毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
飛行しながら、地図の写しを確かめる。
全力飛行の時は周囲に念動障壁を張るので風を気にする必要は無い。
「この都を通る地脈がそれだとすると、その主流の上にある離島はこのあたり、その中で遺跡があるのはこの島です。恐らくはここが本命!」
「ですがヒョウエ様、それでは私どもは直接そちらに向かった方が良かったのでは?」
「難しい所ですが、エルフの孔雀鷲でも王宮までは多分三十分近くかかります。僕なら数分のロスで済みますからそっちの方が効率的でしょう。
時間はかかりますが伯父上の方からも人をよこしてもらえるでしょうし」
「なるほど」
言葉通り、杖は数分で王都の上空に達した。今度は前庭に降りる手間すらかけず、執務室の前のこじんまりした中庭に降りて、直接執務室の中に入る。
中にいたマイアと、でっぷりした老人の大臣がぎょっとした顔になった。
「伯父上、時間が無いので失礼します!」
「ヒョウエ!? ええい、驚かせるな! それで、地図は見つかったか」
「このとおり」
手にした写しの一枚を執務机の上に置く。
「この王都を通る地脈がそれと思われますので、遺跡の位置を記した古地図と照らし合わせますと、恐らくはここ、モンソン島だと思われます」
「良くやった!」
マイアが破顔一笑し、机を叩く。ペンを取って写しのモンソン島に×印をつけると、鈴を鳴らして召使いを呼ぶ。
「これをカレンの所に持っていけ! 大至急だ!」
「はっ!」
緊張した面持ちで召使いが駆け出す。
「姉上のところですか? 父上のところではなく?」
「王宮にはお前の知らぬ事も沢山あるのだ、ヒョウエ」
マイアがにっ、と歯を見せて笑う。
「ふむ」
「そうだ、これを持っていけ」
マイアが引き出しから取りだしたのは、2センチほどの小さな白い球。
手に取ってしげしげと眺める。
「これは・・・"
「そうだ。これを目印に後続が続く」
"
その名を冠したこの魔道具は、対となる表示器に対して常に位置情報を送信する。現代地球における発信器のようなものだ。
「カレンから預かっていたのだ。来たら渡しておいてくれとな」
頷いて、ヒョウエがきびすを返す。
「それでは僕たちは先にモンソン島に向かいます。"青い鎧"以外で僕より早く移動できる人はいないでしょう」
「次は表のドアから入ってこいよ?」
「急ぎでなければね」
「次は」――つまり無事で戻ってこいと言う、からかいめいたマイアの激励に、ヒョウエは笑って答えた。
杖が飛ぶ。向かう先は南の離島、モンソン。
先だっての地震の際、ヒョウエが津波を確認した場所より更に南の孤島だ。
カスミが首をかしげた。
「大地の力を操って豊かにするための魔法装置なのに、どうしてこんな海の上に作ったのでしょう?」
「多分ですが・・・今回のようなことを避けるためじゃないでしょうか。
今回は意図して地震を起こしていますが、何らかの事故や暴走でそうした事が起きるのを避ける為に、あるいは起きたときに被害を抑えるために離れた場所に作ったのかも。
地脈を介せば大地の力を遠隔で操作することは可能ですしね」
ううむ、とセーナが唸る。
「これだけ離れた場所から大地を操るか・・・真なる魔法の時代の遺産とは恐るべきものだな・・・」
「神になった人たちが作り上げた文明ですからね。
それを個人技に終わらせず、学問として確立したのは本当に凄いと思いますよ。
まあ、受け継ぐ人が絶えた訳ですから完全に確立できたわけではなかったんでしょうけど・・・」
説明を聞いたセーナが溜息をついた。
「神話の時代、魔法の時代、人の時代と、妖精族を含めた我ら『ヒト』の能力はどんどんと衰えてきているようだからな。やむを得ないことではあるのだろう」
「エルフもなのですか、セーナさん?」
「ああ。魔法能力もそうだが、寿命もな。かつては数千年を生きる種族だったと我らの伝承にはあるが、今は千年を生きるものもまず見なくなっている。
ズールーフの森で最も年長の一人がお爺様だが、それでも800才余りに過ぎない。
