えっちなサルカズが実装されたので初投稿です。
「にゃ。」
オペレーター・ロスモンティス。まだ幼いながらもロドスのエリートオペレーターを勤める彼女の眼前を、ぱたりと金色の尻尾が振れ動いた。
「にゃっ。」
金色の毛並みと、その先についた黒いふさふさの毛玉。
「…にゃにゃっ。」
右へ左へ、そして上へ下へ。ロスモンティスの興味をひきながらも、絶妙に捕まらない位置を尻尾は動く。その度に可愛らしい声をあげながら、彼女は尻尾を捕まえようとしていた。
「…やっべ。」
そしてロスモンティスがじゃれついている尻尾の持ち主─エリモスはそんな彼女の様子を気にすることもなく、手に持ったタブレットと睨めっこに励んでいた。何かあったのか、時折りこめかみを揉んでは勢いよく画面を叩く。
「にゃっ、にゃっ。」
「ぬうん…。」
奇しくも2人は
「あら?」
「む?」
エリモスとロスモンティスのいる談話室の扉を開けた
「これは…なんとも微笑ましい光景だな。」
「そうですね。あの2人をみていると私も昔レオンにああやっていたのを思い出します。」
「レオン?」
「ええ。あ、今は『ヴィジェル』と言った方がいいですね。彼と私は幼少期からの仲でして、コードネームではなく今でもつい本名で読んでしまうのです。」
2人がそうやって話していても、タブレットと尻尾に夢中になっている彼らは気づく気配がない。片方は時折りうんうん唸り、もう片方はご機嫌に鳴きながら尻尾を追いかける。その様子を、特にペナンスは懐かしそうに眺めていた。
「それにしても…エリモスさんとロスモンティスさんは随分と仲が良いのですか?あまり見ない組み合わせではありますが。」
「さあ?ただエリモスは随分顔が広いからな。どこで誰と繋がっているかは本当にわからないんだ。」
「あら、そうなんですか。」
「…何か気になることでも?」
「ええ、まあ。」
首を傾げ、ペナンスの下から見上げてくるマドロックにペナンスは頷いた。
「ですが、別に気にするほどでもないでしょう。考えてみると、エリモスさんは子供に対しては随分とガードが緩いので。」
「子供…ガード…?」
むん?とマドロックは先ほどと反対方向に首を傾げ、数秒固まった。そのまま色々と考えていたのだろうか、しばらくしておずおずと口を開いた。
「その、ペナンス。まさかだが…。」
「なんでしょうか?」
「エリモスに
「絶対にないと思います。」
何を言っているんだこの人は。普段の丁寧な口調こそ崩さなかったが、ペナンスの表情は明らかにそう言っていた。ジト目になっているペナンスの視線を受けて、マドロックばバツの悪そうに視線を逸らす。
「そもそもこの人の好みとか、私よりも貴女のほうがよく知っているのでは?」
「それはそうなんだが…。その、万が一ということも」
「ないです。」
ペナンスはバッサリとマドロックを切り捨てると、一つ大きなため息をついた。そこでようやく2人に気がついたのか、エリモスもまたタブレットから視線を2人の方に向けた。
「おや?お疲れ様です。…それにしてもマドロックにペナンスさんとはこりゃまた珍しい組み合わせで。」
「お疲れ。というかそれはこちらも言いたい。エリモスとロスモンティスの組み合わせも珍しいだろう?」
「いや、実はそうでもないぞ?この子これでもロドスに来て長いし。それに…いや、その前に。」
ほれ人来たから終わりだ終わり。何かを言いかけていたのを途中で切り上げて、エリモスはロスモンティスから尻尾を遠ざけた。結局最後まで尻尾を捕まえられなかった小さな両手が虚しく空を切る。
「にゃっ。…もう終わり?」
「終わりだ。マドロックも来たしな。」
「ん。じゃあ、また今度。」
動きを止めたエリモスの尻尾を名残惜しそうに眺めながらも、そう言ってロスモンティスは立ち上がった。そのままマドロックの横を通り抜けて扉の外へと歩いていく。
「…ロスモンティスと俺は昔ちょっと色々あってな。」
彼女の姿が見えなくなった後、エリモスはそう切り出した。
「とは言っても面白い話じゃない。昔はその、色々と暴れがちだったあの子をよく俺が抑え込んでたってだけの話さ。アーツと防御が得意だった俺には、ほら、そういうのは適任だったからな。」
「…なるほど。」
「ま、本人が覚えてるかは知らんけども。」
肩をすくめてそう言うと、そこで終わりだと言わんばかりにエリモスはヒラヒラと手を振った。
「んで?俺に何か御用で?」
