俺のヌメルゴンがなんか病んでる   作:鋼タイプが好こヴィラン

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すみません、一回内容がないものを誤投稿していたみたいなので再投稿です

言葉通じない系ヤンデレ(他種族故の悲劇)

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ヒスイヌメルゴン

 

 俺のヌメルゴンは何かおかしい。

 

 なんか全体的に色素が薄いし、目は通常種と比べてジト目でめちゃくちゃかわいい、さらに口元や手の辺りからはヌメルゴン特有のヌメヌメ体液──しかし通常とは色が明らかに違う──が分泌されている。

 

 そして何より特徴的なのが、その背中に背負った巨大な殻だ。材質は硬化した皮膚というよりは鋼タイプの持つ装甲金属に近い感じ。

 触り心地はざらりとしていて冷んやり気持ちがいい。夏場日光の下に置いておいたら焼肉できそうだ。今度試してみよう。

 

「ヌメ?」

 

 なんですか、ご主人? とでも言いたげにヌメルゴンは小首を傾げてくる。先程からガッシリと俺をホールドして離す気がさらさら見えないヌメルゴンの喉元から腹に向けて優しく撫でると、気持ちよさそうに目を細めてメルメルと喉を鳴らしている。

 

「ヌメェェェ〜」

 

 気の抜けた表情ですりすりと顔を擦り付けてくるのは、600族のドラゴンタイプにしては珍しく人懐っこいヌメルゴン特有の仕草だ。これは普通。

 

「あー、ヌメルゴン? そろそろ離して欲しいんだけど?」

 

「メッ!!!」

 

 が、少しでも離れようとしたり、他のポケモンに構おうとするとなぜかすごく怒る。それはもうめちゃくちゃ怒った。

 具体的に言うなら、誇り高き岩タイプの一員であるイシツブテがこの子にどつかれて粉砕した。正直、イシツブテには悪いことしたと思う。

 でも、ちょっとヌメルゴンから離れてイシツブテ触りに行っただけでそこまでキレるって想像できる? 

 

 できる奴のみ俺にイシツブテを投げなさい。

 

 これも通常のヌメルゴンとは異なった特徴だ。通常ヌメルゴンにも人懐っこさが高じた似たような独占気質はあるがここまで凶悪ではない。

 あとなんかパワーが強くて先程から抱きしめられすぎて肩が痛い。このままじゃ腕が外れてしまう。

 

 さて、ここまで言えばもう分かるだろう。

 

 俺のヌメルゴンは誰がどう見ても明らかにヒスイヌメルゴンだ。

 

 確かによく考えてみたら、ヌメイルの時点で殻が付いていたな。いやでも、現代でヒスイヌメイルになる訳ないし、そういうオシャレかなって思って流してた。

 

 なぜ俺がヒスイヌメルゴンの存在を知っているのか、と問われれば答えてやるのが世の情け。だが、俺がポケモンがゲームだった世界から来た転生者であるという情報など死ぬほどなんの役にも立たないので割愛させて貰う。

 

 問題はなぜヒスイヌメルゴンに進化したのか? だ。

 

 当然ながらここはヒスイ地方ではない。一応シンオウ地方ではあるものの、何十年、何百年、そこまではいかずともヒスイとは環境がガラリと違うことは明々白々。普通にやっていれば進化するはずがない。

 

 そもそもの話、ヌメルゴンが背中の殻を背負うには確かヒスイ地方の水にのみ含まれる特殊な金属を取り込んだからではなかっただろうか。

 仮にシンオウ地方にも同様の金属が含まれていたとしたら、シンオウに連れてこられたヌメラは皆進化する条件が整っているはずなので、ヒスイヌメルゴンはシンオウヌメルゴンとして知られていなければおかしい。

 

 うーん、なんでだろ。テンガン山で修行してたからなんか特殊な影響で進化したとか? 

