毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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04-09 マイア・ジェイ・ボッツ・ドネ

 

 さほどの時間もおかず馬車は王宮に着き、ジョエリーとヒョウエは奥に案内される。

 サナたちは専用の控え室だ。

 

 閣議の間に入る。

 既に国王を除く他の面々は揃っていた。

 ヒョウエのいとこである王太子や各大臣、カレンの姿もある。

 二人の、正確にはヒョウエの姿を見て一斉に驚きの声が漏れた。

 

「おおう・・・」

「・・・ヒョウエ、か?」

「なんと」

「美しい・・・」

 

 ざわめく一同。カレンだけは扇で口元を隠して楽しげに笑っている。

 ジョエリーが苦笑し、ヒョウエが皮肉げな笑みを浮かべて一礼した。

 

「ご無沙汰しております、お歴々。ヒョウエ・カレル・ジュリス・ドネ参上致しました」

 

 思わず「美しい」などと言ってしまった大臣の方にちらりと視線を向けると、でっぷりした老人は慌てて咳払いしてごまかした。

 ヒョウエのいとこである王太子アレックスがやや呆れたように口を開く。

 

「久しぶりだな、ヒョウエ。いやしかし・・・子供の頃から叔母上に似て美しかったが、お前もう16だろう? まさかとは思うが本当に女なんじゃなかろうな?」

「それ以上言ったら戦争ですよレクス兄。大体一緒に水浴びをした仲でしょうが」

 

 睨んでくる従弟に苦笑するアレックス。

 ちなみに彼は五つ年上の21だ。

 

「まあそうだが誤魔化す手段はないでもないからな。実際お前はオリジナル冒険者族だし、桁外れに優秀な術師なんだろう?」

 

 ちらりとヒョウエの持つ杖を見るアレックス。

 

「相性というものがありましてね。使えない訳じゃないですが得手ではありません」

 

 肩をすくめる息子の胸を、ジョエリーが軽くこづく。

 

「アレックスもヒョウエもその辺にしておけ。さっさと席に着くぞ」

「はいはい」

「すみません、叔父上」

 

 二人が席に着くと、間もなく儀礼官が国王の入来を告げた。

 一斉に起立し、頭を下げるとともに国王マイア・ジェイ・ボッツ・ドネが入室し、席に着く。弟に威厳と風格を足したような、40間近の謹厳そうな男性だ。

 

「みなのもの、大儀である。着席せよ」

 

 一同が席に着くと、マイアはヒョウエをしげしげと眺めた。

 

「ジョエリー」

「なんでしょう兄者」

「そこにいるのは本当にヒョウエか? 今まで隠していた双子の妹とかではないのか?」

「伯父上!」

 

 ヒョウエが叫ぶ。そろそろこめかみに青筋が見えそうな表情。

 思わず吹き出したアレックスを、更に剣呑な表情でヒョウエが睨んだ。

 

「はは、許せ許せ。だが忙しいとは言え四年も音沙汰無く、俺の大事な末娘(カーラ)が枕を涙で濡らしていた事を思えばこれくらいは構うまい?」

「それを言われると弱いですけどね・・・」

 

 実に楽しそうな笑みを浮かべるこの国の最高権力者。

 横でニヤニヤしているナンバーツーとは本当に似たもの兄弟だと思いつつ、父親の脇腹を肘でえぐる。

 国王がそれを見て笑みを深くしていた。

 

「まあそれはさておきだ、ヒョウエ」

「はい」

 

 マイアが表情をまじめなものに改める。ヒョウエもまじめな表情に戻って国王に向き直った。

 

「この四年のつとめ見事なものであった。褒めて取らす」

「勿体なきお言葉にて」

 

 立ち上がり、一礼する。

 拍手が起きた。

 アレックスとカレンは自慢の弟を見る目で、大臣たちもほほえましげな表情で両手を叩いている。マイアとジョエリーがうむうむと頷いた。

 

「さて」

 

 ぱん、と国王が手を叩く。

 

「家出息子の話はここまでにして、本題に入ろう。

 取りあえずお前達は下がれ」

「はっ」

 

