プリキュアオールスターズ ~Mahjong for survival~   作:りろぶこん

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頑張りました削ぎ落とし作業。
いつも通り多くは後書きで語るとしましょう。


第一話~地獄へその足を踏み入れる者・後編~

(ほのかの言った通りに……)

 なぎさはひとまず作戦がうまくいったことに胸を撫で下ろした。

 まず席の配置。なぎさから見て半時計回りになお、ほのか、みゆきの順。二人は意図的にこの位置取りを選んだ。理由としては、スマイルチームの分断。

 

 プリキュアとして最も多くの経験を積んでいるなぎさとほのかなら、対面同士で座ってもアイコンタクト等で意志の疎通は図れる。だが緊張でガチガチのなおと、恐怖で固まったみゆきには『隣に敵しかいない』という状況が予想以上にこたえる。

 

 残りわずかとなって一斉に座られてはこの位置が確保できる保証はない。そのためあえて率先してこの死闘に挑んだのだ。

 そしてこの位置取りのもうひとつの理由、それは、

「ポン!」

 開始早々、親のなぎさが切った何も描かれていない牌―白を、ほのかが鳴きと呼ばれる戦法で取る。

 

 これで『役』が確定し、ほのかは一気に戦いやすくなる。そしてこれにはもうひとつ、強烈な効果があった。

「ぐっ……!」

 見れば、なおが伸ばしかけた手を悔しそうに引いていることに気づく。

 ツモの食い取り。

 これでなおは、周囲と一巡手が遅れることになる。 だが二人のコンビネーションは止まらない。

 

 

 わずかに迷い、ほのかが牌を切る。

「それポン!」

「ひっ……」

 みゆきが慌てて手を引っ込める。鳴いたのは六索(ローソウ)。緑色の竹が六つ描かれている。

 

 これを鳴くことに、なぎさには直接的な利益は少ないが、大きく見ればまたもツモを食い取ったことになる。

(作戦通り……!)

 これでみゆきとなおは一巡何もできず、逆になぎさとほのかは手を進めることに成功した。

 

 そしてそのわずか数巡後、

「ロンです。白のみ1000」

「う……あ……」

 ツモを食い取り、ほとんど何もさせないままほのかがみゆきから直撃を奪う。

 

 東一局で親以外から1000点の直撃。まったくと言っていいほど気にする必要のない点数なのだが、みゆきにとっては点棒はまさしく『命』そのものだろう。それを奪われるのは恐怖以外の何でもない。

 なぎさの親が流れる結果となったが、結果的に作戦は成功した形だ。

 

 東二局、ここも終始ペースは変わらない。ツモを食い取り安手で和了る。その早さと巧さにみゆきとなおはついてこれていない。

「ロン、断幺九(タンヤオ)のみ。1000点もらおうかな」

 今度はなぎさだった。ほのかのように手際よくとはいかなかったものの、比較的早めになおから直撃を奪う。

 

 ハイペースで局が進む。わずか十分足らずで東三局まで入っていた。そして、ほのかの親番である。と、ここでイレギュラーが生じる。

「チー……」

「……?」

 ほのかの第一打である九萬(チューワン)……しかもよりによって一番役に絡めにくい老頭牌(ロウトウハイ)を、ポンではなくチーでみゆきが鳴いたのだ。

(何か作戦があるのかしら……?)

 表情を伺い、確信する。みゆきは完全に切羽詰まっていた。

 

 恐らくは、恐怖心がやらせた意味のない鳴き。なぎさもわかっているようで、特に動揺した様子もなく一枚切る。そこで、

「ポ、ポン!」

 なぎさから出た六索をポン。これもまた訳のわからない鳴きだった。

 

(流れを変えるでもなく、手を進めるでもない……単に自分で退路を狭めているだけね)

 哀れむようにほのかはみゆきを見る。そこにはもう何日も寝ていないような形相の少女が牌を凝視していた。

 

 だが当然、何事にも運が絡むことは往々にしてある。

 取り憑かれたように鳴きを繰り返すみゆき。そしてとうとう最後の鳴き―四回目にして女神が微笑んだか。

「リーチ!」

「ポン!」

 なかなか手の進まないなぎさとほのかを尻目に、順調に手を伸ばしていたなおが七巡目にして白を切ってリーチをかけてきたのだ。

 

