俺のヌメルゴンがなんか病んでる   作:鋼タイプが好こヴィラン

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マスカーニャ

 

「ふむ、この様な姿をしたヌメルゴンは見たことがないな。幾つかテストをしなければ正確な能力は分からないが、おそらくこのヌメルゴンはドラゴン、はがねタイプ、特性はぬめぬめだな」

 

 軽くヒスイヌメルゴンを検査したナナカマド博士はそう分析する。

 

 俺はあの後テンガン山を滑り降り、ギリギリ約束の時間に間に合ったのだ。ナナカマド博士の研究所で破損したボールも直してもらい、これで完全に憂いはなくなった。

 

「ヌメヌメ!!」

 

 ヌメルゴンは顔を擦り付けて甘えてくる。もしかして色々と検査する為に少し離れたけど、それだけで孤独を感じてた……ってこと⁉︎

 

「メェエエ」

 

「ニャアアア!!」

 

 またしても俺の身体に覆い被さろうとしてきたヌメルゴン。しかし、そこに颯爽と現れた何者かがヌメルゴンの顎を蹴り飛ばした。

 

「ヌメェェェェ!!!」

 

「フシャアアア!!」

 

「あー、うん。ありがとう、マスカーニャ。でも襲われかけてた訳じゃないし大丈夫だよ」

 

 勝手にボールから出てきて目の前に着地したマスカーニャは、毛を逆立ててヌメルゴンを威嚇する。お前の特性『いかく』じゃなかっただろ。なんでいかくできてんだよ。教えはどうなってんだ、教えは。

 

 このまま放置しておくと、マスカーニャとヌメルゴンの仁義なき戦いによってこの研究所がめちゃくちゃになってしまうので、とりあえず、マスカーニャの脇に手を入れて抱き上げることにする。

 

「ふにゃ?」

 

「よしよし、大丈夫だぞ。ここ研究所だからな、あんまり迷惑かけちゃダメだよ」

 

「ふにゃあん……」

 

 喉から腹にかけて優しくさすってやるとマスカーニャは落ち着いたのか、全体的にとろけてリラックスしている。おそらく、ヌメルゴンの騒動でボールを壊されて気が立っていたのだろう。

 

 マスカーニャとの付き合いは結構長い。彼女は俺がパルデアにいた頃に初めて貰ったポケモンだ。世間一般で言われるところのパートナーポケモンというやつだな。

 ちなみに1番付き合いが浅いのがヌメルゴンだ。あの子は、ジョウトに観光に行った時に以前より付き合いのあったワタル様から譲って貰ったタマゴから生まれてきた子だ。

 

「ニャアッ! ニャア!」

 

 マスカーニャというポケモンは、進化するとプライドが高くなりクール系な性格になると一般的に言われている。ニャオハ時代の様にトレーナーにくっつくのではなく、1人で行動する様になったり、あまり甘えてこなくなったりと大人になったかの様な行動をする様になるそうだ。

 とはいえ、ニャオハの持つ懐っこさは消えていない為、きちんと構ってあげないと拗ねるので注意が必要だ。

 

 しかし、俺のマスカーニャは全くクール系じゃない。

 

 成長してもニャオハ時代と変わらず甘えてくるし、プレゼントのつもりなのか、きのみを咥えて渡してくることも多々ある。今だって手の中からすり抜けて俺の頭の上に登ろうとしている。

 最近気づいたのだが、もしかしてコイツ自分がニャオハからとっくの昔に進化していることに気がついてないのでは……? 

 

 まあ、そこは個体差があるからなんとも言えないけど。

 

「おまえ、もうマスカーニャなんだしクール系の道に方針転換する気はないのか?」

 

「???」

 

 脇に手を入れられ、にょーんと伸ばされた身体になんかよく分かってなさそうなアホ面。他2匹を差し置いていきなりボールから飛び出て突撃をかましてきたあの頃からなにも成長していない。

 かわいい。好き。癒される。

 

 マスカーニャ吸いしよ。

 

「ふにゃあああ!」

 

「あ〜マスカーニャのお腹、ふわふわしてる……」

 

 超気持ちいい。ここが天国……か。

 

 

 

 

 そんな猫とトレーナーとのいちゃつきを見せつけられるヒスイヌメルゴンちゃん。

 彼女の脳は破壊された。だいばくはつである。

 

 ヌメルゴンはトレーナーが好きだ。それはもうめちゃくちゃ好きだ。ライクではなくラブな方で。番にしたい。

 

 この世は弱肉強食。所詮弱い生き物は強者によって支配されるのみだ。

 ヒスイヌメルゴンは、はがね・ドラゴンという素晴らしいタイプに加えて伝説・準伝説級ポケモンを除けば最高種族値の600族である。

 つまり最強。

 

 なにが言いたいのかといえば簡単な話。

 

 ──私は強いからトレーナーは私に従って♡

 

 もうレベルとかジムバッジの数とか関係ない。ヒスイヌメルゴンの種族故の性質と本人の性格上の問題である。なまじ懐いているせいで普段は言うことを聞く為、問題が表面化し辛いのも厄介さに拍車をかけている。

 

