俺のヌメルゴンがなんか病んでる   作:鋼タイプが好こヴィラン

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予想以上にキュウコンが長くなった
カトレアちゃん次回

風邪っぽいので毎日更新止まるかも


キュウコン2&サーナイト

 

 シャワーを浴びて念入りに体を洗う。

 あまり匂いのキツい石鹸を使ってしまうと、鼻の良いポケモンに嫌がられるのでそういうのは普段から避けているが、まさかそれ以前の問題だったとは。

 

 キュウコンに指摘されるまで気が付かなかったけど、もしかして俺は相当臭ってたのかなぁ……。そう思うと、この育て屋でシャワーを借りることができてラッキーだったな。

 

「よし、こんなものかな」

 

 正直、匂いが取れたか取れてないかよく分からない。流石にここまで念入りに洗ったのだから取れてて欲しいのだが。

 

 水を拭って服を着替えて出てくると、なぜかハバタクカミとキュウコンが睨み合っていた。

 

 なに? 何があったの? 

 

「っ! ミィー!!」

 

 俺の姿を見つけたハバタクカミがその自慢の素早さを活かして飛び込んでくる。

 

「コォン!!」

 

 ……が、横から割って入ったキュウコンの体当たりによって呆気なく吹き飛ばされて行ってしまった。

 悲しいかな、ハバタクカミは圧倒的な特攻と特防そして凄まじい素早さを持つものの、悲惨なまでの紙耐久なのだ。その姿はまさに羽ばたく紙。

 

「コン! コン!」

 

 キュウコンはしばらく俺の周りをうろちょろしていたかと思うと、その場に座り込み、そのモフモフした尻尾で隣の地面をぺしぺし叩き始めた。

 

 んー、これはもしかして座れって意味だろうか。

 

 せっかくなのでお隣にお邪魔させて貰おう。そばでぶっ倒れているハバタクカミをボールに戻したあと、キュウコンに寄り添う形で隣に座る。

 キュウコンは一声鳴くとその鮮やかな光沢を放つ尻尾を俺の体に巻き付けて拘束すると、そのほっそりとした姿から考えられないほどの力で互いの体を押し付け始めた。

 

「キュウウウ?」

 

 キュウコンは再び俺の体に鼻を押し付ける。それは先程と全く同じ行為。ただ一つ違うとすれば、今度はキュウコンの浮かべている表情が穏やかであるということだろうか。

 さっきシャワーで洗ったばかりなのだ。匂いが取れてないと困る。

 

「キュウッ! キュウッ!」

 

 キュウコンは先程から執拗に体を押し付けている。それは自分の縄張りを示すためのマーキング行為のように見えるが、さてなんだろう。もしかして体が痒いのかな? 

 

「コン!」

 

 やがて満足したのか体を擦り付ける行為を辞めてもう一度匂いを嗅ぐと、満足げな表情を浮かべて俺にしだれ掛かるようにして体を預けた。

 

 しかし、改めて見てキュウコンって本当に綺麗なポケモンだな。

 

 そのさらさらとした毛並みに指を通して軽く撫でてみる。

 キュウコンは気持ちよさそうな顔でリラックスしているため、もっと触っても問題ないと判断してそのまま続けることにする。

 

「コン」

 

「ん? どうしたキュウコン?」

 

 くいくいっと撫でていた手を甘噛みして引っ張るのでよく顔を見てみると、なにやら真剣な表情を浮かべている。

 

「何かあったのか?」

 

「コンコン」

 

 キュウコンに促されるままに彼女の瞳を見つめる。瞳の中に宿った炎がゆらゆらと揺れている。

 

 ……なんだろう。なんか……変な……かん……じ……。

 

 

 

 さて、ここで1つキュウコンというポケモンについて解説しておこう。

 

 キュウコンというポケモンは1000年生きる長寿のポケモンと言われていて、その長い寿命で手に入れた膨大な量のエネルギーを九つの尻尾に溜め込んでいるらしい。そのエネルギーを利用してエスパータイプではないにも関わらず、エスパータイプのポケモンに勝るとも劣らない神通力などの力を行使するのがキュウコンの特徴だ。

