毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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04-23 ヘウレーカ!

「暇だなあ」

「暇ですわね」

「暇でございますね・・・」

 

 王宮の一室。

 書庫にほど近いそこで、三人娘は髀肉の嘆をかこっていた。

 すっかりぬるくなった香草茶をすすり、モリィが溜息をつく。

 

「こればかりは手伝えねえからなあ・・・」

「お一人にするわけには参りませんから付いては来ましたが・・・」

「学問の心得はございませんしね・・・」

 

 この世界、オリジナル冒険者族の尽力によって読み書きそろばんはそれなりに普及していたが、それでも小学校や中学校といった近代的な教育機関はない。

 しいて言うならカスミが現代日本の小学校卒業くらいの教育(それにしても、この世界ではインテリの部類である)を受けてはいたが、ヒョウエの手伝いをできるレベルには到底達していない。

 モリィも幼い頃に家が破産しているために、かろうじて読み書きそろばんができるレベルだ。

 肉体労働や手仕事の合間をぬってそれらを教えてくれた両親を思って、ふと斜め前に座る金髪の少女に目をやる。

 

「そういやあリアス、お前ならあたしらよりよっぽど勉強してるだろ? 手伝いくらいはできんじゃないのか?」

 

 びくっ、とリアスが身をふるわせた。 

 

「い、いえそのそれは・・・」

「あん?」

 

 いかにも不審げな様子に、モリィが眉をひそめる。

 

「・・・もしかして、お前意外と頭悪い?」

「失礼ですわね! わたしはその・・・ちょっと本を読んだり計算したりするのが苦手ですけど・・・」

「お嬢様、それでは認めてるようなものですよ」

「カスミ!?」

 

 悲鳴のようなリアスの叫びが響いた。

 

「・・・」

 

 カスミが痛ましそうに首を振る。

 

「カスミ! 何ですかその反応は!」

「だからコースト様もわたくしも、口を酸っぱくして申し上げていたではありませんか。

 武芸だけではなく、学問にももっと励みますようにと。

 その結果が今の状況です。猛省なされませ」

 

 ぐうの音も出ない正論で真っ向上段に斬り伏せられ、リアスがうめく。

 

「うう、カスミの裏切りものぉ・・・」

「・・・」

 

 カスミの目にスッと青みがさした。

 

「あっ」

「あっ」

「結構。まだご理解頂けてないようですね。それでは、僭越ながら一からご説明いたしましょう」

「あ、あのその・・・」

「もはや問答無用でございます、お嬢様」

 

 蛇に射すくめられるカエルの如く、身を縮こまらせるリアス。そんな彼女から、モリィがそっと距離をとる。

 それからしばらく、静かな室内にカスミのお説教が響いた。

 

 

 

「コナー先生! 見つけた! 見つけましたよ!」

 

 静かな王宮書庫にヒョウエの声が響く。

 長机のあちこちで本のページをめくっていた学者たちの視線が一斉に集中した。

 

 ヒョウエが読んでいた本を抱えて長机の中央に持って来る。

 学者たちがその周囲に群がった。

 王室付き学者の長でヒョウエの恩師でもある老人が差し出された書物を読み上げる。

 

「地脈を操り・・・大地の力を豊かにし・・・地震の被害を抑えしめん・・・おお、間違いありませんなヒョウエ様! まさか都市建設関係の書に記述があろうとは!」

「何となく引っかかったのでそのへんを当たってみてたんですが、ドンピシャですね。

 『一番太い地脈』に建設予定とありますから――」

 

 と、長机の中央に置いてあったディテク王国の地脈図を示す。

 

「このメットーの北から南西に流れる地脈の上のどこかにあるはずです」

 

 おお、と歓声が上がった。

 地脈とは大地のエネルギーの流れるラインで、レイライン、龍脈などとも言う。

 大地のエネルギーを操る施設であるから、件の遺跡はいずれかの地脈の上にあるだろうと考えられてはいたが、メットー周辺だけでも無数に分岐した地脈が無数に流れている。

 既に王室付きの地相術師(ジオマンサー)たちが捜索に当たってはいるが、いかんせん彼らの数は多くない。無数の候補の中から正解を見つけ出したことで、捜索は一気に進むはずだった。

 

