毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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04-10 会議は揺れる

「兄者、さわりだけは聞いたが一体どう言う・・・?」

「詳しいことはカレンに説明して貰う。この情報を持って来たのもあれの部下だからな」

 

 国王の言葉に、室内の視線がカレンに集中した。

 

「姉上が・・・?」

「あら、流石に知らなかったみたいね。私たちの母が"片隅の垂れ幕(コーナー・ヴェール)"――名前は知ってるわね、王国諜報組織――の長の娘だったのよ。

 その関係で二年ほど前からそちらの仕事を任せて頂いている、というわけ」

「はー、伯母上がですか」

 

 流石に驚いたのか、ヒョウエが大きく息を吐く。

 

「まあ納得できると言えば納得できる話ですが」

「あなたも言ったでしょ。私は地獄耳なのよ」

 

 扇で口元を隠し、カレンがしてやったりと微笑んだ。

 だがそれもつかの間、すぐに扇を閉じて表情を仕事向けのそれに戻す。

 

「現状ではあくまでも推測ですが――数ヶ月前、民間の学者が姿を消しました。

 その研究資料もほとんど無くなっておりましたが、残ったものを調べさせたところ、メットー近辺に大地を操る真魔法文明時代の遺跡がある可能性が浮上したのです。

 大地の力を操って土地を豊かにしたり、地震の被害を抑えたりするための施設だったようですが――悪用すれば今回のように地震を起こすこともできるのではと」

 

 部屋の中がざわめいた。

 無言で考えこむヒョウエにちらりと視線をやる。

 

「わかるかしら、ヒョウエ?」

「今の話だけだと何ともですが、地脈やプレートを操る魔法装置でもあるんでしょうか。

 地震を起こしたり被害を減らすだけなら慣性制御――手を触れずにものを動かす念動の術でもできるでしょうが、大地の力を操るというなら多分そちらですね」

「よくわからないけどあり得るって事ね」

「そんな感じです」

 

 説明しても理解出来るとは思えなかったので肩をすくめて適当に流す。

 カレンの方も期待はしていなかったようで、軽く頷いた。

 

「そう言えば姉上。三ヶ月ほど前にも中央公園の時計塔が崩れる地震がありましたが・・・」

「青い鎧が時計塔を支えてくれたあれね。可能性があるとしか言えないわね、現時点では」

「ですか」

 

 溜息をつくヒョウエ。カレンが視線を戻す。

 

「陛下にご報告して調査を続行しておりましたが、残念ながら昨日地震が発生してしまいました。無論自然のものと言う可能性もありますが、無視はできないでしょう。

 わたくしからは以上です」

 

 部屋の中がざわつく。

 しばらくそれを放置した後、マイアは手を打って彼らを沈黙させた。

 

「カレン、その遺跡とやらの場所は今もってわからんのだな?」

「はい、陛下」

「何者がそれをやったかも」

「はい」

「あれ以上の地震を起こせるか、もう一度起こせるかどうかもわからんと」

「仰せの通りです」

 

 国王が溜息をついた。

 

「雲を掴むような話だな」

「申し訳ありません」

 

 カレンが苦笑する。

 

「いや、いい。お前達はよくやってくれている。引き続き調査と探りを頼む」

「はい、陛下」

 

 まじめな顔でカレンが一礼した。

 マイアが全体を見回す。

 

「そう言うわけだ、この事態に能動的に対処するには情報が足りない。

 現状でやれることは、次の地震に対する備えだ」

 

 一同が頷き、マイアが視線をヒョウエの方に向ける。

 

「ヒョウエ」

「なんでしょう、陛下?」

「オリジナル冒険者族であるお前の知恵を借りたい。地震の被害を抑えるのに有用なニホンの知識。この世界でも実現できそうなものがあれば片っ端から上げていってくれ」

 

 ああなるほど、と頷く。

 