 それが偶然にもみゆきの手元に二枚あったらしく、役を確定させると同時に二人が聴牌(テンパイ)―残り一枚で和了れる状態になったのだ。

 さらに、結果論だがこの局でなぎさとほのかが主軸に置いた『ツモの食い取り』を相手にしてやられることとなった。

 

 

「えへへ……聴牌……」

 不気味な笑いを浮かべながら、みゆき二枚しかない内の片方を切る。これで残った方が当たり牌だ。

(うーん……)

 なぎさは迷っていた。いきなり同時にリーチをかけられたようなものである。鳴きによってなおの一発は消えたものの、やはり振り込みたくはない。

 

(警戒するのは当然リーチの方……なんだけど)

 普通ならば四度も鳴き、裸単騎となった相手の待ちなど読みようがない。そう、普通ならば。

(よりによって白がドラなんだよなあ……)

 

 ドラ。これは毎局設定されるいわゆるボーナス牌のようなもので、ドラを含めて和了ると得点が上がるのだ。

 みゆきが直前に切った牌は『東』。単騎待ちなど和了る確率が低い待ちならば、それを少しでも上げるために読みにくい牌で張るはずだ。

 

 それが字牌。一般的に二枚以上持たないと意味をなさない字牌は、自分が持っていれば残り最高で三枚。誰かが三枚固めて持っていなければ、よほどのことがない限りその字牌は出ることになる。

 

 だがそれをしていない。何かよほど自信のある待ちか、あるいは……、

(赤ドラ、かな)

 麻雀には毎局設定されるドラの他に、最初からドラとして機能する牌がある。それが赤ドラだ。

 一般的には漢数字が描かれた萬子。丸い模様で数を識別する筒子。そして竹が描かれた索子のそれぞれ『五』が赤く塗られてあることが多い。

 

 そして申し合わせたように、手牌で赤い筒子が浮いていた。

(後々使うかもって取っておいたけど……失敗だったかな)

 今さら悔いても仕方ない、となぎさは改めて河を覗く。なおは既に五筒を切っており、これは安牌となる。が、みゆきの方には五筒が切られた形跡がない。

 

 手を進めるだけなら迷わず赤五筒切りだろう。だがもしそれがみゆきの当たり牌で、それも赤五筒だったら……

(12000……無視できないねこりゃ)

 様々な可能性を示唆し、彼女が選んだ決断は。

「東切り……っと。はは……今回ばかりは逃げるかな」

 みゆきが出してもなおは和了らなかった。それから安牌と判断し、なぎさは東を切った。

 

 だが結局。

「よしっ、ツモ!」

 なおが自分で引ききり、今局最初のツモ和了りを決める。

「えっと……立直、自摸(ツモ)、ドラ……ふたつ!2000-3900!」

 さらに上手く裏ドラが乗り、点数が上がる。

 

 この場合親が不利だった。親は自分以外がツモで和了った場合、他より多くの点数を払わなければならない。

「……」

 苦々しい表情で3900点分の点棒を出すほのか。だが一番荒れたのはみゆきだった。

 

「ひどいよなおちゃん!せっかく聴牌してたのに!」

「ええ……そんな……」

 珍しくなおが押される。卓を叩いた影響か、みゆきの待ちが露になった。

(赤五筒……ひゅー……)

 自分の判断は間違っていなかったと安心するなぎさ。一方みゆきは暗い表情でぶつぶつと何かを呟いていた。

 

 東四局、嫌なタイミングでみゆきに親が回る。

「なおちゃん……許さない……」

 案の定、嫌な予感は的中する。

「リーチ!」

 みゆきがリーチ宣言として千点棒を置く。先ほどの遅攻が嘘のような攻めだ。

(二巡目……!冗談キツイって……)

 こうなるとまず割りを食うのがなぎさだ。親の速攻リーチを一番最初に受けて立つことになる。

 

 頼みの綱のほのかも、小さくかぶりを振るだけだった。

(ああもう!当たったら事故よ事故!)

