毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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04-32 味方

 杖が円形のエレベーターシャフト内部をかなりの速さで降りていく。

 直径は3m少し、カスミの作った光球に照らされた周囲の壁は滑らかで、地球のそれにあるような配線やワイヤーロープなどはない。

 

「!」

 

 ヒョウエの懐に振動が走った。

 取りだしたのは先ほど見張りのリーダーから奪った魔道具。

 光を点滅させ、振動している。

 

「ヒョウエ様、それをこちらに。それと皆様、声をお出しになりませんように」

「中央の光る石を押し込めば話が出来ます」

 

 ヒョウエが必要な事だけを告げて魔道具をカスミに手渡す。

 他の四人が全員頷いたのを確認して、カスミが魔道具のスイッチを押した。

 魔道具から乾いた感じの、感情を律した声が流れ出す。

 

『"本陣"より"大手門"へ。出るのが遅かったがどうした』

「"大手門"より"本陣"、すまない。部下がだらけていてな。注意していた」

「「「「!?」」」」

 

 他の四人が、かろうじて叫ぶのをこらえる。

 童女の喉から流れ出したのは低くしゃがれた男の声。

 目をつぶって声だけを聞いたら、ひげ面の中年軍人がぱっと思い浮かぶような。

 

『結構。部下の手綱は握っておけ。ここからが重要な所だ。もう少しなのだからな』

「わかっている。こちらは異常なしだ」

『よし』

 

 ぷつんと軽い音がして通信が切れる。

 ふうっ、と一斉に溜息が漏れた。

 

「・・・何だ今のは。それも人族の魔法か?」

魔法(マジック)じゃありませんよ。技術(アート)です。

 凄いですね、流石忍者。僕も声色の心得はありますが、そこまでは到底出来ません」

「そんな事ができたなんて・・・わたくしも知りませんでしたわ」

「いやほんとすげえわ。その芸だけでも食ってけるぜお前」

 

 周囲から浴びせられる称賛の嵐にカスミがはにかむ。

 

「まあ、芸人に化けて情報を集めたりするのも忍びのつとめの一つですので」

「昔はサムライの傍で戦うのが忍びだと思っておりましたわね」

「お嬢様ぁ・・・」

「い、今はわかっておりますわよ! それにしょうがないじゃありませんの! カスミのご先祖様の逸話って初代様の傍で戦ってる話ばかりですし!」

「あーまあ確かに」

 

 情けなさそうな声を上げるカスミ。最近お説教ばかりなのでちょっと焦るリアス。モリィが苦笑しつつ頷いた。

 

「戦闘しかしないのは忍者じゃなくてニンジャですね・・・さて、そろそろですよ。みなさん、気を引き締め直してください」

「!」

 

 カスミの作る薄明かりの中、円形の昇降機の天井が見えていた。

 

 

 

 昇降機の上に降り立ち、五人が杖から降りる。

 ヒョウエが足元をとん、と指でつついた。

 

「それでどうするんだ? この床ぶち抜けばいいのか?」

「そんな野蛮なことをしなくても大丈夫ですよ。カスミ、ちょっとここ光ください」

「はい」

 

 カスミが宙に浮く光をヒョウエの手元にやると、四角いハッチのようなものが浮かび上がった。

 ヒョウエがその周囲を何やらいじると、ハッチが僅かに浮かび上がって手で開けられるようになる。

 

「世界が違ってもこの辺は変わりませんね――降りますよ」

 

 ヒョウエがハッチを開け、するりと中に滑り込んだ。

 

 

 

 ヒョウエに続いて四人が次々に昇降機の中に降りる。

 いずれも体術にはそれなりの心得があり、着地も危なげない。

 2m半ほどの空間の周囲はやはりのっぺりした材質で出来ており、扉の横と上にパネルがある。

 広さと形状を除けば、現代地球のエレベーターと変わらない雰囲気だ。

 

「さて、と・・・」

 

 目を閉じて、床に杖を突く。いつもの念響探知(サイコキネティックロケーション)

 

「ふむ」

 

