毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「ちょっと失礼」
ヒョウエの指が自分とリアス、カスミのマントをなぞる。
指の動きに従い、マントが上から下にすうっと鮮やかに青く染まった。
「うおう、なんだこりゃ」
「物質変性の術のちょっとした応用と言ったところです」
「星の騎士」に付き従っていた青いマントの冒険者たちが屋敷の玄関から中になだれ込む。
ヒョウエ達は透明化を解除し、その最後尾に紛れて屋敷の中に突入した。
「透明化解除して大丈夫かと思ったが、誰も気付かねえな」
「寄せ集めなんでしょう。青いマントを着てればわからないんですよ」
「なるほど」
「急げ! 二階だ!」
誰かの指示に従って、広い階段を二階まで駆け上がる冒険者の群れ。
二階に上がって少し走ったところで人の流れが止まる。
「おい、どうした!」
「先の方が動かない・・・なんだありゃ!?」
少し前の方で立ち止まっていた男たちの会話。
更に先から鈍い打撃音、武器が打ち合う金属音。人が倒れるような音、短い悲鳴。
その様なものが人垣の向こうから聞こえてくる。
「くそっ、見えねえ!」
荒事をなりわいにする男どもであるから、前の人垣はヒョウエたちより頭二つ分高い。
悪態をつくモリィをよそにヒョウエが術を発動して、四人は50センチほど浮いた。
「・・・!」
目をみはる。
廊下の突き当たり、広いホールで大立ち回りが繰り広げられていた。
その中心にいるのはロージ。左手には敵から奪ったのか粗末な木の丸盾、右手は素手。
武装した十数人の男に取り囲まれ、だが床にはその倍近い男たちが倒れている。
「おおりゃああ!」
三人が右前、左、真後ろから同時にロージに斬りかかった。
右前の一人から逃れるように左斜め「後ろ」にバックステップ。
「ぬぉっ!?」
まさか振り向きもせず後ろに飛んでくるとは思わなかったのか、真後ろから斬りかかろうとした男が虚を突かれた。
ぶん、と裏拳のように丸盾が振り抜かれ、ロージがくるりと一回転した。
丸盾が左の男のあごをかすめ、真後ろの男の振り下ろした剣を弾き、踏み込もうとした右前の男を牽制する。
最初の男は盾に脳を揺らされ、二番目の男は右フック。最後の男はたたらを踏んだところにアッパーカット。
三人がほぼ同時に倒された。
一呼吸の間の出来事。
魔法を使ったわけでもない、何かの《加護》でもない。
ただ自分の力と技だけでそれをやってのけた。
(つええ)
(何と言う、見事な・・・)
(・・・)
モリィが目を見張る。近接戦の専門家であるリアスの驚きは更に上だ。
ヒョウエは無言でロージを観察している。
「・・・」
「・・・・・・ううっ」
周囲の男たちが一歩後ずさる。数で圧倒しているにもかかわらず。
人の流れが止まった理由も同じだった。
後から来た冒険者たちの足が、広間の入り口で止まってしまっている。
「な、何をしている! 行け! 行かないか! たった一人だろう!」
震える声で叱咤しているのは『星の騎士』を名乗っていた男だ。
剣を抜いているが前に出ようとはしない。
その周囲では騎乗していた傍づきの男たちがうろたえていた。
「ひっ!」
ロージが『星の騎士』を名乗っていた男の方を向いた。
一歩踏み出すと、二人の間にいた冒険者たちが一歩下がる。
「ば、バカ! 引くな! 引くんじゃない!」
悠然とロージが歩き出す。
海が割れるように、囲みが割れた。
『星の騎士』とロージの間に割り込もうとする人間はいない。
「やれやれ、ここが潮時か。もう少し倒して欲しかったがね」
「えっ・・・?」
「・・・何?」
「星の騎士」の取り巻きの一人が溜息をついて肩をすくめた。
「星の騎士」が驚いた顔で振り向く。
ロージの眉がしかめられた。
「何者だお前は?」
「本当なら百人全員殺してくれれば良かったんだがね。まあ無力化してくれただけでもいいか」
ロージの言葉を無視して男が懐をまさぐる。特にこれと言って特徴のない、中肉中背の男だ。
「っ!」
何かを感じたのか、ロージが駆け出そうとする。
だがそれより一瞬早く、男の術が発動した。
倒れた冒険者たちの襟元についていた星形のマント止め。
それらが青白い光を放ち、光が伸びて触手のようにロージに絡みつく。
「ぐ・・・」
「かっ・・・かかか・・・」
倒れて動けない冒険者たちが苦悶の声を上げて痙攣する。
ヒョウエが"
マント止めが光っているのは倒れた冒険者たちだけではない。
ロージの周囲を囲んでいた冒険者たち、ホールの入り口で立ち止まっていた冒険者たちのそれからも妖しい光が発せられている。
「うぐっ・・・」
「おおおおお」
膝をつき、悶え苦しむ冒険者たち。
ただ、倒された者達に比べるとマント止めの光は鈍い。
(抵抗されているから効果が薄いんですね)
うずくまる冒険者たちの上を通り過ぎて扉の影から中の様子を窺う。
倒れた冒険者たちから霊体のような青白い触手が伸び、十重二十重にロージの全身に絡みついていた。
全く動けないわけではないようだが、もがいても触手から逃れることができない。
「貸せ」
「えっ・・・お、おい!」
術を発動した男が、「星の騎士」の剣を奪い取った。
何か言いつのろうとした「星の騎士」が、術師の裏拳で顔面を砕かれ昏倒する。
ロージが男を睨む。
「お前は・・・何者だ・・・!」
「ははは、わからんだろうな。お前を恨んでいる悪人など、それこそ星の数ほどいる――が、これならどうだね?」
「!」
男が懐に手を入れる。
取りだして顔につけたものを見て、ロージが息を呑んだ。
「"
「ご名答。まあ、こんなものをかぶる人間がそうそういるとも思えんがね」
ぐっぐっぐ、と鉄の髑髏の仮面をつけた男――アイアン・スカルは笑った。