 乱暴に牌を切る。幸いにして一発直撃ということは避けられたようだった。

「こんなの……わかるわけないよ……」

 

 今度はなおが顔面蒼白で固まっていた。安牌が見当たらないのか、諦めたように牌を切った。

 やはり交通事故というのは、忘れたころにやってくるものである。

「ロン!一発!」

 みゆきが声をあげる。なぎさとほのかから見れば仲間割れだが、そもそもこの二人以外に仲間意識など最初から存在していなかった。

 

「立直、一発、断幺九、三暗刻……」

 次々と並べられる役に、なおの顔色がどんどん悪くなる。

 

「ドラ……みっつ!八飜!親倍だよ……24000!」

「うわぁ……」

 これには同情というより、よくそんなに良い手が揃ったな、という純粋な賛辞の言葉が出そうだった。

 一方なおはトップから最下位へ。残り点棒もわずか7900点となってしまった。

 

 こんな隙を、ほのかが逃すはずがない。

「なぎさ」

 牌山の再構築の途中、ほのかは『最後の作戦』の決行を告げる。

「……わかった」

 可哀想だが仕方ない。これも生き延びるためなのだ。

 

 東四局一本場。序盤から互いの手を探り合う展開、誰も鳴きを入れようとしない。

 最下位から逆転を期すなおは別にしても、トップのみゆきが動かないのは少々意外だった。しかしそれは好都合。

 

「……っ?」

「……っ!」

 アイコンタクトを交わし、まずはほのかから仕掛ける。

「リーチ」

 十一巡目にして、局が動き始める。続くみゆきの打牌はツモ切りだったが結果的に安牌。そして、なぎさも動く。

「リーチ!」

「あぅ……」

 

 多家リーチ。二人に挟まれる形になったなおは、

「こんなのわかるわけないよ……直球勝負だ!」

 バチン!と激しい打牌、結果はセーフ。当然ほのかはリーチをかけているので和了らなければツモ切りだ。もちろんなぎさとは刺し違えることのないよう、事前に打ち合わせ済みだ。と、ここでまたしても予想の斜め上を行く出来事が起こる。

 

「リーチ」

 なんとみゆきまでもがリーチ包囲網に参加したのだ。トップがわざわざ勝負に出るとは驚いたが、誰より驚いている……いや怯えたのはなおだった。

(こりゃ……勝負あったかな)

 なぎさは黙って打つ。見た時にみゆきの安牌ということを確認しているので心配はない。

 

 死の恐怖からかガクガクと身体を震わせるなお。見ているのはみゆきの河ばかりだ。

「ぅ……ぁ……」

 震える手で安牌を切る。だがみゆきに対しての安牌は、なぎさとほのかの待ち牌でもあった。

 

「「ロン、12000」」

 綺麗に声が重なる。そして、高らかに宣言した。

「「高得点・一点集中多家栄和(プリキュア・マーブルスクリュー)!!!」」

 

 跳満のダブロン。これを食らってはなおはひとたまりもなかった。点数表示がみるみる減って行き……ついにはマイナスへ移行した。つまり……敗北。

 

「嫌だ!死にたくない!弟が!妹が!家族が待ってるんだ!」

 いざ死を目の前にすると、誰でも取り乱すものだ。だが泣き叫んだところで何かが変わる訳でもなく、無慈悲に『刑』は執行される。

 

「みゆき!お前は絶対許さない!死ね!地獄で待ってるぞ!があああああああ!」

 人間の本性ともいうべきか、汚い言葉を使いながら身体を突き進む刃に悶えるなお。

「があああああああ!ぐぎっ!ああああああ!」

 もう罵詈雑言を吐く余裕もないようだった。この殺し方の本当の怖さは一思いに殺してくれないところだ。

 

 ゆっくりと進む刃の激痛に悶え苦しみながら死んでいくこととなる。

 

 まもなく、腹を背後から貫かれた凄惨な少女の死体ができあがった。




まずはここまで読んでくださった皆様に感謝を。
……………申し訳ありません。予想以上の分量でして……もう一話、間接章のような形で挿入させていただきます。
さて、本編の方ですが。まずは美翔舞ことまいまいの黒い本性が明らかになりましたね。序章での引きこもりは悲しんでいたのではなく自分がどう生き残るか算段を立てていた……とわかっていただけたら筆者はにやけ顔です。
次に個人的なことですが、このプリキュアオールスターズ~ Mahjong for survival~は結構真面目に書いておりまして、ある意味『勝負の一作』なのですが……どうも片手間で書いたもう一方の作品の方が評価されているようで、私自身なにやら複雑な心境です。
とはいえ、たとえ閲覧数が一桁に突入したとしても、完結を目指すことに変わりはありませんのでご安心を。あ、誰も期待してないか……
では今回はこの辺りでお別れです。機会があればまた次話でお会いしましょう。
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