毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
そのころヒョウエとモリィは。
「うーん、二匹目まではあっさり見つかったんだけどなあ」
「この広いメットーで、午前中だけで二匹も見つかったのが僥倖ですよ。
焦らずじっくりいきましょう」
「うんまあそうだけどさ」
王都上空を遊覧飛行しながら、ひたすら地味な捜索作業を続けていた。
そして手すきのリアスとカスミは見つけた猫の二匹目を依頼人に届けていた。
中程度の商家である。
青等級冒険者とは言え、見るからに身分ある騎士とその従者と言った風体のリアスとカスミが門前払いを喰らうことはなく、二人はスムーズに奥に通される。
部屋に入って一礼。
「失礼します。毎日戦隊エブリンガー、ご依頼の猫を捜して参りました」
「これはこれは・・・おや?」
両手を広げて歓迎するそぶりを見せていた商家の主が、リアス達を見て怪訝な顔になった。
「何か?」
「ああいえ、エブリンガーのリーダーは男性、少女のように美しい少年だと・・・失礼ですがリーダーの方ですか?」
「いいえ、パーティメンバーのリアスと申しますわ。リーダーは別口の依頼を遂行中でして、手すきの私どもが参りました」
リアスの返答に商家の主は困ったような、不本意そうな顔をする。
「いやしかし――依頼を達成したなら、リーダーが報告に来るのが筋ではないですか?」
「そう言う考え方もおありでしょうが、一般的ではございませんね。慣習的にもそうした事は認められておりますが」
「しかしですな・・・」
「わたくしではご不満と?」
「い、いえ・・・」
依頼を受けた冒険者と依頼主であるから男の方が立場は上のはずだが、見るからに貴族であるリアスに対しては、商家の主と言えども下手に出ざるを得ない。
結局依頼の完了を報告して、リアス達はそのまま商家を出た。
商家を出てしばらく歩いたところでリアスが口を開く。
「妙でしたわね」
「はい、お嬢様」
カスミが頷く。
「やけにヒョウエ様に執着しているように見えました」
「最初の依頼主の方も、あそこまで露骨ではありませんでしたが、お嬢様と私を見ていぶかしげな顔をしておられました」
「一応、ヒョウエ様にはお伝えしておくべきでしょうね」
「はい」
そのまま二人は六虎亭に戻っていった。
それから数日後。
奇妙な男、バリントンがメットーから東に続く街道を歩いていた。
「・・・ここか」
やがて立ち止まったのは何の変哲もない曲がり角。
だが、周囲を深い森に覆われ、曲がりくねった道は前後の見通しも利かない。
奇襲するにはベストと言ってもいい位置。
さらに、草むらの中。茂みに隠れた錆びた短剣、布の切れ端、砕けた木片などをバリントンのとろんとした目はしっかりと見つけ出していた。
ふんふん、と鼻をうごめかせる。
「・・・」
無言のまましばらく周囲の匂いを嗅ぎ、バリントンは森の中に入っていった。
「ワハハハハハハ!」
「そぉら、三つ揃いだ!」
「げーっ!?」
夜の闇に浮かび上がる朽ちかけそうな山小屋。
本来は猟師か何かの避難所だったところに彼らはいた。
十人ほどの男が酒を飲み、サイコロを振り、騒ぎ立てる。
先日襲った隊商は大当たりで、良質の酒を大量に手に入れることができた。
万年
「ちっ、ついてねえ・・・」
バクチに大負けして頭を抱えて叫んでいた男がフラフラと立ち上がった。
「おうなんだ、逃げんのかよ!」
「うるせえ、小便だ! 戻ってきたらギッタンギッタンにしてやらぁ!」
「おーおー、吠えるぜ!」
ぎゃはははは、と笑いに包まれる山小屋の中。
立ち上がった男が扉を開けると、そこに胴鎧を着た男がいた。
「あ?」
「こんばんは」
一瞬事態を理解出来ない山賊の男。
ドシュッ、と鈍い音がした。
「あん?」
酔った山賊たちが振り向いて見たのは、両手をだらんと下げ、口の中から首の後ろに剣が貫通した仲間の姿。
「・・・てっ、てめえ!?」
事切れた山賊がドサリ、と床に投げ出される。
ようやっと状況を理解して山賊たちが一斉に剣を抜く。
「ひのふの・・・八人か。まあいいでしょ。
改めてこんばんは。君たちには――今から俺と殺し合いをしてもらいます」
薄笑いを浮かべて、バリントンが二本の剣を構えた。
「いやあ、済まないね。『仕事』の前に何人か斬っておかないとどうも落ち着かないんだ。我ながら難儀な性分だと思うけど、申し訳ない。
でもまあ、ほっといても誰かに殺されて死ぬから、別にいいよね?」
極めて物騒で自分勝手なことを述べつつ、二本の剣を中段に構えて無造作に部屋の中央に歩み入る。
山賊たちが一斉に斬りかかった。
だがその動きはバラバラで、統率の取れたものではない。
一歩右に踏み出す。
それだけで、バリントンから見て左から三人までの剣が届かなくなる。
三人が後一歩踏み出して間合いに入るまでの数秒で、右端の二人を斬った。
残る三人もあっさり斬り伏せる。
一度に一人。同時に三人以上に攻撃される位置には決して身を置かない。
一対一から次の一対一に素早く移る。右手の剣を振り、続けて左手の剣を振る。
剣を腕の力だけで振るのではなく、あくまでも腰を入れた振りを連続して、一分の隙もなくやってのけているだけ。
窮め尽くした剣理と合理性のみが成し得る技。
残り三人。
二人が斬られるのと、最後の一人が身を翻して後ろのドアに駆け込むのが同時。
「やれやれ、殺し合おうって言ったじゃない。おじさんもう少しやる気を出して欲しいなあ」
裏口も、人が通れる程の窓もないことは確かめてある。
悠然とその後を追うバリントンであったが――
「ありゃ」
「ぶ、武器を捨てろ! さもないとこの女を殺すぞ!」
山賊がベッドの上で裸の女の喉にナイフを突きつけていた。
恐らくは隊商を襲ってさらったのだろう。
「そういや、依頼書にそんなことも書いてあったっけなあ」
バリントンが溜息をつく。
「聞いてんのか! わかったら武器を捨てろ!」
「やだよ、俺が殺されちゃうじゃない」
「 」
「 」
あっけらかんと答えたバリントンに、山賊の男と人質の女が双方絶句した。