ぼっちちゃんを雌にするつもりが雌にされた元男(♀)の話 作:樽薫る
♯のーだうと
どこにでもいる普通のTS転生者!
後藤ひとりの彼氏にしてカッコいい系女子!
「ねこみちゃん?」
どえらい美少女がいた。まぁ
「ひゃぁっ!?」
「わわっ!? どどど、ど、どうしたのねこみちゃっ!?」
ちちち、近いわっ! 顔が良いんだからやめてくださるっ!?
「っ、な、なんでも、ない……」
「……ほんと?」
ずいっ、と顔を近づけるひとりに、私は思わず目を逸らす。
色々と思うところがあるので、ついつい顔が熱くなってくるのは仕方のないことである。
───昨夜のことを、あの……はい、思い出しちゃうっていうか……。
「あぅ……」
「え、ね、ねこみちゃん!?」
思わず、両手で顔を覆う。
「相変わらずイチャついてる」
「イチャついてるねぇ」
「
◇
気を取り直しまして───さて、新曲ができた。
時は二月、まだ空気は冷たい。
昼前、
先の通り、新曲ができたということで
───うん、そうだね。“
先月頃からそういう話にはなっていたのだけれど、私はもっと前から識っていたりする。
転生者の特権よねこれ……そんな役に立つもんでもないけど。
……もうちょっと役に立つ転生者特権ないんですか!?
「……てことで新曲、グルーミーグッドバイ!」
虹夏ちゃんが元気よく発言すれば、それぞれ軽く拍手。
STARRYのテーブルを囲む結束バンドと、当然のように参加している
ひとりが歌詞を書いた……家で。
「陰キャな歌詞だけどサビはちょっと明るい感じ」
「爽やかでいいですね!」
「あ、え、えへへっ」
リョウさんと喜多ちゃんに褒められてひとりは満更でもなさそうに笑っている。
「これもねこみの影響?」
「いやそんなことないですよ」
実際のとこ
……いや、全然寂しくなんてねーし!
「リョウさんも悩んでたみたいですけど、よかったです」
「ん、余裕だった」
今回のは“フェス”出場をかけた曲ってことで、プレッシャーでスランプになってたことは知っている。
バイトも来なくなったり、学校も行かなくなったり、キャンプしようとしてみたりと迷走してたみたいだけど……。
結果的にひとりと喜多ちゃん、そして虹夏ちゃんのおかげで持ち直して、無事に曲は完成したわけだ。
ひとりたちを笑顔で見送った後に店長が『わたしって嫌われてんのかな?』とか聞いてきたのであせったけど。
ともあれ、リョウさんを見た影響か、ひとりも頑張った。
───真面目な顔して歌詞を書くひとりは……うん、かっこよかった……じゃなくて! かわいかった!
「でもねこみちゃんは来てくれなかったって拗ねてたんだよリョウ」
「え?」
───なにそれかわいい。
「嫌われてるんじゃないかとかうじうじと」
「そんなことないから」
否定するリョウさんは汗をダラダラ流している。たぶん図星なんだろう。
だからあの後、リョウさんに電話かけさせられたのか
「リョウさんもかわいいとこあるんすね」
「違うから……!!」
◇
話が脱線するのはいつものことで、冷や汗をかきながら異論を唱えるリョウさんを無視して虹夏ちゃんは手を叩いて注目を集める。
……リョウさんが
「それじゃあ、MVを撮りたいと思いまーす!」
「やっとですね~!」
嬉しそうにはしゃぐ喜多ちゃん、ひとりは……うん、顔が青いゾ☆
昨今は動画サイトで音楽を聴くというのが主流で、新しいものに触れるのもまた然り。
ともなりゃやっぱりMVがあったほうがバンドを知ってもらえるし、同時にバンドの世界観を伝えるにも良いということだ。
それにフェスに出るためにはネット投票で支持を得る必要があるわけで、ともなりゃそりゃMVがあったほうが拡散の効力も上がるってもんで……。
「音楽配信サイトにも曲を申請しよう!」
「本格的になってきましたね!」
二人はノリノリだなぁ……リョウさんは私の肩を揺するのをやめて自分の席に座った。
「すごいおっぱい揺れるね、ねこみ」
「うるさいですね」
チノちゃんっぽくなっちまった……! いや言ってねぇけど!
「あ、わ、私のですからね?」
ひとり!?
◇
虹夏ちゃんがメモ用紙を一枚取り出した。
「スポチファイが無理でもバンドキャンプゥなら審査通りやすいって……大槻さんが!」
「親切すぎる!」
ヨヨコちゃんはかぁいいなぁ~!
