毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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04-06 アイアン・スカル

 "鉄の髑髏(アイアン・スカル)"。ライタイムの有名な怪人(ヴィラン)だ。

 星の騎士が倒した真なる毒龍(ヒドラ)を崇めていた部族の出身で、毒龍を殺した星の騎士とライタイム王国を恨み、しばしば陰謀をめぐらせて星の騎士と戦っている。

 

「貴様、何故こんな手の込んだことを・・・」

「別に説明する必要はなかろう? まあしばらくは生かしておいてやるさ。

 抵抗する気もなくなるくらいに痛めつけさせてはもらうがね・・・」

「!」

 

 アイアン・スカルが笑い、倒れた「星の騎士」の手から、更に盾を奪い取った。

 それと同時に後ろに控えていた"取り巻き"たちが台車に乗せたものを運んできた。

 覆いを取るとその下には緑色の微光を放つ、ガラスの棺のようなもの。

 見るものが見れば一目で真なる魔法の時代の遺物とわかる。

 

(あれは・・・まさか?)

 

 それの放つ魔力の波動にヒョウエは覚えがあった。

 そのものを見る事はできなかったが、この一週間ほど感じ続けてきた、ヒョウエたちエブリンガーが警備していた「もの」の魔力だ。

 こちらも何か心当たりがあるのか、ロージの顔色が変わった。

 

「はは、わかるか。まあそう言う仲だものな、私たちは。

 お互いのことなら大抵は知っている、そうだろう、"親友(モナミ)"」

「やめてくれないかな。お前と友人などと言われるくらいなら、肥だめに頭から突っ込んだ方がマシだ」

 

 全身を縛る触手に全力で抗いながらも、歯を食いしばって笑みを浮かべるロージ。

 

「ははは! それは残念! 取りあえずは死なない程度に体を切り刻んで、動けない程度に血を抜いてやろう!」

「できるかな、その体で! 僕を舐めるんじゃあないぞ!」

 

 剣と盾を構え、ゆっくりとアイアン・スカルが近づく。

 ロージはもがくが、やはり自由には動けない。

 不思議な事に、近づいていくアイアン・スカルには触手は何ら影響を与えない。

 仮面の下で含み笑いをしながら、髑髏の男が剣を振り上げる。

 

「さて、余り傷つけるわけにも行かんがとりあえず腕の腱から・・・ぶぎゃっ!?」

 

 その瞬間、ロージの丸盾が髑髏の仮面を中身ごと叩き割った。

 

 

 

「えっ!?」

 

 顔面を砕かれてぐらりと揺れるアイアン・スカル。

 それに一番驚いているのは他ならぬロージだった。

 気がつけば体を束縛していた青白い触手が消えている。

 

 その一瞬の間にホールに駆け込んでくる影が三つ。

 咄嗟にそちらに盾を向けるが、三人はいずれもロージの方には向かってこない。

 

「っしゃっ!」

 

 スカウト風の少女・・・モリィが手にした雷光銃を素早く連射する。

 悲鳴を上げて「星の騎士」の取り巻きが次々と崩れ落ちた。

 頑丈な鎧を着込んでいたのか、それでも二人ほどが耐えて剣を抜く。

 

「はっ!」

「やっ!」

 

 そこに走り込んでくるのが「白の甲冑」を纏った女サムライとメイド忍び。

 敵ではないと判断してロージはアイアン・スカルのほうを振り向いた。

 ひしゃげた仮面。ふらつきながらも振り下ろす剣を、丸盾で弾く。

 斜めに流れた剣を追って、体も前に泳ぐ。左手に構えていた盾も体が開き、正面ががら空きになる。

 

「そんな程度じゃその盾は使いこなせないね・・・っと!」

 

 渾身のストレートがアイアン・スカルの顔面を捉え、怪人は今度こそ昏倒して大の字に転がった。

 

 

 

 周囲を警戒していたヒョウエがふうっ、と息をついた。ロージが不利になったら援護に入ろうかと浮遊させていた金属球も、心なしか動きがゆるくなる。

 リアスとカスミも、それぞれの相手を無力化していた。

 ホールに歩み入り、モリィとハイタッチ。

 見ると、ロージがこちらに歩み寄ってきていた。

 

「ありがとう、助かったよ」

「いやあ、あなたの実力でしょう」

「あの触手が消えなかったら危なかったけどね。君だろう?」

「まあね。最近身につけた解呪の術が、早速役に立ちましたよ」

 

 ヒョウエがにっ、と笑う。

 にかっ、とロージが笑い返す。

 拳と拳をコツン、と合わせた。

 

「しかし驚きましたね、まさか本物の星の騎士にお目にかかれるとは」

 

 ロージが片目をつぶり、唇に指を一本当てた。

 

「僕はライタイムの田舎者、ロージさ。そう言う事にしておいてくれ」

「ですか」

 

 くすくすとヒョウエが笑った。

 モリィが肩をすくめる。

 

「田舎者の演技にすっかり騙されたぜ。『星の騎士が国外に出ていたなんて、国境を出るまで気付かなかった』なんていけしゃあしゃあと言いやがってよ」

「モリィ、それは嘘じゃないですよ。だって自分が国境を越えたかどうかは、国境を越えた瞬間に気付くんですから」

「あー・・・」

 

