俺の同僚の顔が良すぎる   作:チキンうまうま

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俺の上司の顔が良すぎる

 

 ロドスには艦内にいくつか談話室が存在する。これはドクターの『オペレーター同士での交流を増やして欲しい』という願望から生まれたものであり、時折ドクターのポケットマネーによって内装が変わったりする。

 

 そんな談話室は、基本的に多くの人で賑わっているのである。大人組ならポーカーだの麻雀だのダーツだのに興じていたりするし、それより年下の学生と大差ないオペレーター達なら普通にお茶をしたりして、談話室は普段誰かの声が絶えない場所なのだ。

 普段なら、の話だが。

 

「……はあ。」

 

 今やこの談話室には人はエリモスを含めて2人しかいない。他の奴らはいち早く磨かれた直感に従って部屋から撤退していたのだ。取り残されたのはため息をつき続ける1人のオペレーターと、直感が何も仕事をしなかった1人のライオンのみ。

 そんな愚かなライオンは、とうとう意を決して離れた場所に座る女性に声をかけた。

 

「……あの、サリアさん。」

「……なんだ、エリモス。」

「ヒェッ…あの、どうしたんですか?いったい。そんなため息ばっかりついて。」

 

 彼と少し離れた場所に座ってため息を吐き続けるのは1人の銀髪にその双角が特徴的な竜人(ヴィーヴル)。物理的にもカタブツ、と揶揄される女傑、重装オペレーター、サリアであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 オペレーターサリア。元ライン生命の警備課主任にして研究者という文武両道を地で行く人物であり、現在ではロドスの重装オペレーターの中でも重鎮となっている存在である。そんな彼女だが、持っているのは力と知恵だけではない。天は彼女に二物も三物も与えたのだ。

 

 この人もとんでもなく顔がいいのである。

 

 174cmというモデルのような長身に、クールな雰囲気を醸し出す切れ長の瞳。まつ毛なんかマッチ棒が3本乗るんじゃあないかと思うくらいに長く、琥珀色の瞳からは揺るぎない意志の強さが感じ取れる。

 背中まで伸ばされた銀色の髪は多忙の中でもその几帳面さが現れているのか丁寧にケアがなされており、枝毛の一つも見当たらない。そしてそれはヴィーヴルの特徴とも言える角においても同様。頭部から伸びる角はいつも輝いており、彼女がいかにそれを大切にしているかがうかがえた。

 

 さて、そんな文武両道、完全無欠な我が上司、サリア女史であるが今はその平生の覇気はどこはやら。どことなく煤けた背中でため息をつき続ける中年のおっさんのような存在となっている。

 

「……そうだな、エリモス。今時間はあるか?相談に乗って欲しいんだが。」

「まあ時間はありますが。何事ですか?」

「……イフリータについてなんだが。」

 

 イフリータ。エリモスは彼女についてそこまで詳しくは知らないが、どうやらサリアと同じライン生命に所属していたらしいオペレーター。サリアが彼女のことを気にかけているのは重装界隈では有名な話であった。

 

「イフリータ。あの火炎放射器振り回してる子ですよね。」

「ああ、そうだ。…本題に入ると、これはこの間の話なんだが。」

 

 そう言ってサリアは一度胸元のタバコを取り出しかけ、ここが禁煙だと気づいたのか直ぐにしまった。普段その辺りを忘れることのないサリアがうっかりそんなことをするあたり、いかにこれからの話が話しづらいものであるかが窺える。

 

「その…お前が知っているかは知らないが、私は今でも戦闘オペレーターと研究員を兼任しているんだが。」

「知ってますよ。よくできますよね、そんなこと。どっちかでも大変でしょうに。」

「慣れればどうということはない。…で、だ。この間、というか一昨日の話なんだが、その日私はイフリータと、あとサイレンスと夕飯を食べにいくことになっていたんだ。」

「へえ。いいじゃないですか。」

 

 なんだろう。普通の話のはずなのになんか聞いているだけで不安になってくる。

 

「ああ。だが、その日は運の悪いことにトラブルが頻発してしまってな…。その、時間に間に合わないどころか予約していたレストランが閉まるタイミングになってしまったんだ。」

「…うわお」

 