本当に頼りになるライバルだと思います。
SIDEROS……大槻ヨヨコちゃん。
ほとんど喋ったことないけど、まぁおおよそどういうキャラだったかは覚えてるつもり。
とりま、動画サイトにうp(死語)した曲は500再生程度、公式トゥイッターは喜多ちゃんの美容アカと化し、これはMVで一発逆転を狙うしかなくなったわけだが……。
「本当はMVにお金かけたかったんだけどねぇ」
「まぁノルマあるし、しゃーなしですよ。私でよかったら多少は出しますけど……」
「いやいや、ねこみちゃんには色々と手伝ってもらってるしそれだけで十分だよ!」
なんかしたか
「ってことで、自分たちで撮るよ!」
「私達だけで撮れるんですか?」
喜多ちゃんの言葉に、出番を待っていたかのように二人の女性が現れる。
そうだね。見慣れた人たちだね。
「こんなこともあろうかと超強力ゲスト! 結束バンドファンのお二人にきてもらいました!」
「どもー1号です」
「2号です~」
そう、いつものファンこと1号さんと2号さん。
ひとりの演奏がきっかけでここまでついてきてくれた我らが大事な大事なファンの二人。
技の1号、力の2号……力と技の3号さんに期待したいとこだな!
「私達、美大の映像学科生なんで撮影は任せてください!」
「それは心強いです!」
「ありがとうございます。お二人とも」
私がそうお礼を言うと、二人はニッコリと笑顔で返してくれる。
まぁこの中だと“一緒に遊んだこともある虹夏ちゃん”の次ぐらいには二人と仲は良いだろう。
ライブを見る時は大体一緒になるし、そりゃ世間話の一つや二つ……まぁその結果、“色々”と知られてはいるけど……。
「好きなバンドにこうやって関われるだけで嬉しいねぇ~」
「だね! し、しかもこうして間近で……ぼぼぼ、ぼねこが!」
……2号さんェ。ていうか“ぼねこ”じゃなくて“ねこぼ”ね!
「箱推しというかカプ推しか」
こういうときだけ喋んなくていいから山田。
「えっと、あ、機材はライブハウスで使ってる奴、借してくれたよ」
「え、店長が借してくれたんですか?」
喜多ちゃんと、心底驚いた顔をした山田、それからひとりと私が店長の方を見る。
いつも通り座りながら『よいこりんご100』を飲んでいる店長と目が合った。
うん、と頷けば店長も目で少し私になにか語りかけてくる。
「好きなだけ使って良いぞ……あと困ってることあったら、言え」
「え、あ、ありがとうございます」
混乱する喜多ちゃん。そりゃそうだろう。
嫌われてると勘違いしてる店長に、露骨に好感度上げに行こうぜってちょっと唆した立場としては少しばかり罪悪感もあるが、これも結束バンドのため!
今度店長にりんごジュース買って来よう。うん。
てかPAさん、わかってておもしろがってない?
◇ ◇ ◇
色々とワードを出し合って、それをホワイトボードに1号さんが書いていく。
練習すれば私もリョウもそれなりにできるけど、K-POP風は結束バンドの雰囲気に合わないし、他のバリエーションを考えようにもぼっちちゃんがドジョウ掬いを披露したあたりでやめた。
あんまりにもレパートリー不足、そして喜多ちゃんがバズろうとねこみちゃんと一緒にやってみようとしたけど……。
ねこみちゃんは即座にこけた、そしてタイツの上から下着見えてた。
「くっ……情けないとこをっ……!」
「だ、大丈夫ねこみちゃん! か、かわいかったよ!」
「あぅっ、ば、ばかにしやがってぇ……♡」
隙あらばイチャつくね!?
「生ぼねこ!」
「ぼねこ……」
に、2号さん大丈夫? それとお姉ちゃんはなんでこっち来てんの?
◇
「ほ、他になにかあります?」
ホワイトボードの前で、2号さんが困ったような顔をしている。
大丈夫か? という心の声が聞こえるようだよ。
まずい、このままじゃまるで決まらない。うん、真面目にいこう真面目に……いや、これでも真面目なつもりなんだけど。
リョウがなにかひらめいたのか、ポンと手を叩いた。
「ぼっちの家、犬いたよね?」
「あ、はい」
「ジミヘンですね」
「そいつを使おう」
リョウ、まさか!?
「この世に動物ほど簡単にバズるものはない! 演奏シーンなんかよりずっと犬の映像流してる方が再生数稼げるはず!」
「こいつプライドってもんがないのか!?」
「何か一芸ないの? ギターとか弾けない?」
「ジミヘンだけに?」
ねこみちゃんもノらない! てかリョウの言うことなんて聞かなくて良いから! そんなことで再生数増やしてどうすんのさー!?
「あっ」
ぼっちちゃん名案が!?