 

 キュウコンの特徴は炎を操るだけに留まらない。

 

「キュウコンを捕まえようとしたら突然幻覚に襲われた」

 

「綺麗な女の人と仲良くなったと思ったらキュウコンだった」

 

 と言った証言やキュウコン自体がエスパータイプの技を扱うことに秀でている点からキュウコンは相手に幻覚を見せる能力を有していると考えられる。このことから、幻覚を見せるポケモンであるゾロアークとの姿の類似性を指摘して2匹は近縁種ではないかと推測する研究者もいるんだとか。

 

 

 もうなにが言いたいのかお分かりですね? 

 

 

 キュウコンは神通力を応用させて催眠術を扱うことができるのだ。つまりキュウコンはたった今トレーナーに催眠をかけて、その心を自分の思うがままに操ろうとしているのだ。

 

 ちなみに先程トレーナーにかけたのは「キュウコンのことが好きで好きで堪らなくなり他のポケモンを捨ててキュウコンの実家であるジョウトで結婚式を挙げ、子供は8体ほど作りトレーナーには人間を辞めてもらい1000年くらい共に生きる」というキュウコンの願望が反映された催眠だ。

 

 オーダーを細かくし過ぎたせいで若干掛かりが悪くなっているのは内緒だぞ! 

 

 しかし、これでもうトレーナーはキュウコンにメロメロ状態。勝ったな、第三部完!! とキュウコンは余裕の表情でトレーナーをその自慢のふさふさ尻尾で包み込む。

 

 キュウコンは割とトレーナーの意志を尊重するタイプのハバタクカミとは反対に、トレーナーが自分の側にいてくれさえすればそれで良いと考えるタイプなので、トレーナーが催眠状態になり自分の意思で動けなくなっても特に気にしていない。

 

 トレーナーがずっと側にいてくれたらそれで幸せだし、私が幸せならトレーナーも幸せでしょう理論で両者ハッピーと考えているのだ。

 

 そもそもこんな洗脳の様な方法をとったのは、トレーナーがキュウコンを育て屋に放置していた挙句、ハバタクカミやマスカーニャの様な他の手持ちのメスの匂いをベッタリと体につけてきたからである。言ってしまえばトレーナーの自業自得だ。

 

 しかし、そこに迫る1つの魔の手! 

 

「サア」

 

 トレーナーの危機にボールから勝手に出てきたサーナイトがキュウコンと対峙する。ちなみにヌメルゴンとマスカーニャはまだボールの封印が解けずにもがいている。ハバタクカミが気絶しても解けない辺り、かなりガッチリと封印されたようだ。

 

 キュウコンが敵意を剥き出しにして吠え、サーナイトが冷たく睨みつける。

 あえて言語化するならばこうだろう。

 

『なぜ私の邪魔をする? 他人の幸せを壊そうとしてなにが楽しい?』

 

『トレーナーさんはカトレア様の大切なお方。そして私にとっても……。貴方がそのような方法で奪って良い方ではありません』

 

『ふっ、まさかなにも分かっていないとはね。私たちは心から愛し合っているんだ。トレーナーは他のポケモンの匂いをつけて私を試したりしているが、心の奥底では私のことを愛している。だからこの催眠だって双方合意の上のプレイみたいなものなのだよ』

 

『……妄想ここに極まれりですね。所詮、長年シロガネ山中層エリアの主を務めていたとはいえ元は野生のキュウコン。人に対する理解が浅過ぎる。愛し合っていると豪語するならば、相手に対しての理解が必要不可欠です。トレーナーさんが本心ではどう思っているかを理解しようともせず独りよがりな愛を押し付けるなど笑止千万。トレーナーさんが本当に愛しているのは……』

 

『この私です!!』

 