 国王とカレンの背後に控える二人を除いて儀礼官や衛士達が一礼して下がる。

 ドアが閉まって二呼吸ほどして、改めてマイアが口を開いた。

 

「さて。他でもない、昨日の地震のことだ。

 青い鎧のおかげで大きな被害は出なかったが、それでも百人を超える民が死んだ」

「・・・」

 

 何人かが瞑目する。ヒョウエもその一人だ。

 恐らくは世界最強であろう力を持ってはいても、助けられないものはいる。

 

(その無力感を乗り越えて進め。失敗して、犠牲者を出しても折れるな。お前が動くことで、たとえ一人でも必ず助かる人間がいる。諦めるな。決して歩みを止めるな)

 

 子供の頃に教えられた言葉。

 あるいは前世で見聞きした言葉だったかも知れない。

 それをあらためて心に焼き付ける。

 次の一人を助けるために。

 

「ヒョウエ」

「はい」

 

 目を開き、伯父の目を見返す。

 

「お前を呼んだのはスラムの代表として話を聞きたかったからだ。

 スラムの状況はどうだった?」

「青い鎧が初動で火を消してくれたのが最善手だったと思います。木造の建物も多く、しかも密集している。

 前世のニホンでのことですが、昨日のそれよりも遥かに巨大な地震が首都で起きたことがあります――その時は、火事で十万人が死にました」

「・・・・・・・・・!」

 

 閣議の間の全員が息を呑んだ。十万人という数字に理解が追いつかないのだろう。

 淡々とヒョウエが言葉を続ける。

 

「この王都も九百年前の大地震のとき、大火で当時の1/3近い人数が死んでいます。

 再建された今のメットーは街区ごとに広い大通りに遮られてますし、火除け地も多い。そこまで火が回る事はなかったかもしれませんが、試してみる気にはなれませんね」

 

 閣議の間のあちこちからうなり声が起きる。

 

「そうか、広い大通りは交通の便のためと思っておったがそう言う意味もあったのか」

「その辺を書いた本が王宮の書庫にありますよ。メットー行政府の公文書庫にもあったはずです」

「流石お前は本の虫だな・・・」

 

 呆れたようにジョエリーが言う。

 

「お褒めにあずかり恐悦至極」

「褒めとらん」

 

 四年経っても全く変わらない親子漫才に周囲から思わず苦笑がこぼれる。

 カレンだけは楽しそうに眼を細めているが。

 

「まあ地震についての講釈はそれ位でいいだろう。青い鎧がいなかったら大きな被害が出ていたのも間違いない」

 

 国王の言葉に、周囲がまじめな顔に戻って頷く。

 

「それで・・・だ。ウェルダー」

「はっ」

 

 国王の背中に控えていた男が頷いた。

 

「~~~」

 

 一言呪文を唱え、印を切る。

 次の瞬間、術式が部屋全体を包んだのがわかった。

 

(相変わらず見事なものですね)

 

 ウェルダーと呼ばれた彼は沈黙術師(サイレマンサー)。音系の魔法の使い手の中でも特殊なタイプの術師だ。

 密談のときに沈黙の結界を張り、音が部屋の外に漏れないようにする。加えて外部からの念視や盗聴の魔法を防ぐ結界も張る。

 高位の貴族の家にはよく見られる人々で、長く王宮に仕えているだけあってウェルダーの術式と魔力はたいしたものだった。

 

 "魔力解析(アナライズ・マジック)"をかけて周囲を確認する。規則正しい術式構成とそこにみなぎる魔力が美しい。

 それに気付いてこちらを困ったように見てくるウェルダー。

 ごまかし笑いを浮かべると、あちらも困った顔のまま笑みを浮かべた。

 

「よし。それでだ。わかっていると思うがこれから話すことは他言無用。

 漏らした場合、家門断絶もあると心得ろ」

「・・・!」

 

 ぴりっ、と緊張が走った。

 その中で、代表してアレックスが口を開く。

 

「それで父上。一体何が起こっているのですか?」

「ああ」

 

 マイアが厳しい表情で頷く。

 

「まだ未確認だが・・・昨日の地震は人為的なものである可能性がある」

「!!!!!!!!!!!!」

 

 部屋の中がどよめきに満たされた。

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