喜多ちゃんの師匠は陰キャ 作:EA門
期末課題の提出が1週間を切っているのに原作四巻まで見終わってしまいました。めちゃめちゃ面白かったです。まだ買ってない方は是非お買い求めください。
喜多が秀華高校に入学してすぐにある噂が耳に入った。
「3年生に雨林先輩っていうすっごいかっこいい人がいるんだって!」
どこにでもあるような平凡な噂だが花の女子高生である喜多には気になって仕方なかった。友達の話によるとその人物は3年生であり、親しい友人がいない一匹狼気質、更に校内での目撃例が少ないというものであった。
一目見てみたいという願望があったが先輩を見に行くという理由だけで入学したての1年が3年の教室に行くのは人と関わるのが好きな喜多とはいえとてもハードルが高いものである。
入学して3週間経ったある日、授業中にふと窓の外から見えるグラウンドを見た時であった。
外では先輩達が体育の授業で長距離走をしており、その中でも他の生徒を置き去りにして走り終える生徒がいた。遠目ではあったが顔が見える。パッチリとした目、程よい高さの鼻、アイドルのように小さい顔、大人っぽさを演出する艶ぼくろ。喜多も見たことないような顔立ちの良い人であった。
気づけば喜多は週に一回のこの時間はその人を目で追っていた。
それからまた数日、雨林先輩の新しい噂が流れてきた。モデルにスカウトされたとか有名人と付き合っているらしいなど真偽が不確かな噂も流れていた。だが、その噂が真実である可能性が高いと言われてもおかしくないほどに雨林の顔は整っていた。
そして喜多が結束バンドに再加入してすぐ、雨林と師弟関係になる日が訪れる。
(ギターは後藤さんに教えてもらっているけどボーカルとしても成長していかないといけないとよね。でもどうしたら・・・)
バンドを組んで数日が経ち、私は歌について少し悩んでいた。
Starryで見たバンドのボーカルはどの人も自分より上手く、また人を惹きつけるような歌を歌っている人もいた。私はあの人達のように歌えるようになるのかという不安が心の中にあった。
「あれ?筆箱がない」
午後の授業の準備をしようとした矢先、自分の筆箱が見当たらないことに少し焦るが午前最後の授業は体育であったため体育館に忘れてしまったと思いすぐに体育館に向かう。
(いつもはこんな事ないのに・・・)
少し日常生活に支障が出るくらいに私は悩んでいた。
「あった。見つかってよかった」
探し物である筆箱はすぐに見つかり安堵する。目的を終え、教室に戻ろうとすると外から微かに歌声が聞こえてきた。その歌に魅了され、私の足は吸い込まれるよう動いていた。
そこにはいつも目で追いかけていた先輩がいた。
木漏れ日に当たりながらヘッドホンを付けて歌っている、とても絵になる情景であった。
先輩はヘッドホンをつけて歌っているせいか私の存在に気づいていない。
「ここで何をしてるんですか?」
そう先輩に声をかけるとヘッドホンを外してゆっくりと私を確認する。近くで見ると顔の良さがさらに際立つ。
こちらを見た瞬間に心臓の鼓動が速くなる。まるで憧れの人を目の前にしたような高揚感であった。
「・・・お昼を食べてただけ。君こそどうしてここに?」
冷たそうな見た目から低く威圧感のある声が返ってくると予想していたけど、目の前にある木漏れ日のように温かく安心感に包み込まれるような優しい声が返ってきた。
(クールな顔立ちである先輩がこんな優しい声だなんて・・・素敵・・・)
ギャップ萌えを感じて上の空になりかけていたがすぐに我に返り先輩の質問に答える。
「体育の授業で忘れ物しちゃって、それを取りにきてたんです」
「忘れ物は見つかった?」
「はい!しっかり見つかりました!」
「そう・・・ならよかった」
口数は少ないものの雰囲気と今の言葉でこの人は優しい人だということは理解できた。
「あの、さっき歌ってましたよね?」
「あぁ・・・そうだよ」
「曲は聴いたことなかったんですけど、すごく上手で惹きつけられる感じでした!」
そう伝えると先輩は照れた顔を隠すように私から顔を背ける。そんな仕草に愛おしさを感じた。
「あ、ありがと」
「よろしければなんですけど・・・私に歌の指導をお願いできませんか?」
さっきの歌声は明らかに普通の人とは明らかにレベルが違うものであることは音楽経験の浅い私でもわかった。
この人に教えてもらえれば私の歌はもっと良くなる、そう思うと同時にもっと先輩のことを知りたいと思った。
「・・・・・・え、は?」
突然の私の頼みに先輩は動揺していた。
当然の反動だと思う。初対面の人にそんなこと言われたら誰だってそうなってしまうが更に畳み掛けるように私は話を続ける。
「実は私、バンドでギターボーカルやっているんですけど」
「あ、うん」
「ギターはバンドの子に教えてもらってて上達しているんですが歌の方は・・・」
「あんまり上達してない、あるいは上達してる実感がないってとこかな」
私の悩みを察知したのか先輩は食い気味に反応してくる。
「そうなんです。だから」
「いいよ・・・その話受けてあげる」
「え?本当ですか!?」
まさかの回答に私は心の中でガッツポーズを取る。それほどに嬉しかった。
「別に問題ないよ。それくらいなら」
「ありがとうございます!あ、自己紹介がまだでしたね。私、喜多って言います!1年生です」
「雨林蒼真、3年、よろしく」
「え」
まさかこの人が雨林先輩だとは思っていなかった。確かに噂通りに誰もがかっこいいという顔をしているが少しだけ話が違う。私の無茶な頼みを引き受けてくれるほど優しい先輩に友達が1人もいない訳がない。一匹狼と呼ばれるには程遠い人だと感じたからだ。
「ん?どうかした?」
「あ、いえ、何でもありません・・・これからご教授よろしくお願いします!えっと〜」
先輩に悟られないように適当に話を逸らす。
「雨林でいいよ。あと先輩だからってそんなに気張らなくて大丈夫・・・喜多ちゃんって呼べばいい?」
喜多ちゃんと呼ばれた瞬間、また心臓の鼓動が速くなる。クラスの男の子と話す時はこんな事ないのに。
「わかりました!あ、そうだ!雨林先輩、ロイン交換しましょう!」
「え、あぁ・・・そうだね」
「空いてる日連絡しますね!」
手早く雨林先輩とロインを交換して逃げるようにその場を去る。
どうしてこんなに心臓がうるさいのだろう。リョウ先輩の時とは比べものにならないくらい激しい。
先輩がかっこいいから?
ギャップ萌えを感じたから?
気になっていた先輩とロインを交換したから?
先輩に名前を呼ばれたから?
私は心臓の鼓動が鳴り続ける原因をまだ知らなかった。
喜多郁代
面食いな女の子
知らぬうちに雨林に目をつける
雨林のことをもっと知りたい
雨林先輩と仲良くなりたい!
雨林蒼真
周りからは寡黙で一匹狼や孤高だと思われており距離を取られているがただ単に人と話すのが苦手なだけ
長距離走はお手のもの
久しぶりに同じ高校の生徒と話した
最近の女の子はアグレッシブなんだね・・・
感想と評価お待ちしてます