毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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04-31 遺跡

 透明化したヒョウエたちがモリィの指示で飛ぶ。

 岩山に刻まれたスロープの終着点、中腹にぽっかりと口を開けた開口部。

 人の身長の三倍ほどの入り口は扉で封じられていた形跡があるが、門扉は無惨に破壊されていた。

 

「すげえな。これ真なる魔法時代の遺跡だろう? 力づくでぶち破るのはほぼ無理だって聞いたぜ」

「魔法でしょうか・・・?」

「そうですね、リアスの白甲冑ならどうにか――この跡は"物体破壊(シャター)"の呪文や熱などで破壊した跡じゃありませんね。物理的に破壊したんでしょう。

 大型の筋力強化型具現術式(パワーローダー)か、何らかの遺物(アーティファクト)をどうにかして運び込んだかな? 火薬があればまだしもですが」

「"かやく"とはなんでしょうか?」

「向こうの世界に存在した魔道具みたいなものです。火をつけると凄い爆発をします。

 こっちの世界では未だに再現できていないようですが」

 

 こちらの世界に流れ着いて、火薬を再現しようとしたオリジナル冒険者族は多い。

 が、鉱物の組成が違うのかそれとも物理法則自体が異なるのか、未だに再現できたものはいない。

 

「まあその研究の副産物で"鱗粉花火(ハナビ)"とか"火球玉(ファイアーボール・スフィア)"なんてものが出来たのでそれ自体は無駄ではなかったんですが・・・」

 

 火薬を魔法的な処理や錬金術、稀少なモンスター素材などを使って再現しようとしたものがこれらのアイテムである。

 前者はほぼ打ち上げ花火、後者は直径10mほどの範囲で爆発する手投げ武器だ。

 

 ただし高度な職人芸や素材を必要とするため、価格は跳ね上がっている。

 "鱗粉花火(ハナビ)"は大型のものなら百万ダコック、日本円換算で一億ほどするし(なお日本では最大の四尺玉が250万円)、後者も数百万円はする(普通の手榴弾の価格はその一万分の一)。

 現代の花火祭の感覚でポンポン打ち上げたら、ディテク王国でも金欠で滅ぶだろう。

 

「"鱗粉花火(ハナビ)"がその"かやく"から生まれたものだったんですか!」

「王子や姫さんが生まれた時くらいしか見ないが、ありゃすげえよな・・・」

「ええ。地球でも、花火は火薬の最も素晴らしい使い道でしたよ」

 

 前の世界の事を少し懐かしんで、ヒョウエが微笑んだ。

 

 

 

 破壊された扉の中に入ると、そこはかなり広い空間だった。

 物資の搬入用か、大きな扉がそこかしこにある。

 

「ぬん」

 

 杖を床について念響探知(サイコキネティックロケーション)

 一瞬遅れてヒョウエが顔を盛大にしかめ、セーナが首をかしげる。

 

「どうしたのだ、ヒョウエ?」

「思っていたより大きいですよ、この施設。岩山の中、てっぺんから海面下までびっしりと部屋やら何やらが・・・人がいて巨大な魔力反応があるのは下の方なのでそこだと思いますが。モリィ、足跡わかりますか?」

「んー・・・まあ何とかだな。どこまで続いてるかはわからないけどよ」

 

 施設自体は真なる魔法の時代のすべすべした未知の材質で出来ているものの、外から吹き込む微細なほこりなどが床につもり、モリィの目でなら十分追える足跡があった。

 ただし、これが遺跡の奥までずっと続いているかどうかはわからない。

 

「大体の構造はわかっていますし、いけるところまでよろしくお願いします。

 途切れたらそれはそれで臨機応変に」

「つまり出たとこ任せだな」

「その通りですけど、もうちょっと言い方があるんじゃないですかね」

「事実だろ」

 

 微妙な顔をするヒョウエに、にひひとモリィが笑った。

 

 

 

「こっちだな」

 

 モリィを先頭に、横にリアス。二列目にヒョウエとカスミ。

 探索時のいつもの隊列だが、今は最後尾に弓を構えたセーナが続く。

 ヒョウエとモリィは、その弓と矢にまつわりつくぼんやりとした魔力を捉えていた。

 

「モリィさん? 先ほどからチョークで壁に何を?」

「後から王国の部隊が来るんだろう? 目印をな」

「チョークというのか、便利なものだな。私たちは布や石を並べたものを使うが」

「ある種の石を粉になるまで砕いて焼き固めたものです。これなら符丁がわからない人にも通じますからね」

 

 その様な事を話しつつ、施設の奥に進んでいく。

 途中魔法的施錠が施された扉や簡単なブービートラップがあったが、ヒョウエの解呪とモリィの盗賊技術によって難なく解除されていく。

 

 たどり着いたのは、少し広い空間だった。

 同じような湾曲した両開きのドアが等間隔でいくつも並んでおり、ドアとドアの間や上には奇妙な黒い板が取り付けられている。

 武装した男が四人、周囲にたむろっていた。術師も一人いる。

 

