喜多ちゃんの師匠は陰キャ   作:EA門

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 期末レポート終わった〜
 後は成績開示まで待つだけ!


救済

 

 

 

「ご馳走様」

 

 いつも通り昼休みにユートピアでお昼ご飯を食べ終え、木漏れ日を受けながら至福のひと時を過ごし・・・てはいなかった!

 

「雨林先輩、食べるの早いですね」

「あ、うん、少食だからね」

 

 そう、我がユートピアに喜多ちゃんがいるのだ。口止めをお願いした時に「たまにここでご飯食べに来ていいですか?」という交換条件を出されてしまい承諾せざるを得なかったのである。学校中の人間から嘲笑われるより何億倍もマシなのだが、隣に女子それも陽キャがいるとどうも落ち着かない。

 

 てか、こんな僕にわざわざ会うために友達とコミュニケーションが取れる大切な昼休みを削って来る意味なんてないはずだ。

 何か目的があるのか?

 まさか、弱みを握りまくって僕を脅すつもりなのか!?いや、喜多ちゃんはいい子だ。そんなことはしないはず。そう、だよな?

 とりあえず、この日のために準備してきたトークデッキで昼休みを乗り切るしかない!だが、どれから出せばいい。初手は大事だぞ。素早く、適切な話題を・・・

 

「雨林先輩はすごく歌が上手いですけど独学なんですか?」

 

 早速先手を取られてしまった。

 

「いや、中学生の時に担任の先生から教えてもらってたんだ。放課後とかわざわざ時間割いてくれて」

「ドラマみたいですね」

「僕も初めから歌が上手かった訳じゃないから喜多ちゃんも焦らず、着実に成長していこう」

「はい、これからもご指導よろしくお願いします!」

 

 喜多ちゃんはキターンという効果音(空耳)と共に純度100%の笑みでこちらを見つめてくる。

 あぁ、さっきまで弱み握ろうとしてるとか思っててごめんなさい。こんなネガティブ思考の僕をお許しださい。

 

「先輩っていつも1人でご飯食べてるんですか?」

 

 おっと、急に痛いとこついてくるなこの子。さっきの笑顔からこの質問って・・・温度差激しくない?

 

「そうだね。ここの方が気楽だし、静かなところが好きなんだよね」

 

 よし、なんとか僕がぼっちであることを誤魔化せた。嘘は言ってないし、問題なし!

 って、さっきから喜多ちゃんに話題振ってもらってばっかじゃんか!こっちからも話題振らないとコミュ障だと思われてしまう。

 まぁ、間違ってないんだけどさぁ。

 

 「・・・入学からちょっと経つけど、学校生活はどう?」

 

 無難of無難な話題・・・まぁ変なこと言うよりいいか。

 

 「とても楽しいです!同学年の子もそうですけど、先輩たちとも仲良くなれましたし!もちろんバンドのみんなとの時間も雨林先輩の指導もとっても楽しいですよ!」

 

 わかってはいたけどやっぱり喜多ちゃんは誰とでも仲良くできる子らしい。自分との立場の差にとてつもなく不甲斐なさを感じる。うっ、心が痛い。

 そういえば喜多ちゃんもバンド組んでるんだったな。よし、次はこれで行こう。

 

「そういえばバンド名はなんて言うの?」

「結束バンドです!」

 

 結束バンド?

 え、どゆこと?

 バンドと結束バンドをかけてるってこと?

 いや、なんかこうもっと深い意味があるのか?

 

「・・・面白い名前だね、メンバーは何人?」

「4人です。私と同じ秀華高校の後藤さん、下北沢高校の伊地知先輩とリョウ先輩で組んでます」

 

 秀華(うち)にも1人メンバーがいるのか。

 まぁクラスの人の名前と顔把握してない僕が知ってるわけないんだけどね!下高の方々ももちろん存じ上げないし。と言うかまじでこの学校の生徒は喜多ちゃん以外生徒会長ぐらいしか覚えてない。別に話す機会もないし、覚える必要もないかなって。

 ・・・だからいつまで経ってもぼっちなんだよって言いたいのか?ごもっともですよ!

 

「男の子とかはいるの?」

 

 問題はここだ。喜多ちゃんがいい子すぎてバンドマン特有のクズに引っかかってないかが問題だ。

 知ってる人も多いと思うがバンドマンはやばいイメージがある。僕も色々なライブハウス()で演奏したことあるがたまにそいつら(クズ)に遭遇する。しかも、高確率で喜多ちゃんみたいな心優しい人が引っかかっている(個人的主観)。

 でも、もしそうなっていたら僕はどうすればいいんだ?

