プリキュアオールスターズ ~Mahjong for survival~   作:りろぶこん

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なんとか一ヶ月以内に更新することができました。
サブタイトルが相変わらずの迷走っぷり。もうこれいらないんじゃ……。
いつも通り多くは後書きで語るとしましょう。


第三話~愛を制せ水の如く・前編~

 ポーン、とスピーカーなど見当たらない部屋に、あの『声』が響く。

『対局、決着しました。勝者、日野あかね、山吹祈里、日向咲。生き残った皆様、おめでとうございます』

それを聞いて、青木れいかは急いで扉を開けようとする……が、押しても引いてもびくともせず結局は扉の前で立ち尽くした。

 

 もう決着はついたのか?先ほどの『声』には確かに『勝者』の後にあかねの名が聞こえた。それが真実だとすれば、敗者……つまり死者はフレッシュチームの蒼乃美希となる。

「あかねさん……」

 何をしても扉が開かないとわかると、それ以上足掻かずに背を向けた。視線の先には不安そうにれいかを見つめるみゆきとやよい。

 すると、ガチャ……と扉が開く音がした。続いて疲れきった少女が暗い声で帰還を告げる。

 

「……戻ったで」

「あかねさん!」

 間髪入れずれいかが駆け寄り、あかねの無事を確認すると、ほっと表情を綻ばせた。

「よかった……無事だったんですね!」

「ああ……なんとかな」

 

 どうやら外からしか開かない仕掛けだったようで、あかねが扉を開くのに苦労した様子はない。だがもし参加者が一名のチームが敗れた場合どうなるのか……答えは出ない。

 

「なあれいか……」

 れいかを押し退けるようにして、あかねがベッドの方へ進む。そしてふらりと仰向けに倒れこむと、右手で目を覆った。

 

「はい、なんでしょう」

「あかねちゃん……?」

「はわわ……」

 れいかに続いてみゆきとやよいも心配そうにあかねを見つめる。当のあかねは普段からは考えられないような弱々しい声音で、

「フレッシュの美希はんにな……最後の止め刺したのな……ウチやねん」

 

 シン……と室内の温度が数度下がった気がした。

 誰もが言葉を失うなか、あかねはそれを気にせず続ける。

「あん時はな……勝負の最中やったけん、それも勝つためには必要なんやって割りきれた。でもな……今になって……ウチが殺したんやって、背筋が凍るようでな……」

 

「あかねさん」

 ドロドロとした負の感情を吐露するあかねに、

れいかはピシリと言い放つ。

「気にしてはいけません。これも勝負の世界での結果。たまたま今回はその対価が命だというだけです」

「……」

 

 急にあかねは押し黙った。そしてゆっくりと体を起こすと、ベッドに腰掛ける格好になる。

 少し、無音の間があった。

「さっきな……」

 その間を終わらせたのも、あかねだった。うつむきながら言葉を紡ぐ。

「祈里はんが気になること言ったはったんや」

「祈里さんが……ですか」

 

 嫌な予感がした。チームが違うのもあり、今まで何度かプリキュアとして共闘したことはあるがあまり絡んだことはない。それでも、何か祈里とはあまり深く関わりたくはない……そう、本能が呼びかけていた。

 

 その祈里から何か吹き込まれたか?だとしたら何を?

 わずかながら、自分の心臓の鼓動が早まっているのを感じた。

「れいかは……みんなは……最後まで仲間でいてくれるか?裏切ったり、せえへんか?」

「……っ!?」

 

 ギチギチと、錆び付いた機械人形が無理矢理首を回すようにして、れいかの顔を見る。

 その表情は筆舌に尽くし難い、泣きそうになりながら引きつった笑みを浮かべるあかねの姿だった。

 

「なあ……なあ……どうなんや……?」

「も……もちろんです。わたくしを含め、みゆきさんもやよいさんも、最後まであなたの味方ですよ」

 精神的にかなりショックを受けていると判断したれいかは、極力優しい言葉を選んで語りかける。だが返ってきた答えは予想の斜め上を行く。

 

「やっぱり……やっぱりな……」

「……どうしました?」

 急にあかねがガクガクと震え始める。何事かとれいかが肩にやんわりと手を置いた。

「触らんといて!」

「……え?」

 バチン!とれいかの手を払いのけ、弾かれるように立ち上がる。そして鬼の形相でれいか達三人に向き合った。

 

