誰が噛ませ犬だって?   作:名も亡き一般市民

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観光という名の聖地巡り

 

結論から言って、雷門サッカー部はほぼ元に戻っていた。剣城優一の弟、剣城京介を除いて。

松風天馬同様に、サッカー部全体とは別の手段で消したあたり、未来に及ぼした影響が大きいということなのかもしれない。

 

当然剣城京介がいなければ雷門中サッカー部が完全に戻ったとは言えない。よって剣城京介を除く雷門中サッカー部員に、フェイと僕と優一を合わせたメンバーで三度プロトコルオメガと闘うことになった。

 

僕とフェイは自己紹介を済ませたので、あとは剣城優一の心残りが済むのを待つばかりである。

 

フェイ含め他の連中は剣城京介の様子を見に行ったが、どうせそこでのやり取りは知っているから適当な理由をつけて行かないことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな僕が今何をしているかというと、一人で稲妻町を歩いていた。体動かしたいとか気分転換ではなく、観光という名の聖地巡りをするために。

僕にとってイナズマイレブンは1話から見続けていた数少ないアニメの一つ。

最初は格好いい必殺技に強敵たちとの戦いという、言わば王道な流れが好きだった。しかし、辛い過去や境遇の違い、想いのすれ違いによる対立を乗り越え成長する、魂が輝く瞬間とでも言おうか。

それを見ることが次第に楽しみになっていた。

まぁちょっと解釈違いな新作もありはしたが、あれはあれで良しとしよう。

そんなアニメの舞台を歩けるのだから、表情には出ないが興奮が凄い。まぁ正直、今から10年前の稲妻町、つまり円堂守が学生として過ごした時代の稲妻町が見たかったのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました~。」

 

店長の声を聞きながら、店を出た。町並みだけでなく、鉄塔や無印第68話の宇都宮虎丸と円堂守が初めて会合した場所に赴いたりしてるうちに、すっかり日が傾いてしまった。

空腹状態であったため、当然のように雷雷軒へ。飛鷹征矢によるチャーシュー拉麺と餃子を注文。なかなかに美味しかった。エージェントになってから食事制限もかなり厳しくなったため、本当に久しぶりだった。

 

 

この時代のお金持ってきておいて良かったなぁと思いつつ、木枯らし荘へ戻るために河川敷の側を通った時。

気分良く進めていた足をピタリと止める。日が傾き夕焼けが町を照らして幻想的な風景となっているが、その景色に似合わぬ殺気を感じ取った。見渡す限り河川敷には誰もいない。

だが僕の直感とも言うべきか、それが危険だというシグナルを発していた。誰かに見られていると。

 

(この、体に突き刺さるような暴力的な殺気は───)

 

「見つけたぜガンマ。」

音もなく迫っていていた漆黒のボールを振り向きざまに、武術家のように真上へと蹴り返す。

その人物はそれを読んでいたように、宙へ飛び上がりながらオーバーヘッド。

凄まじい速度で返ってきたボールだったが、僕は少し後ろへ飛び退きながらピンポイントでトラップ。ふわりと浮いたボールが足元へ修まった。

「やれやれ。久しぶりだと言うのに突然襲ってくるなんて。相変わらずだね?ザナーク・アバロニク。」

「襲う?今のは軽い挨拶代わりだぜ?そんなことも分からないとは、随分鈍ったみたいだな。ガンマ。」

暴力的な殺気の正体は、ザナーク・アバロニクであった。未来のS級犯罪者であり、普段はムゲン牢獄に収容されている。そして、僕とちょっとした顔見知りでもある。

「それで、何の用かな?今僕は暇じゃないんだ。急ぎでもなければ後にしてほしいね。」

「今日1日古くさい町を見る時間があるんだ、暇じゃないわけがないだろうが!!」

「……」

思わず押し黙る。今日1日見られていたのか。気分が高揚していたのもあって、少々気を抜きすぎていた。

「まさか何の用かも分からないとはなぁ?!本当に鈍っちまったのか?ガッカリさせるなよ、俺とお前が会ってすることっつったら……勝負しかねぇだろうが!!

