俺の同僚の顔が良すぎる   作:チキンうまうま

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めりーくりすます(若干遅刻)



俺の●●の顔が良すぎる

 

 あったかい。

 

 エリモスは一度マドロックから唇を離すと、ぎゅう、と彼女を抱きしめてそう呟いた。

 

「…エリモス?」

「…ん。」

 

 突然エリモスの腕の中に閉じ込められたマドロックが少しだけその身を震わせた。そのままおずおずと彼の服を掴む。どうしたらいいのかわからない、と言った様子だった。

 

「あったかくて、柔らかくて、いい匂いがする。」

「………。」

 

 そう言ってエリモスはマドロックを抱きしめる腕に力を込めた。そんな彼の姿に、マドロックもまた彼に身を委ねた。彼の胸元に顔を埋め、角が刺さらないように少しだけ顔の向きを傾ける。

 

「そう言うエリモスは、熱いな。」

「…ま、そりゃこんな状況だからね。」

「そうじゃなくてだ。」

 

 服越しに触れただけで感じられる彼の肢体。前線を引いたにも関わらず自分よりも遥かに骨張っていて、筋肉に包まれている。そのさらに奥、身体の中心から規則正しい音と共にその熱は届いていた。

 

「この熱は、生命(いのち)の熱だ。今、エリモスが生きている証の。」

 

 耳をすませばドクン、と一際強い音が聞こえてきた。

 

「…そうかい。」

「そうだ。エリモス。私は、この音が一番好きだ。“友人”たちの持たないこの音が。」

 

 マドロックはエリモスの胸板に顔を寄せたまま、目を瞑った。それと同じように、エリモスもぼすりとマドロックの髪に顔を埋めた。そのまま2人は口を閉じて、身じろぎ一つせずにいた。今はただ、互いの熱を、音を感じていたかった。

 

「…ねえ、マドロック。」

「どうした?」

 

 それからどれだけ経っただろうか。時計の長い針が随分と仕事をした後でエリモスは小さく口を開いた。

 

「頑張るよ、俺。」

「…ああ。」

 

 2人はお互いの吐息が重なり合うほどの距離でそう呟きあって、どちらともなく見つめあった。そしてその後。

 部屋に小さな水音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おかしい。

 

 エンジニア部所属のスーパーアドバイザー兼超優秀エンジニア(要出典)であるクロージャは、デスクで唸り声を上げた。彼女の両肘は机の上に立てられ、両手は顔を隠すかのように顔の前で組まれている。

 

「…………。」

 

 そんなどこかで見たことあるポーズ(ゲンドウのポーズ)をしている彼女の視線の先。そこでは1人のボリュームのある金髪をしたオペレーター、と言うかエリモスが慌ただしく働いていた。

 

「…はい、はい。了解しました。じゃあまた調整してから連絡しますんで…はい。…はい、お疲れ様ですー。」

 

 ヘッドホンとマイクをつけ、通話をしながらもキーボードを叩く手はひと時も休まることはない。通話しながらも彼のパソコンの画面は慌ただしく表示を変えていく。

 

 その様子を見て、やっぱり最近のエリモスはおかしいとクロージャは確信した。ついでに言えば恐ろしいほどに失礼な話だが、正直エンジニア部のほぼ全員がそう思っていた。

 

 と言うかそもそもの話だが、エリモスというオペレーターは別に極めて勤勉な方ではない。もちろん割り振られた仕事の分は確実にこなすし、勤務中にサボるわけでもない(突然机に突っ伏していることはあるが、それは鉱石病(オリパシー)が原因なので置いておくこととする)が、結局のところは彼の働きぶりは【至って普通】なのである。

 

 が、最近の奴はどうだ。恐ろしいほどに真摯に取り組み、ミスもほとんどない。今まで以上のタスクを悠々とこなし、それでいて周りを気にする余裕すらも感じられる。そして何よりも、だが─

 

「…んじゃ、俺上がりますんで。なんかあったら連絡してください。」

「あ、うん。お疲れ。」

「お疲れっす。」

 

 この退勤速度である。時計が退勤時間を指してから5分も経たないうちに最近の奴は自分のデスクを後にしている。いや別にタスクはこなしてるし別に文句はないんだが、こう…今までお前手ぇ抜いてたのかよ、とは言いたくなる。そんだけできるなら最初からやってくれ。あたしだってやりたいことあるんだから。

 

「いやー…最近あいつめっちゃ帰るの早いっすね。」

「ほんとねー。全力すぎでしょ、あいつ。」

 

 そんな感じで悶々としているクロージャの耳に、まだ仕事をしているオペレーターたちの会話が聞こえてくる。

 

「いやそりゃそうっしょ。俺がエリモスでも残業なくせるようガチで仕事しますもん。」

「まあそれもそうよねー。」

 

 カタカタとキーボードが鳴る音が響く中、クロージャの耳はなぜかその会話を執拗に拾い続ける。

 

 

「そりゃエリモスもあんな美人な彼女が部屋で待ってるなら本気出すわよね。」

 

 

 ……………なんて?

 

 クロージャの聡明な脳をもってしても、その言葉を理解するのにはたっぷり5秒を要した。少しばかり伏していた目を大きく見開き、もはや隠すこともなくその会話の方へと体を向ける。

 

「やっとか、って話っすよね。」

「そうね。やっと落ち着くところに落ち着いた、って感じよ。」

 

 おいおいおいおい?あたしそれ知らないんだけど?え、まじで?あそこ付き合いだしたの?やっと?てかいつから?…ていうか、

 

「…トトカルチョの分配やらなきゃ。」

 

 エリモスのせいでまた仕事が増えた。そう言ってクロージャは机の上の栄養ドリンクを呷った。ケミカルな味が舌の上を走り、無理矢理に脳を活性化させる。そのままいくつものスクリーンに視線を向けて、キーボードに手を伸ばした。

 彼女の夜はまだまだこれからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 無機質なロドスの廊下を走る。時間が時間なだけに人通りの多いそこを、できる限り早く、でも人にはぶつからない速度でエリモスは走っていく。

 

 彼が進むのは住み慣れたロドスの、通り慣れた廊下。でもそこを抜けた先にはまだまだ慣れない光景がある。エリモスはあっという間に自室の前まで駆け抜けて、自室の鍵を開けた。空気が抜ける音と共に、ドアが開いていく。そのほんのわずかな時間が彼にはどうももどかしかった。

 

「…ん。」

 

 本来1人用の小さな部屋には先客が、銀の長髪に紅い瞳をした麗しきサルカズがいた。部屋の主の帰りを待っていた彼女は扉の開く音を聞いて部屋の奥から顔を出した。そのままパタパタと足音をたてて扉の方へと歩いていく。

 

「お帰り、エリモス。」

 

 ふわりと笑ったマドロックに、少しだけ息を切らしたままでエリモスもふにゃりと笑い返した。笑い返して、彼女を優しく抱き寄せた。

 

「ただいま、マドロック。」

 

 

 





最近はマドロックとホルンのコーデ並べて遊んでいます。
いい感じに“黒と銀”“白と金”で対照になって僕満足。

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