「遺跡の探索記録を当たろう。探索済みで枯れた遺跡の中に未探査の部分があるかも知れない」

「地上部分が崩壊して地下に残ってたら厄介だな。王室お抱えの地相術師(ジオマンサー)だけじゃ足りん。収穫の女神(タリナ)山神(ボルドゥ)土の神(ガールヴ)の神殿にも協力を頼もう」

「この地脈、王都の北西にエルフの集落があったはずだ。使者を出して協力して貰えないだろうか」

 

 新しい発見に触れて行動を開始し、あるいは意見を交わす学者たち。

 地相術師(ジオマンサー)とは土の術師の中で特に大地の力の流れや構造に通じたものを指す。

 名前の上がった三つの神はそれぞれ農業、地質学、土の元素を司る神々(それらを研究していた真なる魔術師)だが、その神官たちは得意分野は異なっても等しく土の術を習得するため、地中の遺跡や地脈の異常を発見できる術者がいる可能性があった。

 それらを見てヒョウエが満足そうに頷く。

 

「いい感じですね。伯父上に中間報告に行って来ます。

 今出た意見も進言してきますよ」

「よろしくお願いします、ヒョウエ様」

 

 コナーが深々と頭を下げた。

 笑顔のままでヒョウエが再度頷く。書籍から手掛かりを発見できたのがよほど嬉しかったらしい。

 

「こんな時に何ですが、これが学究の喜びという奴ですね、先生」

「しかりですな。師として鼻が高うございますぞ」

「いやあ、風呂に入って、素っ裸で町に飛び出したい気分というのがわかります!」

「王族がはしたないとかそう言う以前に、下々のものの情緒に多大なダメージを与えますのでどうかご自制願いたく」

「わかってますよ、軽い冗談です」

 

 真顔になって注意する師匠と、けらけら笑う弟子。

 動じたところがないのは歳の功だろう。

 なお。

 

「あれが冗談?」

「まあ、ヒョウエ殿下もオリジナル冒険者族だしなあ・・・」

「オリジナルじゃしょうがないか・・・」

「正直見たい」

 

 などという会話もひそひそとかわされていた。

 冒険者族及びオリジナル冒険者族がどう見られているかの一端を示すものだろう。

 閑話休題(それはさておき)

 

 

 

「良くやったわヒョウエ! あなたって最高よ!」

「ちょっと、姉上・・・わぷっ」

 

 執務室で伯父に報告すると、その場にいたカレンに抱きすくめられた。

 ヒョウエより頭半分ほど背の高いカレン。それなりに豊かな胸元に頭を抱え込まれ、なで回される。肩を叩いてギブアップを表示するが、姉と言う名の暴君は意にも介さない。

 

「カレン、そのへんにしておけ。まじめな話だ」

「やれやれ」

 

 呆れ顔で注意するのはヒョウエの伯父にしてカレンの父親である国王マイア。

 同じく呆れ顔で嘆息するのは王国宰相ワイリー侯爵。

 不本意そうなカレンにようやく解放されたヒョウエが、文字通り一息ついた。

 

「大体ヒョウエももう16だ。大人の男だぞ。子供の頃のような気分でかわいがるな。

 お前だってもう淑女だろう。はしたないぞ」

「あら、お父様。だってこんなに可愛い弟なんですもの。とても大人の男だなんて考えられませんわ」

「それは僕に喧嘩を売ってるって事でいいんですね、姉上?」

 

 ジト目で睨んでくる弟を、扇で口元を隠して笑い目でカレンが見下ろす。

 

「それに将来夫にするなら別に問題ないのではなくて?」

「ちょっと、姉上!?」

 

 悲鳴のような声が上がる。無論暴君はそんな声には耳もくれない。

 一方でマイアは興味を引かれた顔になる。

 

「ほほう。そう言う事なのか? だがカーラが泣いてしまうな」

「私たち二人でヒョウエと結婚すればいいんですわ。幸い今特定の相手はいないようですし」

「ふむ、一考に値するな」

「伯父上! 姉上!」

 

 かなり強めに二人を睨むヒョウエ。

 睨まれた二人はそっくり同じ、人の悪い笑みを浮かべている。

 

「やれやれ、国王の執務室は三文喜劇(ファルス)を演じる貧乏舞台ではないのですがな」

 

 この国を統治する人々によるコントを繰り返し見せつけられている老宰相が深く溜息をついた。 

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