「こ、子供もセットにしてバズらせましょう。妹います」
「ぼっちちゃん!?」
正々堂々勝負する気が微塵もないじゃん!?
「……だったらねこみちゃんとセットもどうだ?」
「え゛っ!?」
「お姉ちゃん!?」
「あ、ねこみちゃんはダメ、です」
ぼっちちゃん、そこはしっかりするんだ……。
「ひとりぃ……♡」
「乙女な顔してないでねこみちゃんも案出して」
「おとっっっ!??」
なにを今更驚いてるんだろう。
◇
とりあえず犬は保留……まぁ、ちょっと出すならありかも。
ちなみにリョウとお姉ちゃんの謎の出演交渉により、ぼっちちゃんもねこみちゃんを少し出すぐらいならOKとのこと……なんで?
ていうかマネージャーなの? というよりねこみちゃんも『ひ、ひとりが言うなら……』とか言ってOKしちゃうのは……なんで?
……でも、ねこみちゃんはありよりのあり。とりあえずロケ地決めよう。
「前行った江ノ島とかいいかも」
「あ、いいMV思いつきました!」
なんか嫌な予感する。
「高校生カップルが浜辺デートで喧嘩して! 結束バンドの演奏を観てからなんやかんや仲直り! そして曲の最後にキス! それを祝福する結束バンドみたいな!?」
それはマズイ!
バッ、とぼっちちゃんの方を見る私とねこみちゃん。
笑顔を浮かべたぼっちちゃんが、頷く。
……あれ、セーフ?
「あっいいと思いまっ、おぼろろろろッッッ!!」
全力で拒絶反応が出てる!?
……てかねこみちゃんと“そんな関係”になっといてまだダメとかあつかましいね!?
◇ ◇ ◇
全身から血をふきだすひとりを見る
別に珍しくもないので、あまり気にしないことにする。
とりあえず未だひとりは青春コンプレックスだ。
それでなくとも結束バンドのMVが喜多ちゃんの言うソレはちょっと……。
「じゃあ、そのシチュをねこみとぼっちで撮ればいいんじゃない?」
「いやよくねーですけど!?」
なに言ってんだ山田ァ!
「確かに、世界観は伝わるかも」
伝わらねぇわ! ミリもな!
「
喜多ちゃんはもうダメだ!
「てか私出たら結束バンドのMVの意味ないでしょ!?」
「いや、ねこみちゃんも私達の仲間だし」
え……。
「ぁ、ゃ、そのっ……は、はぃ……っ」
「ねこみちゃんが真っ赤だ。かわいい」
「いつもでは? かわいい」
「確かに、かわいい」
うっさいよ!
◇
で、その後なんやかんやあって……1号さんがキレた。
「全員楽器もって外でてください!」
「あ、えっとそれと衣装と制服も!」
2号さんも特に止めないあたり、このままだと日が暮れると察したんだろう。うん。
私も残念ながら役に立てそうにねぇし、しゃーなし。
「私が全部決めて撮るんで言う通りにしてください」
「え、1号さん?」
「バンドマンは大人しく楽器だけいじっとけばいいんですよ」
「あっはい」
すげぇ圧……こんなん力の1号じゃん。
「ねこみちゃん、なにか?」
「あ、いえ、なんでもないです」
眼を合わせたら殺られるっ!
「とりあえず公園で良いんで行きましょう」
「はい!」
あ、そういえば公園で撮るんだっけか……。
でもなにがあったかは細かくは覚えてないなぁ。
「ねこみちゃんにもしっかり協力してもらうからね」
「え、なんで!?」
ちょっと出るのはともかく
てか近いんですが!? え、耳打ち?
「……ひとりちゃんのことは任せたから」
「え、あ……は、はい……?」
どうしろと?
◇
自然体な結束バンドを撮りたいとの1号さんの申し入れ。
意外にも、一番慣れて無さそうなのは喜多ちゃんだった。
……いや、むしろカメラを向けられ慣れ過ぎているから、当然のように良い角度とかで撮られようとする。
小顔効果狙ってるんじゃないよ!
意識するって言ってた虹夏ちゃんはリョウさんがいつも通りなので意外とすぐに馴染んで……。
「……ひとりちゃん、なにやってるの?」
「あ、自然体です。公園に来たらいつも木陰で土いじりしてるので……」
「逆にカメラ意識しようか!?」
1号さんが派手にツッコむが、2号さんはといえば生の自然体ひとりに感動すらしている。
こりゃ
手を差し出せば、素直にその手をとってひとりが立ち上がる。
「ん、ふたりとか連れてきた時でしょ、それ……私と一緒にいるときみたいな感じでさ」
座り込んでいたせいでついた土埃を払いながらそう言うと、ひとりは小首を傾げた。
「えっと、ねこみちゃんといるとき……」
考え込むひとりを見て、私も少しばかり考える。
そうは言ったものの私といるときのひとりってどんな感じだったか……別に結束バンドのみんなといるときとそれほど変わる気がしない。
まぁ虹夏ちゃんたちと手を繋ぐとかはないものの、それほど様子が変わっている感じはしないし……。
───あれ?