「どうせ……どうせそうやって騙すんやろ?美希はんもギリギリまで祈里はんを信じて裏切られたんや……!気づいた時にはもう遅くて……ウチを嵌める気やろ!れいか!」

「違います!そんなつもりは……」

「黙りいや!……誰も……誰も信じへんで!信じたところで裏切られるんや!」

 

 血走った眼でそう言い捨てると、そのまま逃げるようにして部屋を飛び出した。

「……」

 残された三人は、しばらく口を開かなかった。

 

「チッ……」

 美翔舞は『声』の通達を聞くなり舌打ちした。

 咲が生き残った?プレッシャーを力に変えられそうなあかねにフレッシュチーム二人を相手取り、あの咲が?

 

 普段の清楚な美少女という雰囲気をかなぐり捨て、裏の策士としての顔を見せる舞。

「たっ、ただいまああああああ」

 そんな最中、舞が開けようとしても開かなかった扉を蹴破るようにして、パートナーである日向咲が転がりこんできた。

 

「あ……お帰り咲。勝ったんだね」

「よ、よかった……助かった……」

 カタカタと奥歯を震わせながら、改めて『生』を実感する咲。

 その震えを優しく包み込むようにして、舞が咲の肩に両手を置く。そして下から除きこむように目線を合わせながら、

「お疲れ様、よく頑張ったね」

「ま……舞……」

 つい先ほどまで命のやり取りをしていた咲にとって、今の舞の一言はまるで天使の労いのようにも感じられた。

 その裏に隠された、悪魔のような一面にも気付かずに。

 

 直後、部屋の外……つまり別の部屋から激しい言い争いの声、続いて乱暴に扉を開けた音が響く。

「……?何かな……」

 精神的に落ち着いたらしい咲が、外の異変に早速首を突っ込もうとする。

 舞としては外部との接触はあまり好ましくないのだが、ここで無理に咲を引き留めるのも不自然だ。

「……」

 結果、ここはおとなしく咲を泳がせることにした。

 

「何が……あれ?あかねちゃん……」

 ピクッ、と舞の眉が動いた。

 何故あかねが?先ほど闘牌は終えたはず。ならば今外にいる必要はないはずだが……。

 舞が色々な憶測を飛ばしていると、咲が思わぬ行動に出る。

 

「うん……うん、そうか……じゃあこっちに来なよ」

 そう言って咲は扉を大きく開くと、いたって自然にあかねを部屋へ招き入れた。

「ちょ……!?咲!」

 これにはさすがに舞も非難した。元々咲が勝ち抜くなど予想しておらず、一人で作戦を練る計画が壊されたのだ。それからさらに面倒な事案が増えるなど勘弁願いたい。

「そう言わないでよ舞。あかねちゃんはさっきの勝負で色々あって……誰も信じられなくなっちゃったんだって」

「……すんまへん」

「だからって……」

 

 なおもあかねの入室を渋る舞。だがここで、策士舞の頭にひとつの案が浮かぶ。

 

「ねえあかねちゃん」

「……なんや」

 うつむき加減のあかねはぶっきらぼうに返答する。しかし舞は不快な顔を一切せず、笑顔で応対する。その裏に、黒い思いを忍ばせながら。

(誰も信じられない……ね。ならのこのこ部屋に入ってこないはずなのに、っと)

 人は一人で生きていくことはできない。それを深く理解しているからこそ、舞はそのような心理面も戦術に組み込んでいる。

 

「まあ座りなよ。舞ちゃんのお悩み相談室、開いちゃおうかな」

 使える手駒は、多いほうがいい。

 

「え……」

 フレッシュチームのリーダー、桃園ラブは困惑していた。

 理由は当然、美希が負けた……つまり死んだという知らせ。

「そんな……」

 隣で同じチームの東せつなも驚きと悲しみが入り交じった表情を浮かべている。

 

 ほどなくして扉が開けられ、そこから祈里がよろよろと入室してきた。

「ごめん……守りきれなかった……」

「ブッキー!」

 申し訳なさそうな『フリ』の祈里にラブは完全に騙されたようで、姿を確認するなり飛びついた。

 

