俺の同僚の顔が良すぎる   作:チキンうまうま

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 祝・ドッソレス復刻



私の部下の様子がおかしい

 

 私がアーミヤと食堂に着いた時、そこはすでに食事を楽しむ多くのオペレーターたちで賑わっていた。今停泊しているのがドッソレスという土地柄故か、張り出されているメニューにも海鮮が多い。2人で何にしようと悩んでいると、一際盛り上がっている食堂の一角で悲しそうな声が上がった。

 

「俺のキャベツーーーー!?」

残念だったな(ふぁんねんふぁっふぁな)これはもう俺のものだ(ふぉれはふぉうふぉれのふぉふぉふぁ)。」

「何やってるのブラザー!?」

 

 声の上がった方から褐色の青年、ソーンズが塩キャベツの入った大皿を抱えてボリュームのある金髪の青年、エリモスから逃げ回っていた。流石というべきか、その逃げ足は恐ろしいほどに洗練されている。

 

「くそ!おのれあのウニめ!俺のキャベツを根こそぎ奪いやがって!」

「ごくん。…ふっ、見たか?このイベリアの至高の術(デストレッツァ)を。」

「うるせえ!俺のキャベツを返せ!」

 

 どうやらソーンズがエリモスのキャベツを根こそぎ食べようとしているらしい。…と言うかソーンズはそんなにキャベツが好きだったのか。いや、精神年齢が男子高校生の彼らのことだから、ただのじゃれ合いの可能性は高いんだけども。

 

「まあ落ち着け、エリモス。無くなったならまた新しく頼めばいいだろう?」

「そういう問題じゃないんだよマドロック!」

「そうだそうだ。どうせ割り勘なんだからそうすればいいものを。」

「てめえが原因だろうがソーンズ!」

 

 ついに機動力の差でソーンズを捕まえたエリモスが器用に片手で皿を確保しながら彼にヘッドロックをかけている。恐るべしはエリモスが誇るオペレーター屈指の怪力。技をかけた瞬間にあのソーンズがノータイムで腕をタップし始めている。

 

「…何と言うか、みなさん楽しそうですね。」 

 

 周りが歓声を上げ始めるその様子を見て、アーミヤは嬉しそうに言った。人の感情に敏感な彼女だからこそ、この様子が喜ばしいのだろう。

 

「まったくだ。ったく、宴会してるってのなら私も参加したのによ。」

「うお!?」

「ニェンさん!?」

 

 そんな私たちの後ろから1人の白髪の女性が急に話しかけて来た。騒ぎの方に気を取られていた私たちはその女性─ニェンの接近に気づかず、相当に驚いてしまう。

 

「いや、そんな驚くなよ。…にしても、あの小僧も楽しそうにしてんなあ、おい。最初に見た時はやべえなこいつって思ったけどよ。まあ楽しんでるなら何よりだ。」

「…あの小僧?」

「ニェン、それはソーンズか?それともエリモスか?」

「あん?そんなのエリモスに決まってんだろうが。」

 

 何を言っているんだと言わんばかりに彼女は言った。一つため息をつくと、こちらを見て少し片方の眉を上げてくる。

 

「…まさかお前ら気づいてねえのか?」

「なにに、ですか?」

「…どう言うことだい?エリモスはまあ時々奇行に走るけど、それ以外はまともな人だが…。」

「あー、まあそうだな。でもまあ、私が言いたいのはそう言うことじゃなくてよ。」

 

 横に置いてあったトレーを取って、何でもないことかのように彼女は続けた。

 

「あいつ、異常だろ?色々と、さ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「も、もう限界…。ちょっと休んでくるよ。」

 

 翌日。オペレーターたちに誘われてビーチへと来ていた私は、一足先にパラソルの元へと撤退していた。デスクワークと指揮が常の私にはオペレーターたちと同じように動こうと言うのが土台無理な話だったのだ。

 

 アンジェリーナやプラチナがえー、と漏らした不満を背中に受けながら、私はどうにかパラソルの影に腰を落ち着けた。軽く全身の水気を取り、海をぼーっと眺めていると、後ろから誰かが近寄ってくる足音がした。

 

「どうも、ドクター。飲み物いります?」

「エリモスか。もらうよ。」

 

 近寄って来たのはその手に冷えたジュースを持ったエリモス。私にその片方を手渡すと、彼もまた私の横に腰を下ろした。そのまま私の方にジロジロと視線を向けてくる。

 

「…ドクターの素顔ってそんな感じなんですね。」

「あれ、見せたことなかったかい?一部の人たちは知ってるんだけど。」

「俺は知らないですね。記憶失う前のドクターも基本顔隠してましたし。」

 

 彼は私が眠る前からロドスにいたのか。これは知らなかった。

 

「まあ当時の俺は戦闘部門にいなかったんで関わりはなかったんですけどね。当時のドクターとは話したこともなかったですし。」

 

