プリキュアオールスターズ ~Mahjong for survival~ 作:りろぶこん
ということでプリキュア×麻雀という超絶ミスマッチな作品……の序章です。良いタイトルが思い浮かばず悪戦苦闘。結果的にこんな感じですがどうでしょう?
ではまた後書きで。
目が覚めると、そこは白い空間だった。
光源がどこにあるかもわからない。空間そのものが発光しているようにも見える。
そんな場所で一人の少女が身体を起こした。
美墨なぎさ―またの名をキュアブラック。世界で一番最初にプリキュアとなった人物の一人である。
なぎさは反射的に飛び起き、周囲の様子を確認した。
「んー……ここどこ?」
一応床の概念はあるのか、いきなり訳もわからず真っ逆さま……ということはないようだ。だが地平線の方は怪しい。一面純白の世界のため、距離感がまったくつかめない。すぐそこが壁かもしれないし、もしかすると壁などないのかもしれない。
「夢?それにしてはやけにリアルな……」
困惑するなぎさに、後ろから声がかけられた。
「なぎさ?」
「ん?……あ!ほのか!」
声の主はなぎさの一番の親友にして戦友、雪城ほのかだった。いつものように白を基調とした衣装に身を包み、こちらも同じように困った表情を浮かべている。
「ほのか、ここどこかわかる?」
「ううん、さっぱり。でも今なぎさが結構大きな声を出したけど、まったく響かなかった……とても広い場所ね、ここ」
「うーん、メップルとかミップルがイタズラでこんな大掛かりなことする訳ないし……」
「……それよりなぎさ」
急に深刻な雰囲気になって、囁くようにほのかは言った。
「ちょっと来て」
「あ!待ってよほのか~!」
いきなり走り出したほのかに引かれるようにして、なぎさは後を追った。
なぎさが連れてこられた先には、目を疑う光景が広がっていた。
「ほのか……?何、これ」
目の前には、大勢の少女達が横たわっている。さらに、その一人一人が、二人にとって非常に馴染みのある顔ぶれだった。
「のぞみちゃんに……ゆりさん?」
「舞ちゃんにひかり……それにみゆきちゃんまで……」
今まで数多の強敵を渡り合ってきた仲間達……プリキュアオールスターズが目の前で倒れている。
「……っ!みんな!」
しばらく呆けていたなぎさだったが、はっと我に帰ると手近なのぞみを抱き上げた。
夢原のぞみ。またの名をキュアドリーム。天性の明るさで個性派揃いのプリキュア5をまとめあげ、ナイトメアとエターナルという敵組織に勝利している。
「のぞみちゃん!?大丈夫?」
「んんー……ふぇ!?」
「おわぁ!?」
前触れなく飛び上がってきたのぞみに、さすがのなぎさも回避挙動が取れずおでこ同士が正面衝突した。
「いったー……」
「あうぅ……あれ?どっかで見たような……」
「私だよ!美墨なぎさ!それでこっちが雪城ほのか!」
まだ頭が混乱しているのか、かつて共に戦った仲間すら忘れた様子ののぞみ。らしいと言えばらしいのだが、こんな状況では面倒なだけだ。
手短に状況を説明している間に、周りの少女達もちらほらと起き上がり始める。だがその中に、この状況を把握している様子の人物は一切いない。
「もー!どーなってんのよー!」
「ふぁー、これまた凄い所だね舞」
「咲……もうちょっと緊張感を……」
どことなくなぎさとほのかに雰囲気が似ている二人の少女が話している。片方は緊張感なく、むしろこの状況を楽しむように。片方はそんな相方に呆れつつも非難はしなかった。
日向咲と美翔舞。なぎさとほのか、そしてシャイニールミナスこと九条ひかりの後をついでプリキュアとなった二人である。
「さてさて、何が始まるのかな?」
「またフュージョン復活とかいやよ……?」
「あー、のぞみの奴……」
なぎさに対してボケた返答をし続ける親友に、赤髪の少女―夏木りんは呆れたようにため息をついた。
「それがのぞみさんの長所でもありますって。ねえこまちさん?」
「そうね。何事にも取り乱さないっていう所はさすがと思うわ」
元気一杯といった様子の小柄な春日野うららと、どこかずれた発言の秋元こまち。
「取り乱さないっていうより……」
「何もわかってないんじゃないかしら……」
それに対し、生徒会長も務める水無月かれんと、元の姿は妖精である美々野くるみはりんと同様に目を伏せた。
「いつかこんなスポットライトを浴びながら踊りたいね!」
「あんたはロシアにでも行ったら?一面真っ白よ」
