ノイルホーンの身長が意外と低い(180cm)と知った今日この頃。190はあると思ってたんですけどね。
重装オペレーター・マドロック。
元サルカズ傭兵にしてレユニオンのマドロック小隊を率いていた人物であり、現在は仲間の治療のためにロドスへと加入したという経歴を持つ。また、常に戦闘用のスーツを纏っており、スーツを着た上でのその体躯は時折天井に頭をぶつけてしまうほどに大きく、声だってそれ相応に低くくぐもっている。
さて、これを踏まえた上で、である。
「検査はどうだった?異常は無しか?」
「ああ。幸いにも前の検査から悪化したところはなかった。」
「そりゃ何より。ほれ駆けつけ一杯。」
今エリモスから新しいジョッキを手渡された白髪のサルカズ女性、それも格別の美女が、そのマドロックだと誰が予想しただろうか。
「いやちょっと待っていただきたい!!??」
その場にいた全員が色々と言いたいことがある中、最も近くにいたホシグマが誰よりも早く衝動を抑えきれずに声を上げた。
「どうした?ホシグマ。」
「いや、どうしたもこうしたも!え、本当にマドロックなのですか!?」
くぴりとビールを口に含むマドロックにホシグマは尋ねた。ホシグマの普段の冷静かつ頼もしい彼女の姿はどこへやら、あまりにも予想外の事実にかなり取り乱した様子である。まあマドロックのギャップを考えると当然と言えば当然なのだが。
「ああ、私は正真正銘マドロックだ。」
「………嘘だろう!?」
「マジだぞ。まあ気持ちは分かるが。」
「…少し、頭を整理させてくれ…!」
ホシグマだけでなく周りのオペレーターたち全員が似たような反応をする中、エリモスだけは静かに水の入ったグラスをマドロックと打ち合わせた。
「てかお前俺以外にも顔バレしてなかったのね。」
てっきり個人個人では明かしているものかと思ってたんだが。もしゃもしゃと塩キャベツを頬張りながらエリモスは隣に座るマドロックにそう話しかけた。どこかでキャベツは二日酔いに効くとか聞いた気がするので早速実践しているのである。
「みたいだな。まあ医療部にはほぼ全員に知られているからそこから伝わっているんじゃないかとは思ったんだが…。」
「プライバシー保護ってやつかねえ。」
遅れてきたとは言え料理も酒もまだまだある。マドロックは今、残っていた料理に舌鼓を打ちながら酒を飲んでいた。それにしてもエリモスに比べて食べる量が少ないのはこの場合見た目通りというべきなのか、それとも見た目に反して、と言うべきなのだろうか。ちょっと悩みどころである。
「かもな。ロドスは個人情報の管理がしっかりしているから、それはあり得るだろう。」
「しっかりした会社だねえ。いやいい事なんだけどさ。」
「と、いうかそんなことを言っているがエリモスだって周りに漏らしてないじゃないか。」
「そりゃわざわざそうする必要がなかったからな。…てか、今更だけど顔晒していいのか?なんか、そのあー…その、こだわり、とかあるんじゃねえの?」
と、その時背後で一際大きな歓声が上がった。チラリと聞く限りではどうやら先ほどから行われていたニェンとエクシアの飲み比べはニェンの勝ちに終わったらしい。…実際のところあの無職はやたら酒に強いから最初から分かりきっていた勝負ではあるのだが、まあエクシアのことだから勢いでやっていたのだろう。楽しそうで何よりだ。
「いや、特にないぞ?単に素顔を晒すのに慣れてないだけだ。」
「ないのかよ。」
「ない。…というか、な。」
「どうした?」
ビールを飲み終えたのか、マドロックは空いたグラスに近くの瓶から透明な酒を注いでいく。それを一飲みすると、彼女は苦々しく口を開いた。
「…その、うちの小隊の中でも私は素顔を知られていなかったらしくてだな。」
「…マジで?お前の小隊って結成してからまあまあ長くない?」
「ああ、それなりに長い。」
「なのに知らなかったのか…。」
「らしいな。しかも『うちの小隊にたまにいるサルカズ女性は貴女だったんですか!?』って言われた。」
「…んふっ。」
つい笑いが漏れた。マドロックはそんなエリモスをジト目で睨むと、こほんと咳払いをしてから続けた。
「んっ…で、だ。流石にここまで素顔バレてないといざという時困るんじゃないかと思ってな。どうせエリモスにはバレているわけだし、今更ではあるけど素顔を出してみることにしたんだ。」
「なるほど。…っと、すまん。電話きたから出てくるわ。」
「ああ、私のことは気にせず行ってきてくれ。」
そんな時に急にポケットに入れていたエリモスの端末が震えた。確認すると、発信元は我らが指揮官、ドクター。流石に作戦部のトップからの連絡は無下にできず、彼はそろりと部屋を抜け出して行った。無駄にネコ科としての能力を発揮している。
