毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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04-02 星の騎士

「うん?」

「カスミ、どうしました?」

「先の方が何やら騒がしいようです、お嬢様」

 

 リアスとカスミがそれぞれ窓から外をうかがうが、おかしなものは見えない。

 カレンが御者を呼んだ。

 

「グレッグ! 何か先の方で起こっていますか?」

「ええと・・・はい、凄い人だかりです。楽の音もしていて・・・行列らしいものがこっちにやってきます」

「行列? アリー、今日何かあったかしら?」

「いえ、姫様。わたくしの記憶の限りでは・・・」

「ふーん?」

 

 窓を開けてモリィが身を乗り出した。

 

「ありゃ冒険者か? 100人近い群れで中央にいるのは星をあしらったサーコートに水色の甲冑を着て馬に乗った騎士・・・おい、まさか」

「・・・」

 

 馬車の中が沈黙に包まれる。

 車輪が舗装の敷石を踏むゴトッゴトッと言う音だけが車内に響いた。

 

 やがて歓声とざわめきが馬車の中にもはっきり聞こえるようになった。

 モリィは眉をしかめながら窓の外を見ている。

 

「モリィさん、その水色の騎士は認識票を出していますか?」

「出してます。これ見よがしにサーコートの上に――金です。神々と竜の刻まれた金の薄板」

「・・・・・・・・・」

「姉上?」

 

 あごに手を当ててカレンが考え込む。

 モリィも振り向いて姉姫の方を見た。

 

「そうね・・・いえ・・・」

 

 カレンが何かを言う前に、御者の声がそれを遮った。馬車が止まる。

 

「姫様、人混みで馬車が進めません。いえ、今人垣が割れて・・・水色の騎士がこっちに来ます!」

「!」

 

 モリィとカスミが素早く窓をのぞく。

 それ以外の車内の人間が顔を見合わせた。

 

「何のつもりでしょう?」

「挨拶・・・でしょうか?」

 

 カレンの馬車には王族であるカレン個人の紋章があしらわれている。

 メットーの住人か、そうでなくても多少詳しい人間なら一目で王家の馬車とわかる。

 

 全身を覆う水色の騎士甲冑。翼をあしらった兜、銀の星を染め上げたサーコートに真紅の籠手。

 馬車の前で騎士が馬を下り、兜(口元だけが見えるタイプだ)を脱いでひざまずいた。

 やや濁った大声で口上を述べる。

 

「これなるはライタイム王国が金等級冒険者、"星の騎士"グラン・ロジスト!

 ディテク王国第二王女カレン姫にご挨拶申し上げるっ!」

 

 馬車の中では、カレンに視線が集中した。

 

「どうします、姉上?」

「王家の人間として、挑まれて逃げる訳にはいかないわね」

 

 カレンが立ち上がり、不敵に笑った。

 

 

 

 きい、と音がして馬車の窓が開いた。

 おお、と群衆がざわめく。

 

「私はディテク王国第二王女カレン。あなたの挨拶を受けましょう、グラン・ロジスト」

「恐悦至極にございますっ!」

 

 男が勢いよく顔を上げた。

 金髪を短く刈り込んだ、ごつごつした顔付きの男だ。

 いかにも冒険者、あるいは兵士と言った印象を与える風貌である。

 カレンが眉をひそめたのには気がつかず、男が再び大声を張り上げる。

 

「おお、何ともお美しい! お許しを頂けるのであればあなたとお近づきに・・・」

「控えよ」

 

 ぴしゃりと相手の言葉を遮る。

 声を張り上げはしなかったが、相手を圧するだけの威厳があった。

 

「・・・!」

「紳士は事をせくものではなくてよ。まずは挨拶から。その後のことはその後に」

 

 一瞬唖然としていた「星の騎士」が再び勢いよく頭を垂れた。

 

「ははっ! 我がご無礼、お許し下さい! 余りにもお美しいかんばせに触れ、我を失っておりました!」

 

 今度はカレンが目を丸くした。扇で口元を隠し、目だけで笑う。

 

「そう。ではごきげんよう。今度はもう少し礼儀を身につけてきなさい」

「ははーっ!」

 

 カレンが促し、馬車が動き始める。人だかりが割れて馬車を通し、立ち上がった「星の騎士」が蕩けたような顔でそれを見送っていた。

 

 

 

「どうでした、モリィ?」

「お近づきにとか言い出した時点で馬に乗ってる奴の一人が慌てて何かしようとしてた。

 後、噂に名高い金板の(パーティ)にしちゃあ、小汚い奴が多いな」

 

 モリィの言葉にヒョウエが頷く。

 

「ふうん」

「なんです、姉上?」

「別に? それで、あの"星の騎士"、あなたはどう見た?」

「まあ、あからさまにおかしいですね。礼法も心得ていないし、噂に聞くような高潔さを感じません」

「それね」

 

 カレンと、リアス、カスミも頷く。

 本来王家のものと話すときは許しが出るまでは頭を下げたままでいるのが普通だ。

 百年以上を生き、騎士の鑑と讃えられるような人物がそんな基本的な礼儀作法も心得ていないというのはあからさまにおかしかった。

 

「まあ口だけは多少達者なようでしたけど」

 

 無礼を詫びる「星の騎士」の様子を思い出して笑う。

 口先が達者な廷臣はいくらでもいるが、無骨な冒険者の口がペラペラ回るというのが少しおかしかった。

 

「それに金等級の格というか、そういうものも感じられないんですよね。腕は立つと思いますがその程度です」

「さすがは緑等級の現役冒険者ね。でも誰と比べているのかしら?」

「さてね」

 

 笑みを含んだ姉の視線に、ヒョウエは肩をすくめて答えた。

 

 

 

 そのまましばらく馬車が走る。

 ざわめきが聞こえなくなった頃、ヒョウエが口を開いた。

 

「止めて下さい、姉上」

「行くのね?」

「どうにも気になりましてね」

「え? ヒョウエ兄様行っちゃうの!?」

 

 驚いた顔で兄を見上げるカーラ。

 ヒョウエがその頭を優しく撫でてやった。

 

「少し寄り道するだけですよ。ジュリス宮殿で待っていて下さい」

「うん・・・」

 

 不安げに頷くカーラ。

 にたり、とカレンが笑った。

 

「約束を破ったらひどいわよ、ヒョウエ。生身の女じゃなくて本にしか欲情出来ない変質者だって噂をメットー中にばらまいてやるから」

「あのですねえ・・・」

「そうですよ姫様。本当の事を言ったところでお仕置きにはなりませんから」

「ちょっとモリィ?」

 

 ヒョウエの不服そうな視線をものともせず、二人の女が悪い笑みを交わした。

 

「あなたとはいいお友達になれそうね、モリィ?」

「あたしもそう思うぜ、姫様」

 

 いつの間にかモリィの言葉遣いが随分と砕けたものになっている。

 

「「「・・・はあ」」」

 

 リアスとカスミ、侍女が揃って溜息をついた。

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