「ええ。本題ですが、ドクターが貴方をお呼びです。次の編成に貴方を組み込みたいとかで。」
「へえ?電話してくれればいいのに。」
「電話はしたけど繋がらないと言っていたぞ。電源は入っているのか?」
「まじで?」
2人の発言に驚いたのか目を丸くしたエリモスは、慌てて上着のポケットから端末を取り出した。そのまま色々と操作したかと思うと、すぐに頭を抱えた。
「うわマジじゃん…全然気づかなかった…。」
「だろうな。後でドクターに連絡しておいてくれ。」
「あいよ。俺が呼ばれるってことは直線火力が必要ってことかね。」
てか着信も聞こえなくなってきたのか俺…?などとぼやきながらエリモスが立ち上がり、そしてマドロックとペナンスに見送られるままに扉を出て行った。
「む…。」
数日後。エリモスの部屋を訪れていたマドロックは悩んでいた。
「どうした?マドロック。」
「いや、ちょっと本に手が届かなくてな。」
「あー、なるほどなあ。」
マドロックのその困った声にエリモスは苦笑で返した。それなりに上背のあるエリモスとパワードスーツを脱いだマドロックは20センチ以上の身長差がある。そのために、2人の間でこう言った事態はしばしば起こっていた。
「俺が取るし座ってろよ。どの本だ?」
「ありがとう。一番上の棚の右から3番目のそれだ。」
「一番上?」
促されて席についたマドロックと入れ替わりにエリモスが立ち上がる。マドロックの目の前をエリモスの金色の尾が揺れた。ついつい先日のロスモンティスを思い出してしまい、目で追ってしまう。
「一番上って…ターラー文学のか?これを選ぶとはまた珍しい。」
エリモスのその発言はマドロックにはもはや聞こえていなかった。彼女の意識は本から一瞬にして彼の尻尾へと移ってしまっている。
「これでいいな、マドロック?」
「………。」
「…マドロック?」
問いかけても返事のないマドロックを疑問を抱き、エリモスが振り返ろうとした時、マドロックが不意に口を開いた。
「…エリモス。」
「なんだなんだ。これじゃなかったか?」
「そうじゃない。その…。」
「?」
煮え切らないマドロックに、エリモスは本を手に取ってなんだなんだと眉を顰めた。そんな彼に、意を決したのかマドロックが告げた。
「…その、エリモスの尻尾を触ってもいいか?」
「……尻尾?」
「ああ。」
「俺の?」
「そうだ。」
「まあ、マドロックなら別にいいけど。」
恥ずかしいのか顔を赤くするマドロックを珍しいものを見るかのような目で見た後、エリモスはヒョイと尻尾を動かした。
「いいのか?」
「いいぞ別に。そこらの奴には絶対触らせねえけど、まあマドロックなら全然いい。」
「そうか…。ならちょっと失礼。」
言うが早いが、マドロックはそっとエリモスの尾に触れた。見た目に反して意外と毛は硬い。特に先の黒い房がある部分はかなり硬かった。
「これは、なかなか…。」
「意外と毛が硬いだろ。手入れ全然してないからな。」
「そこはするべきではないのか…?」
「単純に面倒なんだよ。毛が短いからたまに櫛通せば充分だし。」
もし尻尾の毛が多ければ─例えばプロヴァンスのようなオペレーターであるが─尻尾の手入れは極めて複雑かつ大仕事になる。が、エリモスの尻尾は毛が短く、本人もあまりに気にしてないためにかなり手入れが雑であった。
「そんなものか?」
「そんなもんだ。マドロックは尻尾ないからわかんないかも知んないけどな、あれだ、お前の角みたいなもんだ。」
「ああ、なるほど。」
それならばマドロックにも合点はいった。もっともサルカズには尻尾があるものもたまにいるのだが、生憎マドロックには角しかない。その角の手入れも、元傭兵である彼女は一般的な程度にしか手入れをしていなかった。
「ま、俺は角ないから分からんけど。」
「そうか。なら…触るか?」
「………は?」
ピタリとエリモスの動きが止まった。そして油の切れた機械のように、ぎこちなく体をマドロックの方に向ける。
「……マジで言ってる?」
「マジだが。尻尾を触らせてもらったわけだし、それにエリモスなら別に構わない。」
「…あ、はい。さいですか。」
そう言って天を仰いだエリモスを他所に、マドロックはソファの、自分の隣を軽く叩いた。要は『ここに座れ』と言うことである。エリモスはしばらくうんうんと唸っていたが、腹を括ったかのようにそこに腰を下ろした。
「え、じゃあ、その、触るぞ?」
「緊張しすぎだ、エリモス。普通に触ってくれていい。」
(普通とは!?)