 遂に最終進化まで到達したので、その記念としてトレーナーを襲っておこう(性的な意味で)としたのだが、通りすがりのチャンピオンに邪魔されてしまった。おのれガブリアス。

 

 そして何よりも、あの女。トレーナーと仲良さそうに話していた。許せん。ギルティ、死刑だ。

 

 だがしかし、そんなことは今はどうでもいい。

 

 今許せないのはあの猫だ。

 

 ヒスイヌメルゴンは分かっていた。片時もトレーナーから目を離していないから分かっていた。

 

 ──あの泥棒猫、私を嘲笑ってやがる

 

 ヌメルゴンは激怒した。かの邪智暴虐なるマスカーニャを生かしてはおけぬと。

 

 ヌメルゴンはタイプ相性がよくわからない。だが、自身が極めて優秀なタイプを持ち、他のポケモンとは一線を画す能力を持っていることは理解していた。

 

 戦えば勝てる、その様な思いもあったのだろう。

 

 しかし、マスカーニャはその上を行く。

 

 マスカーニャは特に目立ったことはなにもしていない。普段のスキンシップと同様の動きをしつつも、常にヌメルゴンとマスカーニャの間にトレーナーが挟まる様に動いていただけだ。

 

 それだけでヌメルゴンは攻撃できなくなる。ヌメルゴンはマスカーニャからトレーナーを取り戻したいのであって、トレーナーを殺したい訳ではないのだ。だから攻撃できない。

 

 故にヌメルゴンは血涙を流しながら、自身の最愛のトレーナーが泥棒猫に寝取られていく様を見ることしかできない(寝てから言え)

 

「おおい! 詳しい検査を行う準備が出来た……ぞ……。お取り込み中の様だったな、すまない。しばらくここを離れさせてもらう」

 

 マスカーニャ吸いに夢中になっているトレーナーと、勝ち誇るマスカーニャ。そして今にも噴火寸前な様子でそれを睨みつけているヒスイヌメルゴン。

 

 

 ナナカマド博士は逃げ出した! 

 

 

 上手く逃げ切れた! 

 

 

 

 タイミングが良いのか、悪いのか。

 その瞬間、ヌメルゴンの怒りが沸点をぶち抜いた! 

 

「メルメルメルゥゥゥゥウウウ!!!」

 

 ヌメルゴン怒りのりゅうのはどう! 後先なんか考えない。だって私は最強だから。

 

「ニャアッ!」

 

「えげっ!」

 

 咄嗟にマスカーニャもトレーナーを突き飛ばして回避する。トレーナーは頭を打って気絶した。鍛え方が足りないな。

 外れたりゅうのはどうは研究所の壁をぶち抜いて空へと直進して行った。修理費は全てトレーナーが持つので気にしなくても良い。

 

 マスカーニャは不敵な笑みを浮かべながらパチンと指を鳴らす。

 

 その瞬間、頭上から落ちてきた花束がヌメルゴンを襲撃する。かなり良いところに入ったのか、ヌメルゴンはふらついている。

 

 これこそがマスカーニャの使える必中必殺確定急所技『トリックフラワー』。敵は死ぬ。

 

 しかし、そんな攻撃では到底倒せないのがこのヌメルゴンの圧倒的耐久能力。しかし、流石にレベル差が離れていることによる不利を悟ったこと、先程のトリックフラワーが痛かったのか、自身の殻の中に身を隠して『たてこもる』を発動させた。

 同時に煙幕を張った為、防御能力だけではなく回避能力まで向上している。

 

 もはやこの様な狭い場所では満足できる戦いは行えない。2匹は時間と共にヒートアップする戦いに呑まれて外へと飛び出して行った。

 

 全ては自身のトレーナーを手に入れるため。ヌメルゴンもトレーナーを恋愛的に狙い、マスカーニャもトレーナーを恋愛的に狙っている。

 

 故にこの戦いはどちらかが力尽きるまで続けられる。

 

 勝つのはどっちだ! 

 

 

 

 勝手に戦え! 

 

 

 

 さて、一方その頃研究所内で倒れているトレーナー。そんな彼の側に、またしても勝手にボールから出てきたポケモンが1匹。

 

「ハァアア!」

 

 そのポケモンの姿はムウマに似ていた。紫色の体躯に胸元を飾る赤色のネックレス。ただし通常のムウマと比べて大きさがデカい。あと、なんか髪の長さが長い。

 

 そう、彼女はパラドックスポケモンのハバタクカミ。

 

 大穴を脱走したは良いものの、特に行き着く先を決めていなかった為パルデア地方をフラフラ彷徨っていたところをサンドイッチで餌付けされて捕獲されるという、ドラマもなにもない出会いを遂げたポケモンである。

 

 もうここまで来たらわかると思うが、彼女もトレーナーのことが好きだ。ライクじゃなくてラブな方で。どんだけ手持ちに好かれてんだよ。修羅場パーティーじゃん。

 

 故にこの戦い、ハバタクカミの勝利である。

 

 ──しかし、彼女はメンヘラ猫やヤンデレドラゴンカタツムリとは違ってそこまで色ボケしていない為、寝ているトレーナーにドレインキッスをしたり一緒に添い寝するだけで終わった。

 

 ハバタクカミ、お前が最後の良心だ。

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