 ややあって目を開いたヒョウエがあごに手をやって考え込んだ。

 セーナが弓を手に取りながら聞く。

 

「それで周囲のことがわかるのだったな。どうだ、ヒョウエ?」

「かなり広い空間ですね。周囲にいくつか通路があって、10人くらいの人間が守っています。板金鎧を着た重装備も三人。後残りのうち二人は恐らく術師ですね」

「透明になって飛び出したら不意を打てねえかな」

「それもいいですけど、まずこっちを試してみましょう」

 

 ヒョウエが取りだした金属球に『水銀』のルーンが光り輝いて浮かび上がった。

 

 

 

 昇降機の扉の右下の隅にヒョウエが指を当てた。

 音もなく表材がえぐれ、直径五センチほどの円形の穴が開く。

 モリィ達がざわめいた。

 

「え、何だ? お前今何したんだ?」

「物質変性は得意だと言ったでしょう。これは"物質分解(ディスインテグレイト)"の術です。

 名前の通り、物質をとても細かい粒に分解してしまいますので、消えてしまったように見えるんですよ。で、ここから・・・」

 

 手の中の金属球を、穴の中に押し込む。

 

「後は待つだけ」

 

 エレベーターホールの見張りが一酸化炭素中毒で全員意識を失ったのは数分後だった。

 

 

 

 上と同様に空気を再度浄化し、手分けして拘束する。

 武器や重要そうな装備は剥ぎ取ってヒョウエとカスミの「隠しポケット」の中に。

 

「へへっ、役得役得。魔道具もいくらか持ってやがったし、結構いい値段で売れるよな」

「・・・まあ悪人の持ち物ですし、事情も存じておりますからあれこれ言いませんけど」

「モンスターのドロップアイテムと同じだろ。倒した奴のもんさ」

 

 鼻歌でも歌いそうな上機嫌な表情で、モリィが魔法のものらしい、装飾を施した剣を取り上げた。

 

 

 

 拘束を終え、脇の部屋に見張りたちを放り込む。先ほど同様、物質変性の術で扉を溶接してから再び杖にまたがる。

 

「・・・待て」

 

 最後に杖にまたがろうとしたセーナが、振り向いて弓を構えた。

 一瞬遅れてカスミが飛び降り、同様に身構える。

 

「敵ですか?」

「精霊が囁いてくれた。我々の降りた縦坑の中を降りてきている。複数だ。ほとんど音がしない・・・手練れだな」

「カスミ、透明化の術を」

「はい」

 

 全員が武器を抜いて身構える。

 その姿がすっと消えた。

 

 エレベーターの閉じた扉が音もなく開く。

 中には誰もいない。

 

 しばらく経ってから、こげ茶色の革服と覆面を身につけた男が上から降りてきた。

 音もなく着地し、周囲を確かめると上にハンドサインを送る。

 

 続いて十数人の、同様の姿の男たちが降りてきた。

 油断無く周囲を伺いながら素早く展開して武器を構える。

 

(おい、ヒョウエ、あれ・・・)

(え・・・あ!)

 

 安全を確認したのだろう、リーダー格らしい男が頷く。またしてもハンドサイン。

 

「もし、"片隅の垂れ幕(コーナー・ヴェイル)"の方々ですか?」

 

 動き出そうとした瞬間、後ろから声がかかる。全員がぎょっとして振り返った。

 

「・・・!」

 

 思わず武器を構えた一団だったが、次の瞬間ほっとしたように脱力した。

 

「ヒョウエ殿下。驚かさないで頂きたい」

 

 苦笑しながらリーダー格の男が覆面を取る。

 

「どうも、しばらくぶりです。星見の板を持ってるのはそちらで、僕の方はあなた方が何者かわからないわけですからね。用心して当然でしょう」

 

 リーダー格の男――少し前に倉庫街で敵の暗殺者の自爆に巻き込まれ、ヒョウエに右肩を治療して貰った"片隅の垂れ幕(コーナー・ヴェイル)"のエージェント――が更に苦笑の度合いを深めた。

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