微笑むマドロックに対して、エリモスは心臓バックバクであった。何せ角に触れると言うことは、つまりマドロックとエリモスは向かい合っているということである。しかも普通に手の届く範囲の超至近距離で。なんならその状態で相手に触れるのである。エリモスの理性はかなり限界であった。
「…痛いとかなんかあったら言ってくれよ?」
「んっ…。わかった。」
(何その可愛い声ぇぇぇぇ!)
そっとマドロックの角に触れる。見た目通りと言うべきか、マドロックのそれはひんやりとしていて、滑らかだった。よく手入れのされた爪の感触、が触った感覚では一番近い気がする。そのままできるだけ力を込めずに撫でると、マドロックの口から小さな声が漏れた。
「その、エリモス。触り方が…。」
「すまん!勝手がわからなくて…。」
「いや、いい。それよりも、もっと、こう…。」
勝手のわからないエリモスが慌てて角から手を離そうとするが、それをマドロックが止めた。エリモスの手を掴み、やり方を教えるかのように自分の角に沿わせていく。
「力はちょっと入れて、上から下、に…」
随分と骨ばった手だな、なんて思ったのは束の間だった。彼の手に自分の手を上から重ねるようにして、角を撫でていたマドロックはふとエリモスの方を向いた。
「………。」
「………。」
マドロックの紅い瞳と、エリモスの金色の瞳が交差した。そしてそこにきて初めて、ようやくマドロックは2人の距離が今までにないほど近い距離で向かいあっていることに気がついた。
「…マド、ロック」
「…なんだ?」
ゆるり、と重ねられた手が降りていく。いつのまにかマドロックが重ねていたはずの手は、エリモスの手が上に重ねられていた。そのまま少しだけ力を込めてマドロックの手が握られた。
「こんな時に言うのも変な話だけどさ。」
心臓が早鐘を打つ。気がつけば2人の距離はさっきよりもずっと近くなっていた。エリモスが距離を詰めた?違いない。だけど、それと同じだけど距離をマドロックもまた詰めていた。そして今もなお、2人の距離は縮まり続けている。
「俺、お前のこと好きだ。」
「…そうか。」
その言葉を聞いて、マドロックは自分の顔が熱くなっていくのを感じた。目の前にいるエリモスは、顔こそ普通を装っているが、耳が真っ赤になっている。ああ、この人も私と同じなんだな。そう思ってマドロックは静かに顔を傾けた。2人の距離がさらに縮まる。
「私もだ。」
誰も見ていないロドスの船室で、2人の影が重なった。
お久しぶりです。さて、新章がリリースされましたね。それと同時にあるサルカズがX(旧Twitter)を騒がせました。
そう、マドロックです。
イネスではありません。いや、イネスもいいのですが私の中ではマドロックがタイムラインを席巻していました。いつ見てもマドロックが私のおすすめ欄に上がってくるのです。仕事してますねXのサジェスト機能。いつもありがとう。これからもよろしく。みんなもマドロックで調べてアークナイツをトレンド入りさせような。
さてこのマドロック、実は私の性癖からは若干離れているキャラだったりします。実際のところ、私の趣味は幾度も語ってきた通り高身長で美脚な強いお姉様だったりするのですが、マドロックは微妙に外れています。高身長かと言うと微妙ですし、美脚を語るには普段から脚が隠れている。強いのは間違いない。あと経歴見るに彼女かなり若いです。多分。なのに私の心にどストライクでした。こう言うキャラは大体深いところに刺さるんです。この現象に共感してくれる人は多いんじゃないでしょうか。
そもそもマドロックは『元強敵が仲間になる』と『男だと思っていたら美少女だった』の2つの超強力属性を併せ持ちます。そこから放たれる銀髪紅目儚げ蒸れ蒸れ美少女です。無敵か?マドロック、お前は一体何を持ちあわせないと言うのだ?
さて。そんなこんなでこの2次創作もここまできました。こんな作者の性癖の掃き溜めみたいな文章を読んでいただけていることに心の底から感謝いたします。これからどこまで続くのかは分かりませんが、これからもアークナイツを楽しむ傍ら、たまにでも思い出していただけたら幸いです。
マドロックはいいぞ。