 ぽかんと口を開けるモリィにまたくすくす笑い。

 

「まあ実際見事に化かされましたよ。"石弾(ストーン・ブリット)"の呪文を防ぐまで、武芸の心得があるようには見えませんでした」

「ちょっとしたコツがあってね。武芸の心得があるとついつい無駄のない動きをしてしまうけど、農民はそうじゃない。体を動かすとき、『よっこいしょ』と一抱えはある豚を持ち上げるようなつもりで動くと結構ごまかされてくれるものなのさ」

「なるほど」

 

 表情を多少まともなものに戻し、大の字に転がる髑髏の仮面に視線をやる。

 

「しかしアイアン・スカルですか。いやにあっけないですけど本物ですか?」

「まあ、本物と言えば本物かな。あいつはね、体を乗り移ることができるのさ。

 だから倒しても倒してもきりがない。

 こいつも適当な奴に乗り移って操作していた影武者ってところだろう」

「ふむう」

 

 緑色に光るガラスの棺に"魔力解析(アナライズ・マジック)"をかける。

 

「霊と精神・・・いや、魂かな? そんな系統の術式に見えますね。それ以上は詳しく調べてみないとわかりませんけど」

「やっぱりか」

 

 ロージが溜息をつく。

 

「心当たりが?」

「僕の体を乗っ取ろうとしているのさ。肉体と《加護》はそのまま使えるからね。

 痛めつけて抵抗力を削いでから、その遺物(アーティファクト)で体を奪おうとしてたんだろう」

「なるほど。では・・・」

 

 ヒョウエが何かを言おうとしたとき、ホールの反対側の扉が開いた。

 豪華な衣裳を着た男の後に、兵士と警邏達が続いている。

 さほど年を取っているとも見えないが、男は綺麗な禿頭だった。

 両手を広げ、満面の笑顔でこちらに歩み寄る禿頭の男。

 

「なんと、もう片付いておりましたか! 御礼申し上げねばなりませんなロジスト卿! あなたが来ると聞いて屋敷に招待したものの、まさか怪人とは!

 私もあやうく殺されかかるところだった! こうして兵を引き連れてきたが、一歩遅かったようですな!」

「・・・ウィナー伯爵」

 

 数時間前までの雇い主の名前をヒョウエが呟く。

 禿頭の男がにっこりと笑った。

 

「なぜ僕をグラン・ロジストと思われるのですか?」

 

 表情を消してロージが訊ねる。

 ウィナー伯爵はにこにこ顔を崩さない。

 

「昔ライタイムに出向いたことがありましてね。お顔は拝見しておりました。

 そちらに転がっている星の騎士殿の顔を見ていぶかしんだら、奴らめ、武器を抜いて襲いかかってまいりましてな。命からがら逃げ延びたというわけです」

「・・・」

 

 ロージが黙り込む。入れ替わりにヒョウエが口を開いた。

 

「僕からも一つよろしいでしょうか?」

「構わんよ、言ってみたまえ」

「ありがとうございます。あちらの」

 

 と、緑の光を放つガラスの棺を指さす。

 

「アーティファクトは僕たちが警備していたものだと思いますが、何かはご存じだったのですか?」

「いや、知らないな。偽物の使者が先に持って来たのだ。非常に重要なものと聞いたので警備をつけたが、思ったよりも早く彼らがついたので君たちとの契約も終了したわけだ」

「ですか」

 

 ヒョウエが溜息をつく。

 

(これ以上問い詰めても何も引き出せませんね、これは)

 

 そこで話はおしまいになった。

 警邏が手際よく冒険者たちを捕縛していく。

 どうも彼らはディテクに入ってから雇われた赤等級の冒険者たちらしい。

 それらしく見せるためのサクラ兼、ロージを捕縛するための生贄というわけだ。

 

 偽星の騎士およびその取り巻きたちは恐らくアイアン・スカルの一党だが、アイアン・スカルによる精神制御を受けている可能性が高く、むしろ被害者かも知れないとのことだ。

 

 

 

「奴はそう言う系統の術に長けていてね。やっかいなものだよ」

 

 貴族街の街路を歩きながらロージがぼやく。

 警邏が出て来た以上、彼らの出番は無い。

 星の騎士の装備品はいったん警邏が預かるのが普通だったが、ウィナー伯爵の口利きで直接返還して貰っていた。

 

「ご同情申し上げますよ」

 

 そうした敵の厄介さを知っているヒョウエが深く溜息をついた。

 

「それはこっちもだよ。・・・あの伯爵、ただものじゃあないね。アイアン・スカルに似たものを感じるよ」

「勘弁して下さい、否定はしませんけど」

 

 二人が苦笑をかわす。後ろを歩いていた三人娘も。

 

「それじゃあこのへんで。妹を待たせてますので」

「そうか、それじゃまた。それとあと一ついいかな」

「なんでしょう?」

「メットーで美味しい料理を出すお店、教えて貰えないかな?」

「帰るんじゃないのかよあんた!?」

 

 思わず突っ込んだモリィに、ロージが快活な笑顔を向けた。

 

「言ったろう? ついでにあちこち見て回るって。ライタイムからはそうそう出られない身分だし、少し位遊んでもいいじゃないか、ねえ?」

 

 ぱちりとウィンク。

 モリィが何とも言えない顔になり、残りの三人が揃って苦笑した。

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