俺のヌメルゴンがなんか病んでる 作:鋼タイプが好こヴィラン
次は……次はマジで出るから……!
過去編なんて挟んだからこんなことに……
さて、ベッドで一度寝て休憩したことで少し体力は回復した。ベッドで寝ている間にサーナイトも一緒に潜り込んでくるといったこともあったが、いつものことなのでもはや気にしていない。
ただ少し心配なのは、キュウコンがボールにいなくて、マスカーニャとヌメルゴンがボール越しに呼んでも返事しないことだ。もしかして体調でも悪いのだろうか?
ボール越しに見た限りでは2体とも元気にボールの中でゴソゴソ動いているので大丈夫だとは思うけど、ボール内におらず状態を確認できないキュウコンの方はどうか分からない。
あのキュウコンは俺と出会う前はシロガネ山中層で主ポケモンをしていた存在。そこらのポケモンやトレーナーに遅れをとることはないと断言できる。しかし、手元から居なくなって心配なのだ。
とにかく、キュウコンを探しに行くためにもここから早く出ていく必要があるのだ。
部屋を出て廊下を見てみるも、意外なことに監視は付いていなかった。サーナイトが監視員の役割をしていたのかもしれないが、カトレアちゃんはがっつり俺を拘束する気はないらしい。
これもしかして普通に出ていけるのでは?
なんかワンチャンある気がしてきたのでそのまま正面玄関へと進んでいく。途中、使用人の方々とすれ違ったのだが挨拶されただけで特に止められなかった。ついでなので彼らにも途中で居なくなってしまったキュウコンの捜索願いをお願いしておいた。まあ、念の為というやつだ。
そんなこんなで玄関を超えて正門まで来てしまった。
いいのかなこんなあっさりしてて。俺はもっとこう……大脱走みたいなの想定したたんだけど、全然そんなことする必要なかったぜ!
普通に人間用の門があったのでそこを通って行くことにする。
さっと開ければ目の前には外の世界。
その記念すべき第一歩目を繰り出そうとして……失敗。
足が門より先に進まない。これは……見えない壁か何かが貼られているのか?
手を前に伸ばして目の前の空間に触れてみる。……硬い。間違いなく、俺の目には見えないナニカがここにある。
「これは……『ひかりのかべ』『リフレクター』『バリアー』などの壁張り系エスパー技で防壁を貼ってあるのか」
マジか。まさかこんな形で閉じ込めてくるとは正直予想もしてなかった。
……そういえば、さっきのカトレアちゃんも結界を貼ってるとか言っていた気がする。それはこういうことだったのか。
そりゃ使用人の皆さんもスルーするわな。どうせここから出られないんだから俺に監視の目を付ける必要もないし、俺が辺りを彷徨っていてもなんの問題にもならないだろう。
いやー困った。さっきまでのなんとかなるだろうと余裕ぶっこいて休憩していた俺を殴りたい。
屋敷破壊とかはしたくないし、こうなるとやっぱりカトレアちゃんを説得するしかないか。
「アタクシはアナタをここから出す気はこれっぽっちもないわよ」
「カトレアちゃん……」
気が付けば相変わらず眠そうな顔をしたカトレアちゃんがすぐ後ろにいた。側にはコクランさんも控えている。
「さあ、アタクシと一緒に戻りましょう。ここは寒いわ」
「はい……」
流石にこんな外で説得する気も起こらず素直に従う。ここで話し合ってカトレアちゃんが風邪引いたりするのはあまりにも良くない。
こうして館に戻って、俺は再びカトレアちゃんと対面していた。
やはりここから抜け出すのに必要なのは彼女を説得すること。それ以外ではおそらくあの結界を通り抜けることは無理だ。
サーナイトのテレポートを使えばすり抜けられるのかもしれない。しかし、ここまで俺を連れて来たサーナイトが協力するとは思えなかった。
故にこれが最短で最適な道だと思う。
そんなことを考えていると、意外なことに先に話を始めたのはカトレアちゃんの方だった。
