ぼっちちゃんを雌にするつもりが雌にされた元男(♀)の話   作:樽薫る

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文化祭(中編)



♯ないものねだり

 

 (オレ)、大張ねこみ! 今は文化祭中でメイド喫茶をやってるの!

 

 カワイイ私はついついナンパにあっちゃって大変!

 

 まぁ私の瞬獄殺をもってすれば、なんてことはないんだけどね!

 

 

「ねこみ、大丈夫だった?」

「おいおい、瞬殺だよ」

「あ、そ、そう……」

 

 

 とりあえずそう言っておく。そうだ、もしかしたら私、さっきの輩たち倒してたかもしれん。

 

 なんかクラスメイトの子がちょっと引いてるようにも見えるけど気のせい。気のせいだね。

 

 私はビジュアル強者の人気者として通ってるんだから、変な人ではない。そうだね。

 

 

「あ、大張さん~」

「喜多ちゃ、ハッ……!」

 

 まさかの喜多ちゃんと虹夏ちゃんがメイド服、そうだった! そういえばそういう流れだったね!

 

「どう、似合う?」

「虹夏さん凄いカワイイですよ~!」

 

 しまった伊地知さんって呼ぶべきだった!

 

「やっぱ……ねこみちゃん、には負けるけどねぇ」

 

 セーフ! さすが虹夏ちゃんさん! 下の名前呼びしたらそれで返してくれるたぁ頭が下がる!

 喜多ちゃんと虹夏ちゃん、やっぱ正統派美少女だなぁ……それに比べてひとりぃ! なんださっきのは、全然なんかこう……んぅ、違ったぞ!?

 

「ね、ねこみちゃん……?」

 

 ッ! め、眼をあわすなっ!

 

 眼を逸らした先には山田ことリョウさん。

 

「ねこみ、百合営業しよう。そして配信で稼ごう」

「そうきたかぁ」

 

 山田リョウ、ちょっと距離感バグってますね。ていうか執事服、つまり“アニメ仕様”ってことか!

 

「まぁしないですけど」

「なっ……き、機材買い放題だよ?」

「私になんのメリットが……?」

 

 さすがベーシスト、絶対付き合ってはいけない男の職業ベスト3に食い込むだけある……でも、ホント顔はいいなぁ。

 私もそういうカッコいい系に生まれたかった。身長はもちろん私のがあるけど。

 

「こらリョウっ、またお金のことばっか……ねこみちゃんに迷惑かけないのっ!」

「うっ、結束バンドの利益にもなるのに」

 

 だいぶ原作通りですわねこれ、そりゃそうだけど……。

 

「それじゃ大張さん休憩行って大丈夫だよ。前半かなり頑張ってくれたし……あ、それと好評だったよ! 美味しくなるおまじない!」

 

 やめろォ! 私の黒歴史じゃあんなの! 月光蝶で消してリライトして!

 なにがふわふわでなにがオムライスさんじゃっ! 私の炒飯の方が美味いんじゃい! 今度クソ男飯食わせたらぁ!

 てか立って接客せい山田ァ!

 

「後藤さんも休憩いってきていいよ~」

「えっあ、はい」

 

 私と一緒に休憩だから『用無し』とかじゃないんで落ち込まなくて大丈夫だよひとり……ってことで、とりあえず微笑んでみれば、ひとりもぎこちなく笑った。

 

 よし、これでいつも通りだな!

 

「それと、さっきは大張さん助けてくれてありがとうね!」

「あ……あ、はいっ」

 

 余計なこと言うんじゃないよ思い出しちゃうでしょうがっ!

 ……まぁ、ひとりがちょっと嬉しそうなんで良いけどさぁ、ふふっ……なんだ今の笑い方。

 

「あ、席一つ借りるねぇ」

「ん、端の方なら目立たないからいいよ」

「ありがとー」

 

 とりあえずと、私はひとりの手を引いて端の方の席に移動し、二人掛けのそこに座る。

 

「ひとり、大丈夫?」

「あ、うん」

 

 疲れてるなぁ……まぁ私も借りがないわけじゃあない。

 しょうがない、ひとりからのご奉仕は明日にとっておくとして……とりあえず、御飯でも食べるとしようか。

 

 私はひとりを座らせるなり、辺りを見回して頷く。

 

「今なら厨房、余裕ありそうだし待っててね」

「うっえっ、ど、どこいくの?」

 

 戸惑うひとり……まったく(オレ)がいないとダメなんだからぁ~♪

 これならもはや堕ちるまで秒読みだな! 依存させてメロメロにしてやんよ!

