毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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04-11 主人がオオアリクイに殺されて1年が過ぎました

 それから数日間、事態は全く進展を見せなかった。

 リーザの心の耳も、カーラの諜報機関も、何一つ有効な情報を掴んで来れない。

 が、事態は意外なところから動いた。

 

「・・・脅迫状?」

 

 眉を寄せてヒョウエ。

 向かい側には少し疲れた顔のジョエリー。

 深刻な状況に対する表情ではない。どちらかというと呆れた顔だ。

 ジュリス宮殿の、ジョエリーの居間である。

 

「ウォー・シスターズ商会。覚えてるだろ」

「ええ、ぶっそうな名前ですしね」

 

 アクティコ大公家の出入り商人の一つである。名前に反して文房具や書物、靴や照明器具などを扱うところで、ヒョウエもかなり世話になった商会だった。

 

「そこにこれが来たそうだ」

 

 テーブルの上に無造作に放り出される紙片。

 雑に折りたたんだ和紙だ。

 この世界では冒険者族が持ち込んだこれが最も一般的な記録媒体として通用している――閑話休題(それはさておき)

 

「えーと、

 

『先だっての地震はただのデモンストレーションに過ぎない。

 いずれメットーを完全に壊滅させる巨大地震が起きる。

 されど我らに白金貨で十万ダコックを支払うならば難を逃れるであろう』

 

 ・・・なんですこれは」

 

 紙片を読み上げたヒョウエが顔を上げた。

 父親と同じような表情になっている。

 

「会頭のハリエットの話じゃ、結構あちこちに来ているそうだ。

 どこも本気にしちゃいないが、ハリエットが念のためにと届けてくれた」

「うーむ」

 

 馬鹿馬鹿しい、と言った感じでジョエリーがソファにもたれかかる。

 

「で、一応お前にも見せておこうと思ったわけだ。何か気付いたことはあるか?」

 

 ふむ、とヒョウエが考え込む。

 

「まあニホンではよくある詐欺ではありますね」

「よくあるのか・・・」

「他人の言葉を真に受けやすい人や気の弱い人はどうしても一定数いますからね。

 ニホンは、たとえるなら銅貨一枚あれば一万枚の手紙を出せるようなところなので、こんな感じの手紙をとにかく送りつけるんですよ。

 一人でも本気にして金を払ってくれれば万々歳というわけで」

「ニホンとは恐ろしいところだな、おい」

「返す言葉もありません」

 

 ジョエリーが深く溜息をつく。

 苦笑してヒョウエは肩をすくめた。

 

「で、どうする」

 

 ヒョウエが表情をまじめなものに戻した。

 

「ハリエットさんに、話に乗るように伝えて貰えませんか。

 それと一応カレン姉上にも伝えておいた方がいいかと思います」

「わかった」

 

 

 

「いやはや、お綺麗になりましたねえ、若様」

「そこは『ご立派になりました』じゃないでしょうか、ハリエット?」

 

 ヒョウエが目の前の老女を半目で睨む。

 上品な物腰ではあるが目つきは鋭く、どこか伝法な雰囲気がある女性だ。

 

 ハリエット・ウォー。

 "リトル"ヴィル・クリーブランドほどではないにしろ、姉妹四人でゼロから商会を起こして成功した女傑として、界隈ではそれなりに知られた女性である。

 上得意であったヒョウエとはそれなりに面識があった。

 

「ははは、美人なんだからしょうがないじゃないですか。本当にね、お母君そっくりになられまして。まあ、スラムのお噂は聞いておりましたがよくぞという感じですね」

「それはどうも」

 

 自分の回りにはどうしてこう言う喰えない連中ばかりなんだろうと溜息をつく。

 自分も同類であることはとりあえず棚に上げておく。

 

「それで、そちらのお三方が若様の箱仲間(パーティメンバー)ですか?」

「ええ。左から雷光銃使いのモリィ、"白のサムライ"リアス・ニシカワ、リアスの侍女のカスミです」

「まあよろしくな」

「よろしくお願いしますわ」

「お見知りおきを」

「ああ、こちらこそよろしく・・・」

 