「……」
「ねこみちゃんまで無言にならないで!?」
◇
とりあえず木陰のベンチに座る
喜多ちゃんと虹夏ちゃんは遊具で遊んでいるし、リョウさんは滑り台の下の木陰にいる。
2号さんと1号さんは歩きながら色々と撮っているが、ひとりの撮れ高がいかんせん悪い。
どうしたものかと悩んでいると、隣のひとりがなにかに気づいたようだ。
「あ、そういえば……」
「ん? どした?」
横を向けば、ひとりが少しばかり笑みを浮かべる。
「ねこみちゃんと初めて会ったのって、公園だったな、って……」
───そうだった。
思い出しても可愛くないガキだったとは思う。容姿はともかくだ。
いかんせん心の中が大人だったし……母さんもよく私を公園に連れて行こうなんて思ったな。
遊具で遊ぶでもなくフラフラ歩いてたら一人で土いじりしてた女の子を見つけて、それで声かけてみたんだっけ……。
「ねこみちゃんが声かけてくれて、すっごいかわいい子だなって思ったの、憶えてるよ……?」
「かっ……そ、そういうのいいからっ」
なんでそういうことを平然と言えるようになっちゃったんですかね!?
「えっと、誰かと一緒に遊ぶのなんて、珍しくって……お母さん喜んでて」
「あ~そうだったそうだった」
「ねこみちゃんのお母さんも、凄い喜んでて……」
え、そうだった? あ、いやまぁ確かに、あの頃は同年代の子と遊ぶとかしてなかったかも……。
「初めてできた“友達”だったから……」
ひとりの手が、
あまりにも自然で普通に受け入れてしまったものだから、そのままひとりの手に頬を撫でられた。
温かい手の平の感触、親指がそっと
「んっ……♡」
「友達じゃ、なくなっちゃった、けど……」
「そういうこと言うなぁ……っ♡」
ひとりの顔が近づいてくる。
―――あ、待ってこいつ、外だって忘れてない?
「あ、やっ、ひと、りっ……♡」
「や、じゃない、よね……?」
ボソリと呟かれて、
「ねこみ、ちゃん……」
「ひ、とり……ぃ♡」
近づいてくるひとりの顔、私は目を瞑って……。
「ってストォォォップ!」
「へひゃぁっ!?」
思わずビクッと跳ねて素っ頓狂な声を出してしまう。
ひとり(と私)の暴走を止めてくれた救世主こと
1号さんと喜多ちゃんとリョウさんはやけにキラキラした顔で私たちを見ていて、2号さんは興奮した様子で私たちをいろんな角度から撮っている。
―――これは恥ずかしい。そう、私がな。
「~~~っ!」
何か言おうとするけれど、言葉は一切出てこない。出てくるはずもない。そりゃそうだ。
「いいっ! 続けて!」
2号さんがそう言うが、続けるわけないでしょうが!
ふと、ひとりへと視線を向けると……。
「ほわっ!?」
奴は……弾けた。
───いいよなぁ、ひとりは自爆で逃げれて。
肩に、ポンと手が置かれる。
振り返ればそこにはもちろんリョウさん……いや山田。
「ねこみ、良い雌顔してた」
「メスじゃねぇわカッコいい系だわ!」
喜多ちゃんがニコニコしている。
「ありがとうねこみちゃん」
「なにが!?」
虹夏ちゃんが真っ赤な顔で詰めてくる。
「そういうのは家でやりなよ!?」
「あ、はい、ごもっともで……」
───くっそぉ、こんなとこ見られたら
「ぼねこが、ぼねこが撮れた……!」
だから“ねこぼ”だって!
「あ、ひ、ひとりが弾けちゃったんですけどMVがっ」
「ん、ああ大丈夫、撮れ高とれたから、あとでひとりちゃんが“直った”ら場所移動してサビの演奏撮ろう」
「え、あ、はい……」
……え、撮れたの? どこ使うの? ねぇ1号さん? ねぇ!!?
後日、バズった。
掴みはともかくしっかり音楽でバズってます
ねこみは顔は映らない仕様でぼっちちゃんは少し多めに映ってる
そして、もちろん学校でいじられる
あとがき
お久しぶりです
お久しぶりなのでキャラがぶれてないか心配
楽しかったのでまた書くこともあるかもしれません
次はどうしようかなとか考えつつ……
またお楽しみいただければです