「アタクシには理解できないわ。その左腕は1年前のロケット団との戦いでそうなったのでしょう? 次は左腕だけでは済まないかもしれない。そこまでアナタが命を賭ける必要があるのかしら?」
「……」
カトレアちゃんの言っていることは正しい。
そう、俺の左腕は1年前のロケット団と国際警察の戦いにより失われてしまっている。今ついている左手は義手だ。これはロケットパンチも撃てる優れものである。
1年前、国際警察は様々な地方に蔓延る悪の組織であるロケット団の大規模検挙を行った。それは俺が原作知識の利用や潜入捜査をして暴いた証拠などが元になっていた。
この時の俺はある意味調子に乗っていた。
なにせ、この少し前にプラズマ団を壊滅させることに成功したのだ。この調子でロケット団も壊滅させることができると本気で信じて疑わなかった。原作知識様様って感じだ。
結果から言うならば作戦は大成功。
ロケット団の多くの団員や幹部、研究者といったメンバーの大多数を逮捕し、囚われたポケモンたちを解放、ロケット団との間に繋がりを持っている人物たちを芋蔓式に掘り当てるといったことまでもできたのだ。逮捕されたロケット団の中にはかつてゲームで見たことのあるアポロやラムダといった原作ロケット団幹部メンバーまで居た。
勝ったな、風呂入ってくると思っても仕方のないことだと思う。
だが、運が良かったのはここまでだ。
当時、俺はロケット団アジト周辺の警備を担当していた。
実際の突入は特殊部隊が行ったので基本的に俺に荒事が回ってくることはない。外からの援軍や逃亡者などで戦うことになる可能性はあるが、まあ特殊部隊なら上手くやるだろうという楽観があったのも事実だ。もちろん、任務に支障が出るような怠慢は行っていなかった。
しかし、『基本的にない』は『例外的にある』ということを意味している。俺の目の前にアジトから逃げて来た1人のロケット団が現れたのだ。
そう、ロケット団のボスであるサカキである。
自分の不運を嘆きながらも仲間に即連絡と救援要請を送る。
俺の手持ちのポケモンは当時ヌメルゴンはいなかったとはいえ地面弱点のポケモンが多く相性はかなり悪かった。
それでも俺たちは頑張った。明らかにジムリーダーレベルを超えて四天王クラスの強さをしているサカキ相手にめちゃくちゃ頑張って、なんとかサカキの地面ポケモン6体を削り切って「足元がガラ空きだ」されつつも隠し玉のスピアーも完全に倒したのだ。
ハバタクカミ、本部から支給されて貸し出されたウィンディ、地面タイプ弱点のウツロイド──今は手持ちにいなくてその危険性故に国際警察本部に預けられている隠されし最後の1匹だ──こそやられてしまったものの、マスカーニャ、メガサーナイト、キュウコンはなんとか生存している状況。
サカキの手持ちは0、こちらはギリギリとはいえ3体残している状況。大人しく投降することを勧めたが、サカキは不敵に笑うだけで投降する気配は一切見られない。
「ふむ、まさかここまで追い詰められるとはな。やれ、ミュウツー」
「なん……だと……」
信じられないものを見た。
サカキが呼び出したのはアーマーをその身に纏ったポケモン。アーマー越しにも分かるその圧倒的な強さ。
その姿とその名前を俺は知っている。
いでんしポケモンミュウツー。
ミュウツーはフジ老人の手によって生み出されたミュウのクローンである伝説のポケモンだ。いや、厳密に言えば伝説のポケモンという形容はおかしいのだが、都市伝説にはなっているのでセーフとさせて欲しい。
ゲーム、アニメなど媒体によって誕生の経緯にはいくつか差異はあるが、ミュウのクローンであることは一致している。そして今回のミュウツーはおそらくあの拘束具をつけられていることから、アニメ由来の誕生である可能性が高い。
そして前世において、その悲劇的な誕生故に映画『ミュウツーの逆襲』は極めて高い評価を得ている。
そして俺がサカキと戦った時期はちょうどレッドが旅をしている時期と被るので、レッドをサトシと当てはまるならサカキがこの時期にミュウツーを所持していてもおかしくはない。
