毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「バリントンさん、ですか? 僕たちのことをどこで?」
ヒョウエが用心しいしい口を開く。
顔は営業スマイル。
対して貧乏くさい笑顔のバリントン。
本人は屈託ない笑顔を浮かべているつもりだろうが。
「いやいや、そりゃ有名じゃないの。少なくとも六虎亭にいたら毎日名前は聞くよ?
空を飛び回って毎日五つも六つも依頼をこなす冒険者、ってだけで十分話題になる要素満載じゃない。おまけにタイプの違う美少女揃いときた」
「僕は男ですが?」
「見てる分には気にならないでしょ? 女の子と思えば頭の中では女の子なんだって」
「あのですねえ・・・」
普段なら腹を立てるところであるが、ここまできっぱり言われるとヒョウエとしても苦笑するしかない。
「それにまあ、
ちょっと変わってるけど悪くないよ」
「えっ」
思わず声を上げたのはモリィ。
ヒョウエの目がキラリと光った。
「ほほう。そう思いますか」
「思う思う。
「ですよね!」
我が意を得たりと勢いよく頷くヒョウエ。
一方後ろのモリィは愕然とした顔になっている。
(ンな馬鹿な・・・あのオッサン嘘ついてねえ)
(えっ)
(えぇ・・・)
小声で囁きかわす少女たち。
リアスはモリィほどではないが驚いた顔。
カスミは呆れ顔だ。
(いるんだなあ、あいつみたいな頭のネジが外れたセンスの持ち主が)
(い、いえそのモリィさん? それは流石に言いすぎではないでしょうか)
(リアス様。自分でも信じてないことで他人を説き伏せることはできませんよ)
「いやあ、こんなところで賛同者に会えるとは思いませんでした!
理解してくれる人が本当に少なくて・・・」
「わかるわかる。ハイセンスなネーミングって中々理解されないものなのよねほんと」
そんな三人を置きざりにして、ヒョウエとバリントンは変な方向に盛上がっていた。
「んじゃまあ、この辺で。最近は六虎亭に顔を出してるんで、また会うこともあるかも知れないね」
「その時は食事でもご一緒にどうです」
「ははは、そうだね、縁があったら」
しばしの歓談?の後。
後ろ手に手を振って、バリントンは去っていった。
にこやかに手を振って見送るヒョウエ。
げんなりした顔の三人娘。
しばし手を振り続け、バリントンの姿が雑踏に消えたあたりでヒョウエが振り向いた。
表情は普段のものに戻っている。
「で、どう見ました?」
「驚いたよ。あのオッサン最初から最後まで嘘をついてなかった。
まさかお前みたいな頭の沸いたセンスの持ち主が他にもいるとはな」
「そこじゃないですよ!」
溜息をつくモリィ。
珍しく、ヒョウエのほうが突っ込んだ。
「どこだよ?」
「いやその・・・何と言うか、はっきりとは言えませんけど、何か怪しくなかったですか?」
「うーん・・・?」
考え込む三人娘。
最初に顔を上げたのはリアスだった。
「そう言えば一見してみすぼらしい感じではありましたが、青等級にしてはかなり腕が立つように見受けました。ただその、強いのか強くないのかフワフワした感じで・・・申し訳ありません、はっきりしませんわ」
「私は不自然なところは感じませんでした。不自然なところがなさ過ぎる、と言えなくもないですが・・・」
「モリィはどうです?」
ちらり、と目をやる。
うーん、と唸って黒髪の少女は首を振った。
「あたしはそう言うのは感じなかったなあ。逆にお前はどの辺が変だと思ったんだ?」
「鎧です」
「普通の
と、リアス。
「大まかなところはね。ただ、こそげ落としたりしてはいますが、あれは魔法のものです。それも真なる魔法文明時代の遺物でしょう」
「へえ?」
興味をそそられたのか、モリィが眉毛をぴくりと動かした。
「けどよ、それがどうかしたのか? 魔法の鎧なんて多くはないだろうけどそれなりにはあるだろう?」
「ただの防御強化の鎧ならそれは珍しくもないですけど、魔力経絡線の配置を見ると、間違いなく何か
「私の"白の甲冑"のような何かだと?」
「同種の、それもかなり強力な物ではあると思います。ただ、肉体強化の魔力ではないかなと」
モリィが頭をひねる。
「うーん・・・? あいつの鎧が凄いのはわかったけど、それがどう怪しいって話になるんだ? あいつがしょぼくれてるところか?」
「ですから」
ヒョウエがいったん言葉を切る。
「強力な
そう言う人間が青等級に甘んじているのっておかしくないですか?」
「・・・それは・・・」
「確かにそうですわね」
リアスが頷いた。
カスミが考えながら言葉を紡ぐ。
「確かに。みすぼらしい格好も、軽薄な言動も、自分の力を隠す意図があるとも考えられますね。
裏があるとは断言できませんが、疑念を抱くだけの理由ではあります」
忍びの少女がヒョウエを見上げる。
「あの鎧は、意図的に普通のものに見える様に細工をしてあるのですね?」
「だと思います。装甲を強化したりするための細工じゃありません」
「では決まりですね。黒と決まったわけではありませんが、警戒対象とすべきでしょう」
残りの三人が頷く。
「こんな状況ですしね。用心に越したことはありません」
「ああ。何よりコイツと趣味が合う変態だ。それだけでも疑ってしかるべきだろうぜ」
「そろそろ怒りますよ?」
半目で睨むヒョウエ。にひひ、とモリィが笑みをこぼした。
バリントンが市場に入る。
果物を扱う露店で、リンゴに似た緑色の果物を手に取った。
それに目をやる事もなく、店の主人が誰に話すともなく口を開いた。
「どうだ?」
「いやあ、勘が鋭いね。気付かれちゃったかもしれない。鎧じろじろ見てたしね」
「・・・だから直接接触するのは控えろと言ったんだ」
「まあ俺としては必要な事なんだよ。仕事はするからそれでいいだろ」
懐から銅貨を出して、指でピンと弾く。
銅貨が回転しながら吊り下げられたザルに飛び込み、チャリンと音を立てた。
そのまま身を翻す。
「毎度あり」
店の主人の声を背中に聞き、バリントンは果物にかじりついた。