掌サイズの発信器のようなものを地面に叩きつけた瞬間、漆黒のサッカーボールへと変幻する。

「うらぁっ!!」という声と共に再び蹴り出した。

速度はあり鋭いが、真っ直ぐ一直線すぎる。トラップも容易──「よそ見するんじゃねぇぞ!」──?!

一瞬きの間に眼前へとザナークが迫り、左足を高く聳えさせ踵落としを仕掛けてきていた。

「チィッ…!!」

僕は咄嗟に膝を落とし体勢を低くして、僅かに先に迫るボールを右足を振り上げるようにトラップ。といっても先程のように勢いを完全に殺したトラップではなく、ボールの方向のみを変え勢いそのままにザナークの左足へとぶつけた。

鈍い音を鳴らしながら拮抗していたが、ボールがパァンという音を響かせながら再び宙へ舞い上がり、お互い一度距離を取った。

「はっはぁ!!いい動きだ!!鈍ってねぇようで安心したぜ!!」

「容赦ないね、戦闘凶が。」

「充分してるさ!まだこの力を使ってねぇんだからな!」

 

最初に蹴ったボールを足元に納めたザナークは雄叫びをあげたと思うと、背中から禍々しいオーラが立ち上ぼり始めた。

(化身か!騒ぎになるのも面倒、場所を代えさせてもらう!)

僕は左手首につけたブレスレットを素早く操作。デバイスから白い光がたちのぼる。

 

『ムーブモード』

 

白い光が消えた後、そこにいたはずの2人の人物も消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「さぁ、戻ろうか天馬。元の時代に。」

「うん…そうだね。フェイ。」

 

優一さんの心残りである、剣城との最後のサッカーが終わった後、すぐに俺達は剣城のインタラプトへ向かった。

アルファ率いるプロトコルオメガと三度闘うことになったけど、優一さんが剣城とミキシマックスしたおかげもあって何とか1-0で勝利することが出来た。

試合が終わり、正しい時間の流れから外れてしまった優一さんは消えてしまって寂しいけれど、一緒にサッカーしたことは忘れない。

それに怪我を治してまた剣城とサッカーすると優一さん本人が言ったのだから、俺はそれを信じるだけだ。

 

けれど…

 

「ガンマ、どこに行っちゃったんだろう…」

優一さんが剣城とサッカーをした日。といっても昨日のことだけれど、ガンマがいなくなってしまった。俺達に何か言うこともなく。

ワンダバとフェイが言うには、河川敷でガンマが使うブレスレットの反応があったらしい。

「本来ならタイムワープにせよ何にせよ痕跡を残さないようにするのが未来では当たり前のことなのだ。特に元エージェントであるガンマはそれが染み付いてるはず。」

「それをしてないってことは、多分咄嗟に使ったんだろう。痕跡を消す暇もなかったってことだ。」

「それじゃあ、ガンマは…」

「あぁ。何か厄介なことに巻き込まれた可能性が高いかもしれん。敢えて残したというのも考えられるが…」

「ワンダバ。何とかガンマの座標を探れないの?」

「それが、どうやらワープとは別の大きな力によって座標がかき消されているようなのだ。現状全く探れない…!」

 

 

 

結局時間がないということで、プロトコルオメガとはガンマなしで闘った。ガンマは自分がいなくても問題ないと言っていたが、勝ったのには優一さんの力が大きかった。ガンマも優一さんもいなければ大苦戦したと思う。

 

「天馬、ガンマのこと気にしてるの?」

「フェイ…うん、そうなんだ。急にいなくなって、心配だよ…」

「元の時代に戻ったらガンマも戻ってるかもしれない。仮にいなかったら僕とワンダバで何とか探してみるよ。だから元気だして?」

「うん、ありがとうフェイ。」

フェイの言う通り、雷門に戻ればガンマもいるかもしれない。と思い直して顔を上げた。

 