 

「御飯作るの、私の得意なやつ♪」

「あっ……うんっ!」

 

 ふふふっ、嬉しそうな顔しやがって、キュンとするじゃん……キュンとするってなんだ!?

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 ねこみちゃんが厨房の方に行ってから十分ぐらいが経った。

 

 私、後藤ひとりはねこみちゃんを待ちながら、飲み物をストローで啜る。

 喜多さんたちがクラスを手伝ってくれたおかげで、私はともかくねこみちゃんも休憩を取れてよかった。

 ねこみちゃん、声かけられてたとき、ちょっと怖がってたから。

 

 その後もちょっと変だったし……。

 

「ひ・と・りぃ♪ お待たせ~」

 

 戻ってきたねこみちゃんが、まぶしい笑顔でテーブルの上に大皿とスプーンを二つ置く。

 見慣れたソレ、ねこみちゃんの得意料理で、私の好物の一つ。

 

 メイド喫茶、憂鬱だったけど……いや、憂鬱だけど……。

 

「ほい、私特製の炒飯、またの名をクソ男飯だよ♪」

 

 ね、ネーミング……ねこみちゃんってそういうとこあるよね。

 

「っと……食べよ食べよ。私が戻ったら虹夏さんたちと変わるからさ、遊び行ってきなね」

「え……」

 

 ねこみちゃん、一緒にこないんだ……。

 

「ん、まぁ私は文化祭ではしゃぐタイプでもないしなぁ。はしゃいでるのを見てるのは好きだけど」

 

 私以外の誰にも聞こえないような声で……たぶん、みんなには見せないような少し意地の悪い笑みを浮かべて言うねこみちゃん。

 スプーンを取ると、炒飯を一口自分で食べて、満足そうに笑った。

 私も食べようとスプーンを取ろうとすれば、ねこみちゃんが更にスプーンで一口掬う。

 

「ほら、ひとりも食べてみな、味濃いめの美味いやつ」

「あっ、え、あ……」

 

 目の前に差し出されるスプーン。

 

 ねこみちゃん、気にしないのかな……わ、私はこういうの慣れてないから、凄い、緊張……う゛っ、青春コンプレックスが……か、顔が崩れそっ。

 

「ん?」

 

 ね、ねこみちゃんがっ……た、耐えなきゃっ……! ねこみちゃんが相手、なら、むむっ、た、耐えれる……はず。

 

「い、いただき、ます」

「どーぞ♪」

 

 なんとか、ねこみちゃんのスプーンで運ばれてきた炒飯を一口。

 

「んっ……!」

 

 ―――口に入れた瞬間、安心感に私という存在が輪郭を取り戻していくのが感覚的に理解できる。

 少しだけ息を吐きつつ、スプーンを口から離せば、視線の先にはスプーンを持っていない方の左手で頬杖をつくねこみちゃん。

 小首を傾げれば、ねこみちゃんの白銀の髪が揺れる。

 いつもと違う、ポニーテールが……。

 

「……いつもの味」

「そっか、そりゃなによりかな♪」

「うん、すごく、安心する……」

 

 そう言うと、ねこみちゃんは頬杖をついたまま、少しだけ眼を見開いた後に、クスって笑う。

 

 凄い、絵になると思う。やっぱりねこみちゃんはかわいい。

 

「フフフッ……でしょ♪」

 

 あ、でも……なんだか、いつもより、胸がポカポカする。

 

「いつもと、違う感じも、する……おいしいっていうか、なんていうか……」

「え、そう?」

「うん……えっと、その、なにか……特別なこと、したの?」

 

 純粋な疑問が口から出た。

 口下手で口数も少ない私だけど、ねこみちゃんは、私のことわかってくれてるから……誤解とかはない、はず。

 私の言葉に、ねこみちゃんは少しばかり考える様子を見せる。

 

 あ、変なこと言っちゃった……?

 

「ご主人様のために、おいしくなる呪文をかけましたぁ♡ ……へへっ、なんちゃって♪」

 

 メイド喫茶、憂鬱だけど、憂鬱だったけど……悪くない、な。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 なんか流れでひとりに炒飯作って……。

 せっかくだしと、さっきの“仕返し”に焦らせるか、ちょっと崩壊させてやろうかと思って『あーん』までしたのに……普通に食べられた……。

 もしや、(オレ)相手じゃもうなんも感じない!?

