親戚からウツボをもらいました。干物で。
………食えと?
「お初にお目にかかりますわ。」
そう言ってその桜色の髪をした
「妾の名は─とりあえずはコードネーム、パゼオンカと名乗っておきますわ。スローガンやキャッチコピーをお考えの際にはぜひお声かけくださいまし。」
集まったオペレーターたちがそう挨拶したパゼオンカに拍手と歓声を送るなか、その中に混じっていたエリモスは思った。
─またとんでもない新人が入ってきやがった。
オペレーター・パゼオンカ。現在は外勤において狙撃オペレーターとして活躍しており、また、最初の挨拶通りに広報部の手伝いなどをしているらしい。ロドスの内外を問わず活躍しているというのは人材不足に悩み続けている現状、極めてありがたいと言わざるを得ない。言わざるを得ないのだが、
このパゼオンカ。とんでもなくえっっっっなのである。
えっっっっっっっっっなのである。大事なことなので2回言った。なんなら2回目は強調させてもらった。だが、これはともに仕事をしていく上で本当に大事なことなのである。
そもそもパゼオンカという人物はどのような人物か。
パゼオンカは身長177センチという長身に加えてロドスでもそうそう見られないモデル体型と、黙っていれば深窓の令嬢と言わんばかりの美貌を兼ね備えた『美しい』としか表せないような儚げな雰囲気を持つ絶世の美女である。
の、だが。服装が…その、ですね。あまりにも周りの目を気にしていないとでも言いますか。…具体的にはここでは口にしないでおこう。ただ一言言わせてもらうならば『セイロンを見習え』とだけ。紳士に対してならばこれである程度は伝わるだろう。
というか割とガチなお嬢様であるセイロンがパゼオンカを見て『シュヴァルツよりエッチですわね…?』と言ったとかいう噂が回っているが本当なんだろうか。本当ならそもそも姉代わりにしてボディガードをそんな目で見るなと言いたい。
「…また長々と続けたね、エリモス。」
あまりにも長く熱弁したためか、目の前にいる人物は呆れた声を出した。
「これは失礼、ついこの思いが抑え切れず。」
相手が相手なのでエリモスも口調を敬語に戻し、目の前に座る人物に詫びた。それもそのはず、彼─だと思っているのだが、最近はマドロックのこともあり相手の性別がわからない─は自身の所属する部署のトップにいる人物なのだから。
「うん、君が真面目な顔をしている時は大体馬鹿なことを考えているってのは知っているんだけどね。」
なんてひどい評価なんだろうか。これでもクロージャとかよりは問題起こしてない自信があるのだが。
「…君が起こす問題は確かに少ないけどその分かなり厄介なんだよ。まあそれはさておいて、君は何が言いたいんだい?」
そう言って首を傾げてくる相手─ドクターにエリモスは苦々しく口を開いた。
「パゼオンカに…!パゼオンカにまともな服を着させてください………!!!あの人と話すたびに正直目のやり場に困るんです……!!!!」
「………そう来たか。」
「…だけどエンジニア部所属の君は彼女と関わりはないんじゃないのかい?作戦にもまだ一緒に行ったことないだろう?」
仮面の隙間から器用にコーヒーを飲みながらエリモスの主張を聞いたドクターが尋ねた。
「いやドクター、あの人のタイプライターを武器に
あの時は大変だった。『タイプライターを武器にするってなんだよ』から始まり、試作を作るたびに試し撃ちに訪れた彼女のただでさえ露出の多い服の隙間からチラチラと素肌が…この話はやめよう。
「あれやったの君だったのか!?」
「あれ?知らなかったんです?てっきりドクターの指示の元での改造だと思ってたんですけど。」
そう聞くと彼はブンブンと首を横に振った。
「いや、私はその辺りノータッチだよ。…よくあんな魔改造できたものだね。」
「まあ一応本職ですから…ってんなことはいいんですよ。ドクターから聞きたいのはあの人にまともな服を着させられるかどうかです!死活問題なんですよ!俺の!理性の!」
「ふむ。まあとりあえずはコーヒーでも飲んでリラックスしなよ。」
そんなどこかで聞いたことあるセリフと共に差し出されたコーヒーをエリモスが一口飲むと、それを確認してドクターは口を開いた。
「話を戻すけど…まあ無理だろうね。そもそもロドスは服飾規定ないもの。」
「…ま、言われてみればそりゃそうっすよねえ…。」
「じゃなきゃみんなあんな好き勝手な服装しないだろうね。人によっては前職の制服だったりするし。」
「…確かに。でも、その私服が悩みの種なんですよ…。」