 

 

 

***

 

 

 

天馬の顔が前を向き、少しだけホッとする。それが自分らしくない感情であると思いつつ。

僕の名前はフェイ・ルーン。フェーダに所属する(・・・・・・・・・)セカンドステージチルドレンの1人(・・・・・・・・・・・・・・・・)である。

フェーダのリーダーSARUの指示でプロトコルオメガの目論見を阻むために天馬に加勢したスパイ。

SARUにフェーダに所属していたという記憶を消してからスパイすることを提案されたが、僕の能力を使えばアルノ博士を騙すことも難しくない。

アルノ博士から預けられたワンダバにも疑われていることもないし、全て順調にいっていると思っていた。

だから、沖縄で天馬を助けた時に、元とはいえプロトコルオメガのエージェントが来たのは本当に驚いた。

 

それでもやることは変わらないと、そう思っていた。

 

円堂守を交えたプロトコルオメガとの試合を思い出す。

僕は言った。ワクワクすると。ガンマとなら上手くいくと。

何故、あんなことを言ったのだろうか。天馬のことはいずれ裏切り、ガンマとは目的によっては敵対するだろう。

少し時間が経過しいざ冷静になると、自分が気持ち悪くなった。どんな顔をしてそんなことをほざいたのか。

天馬と剣城兄弟のサッカーを見て、まるで友達のようなやり取りをした。本当の友達になれるはずもないのに。

 

あぁ、本当に気分が悪い。顔や態度にでない質で良かったと思う。

 

元エージェントが何故プロトコルオメガと敵対することにしたのか、何故天馬に力を貸したのか。

アルノ博士との繋がりはある…と思う。だって彼はワンダバのことを知っていた。ワンダバはアルノ博士が作ったものだから、エージェントの頃か辞めた後かは分からないが、何かの機会にワンダバを見たということになる。疑問は尽きない。

ガンマに対する感情もそれだけ。探りたいというだけのはず。

 

疑問が多すぎてSARUには報告していない。何も分からないのだから報告に意味はないし、実際サッカーを守ることは僕らフェーダを守ることになるのだから、その戦いに強い味方が増えて悪いことはない。

 

自分に言い訳するように、理由をつくる。実際のところ報告したくないだけだと言うのに。

何故か、初めて会った時から、初めて会った気がしなかった。むしろフェーダの皆と一緒にいる時…いやそれ以上に懐かしさや暖かさを感じた。

ガンマは何も気にしている様子はないあたり、ただの勘違いなのか。それとも、敢えてそのような態度なのか。

色々理由をつけたが、結局そのぬるま湯に浸かっていたくて報告していないのである。

 

ガンマがいなくなり僕…私は思ったよりも動揺している。天馬には冷静を装って見せているけれど。

 

 

 

 

私はガンマ、君の正体が知りたい。




え~っと、この後どうしよ?笑

あと優一さんすまん…なんか出番をもっとあげよーと思ってたけど思い付かんかったんや…

許してクレメンス…

ちょっとフェイちゃんの苦悩を書き出しました。かわいい子は苛めたくなっちゃうぅ
原作でも思ってたんですけど、フェイって他のフェーダの皆さんのように覚悟ガン決まりって風じゃないんですよね。実際過去思い出してからも天馬たちに被害加えるのには苦悩してたようですし。
ちょっと雷門もとい天馬キャプテンとの居心地が良すぎたのかなぁと。円堂も天馬もまぁまぁ人たらしなとこありますし。



どうでもいい追加情報
今回ザナークアバロニクさんが持ってきた漆黒のサッカーボールですが、ランダムで重くなったり軽くなったり、速度が増したり減ったりします。これはエルドラドの訓練用のボールで柔軟な対応力を養うためのものです。重さはエイリアボール並みから子供が遊ぶようなボールまで。慣れれば今回のような蹴り合いも出来ますが、難易度は鬼です。

まぁこの設定が今後生きることはほぼないですね…フヘヘ
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