 

 うぼぁ! 距離感が近すぎた故の弊害かぁッ!?

 

 いやいやいや、こんな美少女からの『あーん』だよ。青春コンプレックス刺激されるはずだルォ!?

 

 え、思ってるより私ってかわいくない? それともひとりの奴、私に慣れきった!?

 マンネリってやつですか!?

 

「……ん~」

 

 (オレ)は頬杖をつきながら、ひとりがもしゃもしゃ炒飯を食べるのを見つめる。

 

「えぅ……ど、どうしたの?」

「あ、ん、なんでも……」

 

 強化し過ぎたってやつ? ハマーン様の言葉が沁みるぜ……。

 

 ……にしても、明日のライブなぁ。原作通りならひとりのギターが壊れるって感じだけど……まぁ、余計なこと言うもんでもないか、それで上手くいったわけだし。

 あとはその後のダイブだけど、それもまぁ問題はない……。

 

 でもひとり、怪我するんだよなぁ……い、いやいや、あの程度の怪我、ひとりならなんでも……。

 

「あっうっ、えっと、ねこみ、ちゃん?」

「……ん?」

「な、なんだか難しい顔、してたから……」

 

 顔に出てた。てか顔になにが出たんだよ。(オレ)の明日の予定のせいか……? またメイドやるんだよなぁ。

 

「大丈夫、なんでもないって……ほら、もう一口、あーん」

 

 余計なこと言って原作改変するわけにもいかないし、誤魔化すために私は炒飯を一口掬ってひとりの前に突き出す。

 

 どうだ今度こそ顔が崩れるだろっ! 地味に私も恥ずいんだぞこれ! 即刻崩壊せよ!

 

「……むっ」

 

 普通に喰ったぁぁぁぁ!!?

 

「ふっ、へへっ……」

 

 なんだその笑いは!?

 

「ね、ねこみちゃん……立派なメイドさん、だねっ、へへっ」

「っ!!!?」

 

 し、しまったぁぁぁっ!! ひとりにメイドご奉仕ムーブさせるつもりが私がやってるぅぅっ!!?

 

 どどどど、どうしてこうなった!? どうしてこうなった!? くっそぉ、ひとりめ! またしても私の完全ガチ攻め(バリタチ)ムーブを阻みやがったぁ!

 

 ご飯食べてる姿かわいいね! 原作通りの総受け(当社比)になれオラッ!

 

 こうなったら(オレ)も本気を出すしか……!

 

「あっうへ、うへへっ、で、でもねこみちゃんみたいな……か、かわいい、メイドさんいたら、い、色々大変、かもっ、へへっ」

「え……」

 

 か、かわいいかぁ? い、いや私が可愛いのは知ってっけどさ、い、今更ひとりに言われても……えへへっ♡

 

 って……大変!? 大変ってなにが!? 襲われる!? ひとりに!? 犯られる前に犯ったらぁよ!?

 

「わ、私なんにもしなくてもよくなっちゃいそうでっ、い、いやそれはそれで良いんだけどっ、へへっ」

 

 あ、そっちね!? び、びっくりしたぁ……。

 

「ね、ねこみちゃん、顔、赤い、けど……」

「へっ!? あ、ああいやなんでもねぇけどぉ!?」

 

 くそぉ、本来なら私が言いたいような台詞いいくさりやがってぇ!

 

 ……明日こそは、明日こそはお前に、私が(タチ)だって“わからせて”やるからなひとりぃ!

 

 

 




あとがき


まさかの中編……なんかノって書いてたら長くなりそうで区切りました

おかしい、短編のはずだったのに連載みたいになってる
まぁ、次で終わるんで、まぁセーフ……

ねこみは相変わらず自分をタチだと思い込んでおります(ヒロインムーブをしながら)
そしてぼっちちゃんはねこみの知らぬ間にヒーロームーブが板につきはじめているという……

今後ですが、想像してたよりずっと感想とかお気に入りとかいただいたので、そのあとも書いてきたいなとか思っとります
短話とかifストーリーとかポツポツと

とりあえず、原作でいうとこの2巻でアニメでいうとこの最終回

次回の後編、お楽しみいただければです
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