俺の同僚の顔が良すぎる   作:チキンうまうま

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 まさかまさかのコラボ回です。

【エリモス】
 うちの主人公。女好きだけどモテないアスラン。

【カドヤ】
 『狼黒』さんの『ヤンデレって怖いね(小並感)』の主人公。色々闇の深いサンクタ。




コラボ回
職場のヤンデレたちの顔が良すぎる 


 

 某月某日。ロドス・アイランド製薬のオペレーター・エリモスは当てもなくロドスの廊下を歩いていた。この日彼は非番、つまりは休みなのである。そして間の悪いことに、ノイルホーンやスポット、ミッドナイト、マドロックといった友人達は軒並み仕事なのである。そのため彼はその日非常に暇を持て余していた。

 

「……ん?」

 

 そんな彼がブラブラと歩いていた足を突然に止めた。何かを感じとったのだろうか、そのまま普段あまり使わない獅子耳をぴこぴこと動かすと、彼は身体の向きを変えた。その先には、特になんの変哲もない談話室へと繋がる扉がある。

 

「…なんだ?」

 

 扉を見つめたまま彼は訝しげな声をあげた。彼は普段は阿呆だが、優秀なオペレーターの1人。そんな彼が違和感を感じ取ったと言うのなら、それは何かがあるに違いな─

 

「この先から美女の気配がする…!」

 

 これはひどい。

 そんなあまりにも知性も理性も欠片も感じ取れない発言が彼の口から飛び出した。

 

「美女の気配…。つまりこれは進むしかない、と言うことだな。」

 

 んなわけない。ないのだが、ロドスの誇る玉砕王ことエリモスの頭には、そんな考えは欠片もなかった。そして思うが早いが彼は欠片も躊躇せず、その扉を勢いよく開け放った。

 

「どうもー、お邪魔しまー…」

 

 声をかけながら入室した彼だったが、その中で行われているものを見た途端にその動きを止めた。もはや石化した、といってもいい。それほどまでに見事に彼は硬直していた。

 

 だがそれも無理はないと言えるだろう。

 

「……………!!!!!」

「ほーら、抵抗しないの。モスティマ、そっち押さえてて。」

「わかったよエクシア。ほら、カドヤ。じっとしててね。」

 

 その部屋には、3人の女性達がいた。それだけならロドスではさして珍しいことではない。だが、彼女らのしていることが問題だった。彼女達は昼間から公共の場であるにも関わらず、【ピーーーー】で【ズキュウウウン】なことに励んでいたのである。部屋の鍵も掛けずに、だ。いくらエリモスといえど、流石にその状況には思考がフリーズしたのか、呼吸すら止まったかのようにその動きをとめている。

 

「ちょ、ま…モスティ…ひ、人来た…」

 

 そして意外なことにエリモスの入室に真っ先に気がついたのは2人の間に挟まってで攻め続けられている小柄なサンクタの少女だった。彼女は息も絶え絶えになりながら、その頬を羞恥に染めて、その行為を止めようとしている。

 

「ん?ああ、本当だ。エリモス来てるね。」

「でもフリーズしちゃってるね。うーん、どうする?」

「放っておこうか。そのうち動き出すだろうしね。」

 

 残る2人、赤い髪のエクシアと青い髪のモスティマはそう言っていつも通りにあっさりと流した。彼女らに取って、エリモスが如何に路傍の石の如き存在であるかが窺える。

 

「…お」

 

 彼女らがそんな話をしている中、ようやくエリモスが動きを再開した。

 

「お邪魔しましたあああああああ!!!!」

「待って!置いていかないで!!!」

 

 全力で彼女らに背を向けて走り出したエリモスの背中に、カドヤの悲痛な声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや本当さ、公共の場所であんなことすんなよお前。」

「これでも悪いとは思ってるんだよ。まさかエリモスが来るとは思わなかったからさ。」

 

 その翌日。任務へと向かう車の中で振動に揺られながらカドヤとエリモスは膝を突き合わせていた。

 

「それ以前の問題だろ。全く公共の場でイチャイチャしやがって…まあ別に羨ましくもなんともないけどな。」

「本当は?」

「妬ましい。」

「素直すぎない?」

 

