俺のヌメルゴンがなんか病んでる 作:鋼タイプが好こヴィラン
カトレアちゃんとの戦いも終わり、俺は無事に国際警察に所属したままで構わないとの許しを勝ち取ることができた。
まあ、実際危険な任務に就くことも多いので、心配する周りの人のことも考えろ! と言われたらマジで返す言葉もございません。それに関しては、今よりももっと怪我などに気をつけた立ち回りをすることでなんとか解決を図ろうと思う。
まあ、悪の組織ある限り俺は止まるつもりなんてないんですけどね!
……この世界の悪の組織の活動内容がスター団くらいだったらマシなんだけどね。ロケット団とかあれ実際マフィアだよ。
さて、今どこにいるかというと結局カトレアちゃんの別荘のままだ。
というのも、バトル終了後に「今日くらいはここで泊まって行ったらどう?」とカトレアちゃんからお誘いを貰ったのでありがたく乗らせて頂いたのだ。
普通、女の子と1つ屋根の下というのはなにやら良からぬ気配があるものだが、今回は使用人の皆様がいるので間違いは起こりようがなく安心できる。お嬢様に手を出した疑いなんてかけられたら社会的にも身体的にも死ぬしかないじゃない!
未だ行方不明のキュウコンに関しては、使用人の皆様にお願いして探して貰うことにした。俺も今ある用事を終わらせたらすぐ捜索に参加するつもりだ。
今回の戦いで活躍してくれたマスカーニャと、気絶したままだったハバタクカミは専用の回復装置で回復させて貰っている。
バトルコートもそうだけど、それ普通はバトル施設とかポケモンセンターに置いてあるもので家には置かないものだからね⁉︎
いくらするのかとかは聞きたくない。アレは前世の世界より科学技術の発展したこの世界での叡智の結晶なのでとんでもない値段が付けられていることだけは知っている。
「メェエエ?」
そんな風に回想に沈んでいると、ヌメルゴンが急かすように突っついてくる。
今回、ヌメルゴンの希望ということによりブラッシングならぬシャワーによるウォッシングをやっていこうと思う。
マスカーニャも希望していたのだが、少し前に彼女にマッサージをやったのと、キュウコンを探しに行きたいので今回はヌメルゴンの方を優先させて貰う。あとで必ずやるのでちょっと我慢していて欲しい。
以前にも話した覚えがあるが、ブラッシングやシャワーのようなケアをすることはポケモントレーナーとして必要不可欠だ。こういった行為はポケモンとの距離を近くして絆を深めるだけではなく、ポケモン側の病気も予防できてストレスもある程度解消できるので手間を除けばやり得である。
ちなみに俺は緊急時を除く許す限りの毎バトル後に戦ったポケモンのケアを行なっている。別にこれは俺に限定される話ではなく、俺以外にも毎回ケアするトレーナーは意外と多いのだ。面倒であるのは間違いないがポケモンのことを思うなら避けては通れない。
カトレアちゃんから借りたホースを使ってヌメルゴンに水をかけていく。全身のぬめりけを落と……したらさすがにダメだと思うので、体についた砂埃や泥のような汚れを洗い流していくことを目的にしよう。
「メッ! メルゥ!!」
シャワーから水を出しているとヌメルゴンは楽しそうに自ら体を近づけて水を浴びに来ている。進化条件に雨が含まれていることからやっぱり水浴びが好きなのだろう。
喉元から腹にかけて水を手に取って撫でてやれば嬉しそうにはしゃいでいる。もしかしたらプールとか作ってあげた方が嬉しいのかも。
次は背中の殻の汚れを落としていくことにする。
背中の殻は硬く汚れがこびり付いているのでタオルに石鹸をつけて擦り落とす。先程の戦いでは『りゅうせいぐん』を利用した砂隠れ戦術を使用したため、普段より多く汚れてしまっている。
巻貝のような形状をしているため溝に入ると落としにくくなる。似たようなポケモンの事例だとオムスターとかそこら辺になるのだろうか? どうしても取れなければブラシを使った方が良い。今回はそこまでする必要はなさそうだが。
最後は全身に水をかけて終了だ。これでヌメルゴンは汚れひとつないピカピカ……ではなくてヌメヌメの姿に戻ることができた。よし!
「おつかれー。終わったよ」
そう言うや否や、ヌメルゴンが飛びついてきて押し倒される。あれ? 前も似たような事例があったような……?
ヌメルゴンは危機感を覚えていた。
ヌメルゴンはトレーナーのことが大好きである。それはもうトレーナーのことを番だと認識しているくらいには大好きである。
しかし、最近思うのだ。
──私、トレーナーと触れ合ってる時間少なくない?