『私は証拠も挙げることができますよ。トレーナーさんは国際警察所属、階級は警部補でコードネームはNo.496。皆からはシクロと呼ばれています。身長は169.6cmで170届かないことを気にしているみたいです。毎日毎日鏡の前で身長を見ている姿がとても可愛らしくて襲いたくなってしまいます。好きな食べ物はオクタン焼きで嫌いな食べ物は特になし。部屋で1人になると誰にもバレないようにかっこいいボールの投げ方を研究していますね。ふふ、誰にもバレないだなんて思ってるなんて……。ずっと見てますよ♡仕事は熱心でその仕事ぶりはかなり評価されているようです。……それ自体は素晴らしいことですが、その結果カトレア様以外のメスが寄ってくることになるのが残念です。まああまりにも距離感が近すぎるメスは、私が極力サイコパワーを流して頭痛を起こさせて離れさせているのですが。ごく一部通用しない輩もいるので注意しなければ。他にも──

(中略)

 ……とまあ軽くこんな具合でしょうか? いいですか? 大切なのは理解し合うこと。私はこんなにもトレーナーさんのことを理解しています。今だって貴方と会話しながら一度もトレーナーさんから目を離していません。育て屋に預けられた時もエスパー技の応用で遠見をしてずっとずぅっと見てました。まあテレポートしてカトレア様の元へ連れて行こうとするのは貴方に邪魔されてしまいましたが。ですが、これで分かったでしょう。トレーナーさんは私とカトレア様で守りますので貴方はシロガネ山に帰ってください』

 

『……ただのストーカーじゃないか。1番独りよがりなのはお前だろうに』

 

 話は平行線。もはや分かり合えぬ。

 

 ならばあとは争うだけだ。

 

 キュウコンはトレーナーを後ろに下げて、大の字型の炎をサーナイトに目掛けて放出する。『だいもんじ』だ。

 

 だがその大きさは通常のそれを遥かに超えている。キュウコンはそれほど特殊攻撃に優れた能力を持っている訳ではない。

 しかし、特性ひでりにより晴れ天候になったことでほのおタイプの技の威力が上昇しているのだ。

 

 サーナイトはテレポートを活用してだいもんじの射線から身を遠ざける。そして、そのまま反撃のサイコキネシスを撃とうとするが──

 

 ──テレポート位置を予測していたキュウコンから発射された緑色の極太レーザーにより妨害され吹き飛ばされてしまった。

 

『ソーラービームですか……』

 

 本来ならタメが必要な強力技を晴れ天候を利用してノータイムで射出する。本来ならば特性『ひでり』や『おにび』などで味方をサポートするタイプのキュウコンなのだが、今回は味方がいないということなので単騎で挑むしかない。故に足りない火力面は強力な技を使用して補っているのだ。

 

 サーナイトは再びテレポートを発動してその姿が瞬時に消え去る。

 

 次の場所も当然キュウコンは予測出来ている。その場所に目掛けて再びソーラービームを発射する。

 

 先程の焼き直しのようにサーナイトがソーラービームに撃ち抜かれ……

 

 その姿が幻影のように揺らぐと消え去ってしまった。

 

『なにっ!?』

 

 サーナイトが使ったのは『かげぶんしん』。

 回避率を高めて相手の攻撃を透かす防御系の技として有名な技だ。それを回避率を上げる技を発動してテレポート先に転送しておいただけの話。

 

 先読みし、テレポート先を予測するような相手には有効な一手だ。

 

『まずい……っ!』

 

 キュウコンは再び技を発動しようとするがもう遅い。既にサーナイトはキュウコンの後ろにいるトレーナーの元まで辿り着いてしまった。

 

『それでは、さよならです』

 

 サーナイトはにこやかにキュウコンに向けて手を振ると、そのままトレーナーを連れてテレポートで何処かに飛んでいってしまった。

 

 後に残されたのはキュウコン1匹のみ。キュウコンは歯軋りすると、サーナイトを追いかけるべく神通力でトレーナーの居場所を特定して、すぐさまその場へと駆け出していった。

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