんだろう、この、感じ……。
「ん゛ん゛~っ♡」
「ここ、好き?」
「ひっ♡ だ、めぇっ♡」
手を止める。
「あっ……♡」
「ご、ごめんねっ。い、痛かった……?」
ねこみちゃんから手を離して、起き上がれないねこみちゃんに覆いかぶさるようにして耳元に口を持っていく。
夜だし、ある程度は静かにしなきゃいけないっていう思考のせい……別にここなら声出しても良いんだと思うけど……。
横を向いているねこみちゃんは顔が真っ赤で、瞳に涙を浮かべてて……。
―――だ、大丈夫って言ってたよね? で、でも、どうだろう……。
「えっと、や、やめたい……?」
「ひゃっ♡ み、みみ……ッ」
「な、なん、て?」
呟くような声で、聞こえなかった。
「にゃっ、な、なんでもなぃっ♡ ……だ、大丈夫、だからっ」
シーツを握りしめた手を緩めて、ねこみちゃんは涙目で私を見上げてそう言う。
変だ。なんだか変だ。ドキドキが止まらない。バスドラムみたいに音をたてる心臓……。
「やめ、ないで……?」
コクリ、と頷くねこみちゃんを見て、私はねこみちゃんに重なるようにしていた上体を起こす。
「そ、それじゃあ、するね……?」
「は、はぃっ……♡」
―――なんで敬語なんだろう。
そんなことを思いながら、指をねこみちゃんに添えて……押す。
「ん゛っ♡」
「ここ、かな……」
腰のあたりを、強めに押す。
「ひぃ゛ぁ゛っ♡」
「あっ、ごごご、ごめんねっ、ちち、力強かった!?」
急いで手を離せば、ねこみちゃんが潤んだ瞳で私を見る。
「ぅう~っ……い、いいからっ……してぇ……っ♡」
◇ ◇ ◇
恥ずかしいし、気持ちいいしで、頭がおかしくなりそうで……。
動くせいで浴衣もだいぶ脱げてきてる。
「ん゛ぅ……♡」
「えへへっ、私マッサージ師やろうかなぁ」
―――えっ、これをひとりが
「ひ、とりはっ、はぅ゛っ♡ ぎ、ギタリスト、でしょぉ……ひぅっ♡」
「あ、そそ、そうだよねっ」
横目でひとりを見れば、紅潮した顔で照れたように笑う。
「ね、ねこみちゃんが、私のこと信じてくれてるんだもん、頑張るね……結束バンドでっ!」
「~~~ッ♡」
うん、ホントに頑張ってほしいとか思ってるんだけど―――脳が追いつかない。
パチパチと音を立てるみたいに、視界が点滅する。それが終わらない。どんどん強くなってくる。
ひとりの指が
「~~~♡」
その度に、身体が跳ねて、お腹の奥がキューッとなって……初めてのライブとか学祭の時みたいな……。
―――あ、これ、ヤバぃ……くそぉ、ひとりに……こんな声、出させられてぇ……っ♡
◇ ◇ ◇
「えっと、それで……」
結束バンドでの練習の時の話なんかをしていたら、いつの間にか変な気分も吹き飛んで……。
相槌を打ってたねこみちゃんもなにも言わなくなっている。それに全然動かないし……。
―――ハッ!? わ、私が重くて圧迫死!?
「あ、ね、ねこみちゃんっ!?」
急いで退くと、ねこみちゃんの身体が上下にゆったり動いてることに気づく。
横を向いてるねこみちゃんを覗けば、涎を垂らして寝ていた。
なんだかそんなねこみちゃんが珍しくて、思わず笑いが零れる。
「へへっ、気持ち良かったのかなぁ」
―――たまには、ねこみちゃんの役に立てたかな……?
私は電気を暗くしてから、そっとねこみちゃんに布団をかける。
それから隣に敷いてある自分の布団で横になって……暗闇で眼が慣れてくると、ねこみちゃんの顔が見えてきた。
幸せそうな表情で寝てるのを見ると、温泉誘ってよかったなって……。
穏やかに眠っているねこみちゃんをみると、すごく安心して、胸の中がポカポカする……。
「えへへっ……ねこみちゃんは―――」
―――本当にかわいい女の子だなぁ。
あとがき
なんかすごいことになっちゃったぞぉ(他人事)
まぁねこみには必要だったといえば必要な気もするイベント
ちょっとした進展にはなるかな的な
まさかの旅館編が次でラスト、せめて二話で終わらすつもりだったんですが……
その次はまた短編詰め合わせみたいな感じで、学校でのこととか書くつもりです
では次回もお楽しみいただければと思います