 オペレーター・カドヤ。元男とかラテラーノの闇を知る人物とか色々言われてはいるが、そんなものエリモスにとっては大して興味はない。そんなものより大事なものがあるのだ。

 

 それはこのカドヤがハーレム(女)王ということである。

 

 ペンギン急便、龍門近衛局、ジェシカ、ブレイズ、ラップランド、W…ロドス内外を問わず顔の良い女達に囲まれ、そして愛されるその様子はまさにハーレムの主。そんなカドヤの様子には、多くの独身オペレーター達が涙を流しているとかなんとか。勿論エリモスも例外ではなく、自身のモテなさもあいまって今までどれだけの涙を流したことかわからない。

 

「いやだってさあ!考えてもみろよ!絶対いけると思ってたリードには振られるし!俺が振られたチェンさんは今やお前の恋人だし!世界は理不尽だ!」

「…そういやエリモスは前にチェンに告ってたね。」

「そうだそうだよそうですよ!まあ玉砕しましたけどね!?」

 

 そう言って喚くエリモスの肩に、カドヤがポンとその手を置いた。気のせいか、その手には万力の如き剛力が込められている。

 

「…カドヤ?痛いんだが…」

「ああ、ごめんよ。ただ、ちょっと聞きたいんだけど…」

 

 いくら体が頑丈なエリモスと言えど、痛いものは痛い。抗議すべくその手を払い除けようとしたところで、エリモスはヒュッと息を飲んだ。

 

 カドヤの瞳孔がガンギマリになっている。

 

「まさかまだチェンのことが好きとかないよね?」

(やっべえカドヤのハイライト死んだああああああああ!!!???)

 

 無自覚激重女、ヤンデレモードカドヤさん降臨である。やたら重いと噂の過去が関係しているのか、カドヤは一度でも気を許したが最後、カドヤはその相手をとにかく大事にする。そしてそれを脅かすものには本当に容赦しない。こええよマジで。

 

 とにかくここを切り抜けるには一つしかない。エリモスは今なお握り潰されんばかりに痛む肩を無視して、乾いた笑い声を上げた。

 

「ははっまさか!そんなことあるわけないだろう!?」

「そっか。ならいいけど。」

 

 エリモスの訴えによって少しは気が緩んだのだろうか、僅かにハイライトさんが帰ってきたところで車が減速を始めた。どうやら任務地の近くについたらしい。

 

「ほら!ほらカドヤ!仕事だ!行くぞ!」

「はいはい、分かってますよっと。」

 

 マシになったとは言え、いまだに圧を放ち続けるカドヤから逃げるように、エリモスは盾を持って車から飛び降りた。いやあまさか会敵に感謝することがあろうとは夢にも思わなかったぜ。そしてその後に続いて自分の得物を持ったカドヤも降りていく。そして2歩、3歩と歩いていくうちに2人の目は日常を生きる者のそれから、戦士のものへと変わっていく。

 

「俺が崩す。お前が仕留めろ。」

「ん、了解。」

 

 テラの荒野に、獅子と天使が降り立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カドヤ!無事だった!?」

「ごめんよ、私たちに仕事があったばっかりに…」

「大丈夫だよ。私はそこまで弱くないし、エリモスもいたからね。」

 

 ロドス期間直後。間髪入れずに美女美少女に囲まれたカドヤを見て、エリモスは滝のような滂沱の涙を流した。

 

「ちくしょう格差だ!格差を感じる!」

 

 ギャン泣きである。なんで自分は連戦連敗なのにあいつはモテるんだろうか。地面に膝を突き悲しみに暮れる彼の背を通りすがりのオペレーターたちが叩いていくなか、そんなエリモスの耳に涼やかな声が届いた。

 

「エリモス?帰ったのか。」

「…ああ、マドロックか。ただいま。」

「お帰り。どうしたんだ?そんなに泣いて。怪我でもしたのか?」

 

 エリモスの前にはいつの間に来たのか四つん這いになっている彼に合わせるかのようにちょこんと屈んだ白髪のサルカズ、マドロックがいた。心配してくれているのか首を傾げているが、普通ならあざといとしか言えないその動作がよく似合っている。ちくしょう顔がいい。