トレーナーは自分のポケモン全員と満遍なく接してきた。マスカーニャ、ハバタクカミ、キュウコン、サーナイトとヌメルゴンを含めて合計5体のポケモンと接していれば1人当たりの時間は当然少なくなる。
──許せなかった。私以外のポケモンと楽しそうに過ごしているのが
しかし、今は他のポケモンを排除する手段を持っていない上にこのカトレアの別荘ではカトレアのポケモンたちが生活しているのだ。無理矢理襲おうものならレベル差と数の差で返り討ちに遭ってしまう。
今だってそうだ。カトレアのポケモンは絶えずトレーナーを監視している。この目を潜り抜けてトレーナーを襲うのは不可能に近い。
しかし、もうヌメルゴンの内側に湧き上がる思いは我慢できるものではない。
トレーナーが他のポケモンと楽しそうに過ごす度に、トレーナーが他のメスと接しているのを見る度に、ヌメルゴンの心は寂しさと嫉妬で悲鳴をあげていた。
だが、今トレーナーを襲うことはできない。
だからこそヌメルゴンは考えた。どうすれば愛するトレーナーといちゃつくことが出来るのか、どうすれば愛するトレーナーの元から目障りなメスどもを追い出せるのか。
後者の方は未だに答えは見つかっていない。
遠回りだが誰も勝てないほど強くなってトレーナーを悪いメスどもから守ってあげるしかない、とヌメルゴンは考えている。
だが前者の方は既に答えを見つけた。その答えがこれだ。
「メェエエ」
「んぐぐぐぐ⁉︎」
トレーナーの顔を掴み無理矢理自分の口とトレーナーの口を合わせてキスをする。もちろん、トレーナーの口に自身の長い舌を捩じ込んでおく。好きな人の唾液の味を直に感じられてヌメルゴンの心はひどく満たされていた。
結局のところ、相手の目を掻い潜ってトレーナーを襲うだなんて小賢し方法を誇り高いドラゴンポケモンであるヌメルゴンがする必要などどこにもないのだ。
カトレアのポケモンに監視されてるとはいえ、キスくらいならおそらく許容範囲。襲うのはアウトでもこれならセーフだろうという考えだ。現に、カトレアのポケモンたちは審議中といった様子で報告に行く姿は見られない。
この前マスカーニャとトレーナーがキスしているのを見た事がある。その時は、キスするという行為にどんな意味があるのか知らなかったが今なら分かる。
──トレーナーの初めてを奪うことは出来なかったが、マスカーニャとのキスなど思い出せないほどに塗り潰してやる。
そんな思いを胸にヌメルゴンはトレーナーの口内を蹂躙し続ける。トレーナーは酸素がなくなり死にそうな顔をしているが、ヌメルゴンは止める気などさらさらない。むしろ、トレーナーと触れ合える喜びからもっと強く口を押し付け始めた。
それだけでは満足できず、自身の身体のヌメヌメもトレーナーに擦り付ける。これでトレーナーは身体の中も外もヌメルゴンで満たされていることになった。
「キャワアアア!!!!」
そんな幸せいっぱいなヌメルゴンとトレーナーにこの世の怨嗟を全て詰め込んだかのような絶叫とともに1つの黒い影が空から降り注いできた。
しかし、別荘に貼られた結界によりそいつの襲撃は防がれてしまう。
だが、襲撃はそこでは終わらない。
普通ならそこで結界に阻まれてしまうところなのだが、そいつは生憎と普通ではなかった。
血走った目を見開いて牙を剥き出し、爪を結界に叩きつけ、全身で回転しながら炎を撒き散らし、1つ、また1つと結界の層を砕き割っていく。
自分が傷ついてでもトレーナーの元へと向かおうとするのは愛ゆえか。
謎の襲撃者の正体はキュウコンである。
キュウコンはサーナイトにテレポートで置いていかれた後、神通力でトレーナーの居場所を探った。トレーナーの気は常に感知しているので決して見失うことはない。
サーナイトとトレーナーが消えた後、すぐさま走って向かった。海を越えなければならないところは飛行ポケモンを脅して乗せて貰った。一度は辿り着いたものの、すぐに別の場所に転移したので思わず絶叫してしまうこともあった。
そして今、全てを破壊してようやく愛するトレーナーの元へと辿り着いたのだ。結界などなんの障害にすらならない。
「コォォン!!!」
返せ! とヌメルゴンに向かって吠える。だがヌメルゴンはトレーナーにキスするのに夢中でキュウコンのことなど気にも留めていない。
キュウコンはヌメルゴンからトレーナーを引き離すべく、『しっとのほのお』を燃やしてヌメルゴンへと解き放つ。加えて、キュウコン自身も『しっとのほのお』を身に纏い『フレアドライブ』としてヌメルゴンへと走り出した。
特性『ひでり』も合わさりそれらは強力な一撃になる筈だった。
しかし、今のヌメルゴンは(愛の力で)その上を行く。
『げきりん』を発動させて『しっとのほのお』を強化したドラゴンのオーラのみで掻き消し、突っ込んできたキュウコンを躊躇なく殴り飛ばす。
元々、ここまでの移動分の疲労がある分不利だったキュウコンはこの一撃で呆気なくダウンしてしまった。
もうヌメルゴンを邪魔するポケモンはいない。
こうして、カトレアちゃんのポケモンが助けに来るまでヌメルゴンはトレーナーを満喫することが出来たのであった。