はしゃぐ桃園ラブとたしなめるような口調の蒼乃美希。これでも一応プリキュアである。
その後方にどこか小動物を思わせる山吹祈里と、四人の中では一番大人っぽい東せつなが周囲を観察していた。
「またシフォンのいたずらかな……?」
「とうとう別世界の住人を引き寄せるまでになったのね……」
「うおおー!真っ白だよつぼみ!どーなってんのこれ!」
「そうですね……あ、あんまりはしゃがない方が……お二人とも~!助けてください~!」
うららよりも頭ひとつ分以上小さい来海えりかが、いつにもましてハイテンション。そのブレーキ役として花咲つぼみは振り回されていた。
そして助けを求められた二人……明堂院いつきと月影ゆりは、片手をあげるだけで加勢に回る素振りもない。暴走特急えりか号を止められるのはつぼみしかいないのだ。
「がんばれーつぼみー!」
「この状況でこのメンバー……ろくなことにならないわね」
「ええっと……奏?みんな、いる?」
「うん、エレンもアコもいるよ。心配しないで響」
寝起きにしてはやけに頭がクリアだな。と思いながら、北条響と南野奏は目を合わせた。
「姫、あまり動くのは……」
「偵察よ偵察!」
「一面何もないじゃないですか……」
一国の皇女である調辺アコと、その付き人ポジションの黒川エレンは今日も元気だ。
「わたくし達が一番後輩のようですね」
「せやな。みんなウチらより前にプリキュアになった人ばっかりや」
丁寧な口調の青木れいかと、独特の喋り方をする日野あかね。それに続いて黄瀬やよいと緑川なお。
「おおーホワイトアウト……」
「本当に何もないね……」
「ほら起きんかいみゆきぃ!」
まだ起きる気配のないリーダー、星空みゆきに鉄拳制裁あかね。
「ぷぎゃー!」
以上二十八名。ここにいるプリキュア全員である。
直後だった。
ガタン!と、突如世界が『剥がれる』ように変わった。白い空間から古めかしい洋館へ。先程とはうってかわって薄暗く、天井のシャンデリアだけが光源だ。窓らしきものもいくつかあるが、そこからは漆黒の闇だけが覗いている。どうやら二階もあるようで、広大な一階ホール部分の両端に階段がある。
逆にそれしかない。本来あるべき出口はなく、なぎさ達のいるホールは階段が見受けられる程度であった。
それと同時に全員がほぼ反射的に変身アイテムへと手を伸ばす。が、
「「「「「!?」」」」」
ない。いつも肌身話さず所持しているはずなのに。
『ようこそプリキュアの皆さん』
空間全体に響き渡るかのような声。直接的な音源の所在もわからぬまま、ただ耳を傾ける。
「誰!?」
なぎさが叫んだ。だが男とも女とも取れる中性的な声は、聞く耳持たずに淡々と告げる。
『これからあなた達には、ある勝負をしてもらいます』
「勝負……?」
誰からともなく、そんな呟きが漏れた。
「生身で戦えと?」
代表としてか一番年長のゆりが、一番の懸念事項を聞く。返ってきたのは、耳を疑う内容だった。
『もちろんそんなことはございません。戦っていただくのは―あなた達同士です』
場が凍りつく。変身もせずに?戦う?プリキュア同士で?混乱する一同に、『声』は録音された音声の如く続ける。
「まさか殴り合えとかいうんじゃないわよね?」
今度はかれんだった。当然、勝負内容も気になる。
『あなた達には……これで勝負してもらいます』
ゴトッ、と背後から何かが落ちる音がした。振り返った先にあったモノは、
「これは……」
「雀卓、ね」
多くが『それ』が何か理解しかねていたが、数名ほどは知っていた。
雀卓が七つ、椅子が二十八。今まで何もなかった場所に忽然と現れたのだ。
「雀卓って麻雀の?」
「私達ルール知らないけど……」
いきなりそんなモノを出されても、ルールがわからなければ意味がない。なぎさは乱雑に転がっている牌のひとつを掴みあげる。
(うーん……なんて書いてあるの?これなんか真っ白だし……)
困惑するプリキュア達の悩みを見透かしたかのように、『声』が言う。
『恐らく皆さんはルールがわからないでしょう……しかし心配には及びません』
言い終わるが早いか、閉めきった屋内に一陣の風が吹く。
「んっ……!」
思わず顔をしかめるが、それも一瞬だった。他のプリキュアも、何事もなかったかのように周りを見回している。
「もう……いったいなんな、の、よ……?」
特に理由なく、掴んだ牌を見た時だった。
(あれ?……これは……
何故、わかる?