色々と語れることは多いポケモンだが、これ以上脇道にそれるのも良くないので端的に表すと『強い』だ。
で、そんな禁止伝説ポケモン級の力を持つポケモンと既にサカキ戦を終えてボロボロの俺のポケモンが戦ったらどうなるのか、言わずとも分かるだろう。
だがしかし、俺のポケモンたちは頑張った。それはもうめちゃくちゃ頑張った。
最終的にはほぼ全員ゲームで例えるならHPが1桁くらいしか残っていなかった。全員がトレーナーを悲しませまいと持ち堪えまくった結果がこれだよ。流石のサカキもあまりのしぶとさにちょっと困惑していたのを覚えている。
その結果、俺たちはミュウツーのアーマーを破壊することに成功した。
しかし、ここで予想外のことが1つ発生する。
俺は原作知識からミュウツーは兵器として戦わせられることに嫌気が差していたことを知っていた為、アーマーを破壊すれば解放されてくれると信じていた。
……なぜかアーマーを壊してもサカキに従うミュウツー。
聞くところによると、なんでも俺のポケモンたちとの戦いが楽しくなっちゃったそうだ。兵器扱いは嫌だけどバトルはしたいってさ。
そしてミュウツーはよりにもよってサカキと組んでバトル続行を要求して来たのだ。
そっかぁ……。
もしかしてこれはゲームで言われていたミュウツーの持つ凶暴性の発露……ってこと⁉︎
戦闘狂にならないで……。頼むから逆襲してくれ。いったいなにが悲しくてミュウツーの逆襲を願わなきゃならないんだよ。
もうここまで言えば分かるだろう。
俺の左腕を捩じ切ったのはミュウツーだ。
意図的なのかそうでないのかは定かではないが、ミュウツーのサイコキネシスが俺に直撃して左腕をもぎ取られたのだ。サーナイトが身を挺して庇ってくれなければ、俺の上半身と下半身は泣き別れになっていたに違いない。
その後、援軍が到着したこともありサカキとミュウツーは行方をくらませた。
おそらく今もどこかでサカキはミュウツーを使いこなす為に、ミュウツーはさらに強くなる為に修行を積んでいるのだろう。恐ろしい話だ。
今、過去の話を思い返してみてカトレアちゃんの説得方法を思いついた。
結局のところ、俺が死にかけたのは俺が弱い所為なのだ。
いや、よりにもよってサカキと組んだミュウツーには勝てんだろ……というのは紛れもなく正しいが、今回はそういう話ではないのだ。
つまりカトレアちゃんに、俺が死なないくらい強いということを証明できれば良いということだ。
我ながら発想が完璧すぎて驚いている。これなら行ける!!
「俺は絶対に死にません。もう2度とサカキ戦のような不覚はとらない。だからこれは証明です。俺とポケモンバトルして俺が勝ったら俺は国際警察を続行する。これでどうですか?」
「正気? アタクシはフロンティアブレーンであり、イッシュ地方四天王にも選ばれたのよ?」
「もちろん知っている。けれど、そのレベルの相手に勝てなきゃカトレアちゃんも納得出来ないでしょ? ……俺が負けたらなんでも言うこと聞くよ。執事でも奴隷でもなんでもするといいさ」
その時、カトレアの脳内に電撃が走る!!
(なんでも? 今、なんでもって言った⁉︎じゃあ、あんな事やこんな事も……? ……やります!)
脳内パーリーナイツで思考が全くエレガントじゃないが、表情を一切変えずにいつも通りにカトレアは返答する。
「いいわ。ならばアナタの極上の強さを証明なさい!」
こうして、俺の未来を賭けた戦いが始まった。
よく考えなくても、カトレアちゃんは俺をここに閉じ込めた時点で目的達成しているので受けるメリットそんなにない。つまり、なんでもという言葉を混ぜることで気を引いた俺の作戦勝ちってことだな。
これが頭脳派インテリの戦い方だ。
ミュウツーの性格は個体差によって違うので今回のコイツはこんな性格だったということでお願いします
時系列がめちゃくちゃなのはもう気にしないでください
頭脳派インテリとかいう頭悪そうな言葉