マドロックがそんな彼を見送った直後、彼女の前に1人のオニ族の女性が席についた。
「よお、マドロック。相手がいないなら向かいいいか?」
「…ホシグマ。」
「まさか、あのマドロックが女性だったとはな。」
手元の升に一升瓶を傾けながらホシグマが話し始めた。さすが元ギャングというべきか、彼女の一挙一動が様になっている。
「…同じことを前にエリモスにも言われたな。」
「ほう?あいつにもか?…そういえばあいつは前から知っていた風だったな。」
「ああ。前に酒を酌み交わしたことがあってな。その時に明かしている。」
「なるほど。…それを皆に言わなかったのはあいつなりの気遣い、と言ったところかな。」
ぐびりと一気に升の中の液体を飲み干すと、今度は瓶をマドロックの方へと向ける。彼女もまた、手近にあった空のグラスを差し出してそれに応えた。
「さあな。あいつのことだ、口では色々言いながらも案外何も考えていないのかもしれない。」
「ふふっ、それはあるかもな。あいつにはシージが頭を悩ませているくらいだ。」
「ほう?シージが?」
「ああ。リードとの件では特に、な。」
「リード…ああ、あの事件か。」
マドロックは直接その場面を目にしたわけではないが、それでも本人から振られたから慰めてくれと泣きつかれた為にマドロックはエリモスとリードの間での一件を知っていた。
「そうだ。シージはあのリードとの一件を聞いて、ソファからひっくり返ったうえに飲んでいたコーヒーを吹き出したらしいぞ。」
ホシグマからそれを聞いてもシージのその様子がマドロックには思い浮かばなかった。彼女にとってシージはカリスマ溢れる女傑、と言った存在なのであり、そんなシージがそんな痴態を晒すなど想像ができなかったのだ。
「…それ、本当か?」
「あくまで噂、だけどな。」
そう言ってホシグマはクツクツと楽しそうに笑った。
「そういえば前にはうちのチェンも告白されているぞ。なんとも惚れっぽい奴だ。」
「確かに。あいつは前に『恋はいつでも
まあそんなことを言っておきながらもエリモスは毎度の如く玉砕しているのだが。
「どこの言い回しだそれは…。」
「分からない。ただシージやスカイフレアが首を傾げていたからヴィクトリアでないことは確かだろうな。」
「…あいつは本当にヴィクトリア人なのか怪しい時があるな。」
ため息と共にホシグマはさらに酒を流し込んだ。
「…そう言えばなぜかは知らんがあいつはやたら麺を啜るのがうまいんだ。ヴィクトリア人は食事中に音を立てることに抵抗があるらしいが…」
「まああいつは無駄に色々器用だから、何ができてもおかしくないだろう。この間なんて、メテオの壊した機械をマニュアル見ずに修理してたぞ。」
「本当になんなんだあいつは…。」
共通の話題があれば話も酒も進む。2人は美酒と玉砕常習犯の友人を肴に、話に花を咲かせていた。
「…で、これはどういうことだ、ホシグマ。」
「見たら分かるだろう?エリモス。マドロックだ。」
数十分後。ようやく帰還したエリモスは驚きながらも目の前にある事実を確認した。
「と、いうよりも随分遅かったじゃないか。何があったんだ?」
「ちょっと俺の休暇の存続の危機でな。ドクターの執務室まで行って交渉してたんだ。おかげでどうにか休暇は守れたんだが…それより、だ。」
コップに水を注ぎながら彼は尋ねた。
「…マドロックを酔いつぶすってお前どんだけ飲ませたんだよ…。」
ホシグマの目の前にいるマドロック。彼女は今、飲みすぎたのか完全に机にうつ伏せになって寝落ちしてしまっていた。いったいこの短時間でどれだけ飲ませたのか、ちょっと想像がつかない。
「待て、誤解だ。私と呑む前にマドロックはだいぶ酔っていたんだ。本当だぞ。」
「はあ?いや、こいつ俺より酒強いんだぞ?そんな瓶1本程度の酒でそんなことあるわけ…いや、ちょっと待て。」
ホシグマが慌てる中、エリモスはある空き瓶を見つけた。見つけてしまった。
エリモスが見つけた空き瓶を手に取ると、その瓶の正体を知ったホシグマもまたその顔を驚愕に染めた。
「…まさか、こいつ
その酒はスピリタス。ホシグマが場を盛り上げるために持ってきた、世界最強のアルコール度数を誇るシロモノである。結局エリモスが飲まなかったそれは、いつの間にか全て飲まれて空になっていた。
マドロック、恐るべし。
そんな2人の内心も知らぬまま、マドロックはすやすやと穏やかな寝息を立てていた。
この作品ではやっていますが絶対にスピリタスを原液で飲まないでください。喉が焼けます。
ヴィクトリア編書きたい気持ちはあるんですがその場合ネタに走れないので非常に悩みどころ。
あとエリモスの性癖ドストライクお姉さんがいるので確実にこいつが暴走する。