毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「『大いなる流れ枯れたり』『かつてありたる流れの上に都は築かれ』『大地の社もまた築かれん』『彼方の島』・・・
これはたぶんかつて存在した大きな地脈があって、その上にメットーと件の遺跡が建造された。恐らく遺跡は沖の島のどこかにある。そう言う事だと思います」
治療を続けながらヒョウエが推測を語る。
四人が頷いた。
「それで、あたしらはどうするんだ?」
「王宮に戻ります。サナ姉に伝言を頼む事も考えましたが、ここからなら大して違いは無いでしょう。どっちにしろ古い地脈図がないと・・・そうだ、セーナ!」
「な、なんだ?」
いきなり話を振られてエルフの娘が動揺する。その頬がまだ僅かに赤い。
「ひょっとして、そちらの王宮の書庫に真なる魔法の時代の古い地脈図が残っていたりしませんか?」
「・・・! そうだな、確かにあるかも知れない。サーワならすぐに見つけ出してくれるはずだ」
勢いよくセーナが頷いた。額にヒョウエの指が当たったままなので今一つ締まらないが。
「よし。今リーザにお願いしてサナ姉に伝言を頼みました。サナ姉なら王宮まで十分くらいでいけるでしょう。治療が終わったらすぐに・・・」
「いや、もう大丈夫だ。礼を言う。それよりも早く森に向かおう。私でもこの周辺の大地が緊張を孕んでいるのがわかる。託宣でも時間は無いと言っていたのだろう?」
セーナがヒョウエの手を優しく脇にどける。
一瞬迷ってヒョウエが頷いた。
ヒョウエたちが飛ぶ。
「うお、おおおおおおおおお!?」
悲鳴と驚愕と歓声の混じった声をセーナが上げる。
モリィ、リアス、カスミが、程度の差はあれ同類を認める笑みを浮かべた。
矢の速度で飛ぶヒョウエの杖。今はセーナもその最後尾にまたがっている。
ヒョウエの杖の速度は全力を出せばほとんど亜音速に達する。孔雀鷲の約五倍だ。到底追いつけないと言うことで、五人が杖で先行する事にしたのだ。
後方を飛ぶセーナの孔雀鷲の姿が、あっという間に豆粒ほどに小さくなる。
「クエーッ・・・」
凄まじい速度差で置き去りにされた孔雀鷲がさびしげに鳴いた。
「もう少し右の方・・・そう、その方角だ」
「あの森の中の開けたところか? ならごく僅かに左だな」
「・・・この距離で見えるのか? 私でもそこまではわからないぞ」
「へへ、まあ目だけはな」
振り向いて得意げにニヤリと笑うモリィ。セーナは素直に感嘆の面持ちだ。
前を向いて杖を飛ばしながら口元をゆるめるヒョウエ。
ほどなく、杖はエルフの森の孔雀鷲の発着場に降下していった。
「そうそう、この三人と屋敷にいた二人は僕が青い鎧だって事を知ってますので」
「え、お前バラしちまったのかよ!?」
「セーナと会ったのが青い鎧着たままでしてね・・・族長さんに一目で正体を見抜かれてしまいましたし、まあ隠してもしょうがないかなと」
静かな瞳の老エルフを思い出し、ヒョウエが僅かに遠い瞳になる。
「・・・」
「・・・?」
むっつりと、モリィが不機嫌そうな顔になる。
雰囲気の変化を察し、ヒョウエが怪訝な表情になった。
「なんです、モリィ」
「べーつーにー。なんでもねーよ。下見てちゃんと降りろ」
「だったら拳で頭をグリグリやらないでくれますかね・・・」
「?」
じゃれあうヒョウエとモリィにセーナが首をかしげ、リアスとカスミが溜息をついた。
「うおっ・・・」
「これは・・・」
「うわぁ・・・」
エルフの集落と大樹の王宮に言葉をなくすモリィとリアス。目を輝かせるカスミ。
その様子を微笑ましく眺めながら、セーナは一行を玉座の間に案内する。
トゥラーナはナタラやサーワ達とともに善後策を練っているところだった。
最初にナタラが気付き、他のエルフもこちらを向く。
「む・・・どうしたセーナ。その者達は?」
「ヒョウエの"
お爺様、お父様。
「!」
広間に沈黙が落ちた。
トゥラーナが口を開き、問いかける。
「それで、
「『大いなる流れ枯れたり かつてありたる流れの上に都は築かれ 大地の社もまた築かれん 彼方の島 心せよ、いとまはない』・・・でよかったな?」
ヒョウエが頷くのを見て視線を正面に戻す。
これまで常に泰然としていたトゥラーナの顔に、初めて苦悩の表情が浮かんだ。
「やはり"
「はい。ヒョウエはかつて存在した枯れた地脈の上に人間たちの都と件の遺跡が作られたのではないかと」
「なるほど。人間たちには伝えたのか?」
「ヒョウエが伝言したそうです。それで場所を特定するために古い地脈図が必要なのでサーワに捜して欲しいのですが」
「サーワ」
族長の言葉に女官が頷き、足早に玉座のそばを離れる。
厳しい表情。
「急ぎましょう、皆様方。もはや一刻の猶予もないようです」
無言で頷き、ヒョウエたちはサーワの後を追って謁見の間を退出した。
「~~~」
書庫の入り口。本棚に手をついてサーワが呪文を口ずさむ。
僅かな時間目を閉じていたかと思うと、すぐに身を翻して歩き始めた。
セーナとヒョウエがその後を追い、モリィ達も戸惑いながらもそれに続く。
「おい何だ今の? 魔法か?」
「本を捜す妖精魔法だそうです。写しを作る魔法もありますよ」
「はー」
そんな会話を挟みつつ、奥に進んでいく。
最も奥、木とも金属ともつかない、ノブも取っ手もない扉にサーワが触れる。
カチリと音がして扉がひとりでに開いた。
「皆様はここでお待ち下さい、すぐに戻ります」
返事を待たず、サーワはそのまま奥に入っていった。
奥から洩れてくる「なにか」に、ヒョウエとモリィ、セーナが顔をしかめる。
「ここは・・・ただの閉架書庫ではないようですが。禁書庫のようなものでしょうか?」
「・・・お前は本当に鋭いな。私も詳しくは知らない。ただ、この中は危険な知識が収められていると聞いている」
「ですか」
眉を寄せて頷く。
そこにサーワが戻ってきた。
「これです。今写しを・・・」
「どうぞ。二枚お願いします」
手際よく取りだしておいた紙を渡すヒョウエ。
サーワは頷き、紙を受け取ると振り向いて扉を閉める。
重い音を立てて、禁じられた書庫の扉が再び閉ざされた。
サーワから写しを受け取ると、ヒョウエたちは王宮から飛び出した。
通り抜ける時間も惜しいとばかりに、杖にまたがって孔雀鷲の広場までを飛び抜ける。
何人かのエルフ達が腰を抜かしていた。
「悪いことしちゃいましたかね!」
「危急の際です、やむを得ませんでしょう。しかし王宮から直接飛び上がるのはいけなかったのですか?」
リアスの疑問にセーナが答える。
「王宮周辺は――この集落もそうだが、結界に包まれて一種の異世界になっている。
上に飛び上がっても果てしない空を飛び続けるだけで、決して森の外には抜けられないそうだ」
「うへえ、そりゃゾッとしねえな」
モリィが顔をしかめるとともに杖は集落を抜け、広場から上空に――現実世界の空に飛び上がった。