 

 さっぱりわからん。

 

 まあ可愛いからいいかよろしくなぁ!! 

 

「で、そろそろ本気で離して欲しいんだけどなぁ……?」

 

「ヌメェ?」

 

 ヌメェ? じゃなくてなぁ……。

 

 ヌメルゴンは一切俺を離してくれない。それどころかジリジリとなんか殻の中に引き摺り込もうとしてないかなコレ? 

 

「ヌメッ♡ヌメッ♡」

 

「なに? なにが言いたいの? てか取り込むのやめてくれないかな⁉︎マジで怖いんだけど⁉︎」

 

 そうこうしている内にズルズルともう半分くらい身体を取り込まれてしまった。

 実というとなんか思ったより暖かくて気持ちがいい。ヌメルゴンの柔らかく弾力のある肌に抱き抱えられているのは、布団に包まれているかの様な気分になれて思わず眠ってしまいそうだ。

 

 しかしいつまでも取り込まれている場合ではない。ヒスイヌメルゴンと原種ヌメルゴンでは生活環境が違う以上、食べるモノや住処などが変化している可能性が高い。それらを確実に知るために、修行場に使っていたこのテンガン山を降りてナナカマド博士のところに行きたいのだ。

 既にアポも取ってあるし、時間に遅れない様にしたいのでそろそろ離してほしい。いや、切実に。

 

「っ! そうだ! 他のポケモン! 他のポケモンに助けて貰おう!」

 

 懐にあるボールをサッと手に取る。まだ殻に取り込まれたのは足だけだ。腕や腰はまだ大丈夫。命拾いしたな。

 

 だがここで致命的な事実に気がついてしまった。

 

「ボールの開閉スイッチが壊れてる──!!」

 

「ヌメェ!」

 

 俺にポケモンの言っている言葉はよくわからない。でも、今は彼女がなにを言っているのか完全に理解した。

 

 ──私がやりました

 

 ──なにやっとんねん

 

「メェエエ!」

 

 他のポケモンを使おうとしたのが気に障ったのか、より一層強く身体を押し潰される。いやまって本当に死ぬ。

 

 そういやヒスイヌメルゴンって、好いた者が己から離れると怒り荒ぶるって前世の記憶にあったような気がする。すっげー今更すぎる。もっと早く思い出しとけばよかった。

 

(やばいなこれ……。ちょっと洒落にならなくなってきた)

 

 ポケモンによって人間が殺されるケースは決して少なくない。

 トレーナーが野生のポケモンとの戦闘に負けて食われたりするだけではなく、ポケモンとのスキンシップによる事故死や、ギャラドスやボーマンダといった凶暴なポケモンを分不相応にも扱おうとして反逆されることも多い。

 

 ゲームのように捕まえたら即言うこと聞く訳でもなく、バッジを持っていれば高レベルポケモンは誰でも言うことを聞くと言うこともない。そして勿論アニメのようにポケモンの技を直撃しても無事なんてケースは、一部のスーパーマサラ人のような例外を除けばほとんどない。

 ワタル様による破壊光線事件? あの人はワタル様である以上なにしても許されるから……。真面目に考察すると、ちゃんと手加減してるか、威嚇射撃だと思われる。

 

 つまり、この世界はポケモンとの関わりを一歩でも間違えれば死に至る世界だ。

 

 全てのポケモンが図鑑の説明通りの性能を待ち、その力が人間に向けられるといえばその危険性は簡単に理解できるだろう。

 

 今の俺の状況は極めて危険。誇り高く、強靭な肉体を持つドラゴンポケモン、それも600族のポケモンに拘束されていて、他に助けを呼ぶことができない状況は自分のポケモンであってもほぼ確実な死だ。

 

 普通、トレーナーはポケモンが他の人や自身を襲わないように躾けて育てる。当然、俺もヌメイルが人に攻撃を加えるようなポケモンに育てていない。

 

 しかし、何事にも例外というものがある。

 

 今回の場合は、ヌメイルがヌメルゴンに進化したことによる大きさの違いだ。ヌメイルの時と同じ感覚でヌメルゴンが接してきたらそりゃ危険だわという話。困ったことに彼女は進化したてなのだ。故に、身体の大きさの違いをあまり理解していない。

 

 それに加えて今のヌメルゴンはヒスイ式執着心を持って俺を殻の中に引き込もうとしている。

 詰みかな? 

