毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
路地を行く男たちを上空から追跡する。
その前後、距離をとって先ほどの警邏姿の男たちが囲むように追跡していく。
「今更だけどよ、飛べるって便利だなあ・・・」
「頭の上に目はついてませんからね」
「脅迫犯はともかく、プロである諜報機関の連中も全然上を振り向く様子がないですね」
「まあ透明にもなってますしね」
500m先から透明化したこちらに気付いた金等級冒険者の顔がちらりと脳裏によぎるが、全員揃って無視した。あれは例外中の例外だ。
「しかし・・・なあ?」
同意を求めるように、モリィが後ろを振り向く。
リアスとカスミが頷いた。
「なんです?」
ヒョウエが振り向くと、三人が三様に複雑な表情を浮かべる。
「なんて言うか・・・素人臭くないか?」
「同感です。少なくとも隠密や間諜の訓練を受けているとは思えません」
「武芸の腕も素人に毛が生えた程度・・・言ってしまえば雑兵ですわ」
「うーん」
実はこの三人の中でヒョウエだけが視覚強化系の能力を持っていない(「青い鎧」状態の時は別だ)。
なので三人ほど綿密な観察ができなかった。
「あわよくばくらいのつもりでしたけど、やっぱりただの便乗犯ですかねえ」
「まあ取りあえず最後までつけてみましょう」
「ですね」
溜息をついてヒョウエは尾行を続行した。
男たちが入っていったのはメットーを貫いて流れるハイオ川の川岸、港周辺の倉庫街だった。
警邏姿の男たちが表と裏を囲むように動き、ヒョウエたちは屋根に着地する。
「
目を閉じて、杖の先をとん、と屋根につく。
次の瞬間、その目が驚愕に見開かれた。
「突入しますよ!」
「え、ではいっぺん降りて・・・」
リアスの言葉が終わらぬうちに、四人の足元が崩れる。
「ぬぉわぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「きゃあっ!?」
モリィとリアスの悲鳴が尾を引いて、薄暗い倉庫の中に落下していった。
床に激突する直前に、四人はふわりと減速した。
カスミは完璧な着地を、モリィとリアスはそれでも何とか両足で地面に降りる。
周囲に瓦や木材といった構造物が降り注いだ。
「!?」
僅かに動揺を見せて振り向いたのは、黒覆面の男だった。
手には血のしたたるサーベル。
(いや、刀・・・か?)
足元にはたった今首筋を綺麗に切り裂かれた男が転がっていた。
小さなランプの灯りが薄暗い倉庫内に横たわる、いくつもの人体らしきものを照らしている。周囲にはむっとする血の匂い。
「治療してみます。三人で何とか!」
「おうっ!」
モリィが応えるのと、抜きはなった雷光銃が光芒を放つのがほぼ同時。
初見ではないのか、それとも実戦経験の為せる技か、黒覆面は咄嗟に回避するがそれでも何発かは肩や手足をかすめる。
「ハッ!」
火花が散った。
白の甲冑による超人的速度の踏み込みで振るわれたリアス抜き打ちの一刀を、黒覆面がかろうじて受け流したのだ。
「っ!」
リアスの影に隠れるように接近、地面すれすれから振るったカスミの忍者刀が、体勢の崩れた黒覆面のふくらはぎを切った。
黒覆面の目の色が変わる。倒れた男を治療していたヒョウエに、ぞくりと走る悪寒。
「下がって!」
言いつつ、三人と自分、治療していた男を念動で引き戻し、黒覆面との間に念動障壁を立てる。同時に倉庫の扉が破られ、諜報部員が踏み込んでくる。次の瞬間、黒覆面が襟元の輪を引っ張ったかと思うと、その体が大爆発を起こした。
カスミの詠唱が響く。
真昼のような強い光が瞬き、周囲がパッと照らされる。
倉庫の中は惨憺たる有様だった。
天井の穴と瓦礫、十人近い斬殺死体。流れ出た血の海は早くも凝固しつつある。
入口には顔を覆ってうずくまる諜報部員が一人と、右肩を押さえているのがもう一人。遅れて裏口から入って来たもう一人はこの惨状を見て立ちすくんでいる。
そして黒覆面のいた中央付近には焼け焦げた痕とバラバラになった死体のパーツが転がっていた。
(よし、何とか持ち直しそうですね)
抱えた男の首筋に手を当てて容態の安定を確かめると、ヒョウエは男をモリィ達に任せて、入口の方に歩き出した。
「大丈夫ですか、お二方」
「お前達は・・・失礼しました、ヒョウエ殿下でいらっしゃいましたか」
「無理はしないで下さい。傷口を」
敬礼しようとするのを止め、右肩の傷口に指を当てた。
食い込んでいた破片を念動で抜いてから応急で血を止める。
顔面に破片が食い込んだ方も、時間はかかったが同様に治癒できた。
「はい、終わりです。僕の治癒は雑ですので、できれば専門の医者にかかってください」
「かたじけなくあります」
一礼するとリーダーらしい男は倉庫の中を見渡した。
「しかしこれは・・・」
「やはり地震を起こした組織が存在し、その末端が勝手に金儲けを企んだ。その懲罰兼口封じというところでしょうか」
「そのようなところであろうかと」
頷くリーダー。
「あの男はこちらで引き取らせて頂いても?」
「ええ。流石に尋問の経験はありませんしね――しかし連中は雑魚もいいところでしたが、あの黒覆面は恐ろしい敵でしたね」
「全くだ。あの距離で急所を全部外されるとは思わなかったぜ」
「モリィ」
生き残りを諜報部員に任せた三人がこちらに歩いてきていた。
「モリィさんの雷光をかわして体勢が崩れた上で私の一撃を凌がれましたわ」
「私の攻撃も、気付いてかわそうとはしていました。侮れない強敵であったかと」
三人の言葉に、ヒョウエとリーダーが頷く。
「思っていた以上にやっかいな事になるかも知れませんな」
黒覆面の右手がそこだけ綺麗に残って倉庫の床に転がっている。
リーダーの言葉と共に、その手が妙にヒョウエの印象に残った。