何故、読める?
たった数秒前まで読めなかった、わからなかった麻雀のルールや牌……それがすべてわかる。
考えられるのはただひとつ。
「脳に直接干渉されたかしら?」
なぎさに声をかけたのはゆりだった。その長身から見下ろすような言い方に、威圧感を感じる。
「干渉って……あの風ですか!?」
「それ以外に考えられる?」
なぎさはぐうの音も出なかった。周りも同じような反応を見せている。
「プリキュアになってから……大抵のことには驚かなくなっていたけど、これにはさすがに、ね」
そう言い残してゆりは去る。残されたなぎさはどうすることもできなかった。
重苦しい沈黙が場を支配する。それを破ったのは随一のお調子者、来海えりかだった。
「ねえねえやろうよ!あたしちょーやってみたかったんだよねー麻雀!」
もう我慢できないといったように、えりかは手近な雀卓に据え付けられた椅子に座る。
「ほらほら!どうせ勝たないと出られないとかそんなんでしょ!じゃああたしが一番にここから脱出する!」
こういう場面で、えりかのような明るさは大事だった。わずかに周囲の空気も和み、つぼみにいたっては苦笑すらしている。
問題は誰が座るか。いくらルールがわかったとはいえ、こんな不気味な場所でいきなり麻雀を打てと言われて無理がある。
『では、ルールを説明します』
見計らったかのように、『声』が洋館に響き渡る。
『先程申されました通り、麻雀に勝てばこの出口なき洋館から脱出ができます。ですが負ければ……処分させていただきます』
処分。
なぎさには、この言葉がやけに重く心にのしかかった。隣のほのかも不安そうであることに違いはない。
『麻雀自体について捕捉を。対戦相手はくじ引きによって決定致します。一回きりの半荘戦。敗北の条件は二つ。ひとつ目は純粋な敗北、つまりこの半荘戦で得点の低い二名が脱落となります。ふたつ目はトビ、いわゆるマイナスです。勝負中に点数がマイナスになった方は問答無用で脱落。その場合残った三名が勝ち抜きとなります』
『ダブル役満はなし。ですが四暗刻単騎ツモのみ認めます。ローカル役はなし、質問は適宜受け付けます。では、対戦表です』
バンッ、と何かホログラムのように宙に浮く白い壁紙。そこには七つの正方形が描かれており、その前後左右はまだ空白だ。
『これより抽選を開始します』
一旦宙に浮いた壁紙が消える。それも一瞬、すぐさま再表示されるとそこにはもう名前が入っていた。
まとめると
夏木りん
来海えりか
黄瀬やよい
美翔舞
美墨なぎさ
緑川なお
星空みゆき
雪城ほのか
日野あかね
山吹祈里
蒼乃美希
日向咲
夢原のぞみ
水無月かれん
明堂院いつき
桃園ラブ
青木れいか
調辺アコ
黒川エレン
秋元こまち
春日野うらら
美々野くるみ
東せつな
月影ゆり
花咲つぼみ
九条ひかり
南野奏
北条響
このようにわけられた。
「よっしゃーこいやー!」
対戦相手が決定した。中でもえりかは早く打ちたいようで、他の三人を催促する。
「仕方ない……」
「えっと……席はどこでもいい、んだよね?」
呆れた様子のりんと、おどおどするやよいがそれぞれ席につく。だが残る舞がいない。
「こらー!マイマイどこだー!」
「ま、まいまい……」
人混みをかき分けて舞が登場。四人が揃った、その時だった。
ガシャン、と椅子から鉄の拘束具が現れ、四人の腰を固定する。
「むがー!なんじゃこりゃー!」
「え……ちょ」
「うわわわ何これえぇ」
「……っ」
今まさに他の雀卓へつこうとしていた面々が、顔を青ざめながら飛び退く。
『不正防止のため、身体の固定にご協力ください』
再び『声』が響く。
「不正防止って……ちょっとやり過ぎな気もするけどねえ」
りんは半ば諦めたように座席に背中を預ける。それに続く形で、舞も抵抗をやめた。
「どーせあれでしょ?変身アイテムがないってことはあいつらでしょ!えっとあの……オコとザック?」
「ココとナッツ。別に怒ってないしサッカー日本代表の監督でもない」
えりかの盛大なボケにりんが訂正を入れる。
「ありゃ間違えた。んじゃ早速始めよっか!」
「はいはい」
「みっつずつ……みっつずつ……」
「……」
ついに第一局が幕を開けた。
親はえりか。彼女から見て
「それじゃ飛ばしていくよ!リーチ!」
「はやっ……四巡目!?」
(しかも捨て牌全部字牌じゃんよー……ええい、当たったら事故!)