 

「メェエ〜」

 

 スリスリ頬擦りしてくるヒスイヌメルゴン。可愛いけど今それどころじゃない! 

 

(あれ……? あそこにいるのは……? シロナさん⁉︎)

 

 もう体の9割がヒスイヌメルゴンに取り込まれている。やっべぇ、マジやべぇと思っていたところにテンガン山の岩壁をポケモンの力も借りずに自力でよじ登っているシロナさんを発見。よかった、助かった。

 

 ……冷静に考えてなにしてんだあのチャンピオン。

 

「おーい! シロナさーん! ちょっと助けて貰えますか──?」

 

「ヌメェェェェ!!!」

 

 おい、嫉妬心に支配されて人に向けて『りゅうのはどう』を撃とうとするんじゃない! 

 

 

 

 

 この後、ヌメルゴンはシロナさんのガブリアスに殴られ、俺は無事解放された。

 

「ヌメェェェ……」

 

「そんなしょんぼりしないで。押し潰したり、ボール破壊したり、殻の中に引き込もうとしたりしなければもう大丈夫だから」

 

「メェルル!!」

 

 ヌメルゴンも分かってくれたのだろう。謝罪のつもりか、俺をペロペロ舐めている。差し詰め、シャザイナメルゴンと言ったところか。

 

「この子があなたのヌメルゴン? ……文献に残されていたヌメルゴンの姿に似ているわね。先祖返りかしら? それとも現代では廃れてしまった進化条件がこのテンガン山でのみ満たせる? ……まだ人の手があまり入っていない環境の厳しい頂上付近ほど当時の環境を維持しているとするならばあり得ない話じゃないわ」

 

 シロナさんはなんか考察してる……。

 すごい……なんというかその……すごいです。

 

「えーっと、シロナさんはなんで岩壁をロッククライミングしていたんですか?」

 

「私は、いえ、私たちはこのテンガン山の調査に来たの。頂上付近で新しい遺跡が発見されてね、その調査隊の1人としてまずは私が先発として登って来たの」

 

 すぐ下に他の調査隊の人たちもいるのよ。と彼女は付け加える。

 

 なるほど、確かにゲームでもこのテンガン山はやりのはしらに繋がっていた。そう考えると遺跡の調査とは普通なのかもしれない。

 実際、この山の上に登れば登るほどポケモンのレベルが上昇していく。下手すると主クラスのポケモンが群れなして闊歩しているエリアもあるのだ。生半可な実力ではエサにしかならないだろう。

 そう考えると、チャンピオンの彼女を先に1人で送り出してクリアリングするのは理に適っていると言える。

 

 ……この山の周辺を飛行ポケモンが群れなして飛んでいる為、飛行ポケモンが使えないとはいえ、ロッククライムに適したポケモンに乗って移動しない理由にはならないけど。

 

 まあいいか! って、いつもこれだな俺。

 

「あなたこそ、こんなところに居て大丈夫なの? カトレアが探していたわよ?」

 

「……あー、それは大丈夫です。ハイ」

 

 じゃあね、とまだ話足りなさそうなシロナさんと後から登ってきた調査隊の方たちに別れを告げてテンガン山を降りた。

 

 これはナナカマド博士との約束に遅れそうだからであって、決して後ろにいたヌメルゴンが射殺さんばかりにシロナさんを睨みつけていたからではない。

 

 ……この子ヤンデレ過ぎるでしょ、大丈夫かなぁ?

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