 挨拶を受けながら、ハリエットが首をかしげた。

 

「どうしたんです、ハリエット?」

「いやね・・・あんた、ひょっとしてコバヤシさんちのモリエちゃんかい?」

「はい!?」

 

 モリィが目を丸くした。

 

 

 

「いやモリエちゃんの爺さん、レイさんには商売始めた頃にお世話になってねえ。

 あの人が冒険者から同業になった後も色々世話になったりお返ししたりしてたのさ。

 あんたが小さい頃にも何回か会ったことがあるんだけど・・・」

「悪ぃ、全然覚えてねえわ・・・」

「はは、気にしなさんな。コバヤシ商会が潰れた後、あんた達のことを探し回ったんだけど見つからなくてね・・・オヤジさんとオフクロさんは?」

 

 無言でモリィが肩をすくめた。

 

「そうかい」

 

 ハリエットが深く息をつき、瞑目した。

 

「まあ昔話はこの辺にしとこうか。今夜、連中が受け取りに来ることになっている」

 

 執務机の上の布袋を指してハリエット。

 小袋程度のそれには、白金貨100枚が入っているはずだった。

 ヒョウエが頷く。

 

「ハリエットは連中にそれを渡してくれれば結構です。後は僕たちがやりますから」

「もうあたしらの仕事はないって事でいいんですか、若様?」

「また何かあるかも知れませんが取りあえずは。勿論ですが僕たちのことは気取られないようにして下さい」

「任せて下さいよ。あんなチンピラに気取られるほど、年期は浅くありませんさね」

 

 くっく、と老女が笑った。

 

 

 

 夜半。

 商会の裏口の上で、ヒョウエたちは杖にまたがって浮かんでいた。

 もちろんカスミの術で透明の場を周囲に張っている。

 しばらくして、モリィが周囲を見渡した。

 

「・・・ん? 何人か周囲に忍んでる奴がいるな」

「どこです?」

「はす向かいの店の二階の窓と、あそことあそこの路地と・・・あ、そこの屋根にもだ。警邏っぽいが弓持ってやがんな」

「ふむ」

「"暗視(ナイトヴィジョン)"」

 

 カスミが術を発動する。

 リアスも白の甲冑の視覚強化機能を作動させた。

 

「こちらでも確認しました。明らかに隠密の技能を身につけた方々ですね」

「警邏の制服を着ていますが・・・」

「多分王国の諜報機関の人たちですね。取りあえずは放っておきましょう。あっちも目的は同じでしょうし」

「ですわね」

 

 姉の手のものである、とは言わなかった。

 王国の秘密を漏らすのがまずいと思ったからではない。

 

(何とはなしに後が怖そうですし)

 

「ヒョウエ様、なにか?」

「いえ、何でもありません」

 

 そんな事を考えながら待つ。

 そして王都の鐘が真夜中を告げた頃、そいつらはやってきた。

 

 

 

 街路を歩いてきたフードの男たち。

 それが商会の裏口の門を、一定のリズムで何度か叩く。

 門を開けて出て来たのはハリエットだった。

 

 こわごわと差し出す袋を、男たちがひったくる。

 哀願するように何かを話しかけるハリエットを、男たちはハエでも払うようにあっちへ行けというしぐさ。

 膝をつき、両手を組んで懇願するハリエットだったが、男たちは気にも止めずにさっさと立ち去ってしまう。

 悲しげなうめき声を上げて老女は街路に突っ伏した。

 

「ノリノリだな婆さん」

「やり過ぎですよもう・・・」

 

 ヒョウエが溜息をついた。

 

「まあ、これで向こうがカモと思ってくれんならまた来る可能性もあるけどよ」

「ではそれを狙って?」

「ないとは言えませんけどね。多分楽しんでるだけですよあれは」

 

 男たちが去った後、ひひひと笑う老婆を見てヒョウエはもう一度溜息をついた。




ウォー・シスターズ商会 DCコミックスの親会社である「WAR(NER)BROTHERS」から。ハリエットもワーナー兄弟長男のハリーから。
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