毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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04-33 魔法装置

 手早く情報を交換する。

 

「なるほど、我々以外にも侵入者が・・・」

「味方ではないにしろ、敵ではないと思うんですけどね。しかし・・・」

 

 ディグと名乗ったリーダー格の男――多分偽名だろうが――を見上げる。

 

「なにか?」

「良くこんなに早く追いつけましたね?」

「機密事項ですが、そう言う秘蔵の魔道具があるんですよ。後は殿下が目印を残していって下さったおかげですね」

 

 きらりとヒョウエの目が光る。

 

「ほほう。途中であれこれやっていたとは言え、僕の杖に近い速度で移動できる魔道具ですか・・・」

「あ、申し訳ありませんが殿下には絶対見せるなと厳命がございまして」

「ええっ!?」

 

 悲鳴のような声を上げるヒョウエ。

 上司の上司(ヒョウエの姉)から直々に聞かされた通りの反応にディグがまた苦笑した。

 

 

 

「殿下、そう言えばもう一つ」

「なんです?」

 

 苦笑を収めたディグの言葉にヒョウエが首をかしげる。

 

「早いとおっしゃいましたが、魔道具以外にも理由がございまして。

 殿下が情報を持って来る半日ほど前に、とあるルートを使って密告があったのです。

 この島の位置と、大雑把な施設内の構造も含めて」

「!」

 

 ヒョウエたちに驚愕が走る。

 

「裏を取っていたところで更にヒョウエ様の情報が入り、待機していた我々に出動命令が下されたのだと思います」

「ディグさんよ、相手はわかってんのか? 調べたんだろ?」

「調べたとも。だがわからなかったようだ。時間がなかったのはあるが、な」

「うーむ」

 

 唸りはしたものの答えが出るわけでもない。

 彼らは無言で頷いて前進を再開した。

 

 

 

 そこからは至極スムーズに前進できた。

 

 ブービートラップをモリィやセーナが見抜き、その道のプロである"片隅の垂れ幕(コーナー・ヴェイル)"のエージェントたちがそれに対処する。

 カスミの透明化やヒョウエの念動の術のおかげで、見張りの兵士達もろくに反応できずに沈黙していった。

 そしてたどり着いたのは最下層の大扉。周囲の兵士達は既に無力化されている。

 ヒョウエが杖を突いた。念響探知(サイコキネティックロケーション)

 その瞬間。どん、と縦揺れが来た。

 

「!」

「うわあっ!?」

 

 モリィやリアス、エージェントたちの何人かが思わず声を上げる。

 彼らは生まれてこの方、二回しか地震を経験していない。

 取り乱していないだけ称賛されるべきだろう。

 

「これは・・・!」

『ははは! ははははは!』

 

 唐突に、通路に声が響く。

 ひどく愉快そうな高笑い。

 

「この声は・・・」

「ウィナー伯爵! やはりお前か!」

『そうだとも! 今のその顔! お前のその顔が見たかったぞ放蕩王子! 魔法装置は起動した! もう地震は止められない!』

「くっ・・・」

 

 悔しさに顔を歪めるヒョウエ。それが嗜虐心を刺激したようで、ウィナー伯爵は更に高笑いを放つ。

 

『隠密理に潜入できたと思っていたか? 残念! 施設は完全に機能している! 貴様らの行動など最初から筒抜けだったのだ! 見逃されていたとも知らず・・・』

「全員! 突入しますよ!」

「! はっ!」

「お、おう!」

 

 得意げなウィナーの言葉を遮り、ヒョウエが号令をかけた。

 モリィ達と、指揮権があるわけではないがディグ達もそれに続く。

 

「"脆化(フラジール)"!」

 

 ヒョウエの変性呪文によって大扉にひびが入る。

 続く念動の術で、大扉が文字通り吹き飛んだ。

 

「がっ!」

「ぎゃあっ!?」

 

 大扉の破片が弾丸と化して、待ち構えていたウィナーの部下たちを襲う。

 

「うおおお?!」

 

 爆発。

 "火球(ファイアーボール)"の呪文を準備して、ヒョウエたちが入ってくると同時に投げつけようとしていた"火投げ師(ファイアスローワー)"が、破片を受けて制御を失った。

 周囲の三人を巻き込んで自爆する。

 本人を含めて三人が即死、もう一人が瀕死の重傷。

 

 他に複数いた術師も破片の散弾を受け、準備していた術の精神集中を失っていた。

 (この世界の術師は重装備すると術が使用できなくなるわけではないが、魔法は疲労が激しいため、やはり軽装のものが大多数である)

 それでも装甲や自らの頑健さで耐えたもの達に対して、

 