意を決してりんは手を進めるために、丸い模様が五つ描かれた牌―
「ほほー、いきなりど真ん中とは勝負して来ますなー」
「はは……こんなの読めないっての……」
続いてやよいの番。おっかなびっくり牌を切ってセーフ。舞は動じた素振りも見せずにノータイムで合わせ打ち……リーチしている者の捨て牌と同じもの、いわゆる安牌を切る。安牌に対しては和了ることができないルールだ。
「ま、いいさ。あたしにはまだ一発が……」
麻雀でリーチしたあと次の引きで和了ると、『一発』という役がつき得点が上がるのだ。
「おりゃ!……ちぇー」
気合いと共に牌を持ち上げたが、残念ながら一発は実らなかったらしい。渋々えりかは牌を置く場所、
だが切られた牌が大問題。五巡連続で字牌を出してきたのだ。
(せめて読める所にしてよー……ああ……しかも四筒……)
自分の運の悪さを呪いながら、りんは不用意に四筒をツモ切りした。
「そこだ!ロン!」
「……マジで?」
意気揚々と和了りの宣言をするえりか。続いて裏ドラの確認という手順に入る。ここの結果によっては、点数が上乗せされる可能性もある。
「裏は……なしっ!」
「ふぅー……」
りんの祈りが通じたか、裏が乗って大量失点は避けられたようだった。
だが親からの直撃とあればいくら取られるかわかったものではない。
えりかの点数宣告は……
「
「そんなもんかい!」
先程までのハラハラ感を返せとばかりにりんが突っ込んだ。
2000点程度 、しかも最序盤での失点とあればそこまで深刻に考える点差ではない。
しかしルール上えりかの親番は続く。
「ガンガンいくぜー!覚悟しろ!」
……だがそうもうまく行くはずもなく。
「あれ?それ出るの?……ロン、満貫で8000ねー」
「うぎゃー!」
よくも悪くも自分を貫き過ぎたえりかは、逃げるということを知らなかった。
リーチをかけては華麗にかわされ、見え見えのリーチに突っ込んでは直撃をもらう。そしてとうとう南一局にして、りんから同じ種類の牌で作る役、
順位としては攻め時と守り時を心得、終始安定した展開のりんがトップ。やよいは親番でバレバレのリーチをかけながらも、えりかが連続で方銃したため最終的な収支はプラスとなり二位。舞は時に臆病とも取れる守りで、一度も和了らなかったものの逆に一度も方銃しなかった。結局失点0、25000点のまま勝負を終えた。
「まあ……えりかの自爆だね、これは」
りんが総括すると、周囲が少し笑いに包まれた。他のプリキュア達はギャラリーとして勝負を見守っていたため、二十四名が囲んでいることになる。
「もー!負けたー!罰ゲームならさっさとしろー!」
えりかがじたばたと暴れる。だが金属製の金具のせいでびくともしない。
そして、あの『声』が聞こえた。
『対局の終了を確認。敗者来海えりか。ルールに基づき点数マイナスの一名を処分します』
事務的に告げると、座席のひじ掛けの部分からワイヤーらしき糸が飛び出し、えりかの両腕を拘束した。
「うわっ、ちょっと!痛いって!」
ワイヤーは肉に食い込むほど強烈に締め上げた。だが耐えられないほどの痛みではないらしく、大人しくもぶつぶつと文句を言っていた。
そんなえりかに明確な変化が訪れる。
「だからさーこんな……あれ?背中に何か……」
どうやら背中に違和感があるようで、しきりに背後を向こうとするが動けない。
「えりか、どうかしましたか?」
親友のつぼみが、心配そうにえりかに駆け寄る。そして顔を覗きこむようにして話しかけた。
「いやさ、なーんか背中に当たって……あいたっ!」
えりかの表情が苦悶に歪む。グッと背中を反らそうとしているようだが、拘束具がそれを許さない。
「注射、かな。何か刺さって……ひぎっ!?」
「えりか!?」
苦悶から苦痛へ。歯を食い縛るえりかにつぼみはどうすることもできなかった。
「つぼみ!これ取って!」
