プリキュアオールスターズ ~Mahjong for survival~   作:りろぶこん

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もうひとつの方の作品を書き上げる間、こっちがおろそかになっていました。
いつも通り多くは後書きで語るとしましょう。


接続章~教え導く者の苦悩~

「勝っ、た……?」

 拘束具が解かれた後も、しばらくなぎさは呆けたように宙を仰いでいた。それを上から覆い被さるようにほのかが覗き込む。

「なぎさ、お疲れ様」

「う……ん」

 親友の手を借りながら、なぎさは椅子から立ち上がる。

 生きてる。

 このことを今ほど痛烈に実感したことは初めてだった。それと同時に、気づいたことがあった。

 

(みんな……慣れ始めてる)

 これはなぎさ自身、最も危惧していたことだった。先ほどなおが激痛に悶えている途中も、耳を塞いだり顔をしかめたりはすれども、えりかの時のように泣き叫んだり、取り乱したりしていない。誰一人として。

 

 こんな異常な状況に慣れれば人を殺すことになんの疑問も持たないようになる。人間らしい心がなくなり、殺戮マシンへと変貌する。

 かく言うなぎさも例外ではなかった。えりかが死んだ時はあれだけ気分が沈んだのに、今ではなおの死から数分で平常心だ。

 

 そんな自分が怖かった。

 

 一方ほのかは、椅子に座ったまま動こうとしないみゆきに話しかけていた。

「みゆきちゃん?大丈夫……じゃない、よね」

「どうしよう……あたし……なおちゃんを……」

 ガタガタと震えるみゆきを、ほのかはただ抱き締めるしかできなかった。

 

 そんなみゆきを見て、なぎさの胸に何か小さな『刺』が刺さったような感覚があった。

 まるで自分は仕方なくやりましたという被害者気取りの言動に、感じてはいけない何かを……。

 

「ねえ」

 もう、我慢できなかった。

「あ、なぎさ?何か言ってあげて……」

「うん、言いたいことは山ほどあるよ」

 そう言うと、躊躇せずにみゆきの横っ面を強烈に張った。

 

 パチィン……と乾いた音が響く。これには一同硬直し、やられた本人が一番目を丸くしていた。

「ちょ!?なぎさ!?」

 ほのかの非難も無視する。こればっかりは譲れなかった。

(何やってるかな……あたしは……)

 

 心に表情というものがあれば恐らく苦笑しているだろうな……そんなことを考えながら、表面上はいたって真面目に告げる。

「被害者気取り?」

「え……?」

 まったく持って意味がわからないといった様子のみゆきに、なぎさは厳しい口調で言う。

 

「なおちゃん……だったかな。この娘は『私達が』殺したの。もちろんあなたも含めて」

「えっ……ちがっ……」

「なぎさ!」

 ほのかの制止も振り切り……いや、完全に無視して続ける。

 

「なのにあたしは無関係、他の人がやりました。自分はやってません……そんな理屈が通るとでも?」

「そんなこといわないで!なおちゃんはあたしの大切な友達で」

「じゃあ」

 発言を遮るようになぎさは割り込んだ。そして言う、決定的な一言を。

 

「自分が代わりに死ねた?」

 

 あえて恐怖心をあおるように、鼻先が擦れるほど近くでそう言った。無表情も相まって、その威圧感は相当なものだった。

 

「……ぁぅ」

 グルグルと瞳孔が拡大縮小を繰り返すのがなぎさから見て取れた。そしてパタッとほのかに体重を預ける。あまりの恐怖とショックに気絶したのだ。

「あたし達はね、まだ中学生なんだよ」

 その言葉が届かない事を承知でなぎさは続ける。

 

「誰かのために死ぬなんて……簡単にはできないよ」

 そこまで言ってなぎさは背を向けた。そのまま階段を使って二階の一室に向かう。

 誰も何も言い出せなかった。ある意味、全員がなぎさと同じことを考えていたのかもしれない。

 生きるには、誰かを殺してでも。

 パタン、となぎさが二階で扉を閉める音がやけに大きく響いた。

 

 対局前に使っていた部屋が、やけに広く感じる。作りは簡単で、備え付けの洗面所とトイレ、それにシングルサイズのベッドと小さなテレビ。リモコンが見当たらないが、気にする気分ではない。

 なぎさは洗面所に足を向けた。顔を洗って、置いてあったタオルで拭く。いくら拭いても汚れが落ちない気がして、タオルを水に沈めて濡らしてから顔に擦り付けた。

 

 このまま窒素死できたらどんなに楽だろう?

 一瞬脳裏によぎった考えを払拭し、鏡に映る自分と向かい合う。そこにはいつものなぎさではない、人一人殺してきた後の……妙に落ち着き払った美墨なぎさがいた。

 

「……っ!」

 結局は、舞が正しかったのだ。

 甘さを捨てろ。そうしなければ死ぬぞ。そう警告していた。

 そして、館内すべてに響き渡るあの『声』がまた次の生け贄を催促する。

『残り三十分以内に次の対局を始めてください。実行しない場合は―――――』

 

「……ああっ!」

 衝動的に、なぎさはタオルを床に叩きつけていた。

 べちゃっ、という水っぽい音は、あの刃が人間の腹を食い破って出てくる音によく似ていた。




まずはここまで読んでくださった皆様に感謝を。
……すいません、こんな短い文章が接続章だなんて……恥ずかしい限りです。
一応なぎさを主軸に置いています。人間の『慣れ』はどんな状況でも適応されますね……それがたとえ血と肉が舞う戦場であっても、です。
それでは今回はここでお別れです。機会があればまた次話でお会いしましょう。
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