頭を抱えたエリモスに、ドクターはふむと思案したのちに口を開いた。
「ならとりあえず聞こう。…メテオの服装、どう思う?」
「おへそがけしからんと思います。」
「モスティマは?」
「ホットパンツとゴツ目ブーツに生足って合法なんですか?」
「…スペクターは?」
「ニーハイ×シスター服は至高。」
ここまで聞くとドクターは懐から端末を取り出すと急に何やら通話を始めた。
「もしもしポリスメン?」
「あいや待たれよ!?」
危なかった。危うく国家権力のお世話になるところだった。
慌ててドクターから端末をひったくると、ドクターはすごく納得のいかない顔をして…いるはずだ、まあそんな雰囲気でこっちを見てきた。
「何するんですかドクター!ロドスにはその手の本職が駐在しているんですよ!?」
ホシグマとかスワイヤー女史とか。
「だから連絡したんだろう?」
鬼かこいつ。いやこの人の種族知らんけど。
「俺は聞かれたことに正直に返しただけだろうが!」
「いや、思ったよりアレだったからつい…。」
彼のついで危うく人生が詰むところだった。冷や汗を流すエリモスに、ドクターがため息と共にある事実を告げた。
「ま、ともかく今の発言を聞く限り君は多分どんな格好でもフェチを見出すタイプだと思うよ。」
「どんな格好でもフェチを見出すタイプ。」
「うん。端的に言ってまあまあの変態だね。だから多分仮に全員が制服きたら君の性癖は確実に制服になる。賭けてもいい。」
「…………。」
上司からまあまあの変態呼ばわりされている件について。いや、エリモスの魂の母国は世界に名だたるHENTAI国家だから仕方ないと言えば仕方ないのだが、だが、それでもエリモスはドクターにだけはそれを言われたくなかった。
「どうしたんだい?エリモス。反論や否定がなかったらとりあえず仕事を手伝ってくれると嬉しいんだけど…。」
「…いや、まあ否定はできないんだけど、ドクターにそう言われるのは納得いかねえなって。」
「ほう?」
そう言い返すと、ドクターの雰囲気がわずかに戦場へ立つ時の、冷徹なものへと変わった。そのことに微かに背筋が震えるなか、ドクターがエリモスへと尋ねた。
「…それは、どういう意味だい?」
「どういう意味もこういう意味もないでしょうよ…!」
それでもエリモスは引かない。彼にだってプライドはあるのだ。
彼はミジンコよりも小さなプライドを胸にドクターへと声を張り上げた。
「ドラゴンと装甲車で興奮する変態にだけは言われたくねえよ!」
「何を言っているんだそれは一般性癖だろう!?」
「んなわけあるかこの【※ヴィクトリアスラング】!!!!」
彼らの言い争いはこの数分後、騒ぎを聞きつけた一部オペレーターたちにより拡散、果てにはロドスを巻き込んだ性癖戦争を起こすことになる。
最終的に発端であるドクターとエリモスの2人は始末書を書かされ、ついでに休暇が減った。2人は泣いた。ついでに他のオペレーターたちもきっちり叱られた。
戦争は何も生まない。ロドスのオペレーターたちはそれを学んだという。
「こんなくだらないことからそんな大切なことを学ばないでください」─某製薬会社CEO
「…ひどい目にあった。」
始末書をケルシーに提出した後、彼女の長い長いお説教を受けたエリモスはトボトボと廊下を歩いていた。流石に戦闘オペレーターといえど疲労が溜まっているのだろう、その足取りは極めて重い。
「…とりあえず部屋帰ったら風呂入ろ…って、あれは?」
そんな彼の目の前を歩いているのは桜色の髪の女性。その胸に何かを抱えている。
「パゼオンカ…?いや、その前に何を持って…!?」
その女性は例の新人、パゼオンカ。彼女は今、その胸に何かを、いや極めて小柄な誰かを抱えている。どころかときおりスンスンとその匂いを確かめているようにも見えた。なんてヤバいことをしでかしているのだろうか。
そしてエリモスにはパゼオンカが抱えている人物に確信にも近い心当たりがあった。
「まさか、あいつ…!」
そしてここに来てパゼオンカはエリモスがいることに気づいたのだろう。何かを言おうとしているが、それを無視してエリモスは取り出した端末を三度叩き、ヒトミミの方へと押し当てた。
「もしもしポリスメン?」
「お待ちになって!?」
パゼオンカ
顔が良くておもしれー女。何故か出番が少なかった。ただし彼女もテラの住人であることをお忘れなく。
エリモス
魂の故郷的に他にもなかなか素敵な性癖を持っていると思われる
ドクター
こんな性癖だからこそトトカルチョ1位がケルシーなんだろうなあ…
ドラゴンと装甲車
一般性癖です。