「「光よ!」」

「ぐおおおおっ!?」

 

 カスミとディグの部下、二人の"閃光(フラッシュ)"の呪文が炸裂する。

 視線が扉という一点に集中していた事もあり、待ち構えていたウィナーの部下、ほぼ全員の目がくらんだ。

 

「生死は問わん! 速やかに無力化しろ!」

「うぉらぁぁぁぁ!」

「チェェェェェイッ!」

 

 モリィ、リアス、"片隅の垂れ幕(コーナー・ヴェイル)"のエージェントたちがなだれ込む。

 刀や手槍が敵の体を切り裂き、雷光がほとばしる。

 セーナの放った、ただの矢にしか見えないそれが重甲冑を纏った騎士の腕を肩から吹き飛ばした。

 ヒュウッ、とモリィが口笛を吹く。

 

「やるじゃん」

「武芸だけは得意でな」

 

 にやりと、二人の飛び道具使いが笑いあった。

 

 

 

「何っ!?」

「こいつらっ!」

 

 だがそれで打ち倒せたのは十人ほど。

 残りの十人ほどは目がくらんでいるにもかかわらず、あるいは重装備で耐え、あるいは音と気配を頼りに致命傷を避ける。

 

「何と言う手練れ揃い・・・!」

 

 同じ世界に身を置くディグが戦慄するほどの質の高さ。

 だがそれでも引くわけにはいかない。

 

「ディグ、そいつらは任せました! 僕は魔法装置を止めてみます! リアス、道を切り開いて! モリィたちも適宜援護を!」

「おう!」

「かしこまりました!」

 

 床が揺れ始めた。すぐに立っていられないほどの揺れが始まるが、敵味方含めて戦闘は継続される。

 リアスが先頭に立ち、吶喊する。女サムライが切り開いた道を飛び抜けて、部屋の奥、巨大な魔法装置に取りついた。

 

「これは・・・確かに止めるのは無理か。だが魔力を注いでやれば何とか・・・!」

 

 ほとんど未知の魔法装置ではあったが、優れた魔導技師としての見識によってヒョウエは僅かな時間で機能と操作を大方理解していた。

 魔法装置は地脈から魔力を吸い上げ、あるいは刺激して操作するものだ。

 

 操作記録によれば既に魔力は地脈に打ち込まれ、後数分で止めようもない巨大地震が起きる。

 蓄えられていた魔力はほとんど使いきってしまっていたが、ヒョウエには"隠された水晶の心臓(クリプトス・クリスタル・ハート)"による膨大な魔力がある。

 

「魔力を再チャージして地脈を安定させられれば、被害は随分減らせるはず・・・!」

「これは精霊力を操る古代遺物(アヴァーシェ)なのか?」

「セーナ?」

 

 いつの間にかセーナが近づいて来ていた。

 文字通り矢継ぎ早に矢を放ちながら、ちらりと魔法装置の方を見る。

 

「わかるんですか?」

「お前達の言う地脈というのは即ち精霊の流れだ。そもそも世界の精霊力(アートマ)を整えるのが我らエルフの務めだからな――私もなにがしか手伝えるかもしれん」

 

 予想外の言葉に振り向く。

 

「というと?」

「祈りだ」

「祈り」

 

 思わず聞き返すが、セーナは真剣だ。

 

「エルフには全て祈り――精霊の力に接触することによってそれを制御する力がある。《精霊神の加護》を受けたものは、更に大きな祈りの力があるのだ。

 どれだけのことが出来るかは正直わからないが、大地の怒りを収めるために何がしかの事は出来るかも知れない」

「お願いします。今は猫の手でも」

 

 借りたい、と言おうとした瞬間。真紅の閃光が走った。

 ヒョウエがものも言わずに吹き飛ばされ、壁面を埋める魔法装置に激突する。

 積み重ねられた馬車ほどもある魔法装置が崩れ落ち、ヒョウエの姿を埋め隠した。

 

「――――!」

「ヒョウエッ!」

 

 驚愕と悲鳴が錯綜する。

 集中する視線の先には、青い鎧のネガのような、甲冑姿の怪人物が浮かんでいた。

 古代の遺物(アーティファクト)とおぼしき全身を覆う真紅のパワードスーツ。いかにも騎士の甲冑である青い鎧とは対照的な、ヒョウエが見ればSF的と称するだろう造形。

 これもまた魔法の品なのであろう、紫色のマント。

 

「伯爵閣下!」

「何!?」

 

 部下たちの一人が叫んだ声に、ディグが目を剥く。

 

「ククク・・・ハハハ・・・ハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

 真紅の駆動騎士が、ウィナー伯爵の声で笑った。

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