 

「いやなに、世界は理不尽だと思っただけだ。大したことじゃねえ。」

「本当に今更だな。しかしなんでまた…ああ、カドヤか。」

「そういうこった。」

「なるほど。だが…あれを見ても本当に羨ましいと思うのか?」

 

 そう言われてエリモスは目線をマドロックの方からずらしてカドヤの方を見た。そして今、カドヤのいる一角は先ほどとは随分と様子が異なっている。

 

「ところでカドヤ。本当に怪我はないんだろうね?」

「ないよ、大丈夫。エリモスもいたしね。」

「そっか、良かった。もしカドヤが傷つけられてたら私は相手をどうにかしなくちゃならなかったからね。」 

 

 普通にやばい発言が飛び出した。やべえよやべえよ。なんだよあれ。ちょっとぼかしてる辺りが余計に怖いよ。

 

「…て言うか、あたしたちカドヤが任務に行くって聞いてなかったんだけど。」

「あれ?そうだっけ?ドクターからも聞いてないの?」

「そうだね、私も聞いてないよ。」

「えっ。」

 

 おっと段々エクシアとモスティマのハイライトが消えていきますね。これはまずいですよ。

 

「そっか…カドヤは私たちに黙って出かけたんだね。」

「えっ」

「これはお仕置きかな?」

「ちょっ」

「今夜は寝かさないから。」

「覚悟しておいてね?カドヤ。」

「………ハイ。」

 

 なんて会話だ。周囲に子供達がいないのが幸いである。…と言うか、

 

「やっぱり裏山展開じゃねえかあああああああああ!ちくしょおおおおおお!」

「でも自由に外出もできないんだぞ?」

「…そう考えるとアレだな、うん。やっぱ羨ましくないかもしれんわ。」

 

 そんなカドヤの様子をみてエリモスは再び地面に伏せて泣き喚いていたが、ようやくノロノロと立ち上ると膝の埃を払い落とした。そしてそれに合わせてマドロックも立ち上がる。お互いに屈んでいた時は分からなかったが実は2人はそれなりに身長差があるのだが、示し合わせたかのように同じタイミングで、そして同じ歩幅で歩き出した。

 

「なあマドロック、今晩時間あるか?」

「あるが…どうした?酒か?」

「ああ!飲むぞ!ヤケ酒だ!」

「…あれ?エリモス!」

 

 さあ飲むぞ飲むぞと決意を固めながら人の輪から離れて行こうとする2人だったが、突然に背後から声をかけられて足を止めた。そしてエリモスはくるりと振り返って、声のした方を、声の出した相手であるカドヤの方を向いた。

 

「もう帰るの?」

「おう。今から俺は酒に溺れるぜ。」

「そっか。じゃあね、エリモス。また明日。」

 

 多くの人に囲まれて、カドヤはエリモスにそう言った。

 

「ああ、また明日な、カドヤ。」

 

 マドロックの隣でエリモスもカドヤにそう言った。

 

 そしてそれを最後に、2人は元の方へ向き直って歩き出した。お互いに背を向けて、そしてその距離は段々に離れていく。それでもきっと、今は離れても、また明日になればいつも通りに馬鹿騒ぎをするんだろう。

 

 また明日。もう一度だけ声に出さずにそう思って、2人の姿はロドスの日持に溶け込んでいった。





 と言うわけで今回は『ヤンデレって怖いね(小並感)』の作者である【狼黒】さんよりお誘いいただいてのコラボ回でした。まさかクソ隠キャな私にこんな素敵なお話をいただけようとは…感無量です。と言うわけでみんなも『ヤンデレって怖いね(小並感)』を読もうね。面白いから。
 そして狼黒さんの方でも後々コラボ回を書いてくれるそうです。楽しみ。私はこうやって二次創作者同士で交流するのは初めてだったのですが、狼黒さんがすごい良い方で、今回こうやってコラボしたのが狼黒さんで本当に良かったと思っています。ありがとうございました。
 それではみなさま、またお会いしましょう。
 
 狼黒さん、今回は本当にありがとうございました。またお願いします!


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