 これはあかん。思わずエリモスは手で顔を覆ってしまった。

 

「それで、その…イフリータが怒ってしまってな。そもそも全面的に悪いのは私だし、サイレンスは研究員だから理解はしてくれていて一緒に執りなしてくれているんだが、どうにもならなくてな…。一体どうしたらいいのかわからないんだ。」

「………。」

 

 パパじゃん。喉から飛び出しかけたその言葉を押し留めた俺はまじで偉いと思う。

 

 

 

 

 

 

 なんだろう。俺は一体何を聞かされているんだろうか。

 目の前でうんうん唸る上司を冷めた目で眺めながら、俺は本気でそう思った。

 

 父親がサリアで母親がサイレンス。そして娘がイフリータ。通称楽しいライン生命一家とまでこの3人組は揶揄されている。そんな家族の団欒に、それも娘が楽しみにしていたにも関わらず父親が仕事で来れなくなった、となると怒られるのもやむなしというものであろう。

 

 とはいえサリアが出れなくなったのも仕方ないといえよう。ただでさえ製薬会社であるロドスの医療部門は激務。その上にチームでトラブルが起きた、となるとリーダーである彼女が帰れなくなるのは仕方がない。今回の一件はただ運が悪いだけの話なのである。

 

「…謝りはしたんですよね?」

「ああ。謝ったが、それでも当たり前だが納得はしてもらえていないみたいでな。」

「あら…その、言い方はあれですけどお菓子で釣る、とかは?」

「サイレンスに禁止されているから無理だ。」

 

 パパじゃん。娘に甘くてお菓子あげまくった挙句にママに怒られるパパじゃん。

 てか前世でもいたわ、こんな人。『娘との距離感がわからねえ!』って叫んでた上司。いい人だったけど今何してるんだろうか。

 コーヒーを啜りながらかつての自分に思いを馳せていると、エリモスは談話室の入り口でぴょこぴょこと動く金髪を見つけた。おそらく角度的にサリアからは見えていないだろう位置に、だ。

 ふむ、ならばとエリモスは一計を案じた。

 

「…サリアさんは、仕方なかったとはいえイフリータに悪いことしたとは思ってんですよね。」

「……ああ。あの時、約束を破ってしまったのは事実だからな。」

「なるほど。…だってよ、イフリータ。聞こえたか?」

「…聞こえてるよ。」

「イフリータ!?」

 

 ここであえて隠れていた金髪の人物─イフリータに話題を振ってみる。そしてサリアは本当に気がついていなかったようだ。普段なら気付けていただろうに、どれだけ焦燥していたのだろうか。突如現れたイフリータに驚愕している。

 

「イフリータ、こんなところにいた…って、サリア。」

「…オリ、サイレンスか。」

 

 名前だよな?今名前で呼ぼうとしたよな?サリア主任よ。

 パタパタと足音を立てて現れたイフリータを探しに来たであろう医療オペレーター、サイレンスを確認すると、エリモスは席をたった。ここからは自分は部外者になるだろう。

 そうなる前にオペレーターエリモスは静かに去るのだ。

 

「…ごめん、サリア。」

「…謝るのはこっちだ、イフリータ。本当にすまなかった。」

 

 彼女らの声が聞こえなくなっていくのを感じながら、きっと彼らはうまく仲直りができるだろうという確信を胸にエリモスは1人廊下を歩いて行った。

 

 願わくば彼らに幸せがあらんことを。ひとりぼっちのライオンは確かにそう願った。




オペレータープロファイル
【コードネーム】エリモス
【性別】男
【戦闘経験】4年
【出身地】ヴィクトリア
【誕生日】8月10日(ただしこれは便宜上のものである)
【種族】アスラン
【身長】184cm
【鉱石病感染状況】
メディカルチェックの結果、非感染者に認定。




サリア
 イフリータのパパ。弊ロドスではいろんなピックアップですり抜け続けた結果、グレイディーアを除いて唯一の完凸星6である。強い。好き。

サイレンス
 イフリータのママ。ドローンとかいう超優秀スキルを持つ医療オペレーター。意外と背が小さい。

イフリータ
 直線こそ至高。とりあえずすくすく育って欲しい。
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