あと数千年もすれば、エルフも人間と大差ない寿命になるか・・・もしくは人族に戻ってしまうのだろうな」
「人に戻る? どういうことですの?」
リアスの疑問に答えたのはヒョウエだった。
「妖精族というのは元々人族です。それは知っていますね?」
「ああ」
「えっ、そうなんですの!?」
頷いたのはモリィ。驚きの声を上げたのはリアス。
「お嬢様」
「う"っ」
後ろから冷たい視線を感じてリアスが縮こまった。
触れない方が良さそうだと判断して、話を続ける。
「そもそもはくだんの
「我らの伝承では、人族であった祖先が『
セーナの補足に頷いて先を続ける。
「エルフはあらゆる点で優れた能力を持ちましたが、その反面繁殖力や種としての活力に欠けた種族となってしまったと言われます。
人間に大きな力を注ぎすぎた反動だとも言われますが実際のところはわかりません。
それを鑑みたのか他の神々が作ったドワーフやピクシーは、能力を限定したり抑えたりすることによって種としての活力を維持しつつ必要とされる能力を得たと言う事です」
「話が見えねえな。それが魔法の力の低下とどう関係してくるんだ?」
やや腑に落ちない顔のモリィ。
「精霊の力と言いますけど、本来はあらゆる生物に宿っているんですよ。もちろん人間にも。で、それが薄くなっているのが魔法の力の低下の原因ではないかと」
「・・・それは、ひょっとして大変まずいことなのではないでしょうか?」
僅かに汗をかいたカスミの疑問に、ヒョウエが笑って答えてやる。
「どうでしょうね。この世界に命が増えすぎたので、一人ずつの力が弱まってるだけかも知れませんよ。どちらにしろ、僕たちの生きている間は――セーナの生きている間にも多分関係ない話です」
「だといいがな」
セーナが苦笑いを浮かべた。
そんな話をしている間にモンソン島が見えてくる。直径1kmほど、海から岩が突き出しているような島だが、いくらかは砂浜もあり、植物も多い。
その中からそれを最初に発見したのはやはりモリィだった。
「山の中・・・道の残骸らしいものが見えるぜ。あれじゃねえか、遺跡ってのは。
岩山の間の入り江に船・・・待て! 入り江の反対側の砂浜・・・何か引きずったみたいな跡がある!」
「! その跡の方に降りますよ」
「了解だ」
島の向かって左側、砂浜があるあたりに着地する。
引き上げたボートは簡単なカモフラージュが施されていたが、モリィとセーナによってすぐに見つかった。
ほとんど痕跡の残ってない砂浜を見てカスミが唸る。
「よくおわかりになりましたね、これが船を引きずった跡だと」
「足跡とボートを引きずった跡を葉っぱで消したんだろうが、それはそれで結構不自然な跡が残るもんなのさ。言ったろ、あたしの目は特別なんだ」
「つくづく反則でございますね・・・」
呆れはするが、それ以上に気にかかることがあった。
「しかしここに船があると言うことは」
「彼らの不意を打とうとする何者かがいるということですわね、カスミ?」
「恐らくはそうであろうかと存じます」
モリィがちらりとヒョウエを見た。
「どうする? 足跡もたどれるが・・・」
「そうですね・・・いえ、遺跡を優先しましょう。彼らの敵と言うなら、恐らく僕たちの敵ではないでしょう――少なくともこの件の間は。
カスミ、ここからは透明化の術を」
「かしこまりました」
「ほう。人族の隠れマントか。自分以外にもかけられるのだな」
セーナが興味を引かれた顔付きになり、カスミがはにかんだ顔になる。
「伝説のエルフの隠れマントに比べてどうかは存じませんが、短い時間であれば」
「まあ神授魔法も妖精魔法も一長一短ですよ。人間が使うなら神授魔法のほうが使いやすいという程度です」
「らしいな。本当に森の外は勉強になることばかりだ――本を読むよりよほどいい」
ヒョウエの言葉にセーナが頷き、一行は再び空に舞い上がる。
セーナの言葉の後半にリアスが目を輝かせていたのと、それを見たカスミの目が少し青くなっていたのは見なかったことにするヒョウエであった。