 そう言って彼は海の方へと視線を向けた。少しだけ私たちの間に沈黙が落ちると、次第に彼の顔が真剣みを帯びていく。

 

「…エリモス。何か悩みでもあるのかい?」

「…ドクターには隠せませんか。」

 

 昨日のニェンの言ったこともあってつい聞いてしまうと、彼は真面目な顔で頷いた。

 

「悩みというか、ドクターに聞きたいことが一つありまして。ヴィクトリアに行く前にこの問題に答えを出したいんですよ。」

「…なんだい?私に答えられることなら答えるよ。」

「ありがとうございます。ならお聞きしますが…」

 

 『ヴィクトリア』。そこはエリモスの故郷にして、確実に複雑な因縁のある場所。そこに行くのだから当然悩みの1つや2つくらいあるに決まって─

 

「メイドビキニってメイド服にカテゴリしていいと思います?」

 

 馬鹿なのかこいつは。

 

「む。何ですかその顔は。さては俺のことを馬鹿だと思っていますね?」

 

 彼の言う通り、寸分の狂いもなくそう思っている。

 

「ですがドクター、考えていただきたい。世の中には着物メイド服なるものもあるのですよ?あれはメイド服に入るのですか?」

「…考えたこともないな。」

 

 その必要がなかったとも言える。

 

「なんでですか。男なんて誰でも何で水着は下着と大差ないのに恥ずかしがらないのかな、とかメイド服はロングとミニスカどっちがいいかで悩む生き物でしょう?」

 

 …何でこいつはそんなことを考えているのだろうか。もっと他のことで人生に悩めよ。

 

「いや今回こんなことを考えるにもちゃんときっかけがありましてですね。こないだメイド喫茶行ったらメイドビキニフェアってのやってまして。やっぱドッソレスだしそういう土地柄なのかな?とは思ったんですけど、それでもいまいち腑に落ちないんですよ。」

 

 マジで何やってんだこいつ。と言うかよくマドロックにバレずにいけたな。

 

「いや、なんか最近俺とマドロックはニコイチ扱い受けてますけど、普通に別行動の時の方が多いですからね?」

 

 そう言われてみるとそうかもしれない。ただそれでもマドロックと絡んでいる時が最近目につくのは否定させないが。

 

「…まあ、そこはいいんですよ。とにかく俺は悩みすぎて夜しか眠れないんです。」

「健康的でいいじゃないか。」

 

 と言うかここで悩むとは流石は服装フェチ。水着は当然守備範囲内と言うことか。

 

「いや水着なんて普通でしょう?俺はメイド服もビキニも競泳水着もワンピースも旗袍(チーパオ)も制服も着物もディアンドルもスーツも、あ、これはスカートもパンツスーツもどっちもですけど、あとパーカーもブレザーもセーラー服もニーハイもハイソも「あ、マドロックだ。」何でもありません。」

 

 長い。いくら何でも長い。しかも放っておくとまだ続きそうだったので適当にマドロックの名前を出したのだが、まさかここまで効果があるとは。…それにしてもここまで長々と語っておいて『何でもありません』は無理があるだろう。

 

「いや待てマドロック。今のは聞かなかったことに…ってあれ?いない?」

「うん。まあ適当に言ったからね。」

 

 私は悪びれずにそう言うと、憤慨するエリモスを尻目に先程彼から渡されたコーラのペットボトルを口につけ、立ち上がった。まだ日も高い。休憩もしたことだし、もう一度遊んでくるとしよう。

 

 そう決めて私は太陽に熱された砂浜に足を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あ?あいつのおかしいところ?んなの決まってんじゃねえか。』

 

『全部だよ。と言うかそもそもあいつのアーツは、制御ミスったらいつ死んでもおかしくないものだぞ?』

 

『私が前に同じようなアーツ使ってるやつ見たのは…何年前だ?ありゃ。まあそいつもうまいことやってたけどな。最後はミスって死んじまってる。派手に周りを巻き込んでな。』

 

『エリモスはそいつ以上に上手くやってるから目立たないけどな。それでもあいつが爆弾抱えてるってのは変わらねえ。それに本人が気づいてないってのもおかしな話だけどな。』

 

『それにおかしいと思わなかったのか?あいつスラムの頃は源石を防護できてないのにいまだに未感染なんだぞ?そんなのあり得ないだろ、普通に考えて。』

 

『あとは、なんだ?持ってる知識とか、妙にちゃんとしてる倫理観とかか?あとは…種族か。とにかくあいつは突つくといくらでも闇が出てくるぞ。』

 

『まあそう言うところが面白いんだけどな。あんな色々とチグハグな人間は私も久々に見たぜ。』

 

『どうなるんだろうな、あいつは。』

 

 




ニェン
 無職
 
エリモス
 メイド喫茶には1人で行った模様。

ソーンズ
 こいつにキャベツを食べさせるのは割と前から考えてました。
 みんなもロドスキッチン見てね。
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