 そして凄まじい剣幕でまくし立てる。

「誰なの!みきたんを殺したのは!?」

 ひとつ、祈里の頭に疑問符が浮かぶ。

(殺した……?ラブちゃん……怒るところがずれてるよ……)

 真に怒りの矛先を向けるべきはあの『声』の主だろうに。と、『他人事』ながら少し悲しげな表情を祈里は浮かべた。

 

「最後に止めを刺したのは……スマイルチームの……あかねちゃん、かな」

「ブッキー!」

 突然ラブが叫ぶ。そして決意を秘めた瞳で祈里を見つめた。

「何、かな……」

「あたし、みきたんの仇を討つ!」

 言うが早いか、ラブは勢いよく部屋を出ようとする。

「ちょっとラブ!あなたの対局相手にスマイルチームはいないわ!勝っても仇討ちには……」

「関係ないよ!あたしが勝つことが何よりみきたんのの喜びだと思うから!」

 せつなの制止も振り切って、ラブは部屋を飛び出した。

 

「……」

 その後ろ姿を眺めながら、祈里は心の中で静かに思う。

 こういうタイプは、レールを敷いてやれば一直線だからやり易い、と。

 

 そして一階、中央。

 ラブは数ある雀卓のひとつに手をかけ、高らかに宣言する。

「さあ!あたしの相手は誰だ!」

 

「かれんさぁん……」

「……」

 自ら卓に着くような直情的性格の持ち主は他にもいたか、とかれんは頭を抱える。

 ああなってはもう引き下がらないだろう。隣で瞳を潤ませているのぞみと共に、あの卓に着くしかない。

「行きましょう、私がしっかりサポートするから」

「……はいっ」

 かれんの言葉で瞬時に活力を取り戻すのぞみ。それを見てかれんは安心する。

 

 そんなのぞみに、すでに戦いを終えたりんが、一番の親友として声をかける。

「のぞみ!」

「なぁに?」

 今まさに扉に手をかけた状態でのぞみは振り返る。

「……気を付けて、生きて帰ってきて」

 わずかに迷った末、選び出したのは簡潔で思いのこもった言葉。

 その願いにぞみは、最高の笑顔で応える。

「もちろん!」

 

 別室にて、もう一人の対局者である明堂院いつきは、ふぅっと一息ついて立ち上がる。

「武人として……売られた勝負は買わなきゃね」

 武道の心得もあるいつきは、口元に余裕の笑みすら浮かべている。その様子に、同じチームの月影ゆりは、壁に寄りかかりながら警告を発する。

「あまり感情的にならないように、ね」

「任せてください。これでも私は武道家ですよ?」

「いつき……」

 

 今度は別の方向から花咲つぼみが消え入りそうな声で名を呼んだ。その瞳には、ものの数時間前に亡くした親友と同じ運命を辿るのではないか……という心配がありありと出ている。

 そんなつぼみの不安を吹き飛ばすように、いつきは力強く言い放つ。

「大丈夫。必ず戻ってくる」

「その言葉、覚えたわよ」

 ゆりが、からかうようにそう言った。

 

 さすがに死体が三つもあれば、その血の臭いというものが嫌でも鼻につく。

 そんな凄惨な場所に不釣り合いな少女が四人。

 しかし不快な表情を見せる者は一人もいない。

「みんな……許さない……!」

 ラブが闘争心むき出しで乱暴に椅子に座る。

「怒りは常に身を滅ぼす、ってね」

 続いて左隣にいつきがラブを挑発するような台詞を放ち、ゆっくりと腰を下ろした。

 

「全力で……」

「やるからには手加減しないわ」

 そしてのぞみがラブの右側、かれんが対面に座り、対局準備が完了する。

『対局を始めます。十秒いないに対局者以外は部屋に戻ってください』

 鉄製の拘束具が現れる金属音と共に、闘牌が開始された。




まずはここまで読んでくださった皆様に感謝を。
さて、前回に続いてフレッシュチームから桃園さんの登場です。おや……?サブタイトルで何やら不穏な……ゲフンゲフン。
そして今回で対局も早四回目。そろそろ戦術に被りが見え隠れする頃で……ご了承ください。
今回はこの辺りでお別れです。機会があればまた次話でお会いしましょう。
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