「は、はいっ!」
慌てて拘束具の取り外しに挑戦するつぼみだったが、幾重にも巻かれたワイヤーがそう簡単に切れるはずがなかった。しかも今は生身の状態だ。か弱い少女一人でどうこうできるものではない。
「あぐ……つぼみ……早く……!痛い!痛い痛い痛い!」
「だ、誰か!手伝ってください!」
つぼみの悲痛な叫びに弾かれたように、少女達は一斉にえりかに駆け寄った。未だに座席に固定されている三人も、心配そうに見つめている。
「いだい!刺さってる!背中に何か刺さってぐぎゃああああああ!」
とうとう泣き叫ぶほどになったえりかに一同混乱しながらも、必死で拘束具の解除を行う。
「えりか!もう少しです!頑張ってください!」
もう自分一人では何もできないつぼみは、目尻に涙を浮かべながら親友を励ます。だがえりかの叫びはどんどん激しさを増していく。
「ぎゃああああああ!お腹が!お腹があああああ!死ぬ!死んじゃううううううう!」
「えりか……!えりか……!」
祈るようにつぼみは手を握りしめる。それも空しく、拘束具の取り外しは遅々として進まない。
そして、
グボッと、えりかの腹から巨大な包丁が飛び出し、鮮血がつぼみの顔面を紅に染め上げた。
凄絶。眼球は飛び出さんばかりに見開かれ、開いた口からも大量の鮮血がこぼれる。しばらく痙攣したあと……ピタリ、とえりかは動かなくなった。
誰もが己の目を疑い、死体となったえりかから目が離せない。硬直した時間を動かし始めたのは、またしてもあの『声』だった。
『処分完了。来海えりかの絶命を確認。これより勝者を解放します』
機械的な音をたてて、三人を戒めていた拘束具が外れる。それと同時に、つぼみの絶叫が館内を席巻した。
その後の行動は様々だった。 怒りに身を任せ、謎の『声』に対して抗議する者、 館内を当てもなく散策する者、泣きはらす者、夢から覚めようと必死に目を瞑る者……。
特に対局した三人はショックが大きかったようで、やよいは精神的に壊れたように泣き狂い、同じチームの四人から介抱を受けている。りんは今後についてかれんと相談し、舞にいたってはもう見ていられないとばかりに、階段を使って二階の一室にとじ込もってしまった。
つぼみはそのどれとも違い、えりかの死体の隣でぼんやりと立ちすくんでいた。
スッと、横から濡れタオルが差し出される。顔を向けるとそこにはなぎさが立っていた。
「なぎさ、さん」
「水道とトイレはあったから……顔、拭きなよ。血まみれだよ?」
優しいお姉さんのように、なぎさはつぼみに言った。
「ありがとう……ございます……」
ふらふらとそれを受け取り、顔面の血を拭き取る。たちまちタオルの一面が赤く染まった。
「えりかの……血」
「……行こう」
半ば引きずられるように、つぼみはその場を後にした。
そして、今までいくら呼んでも沈黙を守り続けていた『声』が、館内に響く。
『皆さんに通達です。あと三十分以内に対局を始めてください。実行しない場合、全員失格とみなし処分します』
まずはここまで読んでくださった方に感謝を。
さて、プリキュアオールスターズ~Mahjong for survival~いかがでしたか?
えりかファンの皆様ごめんなさい。えりかは話に絡めやすいのですが、どうもこの殺伐とした雰囲気にマッチせず早々にご退場願いました。ですが敗北=死という、この作品の大前提を身をもって教えてくれるという大役でした。
序章ということで状況描写に力を入れ、麻雀シーンは少なめです。次話以降、本格的な命のやり取りへと発展していきます。
気になるのは分量。序章でこの長さでは、完結した時に一番長かった話がこの序章という馬鹿馬鹿しい結果になりそうな……。
何はともあれ、手を抜かずに完結を目指すのに変わりはありませんので!
ではまた機会があれば、次話でお会いしましょう。
あ、ひかりが一切喋ってない。