「・・・なんだありゃ?」

「モリィ、足跡はドアの中に?」

「ああ。どれにも続いてるな・・・真ん中のが一番多いか?」

「まあどれでも同じでしょう」

「ヒョウエ様、あの扉は一体? 別々の部屋に続いているにしては間隔が狭すぎますが・・・」

「なに、ただの昇降機(エレベーター)ですよ。まあ通行証(リボン)持ってるかも知れませんし、取りあえずあの番人たちは倒してしまいましょうか」

 

 ヒョウエが肩をすくめた。

 

 

 

 見張りに配された兵達は決して油断していなかった。

 数時間立ち続けるだけの単調な任務を直立不動でやり遂げるだけのプロ意識を持っていたし、厳しい訓練と実戦を重ねてどんな状況にも即応できるだけの練度を有していた。

 

流れる星よ(Ketu)

 

 だが、見えないところでこっそりと呟かれた呪文に気付かなかった事が、彼らの敗北を決定する。

 

「・・・?」

 

 見張りのリーダーがくらりと来て踏みとどまる。

 

「おい、おまえた・・・ち・・・」

 

 声をかけようとして、隣に立っていた術師が無言のまま倒れた。

 

「・・・! ・・・・・・!」

 

 声を上げて警戒を促そうとするが、頭が上手く働かない。

 腰につけた連絡用の魔道具を動作させることを思いつけない。

 

 どさり、どさり。

 

 それが更に二人倒れた音だと気付かないまま、リーダーもまた倒れて意識を手放した。

 

 

 

「よっしゃっ!」

 

 モリィがパチンと指を鳴らす。

 

「まだ動かないで下さいね。広間の空気を入れ換えますから」

「何をしたのだヒョウエ? 空気が濁ったぞ」

「それであってますよ。空気を濁らせたんです。洞窟の奥にガスが溜まるみたいにね。

 それを吸ったものだから、ああして気が遠くなって倒れてしまったわけです」

「恐ろしい術を持っているなお前・・・」

 

 セーナが冷や汗を流す。カスミも。

 

「屋外ならともかく、閉所でやられたら逃げようがございませんね・・・」

「だから中々使えないんですけどね。これは空気を変性させる術ですが、閉鎖空間でないと変性させてもすぐに散ってしまうんですよ。

 少し時間がかかる上、下手にやると味方も巻き込むというわけで」

 

 言いつつ、物質変性を象徴する『水銀』のルーンが刻まれた金属球を手元に戻す。

 魔力をカットされたルーン文字が色と光を失って、ただの金属球に戻った。

 

「・・・で。どうやって開けるんだこれ? 取っ手もノブもねえぞ。魔法の扉か?」

「まあ魔法と言えば魔法ですね。みなさんそこの黒いパネルには触らないように」

「言われたって触らねえよ。どこに罠があるかわからねえし」

 

 肩をすくめるモリィに、他の三人がうんうんと頷く。

 

「結構。さっきも言いましたがこれは昇降機(エレベーター)です。中に人を乗せる箱や板があってそれが魔法の力で上下に動き、階段を上り下りせずに階を上下できるんです。

 ただ、上のパネルを見て下さい」

「・・・明かりが付いてるな」

「どこの階に昇降機(エレベーター)があるか表示してるんです。これが動くと、下にいる連中に昇降機(エレベーター)を使ったことがばれます」

「それでは、どうするんですの?」

 

 リアスの疑問にヒョウエがにっこり笑って答えた。

 

「簡単です。昇降機(エレベーター)を使わずに降りればいいんですよ」

 

 

 

 見張りを拘束して傍の部屋に放り込み、扉を物質変性の術で溶接。念動でエレベーターのドアを無理矢理左右に開く。杖に乗った五人が中に入り、ドアを閉めた。

 

「あ、ちょっと待ってくれ。チョークで目印描いとかないと」

「おっとと」

 

 その様な一幕もあったが、五人はそのままエレベーターシャフト内部を降下していった。

 

「あの見張り、どれくらいで見つかるかね」

「相手しだいですね。連絡用の魔道具を持ってましたし、こまめに定時連絡があればすぐでしょう」

 

 手の中の、メダルのような魔道具を示しつつヒョウエ。

 

「まあ、あの広間をずっと監視してる可能性もありますし、だとしたらもうばれてますが」

 

 むう、とセーナが唸る。

 

「凄いな。その様な術者がいるのか」

「真なる魔法文明の利器ですよ。多分この建物全体に魔法の目があります。

 稼働しているかどうか、侵入者が使いこなしているかどうかは賭けですけどね」

「やな感じだな。どこに張ったらいいかもわからねえのに賭けなきゃならねえってのは」

 

 苦々しげにモリィが吐き捨てる。

 無言の賛同がシャフト内に響いた。

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