毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
王宮でマイアと謁見して少し後、ヒョウエと三人娘、セーナはメットー周辺の空を飛んでいた。
地脈上の未発見の遺跡は軍に護衛された
先だっての提案の通り、大地に関わる神々の神官、また数は少ないが民間のフリーの術師までも駆りだした総動員体制だ。
そのため神官でない術師の大半は公的機関か神殿の作るその手の組織(農協や建築ギルドに相当する)に所属していた。
一方でヒョウエ達に下された使命は、既に発見された遺跡の再調査。
強力な《目の加護》を持つモリィ、専門ではないが地脈の相をある程度感じられるセーナ、点在する遺跡を素早く飛び回り、
セーナを引き合わせた時の三人娘やサナ達の反応も、概ね好意的なものだった。
「腕利きの狩人だな」
「戦士としても中々のものとお見受けします」
「私どものものとはやや違いますが、きちんと作法を身につけた物腰のお方ですね」
それぞれモリィ、リアス、カスミのセーナに対する第一印象である。カスミはどことなくリアスと同類っぽいとも思ったが、もちろん口には出さない。
「この面々なら探索も手早く済むでしょう。王国とエルフの森の一大事です。
ちゃっちゃと片付けますよ!」
「おう!」
ヒョウエの檄に、四人が意気高く頷いた。
二日後の昼下がり。
メットーの南西百数十km、海岸沿いにある遺跡から五人が出て来た。
いずれの顔も疲労の色が濃い。
飛行。到達。探索。空振り。
飛行。到達。探索。空振り。
飛行。到達。探索。空振り。
飛行。到達。探索。空振り。
飛行。到達。探索。空振り・・・
いつもにも増したハードスケジュールで丸二日を探索に費やしたものの、古代の魔法装置もメットーを壊滅させようと企む悪の秘密結社も見つからなかった。
いくつかの遺跡で未到達区域は見つけたものの、いずれも人の出入りした痕跡は全くないし、地震を起こせるような魔法装置もその痕跡もなかった。
「クワックワックワッ!」
入り口で待っていた孔雀鷲が嬉しそうな鳴き声を上げ、セーナが首を撫でてやる。
それをちらりと眺めながらモリィがうなり声を上げた。
「結局全部外れか。どうすんだ、未発見の遺跡でコソコソやられてたら手の打ちようがねーぞ」
「地脈の緊張からして、もう今日明日に迫っているようですが、どうしようもありませんね。上が新しい手掛かりを掴んでるかもしれませんし、まずは報告して・・・」
「クワーッ!?」
「?」
切羽詰まった孔雀鷲の鳴き声。
四人が驚いて振り向くと、セーナが棒立ちになっていた。
天を仰ぐその目は虚ろで、正気とは思えない。
次の瞬間、何かがヒョウエたちに吹きつけた。
「ぐっ」
「うおっ・・・」
「これは」
「何? 何ですの!?」
ヒョウエが歯を食いしばり、モリィが目を押さえる。カスミの頬を一筋、汗が伝う。
魔力感知能力を持たないリアスですら、異様な雰囲気に畏怖を覚えていた。
「≠仝・・・*∴‡・・・」
セーナの喉から洩れる、声とは思われない音。
全身から放射される高次元の、高密度の、余りにも強大で神秘的な魔力。
恐らくは神と呼ばれる存在の。
「#%’$&%・・・A・・・Ah・・・Oh・・・おお、大いなる流れ、枯れたり・・・」
「!」
ヒョウエが目を見開く。
その間にもセーナの声帯は声を発することをやめない。
「大いなる流れ枯れたり・・・かつてありたる流れの上に都は築かれ・・・大地の社もまた築かれん・・・彼方の島・・・心せよ、いとまはない・・・」
ふっ、と放射される魔力が消えた。
それとともにセーナの目に光が戻る。
ふらついたセーナを、慌てて駆け寄ったヒョウエが腰に右手を回して支えた。
ヒョウエは150cm、セーナは170ほどあるので、自然と肩を貸すような形になる。
「セーナ! 大丈夫ですか!」
「う・・・あ・・・ヒョウエか。何があった?」
セーナが意識をはっきりさせるように頭を振り、額に手を当てる。
額にはいつの間にか玉のような汗が浮かんでいた。
「
「そうか・・・また起きたか」
「あれは一体?」
ヒョウエと、呆然と自分を見つめる三人娘の顔を見る。
ひどく真剣な顔でセーナが言った。
「私の《加護》が何か話していなかったな。私の加護は《精霊の加護》・・・精霊神アウレリエンの加護だ」
「!!!」
精霊と呼ばれる世界の霊的なエネルギーの循環を司る神であり、最初の妖精族であるエルフを生みだした神、そして妖精族全体の守護神でもある。
その神の直接的な、文字通りの加護をセーナは受けているのだという。
「ではあの声は・・・」
「ああ、
「高次情報生命体である神の発する情報を、あなたが受け止めて、言わば翻訳しているわけですね。僕たち人間にもわかるように」
「うむ、そんな感じだと思う。昔一度だけ託宣を受けたことがあるが、その時は森の木々に根腐れの病が流行した。託宣がなければズールーフの森の木の三割は枯れていたかも知れない・・・っつう・・・」
再び額に手を当て、苦しそうにセーナがうつむく。
「大丈夫ですか?」
「すまない。前の時もそうだった。前は三日三晩寝込んだからまだマシだな・・・」
「高密度の情報を、エルフとは言え人間の脳を介して無理矢理翻訳してるんですから、そりゃ負担もかかるでしょうね・・・ちょっと失礼」
「? お、おお・・・」
杖を持つ手でセーナの腰を支えたまま、こめかみに左手の指を当てる。
指先に治癒の光が灯り、目に見えてセーナの表情が和らいだ。
「セーナのそれは負傷ではありませんけど、脳の酷使によるものですからね。生命エネルギーを直接送り込めば多少マシになると思いましたが、うまくいったようで何よりです」
「ああ、助かる。こう、すーっと効いてくるな・・・」
目を閉じ、リラックスした表情でセーナがヒョウエにもたれかかる。
腰に力を入れて、肩を貸す姿勢でヒョウエがそれを支える。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
しばらく二人はそのままの姿勢で立っていた。
「・・・ん?」
やがて、というかようやく、と言うべきか。ヒョウエが三人娘の視線に気付いた。
「あの、みなさん? なんでそんな剣呑な表情をしていらっしゃるので?」
「べーつーにー」
「セーナさん? もうかなり回復されているようですし、ご自分で立つべきではないでしょうか?」
「うら若き女性の腰に長いこと手を回されているのはどうかと思いますヒョウエ様」
「「・・・」」
ヒョウエとセーナが顔を見合わせる。
次の瞬間、ぱっと二人は身を離した。二人とも顔がちょっと赤い。
「ああいやすいません、僕が気がついてしかるべきでした」
「いや、悪いのは私の方だ。その、余りにも気持ちいいものだから・・・」
三人娘の視線が更に剣呑になる。
少し顔を引きつらせながらセーナがかがんだ。
「その、まだ頭が痛むのでもう少し・・・その、体が触れあわない程度に!」
「そうですね、体が触れあわない程度に!」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
無言のプレッシャーを受けつつ、ヒョウエの治療はそれから十分ほど続いた。