 どの方法でも勝てるビジョンが見えない・・・自分の不甲斐なさを感じる。

 

「みんな女の子ですよ」

 

 良かった〜

 心が軽くなるのをこれでもかと思うくらい実感する。女の子同士ならそういった問題もない。

 とりあえず一安心、一安心。

 

「そういえば伊地知先輩が雨林先輩とお話してみたいと言ってましたよ」

「・・・ほぇ?」

 

 え、どういうこと!?!?

 びっくりしすぎて変な声出ちゃったし!

 もしかして、「うちの大切な喜多ちゃんに陰キャが汚い手で触るんじゃねぇよ!」とかそういうこと言われる感じ!?

 僕の命の危険かもしれないってこと!?

 

「先輩、今日の放課後空いてますか?」

 

 このままだと結束バンドに締め殺されてしまう。

 僕の命が助かる方法を考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ!

 

「まぁ、大丈夫」

 

 しまった、混乱しすぎて脳みそが勝手に口を動かしてしまった。

 

「それじゃあ一緒に行きましょう!放課後、校門で待ってますね!」

 

 そう言うと喜多ちゃんはいつの間にか食べ終えたお弁当を持って教室へ戻っていく。もうここまできてしまったら引き返すことはできないらしい。

 あぁ、僕の人生終わったかもしれない。

 みんな今までありがとう・・・

 

 


 

 

 

「雨林先輩、着きましたよ」

 

 午後の授業なんかはあっという間に過ぎ、気づけばライブハウスの入り口に着いていたのだが僕は上の空であった。

 

「・・・ここで活動してるの?」

 

 処刑を間近にした僕の脳みそは考えることを放棄してその場に適切な言葉を口に発するように勝手に命令していた。

 

 「そうです。それじゃあ中に入りましょうか」

 

 喜多ちゃんがなんか喋っているけどうまく聞き取れない。

 あぁ、手を引かれてライブハウスへと誘われていく・・・もうだめだぁ、おしまいだぁ。

 

 階段を一段また一段と降りていくにつれ、目の前が少しずつ暗くなっていく。

 終いには黄泉の世界まで見えてきた。

 

「お待たせしました!」

「おっ、やっと来たな〜」

「遅かったね」

「・・・お疲れ様です」

 

 処刑までもうすぐという絶望が僕を襲う。

 辛うじて彼女達の会話が耳に入るが正直立っていられるのもギリギリだ。

 あぁ、神よ。今までの負を悔い改めますのでどうかお助けを・・・

 

「まさかと思ったがお前が師匠だったとはな」

 

 その声が聞こえた瞬間に目の前の暗闇が一気に晴れ、声のする方を向く。

 黄色の長髪に鋭い目つきと怖そうな見た目をしているが片手には子供が飲みそうなパックのリンゴジュースを持った女性ーーー伊地知星歌さんが座っていた。

 

(す、救われたぁ〜)

 

 知り合いがいることに正気を取り戻すと同時に安心感が一気に押し寄せ体の力が抜けて座り込んでしまう。周りを見渡すと前に一度だけ演奏したことのあるライブハウスStarryだった。

 

「何やってんだ、お前」

 

 星歌さんからいつも通り当たりの強い言葉を貰う。いつもなら少し怖気付くのだが今の僕は無敵(過信)なので効かない。

 知り合いがいてよかった・・・なんとかこの場は切り抜けられそう。

 

 

 星歌のおかげで今は安心感に浸っていられる雨林であるがここから結束バンドと関係が深くなっていくことをこの時は知る由もなかった。

 

 

 





雨林蒼真
 本日天に召されかけた人
 喜多ちゃんに口止めしてもらったため平穏な学校生活を続けられている
 星歌とは知り合い

 救いはあった・・・


喜多郁代
 知らないうちに処刑人となった人
 雨林と親しくなりたいと思っている
 ほぼ機能が停止した雨林を強制的(無自覚)にライブハウスに連れ込む
 
 2人とも知り合いだったんですか!? 

 
伊地知星歌
 知らぬ間に雨林の命を救った人
 Starryのツンツンツンデレ店長
 喜多ちゃんの師匠を一目見ようと出勤

 まさかあの蒼真がねぇ

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