「かしこまりました。ただそう言う事でしたら、先にも申し上げました王宮の書庫にある書物が有用かと。大方は都市設計と防災思想を論じたものですが、そうした具体的な防災手段に関してもいくらか言及があったかと思いますので取ってきましょう。

 場所は大体覚えてますし」

「おお、それは助かるな・・・待て、ヒョウエ。まさかとは思うがお前、あのホコリとカビの山のどこに何があるか全部わかってるのか?」

 

 眉を寄せてマイア。

 

「まあ大体は読みましたから」

「読んだのか・・・」

 

 父親と同じような表情でアレックス。

 周囲の人々も同じ表情で視線を集中させている。

 

「しかしホコリとカビの山とはご無体な言いようじゃないですか。司書が泣きますよ」

「実際そんなものだろうが」

 

 ヒョウエが肩をすくめた。

 

「否定はしませんけどね。それはそれとして凄いのは過去のオリジナル冒険者族ですよ。わかりやすく分類する方法は彼らが伝えたんですから。ではちょっと失礼致します」

 

 一礼するとヒョウエが退出する。

 一斉に溜息が漏れた。

 

「普通は数万冊の本を全部読破したりしないんだよ、ヒョウエ・・・」

 

 疲れたようなアレックスの声が、その場の総意であるかのように響いた。

 

 

 

 十分と経たずヒョウエは戻ってきて、それからはしばらく大まかな防災計画の立案が話しあわれた。書記を呼び戻し、出席者それぞれの発言を記録させていく。

 昼食を挟んで会議は夕方まで続いた。

 

「ふう・・・」

 

 会議の終了と解散が告げられ、ヒョウエは大きく伸びをした。

 微笑ましそうにジョエリーが息子を見下ろす。

 

「疲れたか」

「ええまあ」

「お前だって順当に行けばもうそろそろ何かの仕事は任せられた年齢だ。

 ま、徐々に慣れていくんだな」

「正直スラムのことだけで手一杯なんですけどねえ」

「スラムの広さがどれだけだと思ってるんだ、お前は? メットーの行政の1/5位はお前が担っていることになるんだぞ。であれば、他部署との折衝は避けられん仕事だろうが」

「はいはい、おっしゃるとおりで」

 

 溜息をつくヒョウエ。

 そこにマイアが歩み寄ってきた。

 

「ご苦労だったな、ヒョウエ。やはりこう言うときにはオリジナル冒険者族は助かる」

「お役に立てて幸いです、陛下」

「仕事は終わりだ、伯父上で構わん――いや、もう一つお前には仕事があったな。国王命令である。謹聴せよ」

「はっ」

 

 国王の謹厳な表情に、ヒョウエが居住まいを正す。

 

「これから奥へ向かい、俺の末娘(カーラ)の相手をしてやれ。晩餐も食っていけ」

「・・・拒否権は?」

「ない」

 

 一瞬前までの謹厳な表情を一転、盛大にニヤニヤ笑いを浮かべるマイア。

 

「仰せのままに、陛下」

 

 同じようなニヤニヤ笑いを浮かべる父親を蹴り飛ばしたい衝動に耐えつつ、溜息をついてヒョウエは一礼した。

 

 

 

「ヒョウエ兄様!」

 

 部屋に入るなり、カーラが飛びついてきた。

 それを抱き上げて、額にキスをしてやる。

 カーラのお返しのキスを頬で受けて、ソファに座る。カーラはもちろん膝の上だ。

 侍女がごく自然に香草茶を用意した。

 

「ねえねえ、兄様、今日はどうしたの? こんなに早く会えるなんて思ってなかった!」

「ちょっとお仕事のついでにね、顔を見に来たんですよ。いい子にしてましたか」

「うん!」

 

 満面の笑みで頷いて、ヒョウエの首っ玉にかじりつくカーラ。

 そのまま頬ずりしてくる。

 会うたびに頬ずりしてくるスラムの娼婦ナヴィのことをちょっと思い出しつつ、ヒョウエは妹の頭を優しく撫でてやった。

 

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