毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「・・・でまあ、遺跡の場所の手掛かりもそうなんですが、エルフの集落や各神殿への協力要請も・・・あ、後ですね、軍による救助活動の準備は進んでいますか?」
「ああ。ジョエリーがその件でずっと司令部に詰めっぱなしだ。アレックスも王都外の野営地でそれを指揮している」
「レクス兄が、ですか」
「ああ」
無言で視線を交わす。
これは保険だ。万が一王城が崩壊してマイア達が死んでも、野外にいれば王太子であるアレックスは生き延びるだろう。そのための用心だ。
「ま、レクス兄が頑張っているなら僕も頑張らないといけませんね。姉上もそれなりに頑張ってるようですし」
「それなりとはひどいわね」
姉の抗議を仕返しとばかりに聞き流して伯父に向き直る。
「では早速頑張るとしますか。失礼致します、陛下」
「あら、どこ行くのよ?」
「野暮用ですよ」
言いつつ、庭に通じる扉を開けて退出する。
「!?」
次の瞬間、ヒョウエの姿は消えていた。
青い鎧がメットーの空を舞う。
だが今回は災害や犯罪を察知したためではない。
地脈を辿るためだ。
ヒョウエの青い鎧は限界まで圧縮された超高密度の
核となるのは念動の術式であるが、"
たとえば魔力感知能力だ。
地脈は大地の生命力の流れ、つまり巨大な魔力の流れでもある。
件の遺跡はどのような方法によってか、地脈に干渉しているのは間違いない。
地脈の流れに異常があるなら、極限まで強化された今の魔力感知能力に引っかかるかも知れないとの考えであった。
(・・・とはいえどうかなこれ)
以前述べたように、呪文ではない魔力感知はかなり大雑把な能力だ。
あるかないか、魔力の元がどこか、その程度は判断できても細かい流れを精密に読み取るのは難しい。
オーラ感知の呪文も併用してはいるが、どこまで読み取れるか正直自信はない。
(まあ本を相手にするより、今はこっちの方が役に立つでしょう)
モリィ達には既にリーザを介して屋敷に戻るように伝えてある。
ヒョウエがいなくても、伯爵であるリアスがいれば出入りは問題ない。
比較的ゆっくり――鳥と同じくらいの速度で――青い鎧が地脈にそって北に飛ぶ。
異常がないのか、あっても読み取れないのか、見た範囲では異常はなかった。
(・・・?)
ケープをひらめかせ、ゆっくりと飛び続ける。
何とはなしに違和感を感じて、首を動かさずに横を見る。
精神を集中させると、何者かの影が感じられた。
(むう)
そうそうないことである。
青い鎧はヒョウエの知覚能力、魔術的な感知能力も大幅に引き上げる。
にもかかわらず、自分の存在をある程度隠してのけるのはただ事ではなかった。
(・・・そう言えば)
空中にぴたりと止まって振り向く。
影が身じろぎし、動揺が感じられた気がした。
そのまま影はヒョウエの横を通り過ぎていく。
(ホバリングできない飛行手段・・・となるとやはり)
振り返って再び加速。
Uターンしようとしていた影の横にぴたりとつける。相手が息を呑む気配。
低めのバリトンの声色を作り呼びかける。
「率爾ながらお尋ねもうす。ズールーフの森のエルフの方であられるか?」
「・・・」
一瞬間が空いて、翼の差し渡しが5mに達する巨鳥が現れた。鷲に似ているが全体的に鮮やかな緑色で、尾羽は色鮮やかな虹の色。エルフが乗るという
背中には軽い革鎧を身につけ、槍と弓を持った人影。
青い切れ長の目に後ろで束ねた銀の髪。薄い褐色の肌に尖った耳の、人間で言えば18から20ほどの若い女性。エルフの戦士だ。
勝ち気そうな顔立ちには警戒の色を浮かべている。
「私はズールーフの森の《風の乗り手》セーナ。お前は何者だ? 何故私の存在に気付いた?」
「まず二番目の質問から答えさせて頂くが、身隠しと看破の術は単純に精度の勝負。
上回れば気づき、負ければ気付かぬだけのこと。
世に名高き"エルフの隠れマント"も僅かながらそれがしの知覚が勝っていたようだ」
得意げな響きが入らないよう、注意して言葉を紡ぐ。
「エルフの隠れマント」はマントと通称されているし、一般人は魔法の宝物の一種だと信じているが、実のところはエルフに伝わる術の一種だ。
透明化や意識をそらす術に似ているが、そう単純な物ではなさそうだとヒョウエは見てとっていた。
セーナが歯がみして、悔しそうにヒョウエを睨む。
「見破られたのはここが遮るもののない空で、私が術が苦手だからだ。森か、あるいは達者の術なら見破れはせん」
「やもしれぬな」
肩をすくめるヒョウエ。
どうやら結構な負けず嫌いであるらしい。
「で、最初の質問だが、"青き鎧"と呼ばれている。人族の護り手というところだ」
「・・・そうか、お前は"
「エルフの言葉でオリジナル冒険者族のことであったか。まあ秘密と言う事にして頂きたい」
ほとんど答えているようなものではあるが、ニュアンスは伝わったようだった。
セーナが頷く。
「"
「それは・・・」
少し考えたが、すぐにわかる事である。
説明してしまうことにした。
「少し前に大地が揺れたであろう。あれは真なる魔法の時代の遺跡を悪用した、人の手になるものだ」
「なんだと!?」
流石に驚きを見せるセーナ。
「それを引き起こしたものは、更に強い大地の揺れを引き起こすつもりとおぼしい。お主らの集落が存在するこの地脈のどこかにその遺跡があるらしい。
私はそれを捜していたのだ」
「むう・・・」
ヒョウエの言葉を咀嚼するように、セーナが腕を組んで唸る。
エルフの集落はほぼ例外なく、大きな地脈の上に作られる。
「地脈か大地の力を利用する遺跡らしいが、何か手掛かりはご存じないだろうか?
それといずれ人族の王から、お主らのところに使者が来るはず。その時は人間に協力するよう、偉い方にお口添え願えぬだろうか」
「むむむ」
腕組みをして天を仰いでいたセーナが、やがてヒョウエの方に向き直った。
「私の一存では決められない話だ。お前の話が本当という証拠もない。
だから――エルフの里に来て、直接話をしてくれないか」
「・・・!」
さすがのヒョウエが息を呑んだ。